似て非なるものたちの黄昏
先々週から先週にかけて、豚インフルエンザのオカゲでずっとお家にいたから、あたしがお金を払って買ってる唯一の雑誌、「テレビブロス」の読み込み具合が、いつもより徹底してた。あたしは、水曜日に新しい「テレビブロス」が発売になると、すぐに買って来て、おトイレの中の本棚に置く。そして、おトイレに入るたびにチョコチョコと読んでると、2週間後の水曜日に次の号が出るまでに、たいていは隅から隅まで読み終えることができる。もちろん、これは、「番組表以外のすべての記事を」ってことだけど、あたしは好きな順に読むから、いつも最初に読むのは、清水ミチコさんの「私のテレビ日記」で、その次が竜ヶ崎あきらさんの「若者たちの神々」で、その次が町山智浩さんの「まいっちんぐUSA」で、あとはその時による。
ただし、町山智浩さんは、掟ポルシェさんの「ダスきん多摩」と交互の連載だから、読めるのは月に1回で、町山さんの連載がお休みの時には、その時の気分で何を読むかが変わる。もちろん、これは、基本的には‥‥ってことで、しばらく前に、表紙をめくったとこの目次の上の「ツバ付け隊が行く!」に、大好きな椿鬼奴さんの「キュートン」が出てた時には、最初にこのコーナーから読み始めた。だから、あたしは、読む順番にそんなにコダワリはないんだけど、とにかく、広告と番組表以外は、番組表の中に埋もれてる「ブロス探偵団」から「ピピピクラブ」の投稿に至るまで、すべての活字を読んでる。
で、今回の号は、先々週の水曜日に発売になったもので、TOKYO FMの「SCHOOL OF LOCK!」のやましげ校長とやしろ教頭が表紙を飾ってる号なんだけど、ずっとお家にいて、いつもよりおトイレに入る回数が多かったから、次の号が発売になる今週の水曜日を待たずして、すべての記事を読み終えちゃった。だけど、おトイレに入ると、つい手に取って、パラッとひらいちゃう。そしたら、「日本直販」の広告のページだった。何でかって言うと、商品を注文するためのハガキが付いてたから、そのページがひらきやすくなってたからだ。それで、あたしは、ところ狭しと並んでる「日本直販」の商品をナニゲにチェキし始めたんだけど、これが、ちゃんと見てみると笑えるものばっかで、こんな面白い広告に、何で今まで気づかなかったんだろうと後悔しちゃった今日この頃、皆さん、いかがお過ごしですか?
‥‥そんなワケで、今の号の「テレビブロス」がお手元にある人は、実際に見てもらったほうが早いと思うけど、この「日本直販」の広告のページをひらいて、あたしの目に最初に飛び込んで来たのは、真っ赤なスーツで勢ぞろいしたクレージー・キャッツの面々の下で、ダブルネックのギターを弾いてるジミー・ペイジの姿だった。そして、そのすぐ下には、「ディスク自動修復洗浄機」ってのがあるんだけど、これが、意外にもケロロ軍曹にソックリなのでぇ~あります! その上、「傷つき汚れたDVD・CDが蘇る!!」とかってコピーが書いてあったから、あたしは、「蘇る」が「ヨミガエル」っていうカエルの名前みたいに思えちゃって、「トノサマガエル~アマガエル~カエルにいろいろあるけれど~この世で1匹~汚れたCDヨミガエル~♪」って替え歌まで作っちゃったよ、まったく(笑)
で、この「ディスク自動修復洗浄機」は、7140円だからそんなに高くないんだけど、その下にあった「DVD・CDバックアップ機」ってのが、94500円もするシロモノだった。「シロモノ」って言っても、家電で洗濯機とかのジャンルを指す「白物」じゃなくて、当然、「代物」って意味だけど、こんな高いものを通販で買う人なんているのかな?‥‥って思いつつ、そのまま下へと見てくと、一番下のとこに、ナナナナナント! 「宝くじ予想機」ってのが紹介してあった! そして、「テレビブロス」の記事にも負けないほどのちっちゃい文字を読んでみると、「最新版のコンピューターを使用して2年がかりで開発された本機は、最新のハードとソフトの相乗効果でこれまでにない当選確率を達成。日本国内で販売されている宝くじすべてに対応し、うんぬん」って書いてあった。
カンジンのお値段は、38640円ていうビミョ~な設定で、こうした商品にアリガチな「高すぎると誰も買ってくれないし、安すぎると効果がないように思われちゃう」っていうポイントを押さえた金額だった。でも、ホントに宝くじが当たるのなら、38640円どころか、50万円だって100万円だって安いワケで、ジャンボの1等とかじゃなくても、ロト6の1等が当たるだけでも簡単にモトが取れちゃう‥‥つーか、ホントに宝くじが当たるのなら、この商品を作って売ったりするよりも、この商品を自分で使って宝くじを買ったほうが遥かに儲かるじゃん(笑)
つまりは、「幸運が舞い込むブレスレット」とかのメカバージョンなんだろうか? 「このブレスレットをつけたとたんに、競馬で大穴が連発して、宝くじで1等が当たり、可愛い彼女もできました!」とかって書いてあって、札束を両手に持ったブサイクな兄ちゃんが、顔に釣り合わないような美人のお姉ちゃんを連れてる写真とかを並べてる広告って、あたしは、見るたびに「こんなもんに騙されるな人なんているのかな?」って思ってるんだけど、ああいうオカルト的な、スピリチュアル的なものに懐疑的な人でも、こっちの「宝くじ予想機」なら、「これは科学的だ!」って思っちゃうのかもしれない。
他にもワクワクしちゃう商品がメジロ押しの「日本直販」の広告なんだけど、何よりもあたしの琴線に触れたのが、どんなに吸っても吸引力が衰えないことでオナジミな上に、マンションで深夜に使うと、上下左右のお部屋の住人から、いっせいに「うるせえ!」って怒られちゃうことでもオナジミの例の掃除機とソックリな掃除機だった。空気を回転させて吸引するとこも、ゴミが溜まる部分が透明で中が見えるとこも、その部分がワンタッチで外れて簡単にゴミを捨てられるとこも、すべてソックリなのに、8980円ていう破格のお値段で、本家の掃除機の10分の1ちょいの金額だ。
こんなに安いんだから、もちろん、皆さんのご想像通りの中国製で、どのくらいの能力があるのか、どのくらいの耐久性があるのかは、買ってみるまで分からない。あたしは、中学生の時に、980円の中国製の「ウォークマンもどき」を買ったら、最初に入れたカセットテープを巻き込んじゃって、二度と使えなくなった。そして、高校生の時に、1980円の中国製の「CDウォークマンもどき」を買ったら、ほとんどのCDが飛びまくって、マトモに再生できなかった。あたしには、こんなほろ苦い思い出があるので、中国製の家電を買うのは、一種のギャンブルだと思ってる。
‥‥そんなワケで、中国のパクリ商品て、見た目はソックリなのに、中身がダメなものが多い。もちろん、見た目もソックリで中身もソックリなら、みんな中国製を買っちゃうワケで、どっかがダメだからこそ中国製は安いワケだ。だから、中国のパクリ商品を買う場合は、見た目を重視したブランド物のバッグや時計だけに限定したほうがいいってことになる。ブランド物のバッグやお財布なんて、どこにも故障するような機械は使われてないから、ファスナーの滑りが悪かったり、留め金が壊れたりする程度で、根本的に使えなくなるってことはない。ブランド物のリストウォッチにしても、ホントに時間を見る道具として腕につけてる人なんてマレで、ほとんどは周りの人たちに「いい時計をしてるだろ?」ってことをアピールするのが目的なんだから、中身なんてどうでもいい。極端な話、中身がカラッポで針が動いてなくたっていいワケだ。
だけど、家電やオーディオ製品は、どんなに外見が本物ソックリでも、ちゃんと動かなかったら意味がない。たとえば、車が必要な時に、外観はピカピカのフェラーリなのに、エンジンがぶっ壊れててまったく動かない車と、外観はボロボロの国産車だけど、エンジンはちゃんと整備されててシッカリと走る車があったら、誰だって後者を使うだろう。ま、これは極端な例だけど、もっと現実にありそうな例で言うと、外観はベンツにソックリで高級感がマンマンなのに、非力なエンジンを積んでてイライラするほど遅いパクリ車と、外観はスタイルの悪いオリジナルだけど、ベンツの6リッターとソックリのエンジンを積んでてパワフルに走ってくれるパクリ車があったら、どっちに乗るかってことだ。
中には、イライラするほど遅くても、ベンツにソックリな外観の車のほうを選ぶ人もいるかもしれないけど、毎日の通勤に使うなら、ほとんどの人が後者の実質的なパフォーマンスを選択するだろう。でも、多少でもこうして意見が分かれるって予想されるのは、車ってものを単なる道具とは思ってない人が多いからだ。あたしだって、外観よりは中身を重要視するけど、それはこうした選択肢しかない場合の話であって、おんなじ性能でカッコイイ車とカッコ悪い車があれば、カッコイイほうを選ぶに決まってる。それに、普通、車を買う時って、エンジンで選ぶ人よりも、外観の好みで選ぶ人のほうが遥かに多いと思う。あたしが今のパンダを選んだのだって、外観のスタイルと色が好みだったからで、別の車のエンジンに積み替えてあることなんて、あとから知ったくらいだ。
‥‥そんなワケで、中国のパクリ商品の外観と中身との重要度の比率って、ブランド品のバッグや時計なら「9対1」くらいだけど、家電やオーディオ製品なら正反対で「1対9」になり、車の場合はその中間で、「4対6」とか「3対7」くらいなんじゃないかと思う。ちなみに、ブランド品のバッグや時計が「10対0」じゃないのは、いくら外観をパクった商品とは言え、ある程度はちゃんと使えなかった困るワケだし、家電やオーディオ製品が「0対10」じゃないのも、いくら内容をパクった商品とは言え、ある程度は外観も見られる姿じゃないと使うのが恥ずかしいからだ。
だけど、商品の外観なんてどうでもよくて、100%、中身だけを重要視するパクリ商品がある。それが、パソコンやゲームなどのソフト類だ。最近なら、昨日、全世界で同時発売された「Windows7」が、中国では2ヶ月も前から海賊版が出回ってたそうだ。細かいことを言えば、パクリと海賊版は定義が違うけど、どっちにしても、おんなじジャンルの犯罪だ。で、「Windows7」の中国製海賊版は、わずか50元(約700円)ていう激安だそうだから、信頼性をアピールするために「宝くじ予想機」の値段をそこそこ高めに設定するようなニポン人とは感覚が違うワケで、とにかく1円でも安けりゃいい!っていう中国のノリが伝わって来る。
実際、ニポン人が「Windows7」の海賊版を作って、ネットで違法に販売するとしたら、たぶん、定価の半額くらいを目安にして、8000円から12000円くらいで売ると思う。ま、値段はともかくとして、こうした商品は中身がすべてだから、どんなに安くても海賊版に手を出す人が少ないのは、使えなかったら意味がないからだし、ヘタしてパソコンのハードまで壊れちゃったらシャレになんないからだ。それに、目クソ鼻クソになっちゃうけど、おんなじ海賊版だとしても、700円の中国製よりも8000円のニポン製のほうが良さそうに感じちゃうのが、あたしたちニポン人のサガだと思う。
とにかく、中国製のパクリ商品やコピー商品や海賊版て言うと、何よりも信頼度が低いし、最初から「すぐに壊れること」を前提として間に合わせで買ったり、値段の安さから「ダメでもともと」で買ったりするケースがほとんどだろう。「Windows7」にしても、23日のフジテレビの「とくダネ!」の生放送で、実際にパソコンを操作して見せようとしたら、どうやってもぜんぜん動かなくて、横にいた中野美奈子アナが、思わず「それ、中国版じゃないですよね?」って口走っちゃったそうだ。
どっちにしても、使いもんにならない「Vista」からのアップグレードならともかく、まあまあ使えてる「XP」のデータをぜんぶバックアップして、わざわざクリーンな状態に戻して、イチから「Windows7」をインストールして、バックアップしたデータを再構築するなんて、こんな気の遠くなるような作業をしようと思うほどヒマな人はメッタにいないと思う。こんなメンドクサイことをするくらいなら、しばらく待ってから、「ウインドウズ7」の入ってるパソコンに買い換えたほうがマシだと思う‥‥って、諸事情により「Windows Me」を使ってるあたしが言うのもアレだけど(笑)
‥‥そんなワケで、外観がソックリなら、中身はどうでもいいってものもあれば、外観なんてどうでもいいから、中身こそがソックリじゃないと困るものもあるワケだけど、そんなことを考えながら手元の「テレビブロス」をパラパラと見てたら、後ろのほうの「ニュー大人の時間ですよ」に目が止まった。今回は「どうして鈴木清順は歯磨きをしないの?」ってことで、映画監督の鈴木清順さんが、歯磨きをしないって公言してることついて取り上げてるんだけど、五月女ケイ子さんの描いた鈴木清順さんの似顔絵の数々が、どうしてもどこかで見たことがあるような気がした。だけど、いくら考えても思いつかない。それで、あきらめてページをめくったら、ナナナナナント! 次のページの「ピピピクラブ」のタイトルの横で、恍惚の表情をしてるおじいさんの顔が、この鈴木清順さんの似顔絵にソックリだったのだ。こっちのおじいさんの絵は、ルノアール兄弟さんの作品なんだけど、こんな近くに「どこかで見たような気が」の答えがあっただなんて、これも、中国4000年の「似て蝶」の呪いのような気がして来た今日この頃なのだ(笑)
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