催眠ワイパーの呪い
今日、東京は、お昼すぎまで雨だった。あたしは、雨は別に嫌いじゃないし、雨の日には雨の風情を楽しんでるから、お仕事で、どうしても晴れてもらわないと困る日に雨が降るとか、何週間も雨が降り続くとか、そうした特殊なケースじゃない限り、雨には困ってない。だけど、これは、あくまでも、電車やバスを使って移動してる時の話であって、自分で車を運転してる時には、ちょっと問題が起こることがある。それが、今日みたいな小雨の日なのだ。
たいていの車は、ワイパーが2本ついてて、運転席側と助手席側の窓の雨粒をそれぞれ払うようになってる。ワイパーの動く角度は、それぞれの車によってビミョ~に違うけど、フロントガラスが大きくてカーブしてる最近の車だと、運転席側のワイパーが100度くらい、助手席側のワイパーが120度くらい動いて、フロントガラス全域をキレイにしてくれる。タマに最近の車に乗ると、左右のワイパーの角度や速度がうまいこと計算されてて、ぶつかりそうでぶつからないように動くもんだから感心しちゃう。
だけど、あたしの相棒のフィアット・パンダは、一部のマニアはご存知のように、ワイパーが1本しかついてない。もちろん、これは、あたしの乗ってる旧型の可愛いパンダの話で、現行のカッコ悪いパンダには2本ついてる。で、あたしのパンダのフロントガラスは、食器棚のガラスみたいにマッ平らで、真ん中に1本だけしかワイパーがついてない。そして、この1本のワイパーが、左の端から右の端まで180度動くワケで、雨粒を払った窓は分度器みたいになるワケだ。
で、これだけでも激しくフランク・ザッパなのに、今の車みたいに、無段階調節の間欠システムなんかついてるワケがないから、何よりも困るのが、今日みたいな小雨の日なのだ。それなりに降ってくれてれば、普通にワイパーを動かしてるだけで何とかなるんだけど、今日みたいな小雨とか霧雨とかだと、一番遅いスピードで動かしても、窓の水分が足りなくて、ワイパーのゴムがクックックックッ‥‥ってなっちゃって、まるで「ちびまる子ちゃん」の野口さんが笑ってるみたいになっちゃう今日この頃、皆さん、いかがお過ごしですか?
‥‥そんなワケで、あたしは、霧雨の時には、ワイパーを止めたまま運転してて、30秒に1回とか、前が見えにくくなった時にだけワイパーのスイッチを「入れて切る」ってして、ワイパーを1往復させるようにしてる。運転しながらだから、すごくメンドクサイけど、それでも、ワイパーをつけっぱなしにして、クックックックッ‥‥ってなってるのをガマンしてるよりは、精神衛生上、マシだからだ。だけど、今日の小雨は、霧雨よりは密度も濃かったし、一粒一粒の雨粒も大きかったから、走ってると10秒もしないうちに前が見えなくなった。こんな状況だと、サスガにチョコチョコとワイパーのスイッチを入れたり切ったり入れたり切ったりしてらんないから、ローで動かしっぱなしにしてたんだけど、そうすると、信号で止まったり渋滞で速度を落とすたびにクックックックッ‥‥ってなっちゃうのだ。
ようするに、走ってれば窓に当たる雨の量もそれなりなんだけど、速度を落とすと雨の量が足りなくなっちゃうってワケだ。仕方ないから、最初は信号で止まる時だけワイパーを止めてたんだけど、あたしの場合、信号で止まった時には、「サンルーフのハシッコからポタポタと垂れて来る雨漏りをタオルで拭く」っていう重要な仕事もあるから、その上、ワイパーのスイッチにまで気を使ってるのは、あまりにも忙しい。もう、狭い車の中がサザエさん状態になっちゃう。それで、途中からは、ワイパーがクックックックッ‥‥ってなっても、ホッタラカシにして運転してた。
まあ、クックックックッ‥‥ってなるのは3回に1回くらいだから‥‥って、ここまでに何回、「クックックックッ」って書いて来たんだろう? このままじゃ「お前は桜田淳子か?」「お前は合同結婚式か?」「お前はカルト教団か?」って言われちゃいそうだから、ここからは「クックックックッ」はやめて「野口さん」で行くけど、3回に1回くらいの野口さんをガマンして運転してたら、あたしは、ジョジョに奇妙に眠たくなって来た。
あたしは、もともと睡眠時間が不足してるから、いつでも眠いのは不思議じゃない。でも、1日ずっと働いて、クタクタに疲れて運転してる帰り道ならともかく、行きの運転で眠たくなることはメッタにない。どんなに睡眠時間が短くても、たとえ徹夜で一睡もしてなくても、朝、熱いシャワーを浴びて、冷たい化粧水で顔をパンパンして、完璧にビシッとお化粧すれば、眠気なんか吹き飛ぶ。それなのに、何で今朝はこんなに眠くなるのかな?‥‥って思ってたら、その原因がワイパーだってことに気づいた。
あたしは、基本的に、ワイパーそのものを見てるんじゃなくて、ワイパーが拭いてくれたフロントガラスの先にある「前方の景色」を見てるワケだけど、そのワイパーが3往復に1回くらい野口さんになっちゃうと、ついつい気になって目が行っちゃう。適量の雨が降ってて、ワイパーがスムースに動いてる時なら、こんなことはないんだけど、分かってることとは言え、フロントガラスで野口さんが笑い出すと、どうしてもワイパーに目が行っちゃう。そして、真ん中に1本だけあるワイパーが、一定の速度で、右へ行ったり左へ行ったり右へ行ったり左へ行ったりしてるのを見てると、催眠術をかけられてるみたいに、だんだん眠たくなってきちゃったのだ。
‥‥そんなワケで、あたしは、雨そのものは嫌いじゃないのに、車の運転をする時だけは、物理的な理由から、今日みたいな「中途半端な小雨」には困ってる。降るならシッカリと降る、降らないならキチンと降らない‥‥って、どっちかにして欲しい。だけど、シッカリと降るにしても、台風みたいな「チョー土砂降り」になると、1本しかないワイパーだと高速にしても前がぜんぜん見えないから、ほどほどにしといて欲しい。つまり、小雨にしても大雨にしても、両極端は困るってワケで、すべての雨は旧型パンダのワイパーの性能に合わせて降って欲しいってことだ。
でも、そんなの、どう考えたってムリに決まってるから、あたしのほうが大自然に適応しなきゃなんないワケで、そのためには、いくつかの対策が考えられる。一番、現実的なのは、最近の車の無段階調節の間欠システムのリレーを手に入れて、パンダのワイパーのモーターに組むって方法だ。これなら、どこかの解体屋さんに行って、事故車から自分で外せば、タダでもらえると思う。でも、良く考えたら、リレーだけ手に入れても、手元のスイッチがないと操作できないから、ちょっとメンドクサイことになりそうだ。モーターごと丸々移植するって方法なら簡単そうだけど、そうすると、ワイパーの動く角度が100度とかになっちゃって、視界が狭くなっちゃう。
で、続いての対策は、カーショップやガソリンスタンドで売ってる「ワイパーを動かさなくても雨がつかないコーティング剤」的なものを使ってみるって作戦だ。ようするに、ガラスの表面に、フッ素とかシリコンとかの撥水性の高い皮膜を作って、車が走る時の風圧で雨粒を飛ばしちゃうってことなんだけど、前に、この処理をしてる車に乗せてもらったら、皮膜の効果があるのは高速走行時だけで、街乗りだと普通にワイパーを使わなきゃなんないって言ってた。だから、街乗りで困ってるあたしには無意味ってことになる。
他にも、「フロントガラスを外して、水着を着て水中メガネをかけて運転する」っていうアイデアから、「新車に買い換える」っていうアイデアまで、ピンからキリまであるけど、それこそ両極端なワケで、どれも非現実的だ。いつもなら、非現実的なことを書いて楽しんでるあたしだけど、「小雨の時のワイパー」に関しては、実際に困ってるワケだし、なるたけ現実的な対策を考えなきゃなんない。
そこで、あたしが思いついたのが、リアウインドウの曇り防止用の熱線だ。アレをフロントガラスにも入れて、ものすごい高熱を流したら、雨粒がフロントガラスについた瞬間にジュ!って蒸発するから、ワイパーがなくても困らない‥‥って、これじゃあ、「メガネすっきり曇りなし、料理すっかり食うものなし」でオナジミの月の家円鏡、改め、八代目橘屋円蔵師匠‥‥ってワケで、亀井静香と橘屋円蔵の区別がつかないあたしとしては、このアイデアも、当然、お蔵入りだ。
ま、実際には、「リトル困ってる」って程度なワケで、雨はタマにしか降らないし、今日みたいな「中途半端な小雨」はメッタにないから、ホントにお尻に火がつくほど困ってるワケじゃない。それに、以前は、もっとヒンパンに野口さんになってたけど、トルマリンていう鉱物の微粉末が錬り込んであるワイパーのゴムに替えたら、ずいぶん改善された。今日、3往復に1回くらい野口さんになったのも、このトルマリンのワイパーに替えたからで、以前なら、3往復が3往復とも野口さんだったワケだ。
‥‥そんなワケで、3往復が3往復とも野口さんだと、目の前があまりにも騒がしくて、野口さんて言うよりも、ハマジとブー太郎と山田がフロントガラスの上を走りまわってるみたいで、とてもじゃないけど落ち着いて運転なんかできなかった。でも、今は、コマメにワイパーのスイッチを切ったり、多少の野口さんをガマンしたりで済んでるんだから、遥かにマシになったと言える。だから、今のあたしの悩みは、言うなれば「ゼイタクな悩み」ってワケで、そんなに真剣には考えてない。ただ、今日の場合は、このワイパーが原因で「運転中に眠くなっちゃった」ってことが問題だったんだから、この点こそを解決する必要がある。つまり、あたしの場合は、「ちゃんと睡眠をとる」ってことが最善の解決策だったと思う今日この頃なのだ(笑)
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