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2009.11.05

カニエナイザーな出来事

こないだの日曜日、ブライダルのお仕事で品川の某ホテルに行ったんだけど、そこで、ちょっとした事件があった。そのホテルでは一番豪華なプランだった上に、司会も某タレントさんだったし、お色直しも2回あったし、夫婦鶴の氷像まで飾られてたし、なかなか立派な披露宴だった。あんまり具体的に書くと、関係者や出席者たちに分かっちゃうから、ここからは濁しつつ書いてくけど、お式の後半、新婦さんの2回目のお色直しも終わり、つまり、あたしのお仕事も終わり、あとは、進行の様子をソデから見守ってて、髪やメークが崩れた時だけチャチャッとお直しするだけ‥‥って状況だった。

前半の緊張感もなくなり、新郎さんや新婦さんの友人たちが、順番に祝辞を述べたり歌を歌ったりギターを演奏したりで、宴もタケナワって感じだった。そして、何番目かに、新婦さんの友人の女性2人が祝辞を始めた時のこと、どっちの友人なのか分かんないけど、ベロベロに酔っばらった1人の男性がヨロヨロと前に出て来て、意味不明なことを言いながら女性のマイクを奪い取り、アッケにとられてる周りの人たちを無視して、ラップみたいなのを歌い出したのだ。あたしは、最初、これも予定されてたことなのかと思って見てたんだけど、周りの人たちの反応や、完全にロレツが回ってなくて何を言ってんだかチンプンカンプンな泥酔ラップの様子から、これは突発的な事故だって分かった。

そして、30秒もしないうちに、その男性の仲間たちが止めに入り、司会者もギャグを言って場をおさめようとしたり、そんな状況すらビデオやケータイで撮影しようと何人かが前にシャシャリ出て来たりで、会場が騒然となった瞬間、ガラガラガシャ~ン!っていう大きな音と女性の悲鳴が聞こえた。その男性がひっくり返って、後ろに飾ってあった夫婦鶴の氷像を倒して壊しちゃったのだ。それも、氷像だけを倒したんじゃなくて、テーブルごと倒しちゃったもんだから、氷像が乗せてあった大きな台から、ローソクを灯してた複数の燭台まで、すべてのものをぶちまけちゃって、もう上へ下への大騒ぎだった今日この頃、皆さん、いかがお過ごしですか?


‥‥そんなワケで、あたしは、毎週のようにブライダルのお仕事をしてるから、年間に数十本の披露宴に立ち会ってるワケで、ついつい飲みすぎちゃった人たちの失敗や失態を何度も目撃してる‥‥とは言っても、その多くは、緊張をほぐすために飲みすぎちゃった人が、祝辞でカミカミになったり、変な言い間違いをしたりってレベルで、よくある光景だ。タマには、泥酔して立てなくなっちゃう人とか、気分が悪くなって運び出される人とかもいるけど、おめでたい席だから笑い話で済む。だけど、今回みたいなのは、年に一度あるかないかのことで、ちょっとしたパニックだった。

で、今年の9月からなんだけど、あたしは、アシスタントの子を連れてる。あたしが雇ってるんじゃなくて、いつもお世話になってる事務所の人から、「ブライダル専門のヘアメークを目指してる子がいるので、しばらく現場を教えてやって欲しい」って頼まれて、それで、ブライダルのお仕事の時だけ連れてるんだけど、なかなか気が利くし、明るくて元気な子だし、それなりに楽しくやってる。ただ、あたしよりひと回り以上も年下なので、ふだんの会話が噛み合わないことも多い。ま、これは、世代的なことだけじゃなくて、生まれ育った環境とか、興味のあるジャンルの違いとか、その他モロモロによるギャップなんだろうけど、決して「天然」てワケじゃないのに、あたしの言った言葉をぜんぜん違う意味で受け取っちゃうことがある。

そんなこんなで、このドタバタ披露宴からの帰り道、車の運転をしながら、あたしは、助手席のその子に‥‥って、いつまでも「その子」じゃ「園子」って名前みたいだから、ここからは便宜上「A子」ってことにするけど、A子に対して、その日のヘアメークについておさらいをして説明した。特に、お色直しが2回ある場合のヘアアレンジは、「速さ」と「変化」と「豪華さ」がキモだから、あたしが開発した48の必殺ワザ、「きっこ48手」のうちのいくつかを伝授した。そして、ひと通り説明が終わり、世間話モードになったら、どちらからともなく、やっぱり、あの大事件の話が出た。


A子 「それにしても、あのラップの人には驚きましたね~」

きっこ 「酔って問題を起こす人はタマにいるけど、今日みたいに酷いのはメッタにないわよ」

A子 「私、初めて見たからビックリしました」

きっこ 「そう言えば、ちょっと前に、MTVの授賞式で、他の受賞者がスピーチしてるとこに、酔ったカニエが乱入して、受賞者のマイクを奪い取って失礼なことをノタマッちゃった事件を思い出したわ」

A子 「えっ? カニエさんがそんなことをしたんですか?」

あたしは、カニエのことを「カニエさん」なんて言ってるA子を不思議に思いつつも、そのまま会話を続けた。

きっこ 「たしか1ヶ月か2ヶ月くらい前、MTVのミュージックアワードの授賞式で、ナントカっていうカントリー系の女性シンガーが何かの賞を受賞して、壇上で感激のスピーチをしてたんだけど、酔ったカニエがステージに上がってきちゃって、その女性シンガーのマイクを奪い取って、『お前も良かったけどビヨンセのほうがずっと良かったぞー!』とか何とか叫んじゃったのよ」

A子 「ホントに、あのカニエさんがですか?」

きっこ 「いろんなとこでニュースになったのに、知らなかった?」

A子 「はい‥‥」

きっこ 「ビヨンセが仲裁したり、カニエもブログで謝罪したりしたんだけど、それでも収拾がつかなくて、しまいにはオバマ大統領までもが『カニエは大バカ野郎だ!』って言ったのよ」

A子 「ええっ! オバマ大統領がですか?」

きっこ 「うん」

A子 「私は、カニエさんがそんなことする人だとは思ってませんでした‥‥」

きっこ 「そう? カニエならやりそうじゃない」

A子 「そうですか?」


‥‥そんなワケで、このチグハグな会話はしばらく続いてったワケだけど、懸命なる「きっこの日記」の読者諸兄ならウスウスと感づいてる通り、あたしが言ってるのは「カニエ・ウェスト」のことなのに、A子は「蟹江敬三」のことだと思ってたワケだ。あたしのほうは、「カニエ」と言えば「カニエ・ウェスト」のことに決まってると思ってるし、「MTV」だの「ビヨンセ」だのって言ってんだから分からないワケないと思ってたし、トドメに「オバマ大統領」の名前まで出してんだから、誰がどう考えてもアメリカの話だってことは分かってると思ってた。

だけど、A子は、カニエ・ウェストを知らなかったのだ。カニエ・ウェストは、いろんな部門で何度もグラミー賞を受賞してるトップアーティストだし、知名度で言えばマイケル・ジャクソンやマドンナとおんなじくらい有名だし、あたし的には世界中の誰もが知ってて当然だと思ってたから、これはホントに意外だった。それも、あたしよりずっと年上のおじさんとかがカニエを知らなかったのなら分かるけど、20代前半で東京で暮らしててヘアメークを目指してるA子が知らなかっただなんて、これこそビックル一気飲みだった。

で、ここまで書いて来て、あたしは、ビミョ~なデジャブ感に包まれた。なんか、ずっと前に、似たようなことを日記に書いたような記憶がある。それで、いろいろと記憶の糸をたぐりながら過去ログをチェキしてみたら、今から4年以上も前の2005年6月15日の日記、「おじさんの境界線」の中に見つけることができた。過去ログを読むのがメンドクサイ人のために、フランク・ザッパにかいつまんどくと、4年以上前の日記に「5~6年くらい前のこと」として書かれてるから、今から10年くらい前のことになるけど、その当時、「最近どんな音楽を聴いてる?」って聞かれたあたしが、「べック」って答えたら、その場にいたおじさんたちが、みんな「ジェフ・べック」のことだとカン違いしたって話だ。

「ジェフ・べック」と言えば、それこそ知らない人はいないだろうし、世界三大ロックギタリストを選ぶ投票をしたら、多くの人が名前を挙げると思う。だけど、あたしに言わせれば、「べック」と言えば「べック」のことで、フルネームで言えば「ベック・ハンセン」のことだ。「ジェフ・べック」のことは「ジェフ・べック」って言う。そうしなきゃ紛らわしいからだ。たとえば、「ベック・ハンセン」も「ベック・ハンセン」て名前で活動してるなら、先輩の「ジェフ・べック」のことを「べック」って呼び、ずっとあとからデビューした「ベック・ハンセン」のことは「ベック・ハンセン」て呼ぶのがスジだと思う。だけど、「ベック・ハンセン」は「べック」って名前で活動してるんだから、「べック」と言えば「ベック・ハンセン」のほうを指してるって思うのが普通だろう。

ま、これは、「ジェフ・べック」のことも「べック」のことも知ってるって仮定した上での呼び方の問題で、過去ログを読んでもらえれば分かるように、カン違いした人たちは、「べック」のことを知らなかったのだ。だから、「こう呼ぶのがスジだ」なんてことを言っても無意味なワケで、そんなことよりも、あたしとしては、「べック」を知らない人がいたってことが意外だったワケだ。10年くらい前のあたしが「べック」っ言った時点で、すでにデビューしてから8年目で、何週も連続でビルボード1位を記録したり、グラミー賞を受賞したり、ワールドツアーを大成功させてた上に、来日公演も果たしてたビッグアーティストだったから、誰でも知ってると得持ってたのだ。

あたしの感覚だと、功績とかキャリアとかは置いといて、知名度だけで比較すれば、「ジェフ・べック」も「べック」も変わらない。今、40代や50代の人の中には、「ジェフ・べック」のことは知ってても「べック」なんて知らないって人もいるだろうけど、その反面、今、10代や20代の人の中には、「べック」はよく知ってるけど「ジェフ・べック」なんて知らないって人も多い。そして、その中間の世代のあたしは、両方ともよく知ってる。だから、あたしの感覚は、ワリと中立なんじゃないかって思ってる。

‥‥そんなワケで、この時は、あたしよりも年上の人たちが「べック」を知らなかったってことで、世代によるギャップを感じたんだけど、今回は、あたしよりも年下で、あたしよりも現行のミュージックシーンに敏感だと思ってたA子が、世界的に有名なカニエ・ウェストのことを知らなかったもんだから、意外オブ意外だったワケだ。それも、「蟹江敬三」のことだとカン違いするなんて、ある意味、あたしよりもずっと年上の感覚だと思った。だって、「蟹江敬三」の知名度って、「ジェフ・べック」とおんなじで、どっちかって言うと高齢者に知られてるジャンルの人だからだ。でも、そんなことよりも、あたし的には、A子の意外なカン違いによって、「泥酔した蟹江敬三がMTVの授賞式に乱入してマイクパフォーマンスを繰り広げる」っていうカニエナイザー‥‥じゃなくて、アリエナイザーな妄想がスタートしちゃったら、今夜あたり、夢で見ちゃいそうな予感がしてる今日この頃なのだ(笑)


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