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2009.12.16

夢に向かって

今年も、あと2週間ほどになり、毎年この時期恒例の「光陰矢のごとし」なんて言葉が頭をよぎりつつ、湯舟に浸かってボンヤリと1年間を振り返ってみると、今年は、ずいぶん規則正しい生活をしたような気がした。1月に手術を受けた母さんは、その時点では、どれくらいのリハビリ期間が必要だか分からなかった。手術は大成功だったし、術後の経過も良好だったし、お医者さまは「長くても半年くらいで日常生活ができるようになる」って言ってくれたので、あたしは、秋には一緒に温泉に行けるかな?って思った。だけど、そんなことよりも、まずは何よりも母さんのことが心配だったから、あたしは、お仕事を変えることにした。

それまでは、出掛ける時間も帰って来る時間も毎日バラバラだったし、深夜の帰宅も当たり前、場合によっては徹夜のお仕事もあった。それでも、泊まりのお仕事だけはなるべく請けないようにして、どんなに遅くなっても自宅に帰って来られるようにしてた。そうしないと、あたし自身が不安で仕方なかったからだ。だから、あたしは、母さんに何かあった場合に、すぐに駆けつけられる状況じゃなかったけど、それでも、「母さんの手術費用を作るために、少しでも多くお金を稼ぎたい」ってことと、「母さんに何かあった時のことを考えて、できる限り近くにいたい」っていう正反対のことを両立させるために、「東京近郊までのエリアでのお仕事のカケモチ」っていうヘビーな生活を続けて来た。

だけど、念願だった手術が成功して、退院後、みるみる元気になってく母さんを見てたら、あたしは、逆に、「今こそが一番大事な時だ」「今こそ母さんのそばにいなくちゃ」って思うようになった。それで、あたしは、決まった場所で決まった時間に働けるお仕事に変わることにして、それまでの単発のお仕事をフェードアウトさせつつ、この業界の大恩人に口利きしていただいたヘアメークの専門学校の臨時講師のお仕事に就くことにした。週に4~5日は専門学校の臨時講師をして、あとは、前からやってた某メーカーのメークアップレッスンの講師と、土日のブライダルのお仕事だけを続けた。専門学校は昼コースと夜コースの両方を受け持ったけど、プログラムは曜日によって交互に組まれてたし、何よりもお家まで30分くらいで帰れる場所だったから、あたしは、すごく精神的に落ち着くことができた今日この頃、皆さん、いかがお過ごしですか?


‥‥そんなワケで、あたしは、今年の春から秋までの半年間、ヘアメークの専門学校の臨時講師をやってた。ホントは「特別講師」っていうタテマエだったんだけど、それじゃあ偉そうだから、ここでは謙虚に「臨時講師」ってことにしてみたんだけど(笑)‥‥ってことで、ヘアメークの専門学校に入学して来る生徒は、ただ単にヘアメークの技術を身につけたいっていうライト感覚の人から、美容師になるために入学して来る人や、ヘアメークのプロを目指して本格的に学びたいって人までいろいろなので、専門学校のほうも、それに対応してる。化粧品メーカーが運営してるような大きな専門学校だと、こうしたカテゴリーも細分化されてて、美容師を目指してる人なら、その勉強だけを専門にやるようになってる。

美容師の免許は、車の免許とおんなじ「国家資格」だから、国家試験を受けて合格しないともらえないんだけど、車の免許みたいに、決まった年齢になれば誰でも受験できるんじゃなくて、ちゃんとした決まりがある。まずは、国に認定されてる専門学校や養成所に入学して、2年間の決まったコースを卒業しなくちゃなんない。ちなみに、これは、実際に専門学校に通った場合の話で、通信教育の場合は3年間だ。そして、無事に卒業できたら、やっと国家試験を受けられる資格を得られるんだけど、細かいことを言うと、「卒業見込み」の段階で受験することができる。これは、3月に専門学校を卒業する人たちが、4月から美容室に就職できるようにとのハカライってワケだ。

で、これから美容師を目指す子たちのために書いとくと、専門学校の美容師養成コースで教えてくれることは、美容師に必要な基礎知識から実技に至るまで全般的なことだ。だけど、これは、あくまでも「美容師免許に合格するための受験勉強」であって、卒業したら美容師になれるワケでもなければ、卒業して美容師免許に合格したって自動的に美容師になれるワケでもない。車の免許とおんなじで、教習所を卒業しただけなら車の運転はできないし、教習所を卒業して免許を取得して、ハンドルを握って一般道に出ても、右も左も分からない若葉マークの初心者ドライバーだ。

美容室でお客様の髪をカットする美容師は、言うなれば「プロのドライバー」ってワケで、タクシーやバスの運転手さんと一緒だ。自分の運転も危うい免許取り立ての初心者ドライバーが、お客様から料金をいただいてタクシーを運転することなんてできないだろう。そのため、タクシーの運転手さんになろうと思ったら、普通免許を取得してから3年間の経過が必要で、それで初めて「普通二種」の免許の試験を受ける資格ができる。そして、普通免許の時の何倍も難しい試験に合格できて、初めてタクシーの運転手になれるってワケだ。バスの場合なら、「大型二種」の免許が必要になるから、さらに難しくなる。

だけど、美容師の場合は、専門学校を卒業した時点で、国家試験に合格してれば手にできてる免許が、すでこの「二種免許」にあたる。だから、法律上は、美容室でお客様の髪をカットして料金をいただくことができる。だけど、自分がお客として美容室に行った時に、2~3日前に専門学校を卒業したばかりの美容師に、自分の髪をカットしてもらおうと思うだろうか? たとえば、料金がタダだとか、逆にお金をくれるとかなら、人によってはカットしてもらう人もいるかもしれないけど、自分のお金を5000円も1万円も払ってまでカットさせる人なんていないと思う。

ま、これは、お客サイドの問題だけど、美容師サイドの現実的な問題としても、経験のないペーパードライバーが、お客様の注文通りのヘアスタイルを作れる確率はゼロに等しい。そのため、いくら専門学校を卒業して美容師免許を取得してても、美容室に就職したら、最低でも3年は「見習い」として働くことになる。ま、美容室の場合は「アシスタント」って言うけど、ようするに「シャンプー係」だ。だけど、これはこれでとっても重要なお仕事で、シャンプーの技術や髪質のついて学べるだけじゃなくて、基本中の基本である「接客」ってものを学ぶための大切な期間だ。

‥‥そんなワケで、美容室に就職したら、3年から5年程度のアシスタントの期間が終わって、ようやく、お客様の髪をカットさせてもらえるようになるんだけど、これにしたって、その美容室に来るお客様は、ほとんど「自分の美容師」が決まってる。だから、代わりにカットさせてもらうことなんてできないし、初めてのお客様ならナオサラだ。初めて来店したお客様は、できる限りナンバーワンの美容師が担当して、リピーターになってもらうように持ってくのが一般的だからだ。で、どうするのかって言うと、アシスタントの間に、どんな心構えでシャンプーしてたのかってことが、ここで問われて来る。

「たかがシャンプー、されどシャンプー」ってワケで、心からお客様のことを思ってシャンプーしてれば、その人の人柄は自然と伝わるワケで、いよいよ美容師としてデビューするって時には、お客様のほうから「私がカットしてもらおうかしら?」なんて言って来てくれる。そして、そんなこんなもありつつ、5年、10年と現場で腕を磨いてって、ひとり立ちできるようになったら、のれん分けさせてもらうなり、独立するなり、その先へと進んでくってワケだ。

だけど、これは、あくまでも「理想の形」であって、普通は、最初から自分の憧れの美容室に就職できる可能性はほとんどない。強力な人脈を持ってたりすれば別だけど、表参道や青山にあるような人気のヘアサロンなんか雲の上の話だし、あたしの地元のニコタマの美容室だって、なかなか就職できない。何しろ、採用人数が少ないからだ。それに、美容室のスタッフのキャパは決まってるから、上がつかえてたら新人を採用するワクは生まれない。誰かが独立して出てかない限り、新人を雇うキャパは生まれないのだ。だから、自分の家が美容室で、そこを継ぐとかって話なら別だけど、何の人脈もないのに、専門学校を卒業して免許をとったから美容師になれるなんて短絡的に考えるのは、激しく甘い。

大学生の就職活動でも、今は、50社や100社断られるのはブレックファースト前で、自分の希望してる会社に就職できる人なんて100人に1人もいない。それどころか、大学を卒業したのに就職が決まらず、フリーターや派遣社員で何とか生活してる人もたくさんいる。美容師の世界だって、これとおんなじで、免許さえとれば誰でも美容師になれるなんて考えるのは甘すぎる。免許をとるのは簡単だけど、美容師になるための就職が難しいのだ。たとえば、美容室と名がつけばどこでもいい。モードとは無関係な田舎のおばちゃんパーマ専門店でも構わない‥‥って人はともかくとして、自分の尊敬してるヘアスタイリストやディレクターのいるサロンに就職して、憧れの人の技術を身につけたい‥‥って思っても、何のコネもなければ、それこそ超一流企業の内定をもらうことよりも難しい。

実際、あたしの専門学校の同期でも、美容師養成コースに通ってた人たちのうち、今も美容師として働いてるのは、10人のうち2人くらいだ。残りの8人は、美容師免許を持ってる主婦だったり、美容師免許を持ってるアパレル系のバイヤーだったり、美容師免許を持ってる居酒屋の店長だったりしてる。つまり、2年間もかけてとった美容師免許が、結局は、何の役にも立ってないワケだ。だけど、みんな、専門学校に通ってた時には、美容師養成コースを選んでたんだから、全員が美容師になることを夢見てたワケだ。今から15年以上も前でも、こんなアリサマだったんだから、コイズミと竹中平蔵が世の中をメチャクチャにしちゃった今は、もっとヒドイだろう。

でも、あたしの場合は、美容師じゃなくて舞台メークを目指してたから、少しは就職が有利だった。あたしは、ヘアメーク養成コースに1年、それのプロコースに1年通ったんだけど、この中に美容師免許をとるのに必要な授業や実技が組み込まれてたから、「せっかくだから」って感じで、卒業を前にして受験してみたワケだ。美容師になるためには美容師免許が必要だけど、ヘアメークには免許なんてないから、あたしの場合は、別に美容師免許をとる必要はなかった。だけど、せっかく試験を受けられる資格を得たんだし、何かの時に絶対に役に立つって思ったから、取得しといたワケだ。

で、あたしは、自分で言うのもアレだけど、在学中にヘアメークの大きな賞を受賞してたことが功を奏して、卒業する前から、あたしの憧れのヘアメークが所属してる事務所に就職することが内定してた。そして、すぐに、そのヘアメークのサードアシスタントとして、あちこちのテレビ局とか撮影スタジオとかロケとかに同行させてもらえるようになって、3年間、タップリと勉強させていただいた。それで、独立したワケだから、さっきまで知ったようなことを書いてたけど、実際、あたしは、美容室でアシスタントをした経験はない。それなのに、今は、美容師免許を持ってるってことで、タマに美容室でバイトみたいなこともしてる。もちろん、これは、見ず知らずの美容室じゃなくて、あたしの知り合いがやってる美容室とかの話だけど、あたしの場合、美容師としての基礎ができてないから、定期的に美容室でバイトして、新しい流行や技術を仕入れとかないと、本職のほうで困っちゃうのだ。

‥‥そんなワケで、あたしは、今年の春から秋までの半年間、某ヘアメークの専門学校の臨時講師として、実技指導を担当させせていただいた。これは、美容師免許とは関係ないヘアメークのプロコースで、半年で1つの過程が終了する短期コースだ。受講できるのは、基礎コースを終えた学生だけなので、イチから教える必要がないぶん、初体験のあたし的にはラクチンだった。「教室」っていうシチュエーションも懐かしくて、自分が学生だった時のことを思い出した。そして、何よりも嬉しかったのが、自分の夢に向かってがんばってる若い子たちに、その夢を叶えるためのお手伝いができたことだ。ずいぶん前から、無気力な若者が増えてるとかって言われてるけど、少なくとも、あたしの講座に来てくれてた子たちは、みんな目がキラキラしてて、自分の夢に向かって一生懸命で、どの子もみんな輝いてた。そう、あのころのあたしのように‥‥って感じで、最後はちょっとカッコ良く締めてみた今日この頃なのだ(笑)


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