アメリカの本意とマスコミの作意
今日、30日、日比谷の野音で、普天間飛行場の辺野古への移設計画に反対する集会が開催されて、沖縄から上京した100人以上の市民を始め、6000人を超える人たちが参加した。オムライス党のみずほたんは、「辺野古に基地を造ることは不可能だ。社民党が許さない。沖縄にこれ以上の負担は課さない。5月末に結論が出るまで渾身の力をこめて絶対に勝つ」って決意を語った。あたしは、お仕事で行けなかったけど、たくさんの人たちが参加して、すごく盛り上がったそうだ。
でも、これは、とってもおかしな話だ。だって、去年の衆院選で、「最低でも県外移設、できれば国外移設」っていう「公約」を連呼したハトポッポを支持して、沖縄の人たちは、4区すべてで民主党を始めとした野党の候補者を当選させたからだ。そして、政権交代が実現したんだから、あとは新政権に任しとけば、普天間基地の問題は、沖縄の人たちの「民意」の通リに解決するハズだった。それなのに、どうして、未だに市民が集会をしなきゃなんないんだろう? いくら市民が「基地反対」を叫んでも、沖縄の基地はいっこうになくならない。だから、沖縄の人たちは、「辺野古への移設反対」と「基地縮小」を「公約」に掲げた政党を支持したのに‥‥。
そして、念願の政権交代が実現して、もう4ヶ月も経つってのに、沖縄の人たちは、少しもホッとできない。それどころか、外務大臣のフランケン岡田の「完全にアメリカ側に立った発言」とか、官房長官のヌラリヒョン平野の「無神経なオトボケ発言」とか、防衛大臣のコシヌケ北沢の「周りに流されまくりの発言」とか、そして、何よりも、総理大臣のハトポッポの「煮えきらない優柔不断な発言」の数々によって、沖縄の人たちは、もうクタクタのヘトヘトだ。それぞれの閣僚が自分勝手な発言をするたびに、沖縄の人たちは一喜一憂して、ちっとも心が休まることがない。
ハトポッポは、去年の所信表明演説でも、昨日の施政方針演説でも、「国民」だの「命」だのって言葉を連呼して、ずいぶんご立派なことをノタマッてたけど、ホントに「国民」だの「命」だのを大切に思ってるなら、何よりも先に言うべきなのが、沖縄の人たちに対する「私が総理大臣に選ばれたからには、絶対に辺野古に基地は造らせない!」っていうヒトコトだと思う今日この頃、皆さん、いかがお過ごしですか?
‥‥そんなワケで、この「普天間飛行場の移設問題」に関しては、沖縄の人たちを始め、去年の衆院選で野党に投票した多くの有権者が、政権交代後のハトポッポ内閣のだらしない態度に、もうガマンの限界を迎えてる。その上、カンジンの国会では、こうした国民の重要な問題はホッタラカシで、連日、どうでもいい小沢一郎の土地の問題なんかで貴重な時間を浪費してる。国民のほとんどは、「そんなことは検察に任せといて、国会議員は山積してる問題を議論しろ!」って怒ってるのに‥‥。
でも、ハトポッポ内閣の肩を持つワケじゃないけど、「普天間飛行場の移設問題」で、これほど国民を不安にさせてるのは、何も、フランケン岡田やヌラリヒョン平野たちの無責任発言だけに原因があるワケじゃない。何よりの原因は、マスコミによる偏向報道や捏造報道だ。アメリカ側はぜんぜん怒ってないのに、やれ「アメリカが激怒した」だの、やれ「日米同盟の危機」だのって、次から次へと大ウソのデマ報道を垂れ流すニポンのマスコミって、いったい誰からいくらもらってんだろう? たとえば、ニポンのマスコミは、今日もこんな記事を垂れ流した。
「「海兵隊の日本駐留は必要」ルース米大使が強調」(朝日新聞)
ルース駐日米大使は29日、東京都内の早稲田大学で講演し、沖縄に駐留する米海兵隊について、「全面的に日本から撤退すれば、機動性が損なわれる」と駐留継続の必要性を訴え、海兵隊の全面的なグアム移転を求める動きを牽制(けんせい)した。ルース氏は中国の軍拡路線や北朝鮮の核・ミサイル開発を挙げ、「日本の安全保障環境は(1989年の)ベルリンの壁の崩壊時と変わらず、複雑だ」と指摘。在日米軍は地域の安定と抑止を達成するために必要な規模と訴えた。米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)移設などの米軍再編については、日米両国が10年以上にわたって議論した結果、現行計画に至っていることを強調。「思いやり予算」と呼ばれる駐留経費の日本側負担を見直す動きに警戒感を示した。(2010年1月30日)
http://www.asahi.com/international/update/0130/TKY201001290515.html?ref=goo
これは「朝日新聞」の記事だけど、配給元がおんなじみたいで、他の新聞の記事も、ほとんどおんなじ内容だ。だから、他の新聞を読んでる人も、みんな、ルース大使がこうした発言をしたと思うだろう。つまり、アメリカを代表してニポンに来てるルース大使が、「海兵隊の全面的なグアム移転を求める動きを牽制した」って思うだろうし、「思いやり予算を見直す動きに警戒感を示した」って思うだろう。だけど、これらの記述は、ぜんぶニポンのマスコミの創作で、ルース大使は、実際には、こんなことは言ってないのだ。
「Peace Philosophy Centre」の聡子さんが、29日のエントリーで、ルース大使のスピーチの原文(英文)を引いて、ニポンのマスコミの報道の異常さにツッコミを入れてくれてる。ちょっとだけ引用させていただくと、「朝日新聞」には「全面的に日本から撤退すれば、機動性が損なわれる」と駐留継続の必要性を訴え、海兵隊の全面的なグアム移転を求める動きを牽制した。」って書かれてるけど、原文では「沖縄から海兵隊がいなくなったら次に近い戦闘部隊はハワイの陸軍になるので有事の際には距離的に遠くなるので対応が遅くなってしまう」って言ってるだけなのだ。
ようするに、ルース大使は、沖縄の海兵隊をすべてグアムへ移転させた場合の結果を事務的に話してるだけで、「だから沖縄には海兵隊が必要だ」とか、「だからグアムへの移転は良くない」とかってことには、まったく言及してない。どっちかって言うと、「有事の際には距離のぶんだけ対応が遅れてしまうが、それでもニポン側がグアムへの移転を望むのなら、それはそれで構わない」ってニュアンスだ。つまり、「牽制した」って部分は、ニポンのマスコミの創作ってことになる。
そして、「思いやり予算」に関しての記述も、聡子さんが「全く誤訳である」って断言してるように、ルース大使のスピーチの原文では、「この予算をどのように使っているのか疑問を持つ人が多いのは理解できる。だから2008年に受け入れ国負担の総合的な見直し作業をすることに合意した。日本の納税者が効率的な予算の使い方から受益できるようにする。」ってなってる。原文では「(2008年に)見直し作業をすることに合意した」って言ってるのに、いったいどんなふうにネジ曲げて訳せば、「見直す動きに警戒感を示した」ってことになっちゃうんだろう?
さらに言わせてもらえば、スピーチの原文を読めば分かるように、ルース大使は、「沖縄の基地問題」についての講演をしてるんじゃなくて、「日米同盟」についての講演をしてるワケで、沖縄の基地問題について話してるのは、全体の1割にも満たない。9割以上は、これまでの「日米同盟」の成り立ちや歴史から、北朝鮮の問題や核の抑止力についてなど、沖縄の基地問題とは関係のないことを話してる。それなのに、この長いスピーチの中から、全体の流れの中でチョコっとだけ出て来た沖縄の基地問題に関する部分だけを拾い上げて、それを大幅に脚色したり、意味を正反対に訳したりして記事にするなんて、ニポンのマスコミって完全に異常だと思う。
‥‥そんなワケで、ルース大使が早稲田大学で講演した29日には、防衛大臣のコシヌケ北沢も、防衛相で、グレグソン米国防次官補と会談した。で、こっちのほうも、マスコミの報道を紹介する。
「名護市移設、地元情勢は困難=「普天間」で米次官補と会談-北沢防衛相」(時事通信)
北沢俊美防衛相は29日、グレグソン米国防次官補(アジア・太平洋担当)と防衛省で会談し、沖縄県名護市長選で米軍普天間飛行場(同県宜野湾市)の移設受け入れ反対派が勝利したことに関し、「われわれとすれば、沖縄の人たちの気持ちはしっかり受け止めないといけない」と述べ、現行計画の実現が困難になりつつある地元情勢を説明した。グレグソン氏は「市民の決断を重く受け止めるのは当然のことだ」と応じた。市長選後、日米両政府の高官が普天間移設問題をめぐって会談したのは初めて。北沢氏は、今後の日本政府の対応について「平野博文官房長官の下で(政府・与党の)検討委員会をやっている。そこで案が出てくれば、それを検証して米側と擦り合わせるのは、防衛省の仕事だ」と説明した。(2010年1月29日)
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20100129-00000312-jij-pol
マスコミの報道を信用してないあたしが、こうした記事だけを信用するのは都合がいいと思うけど、少なくとも、この問題に関するこれまでのマスコミの報道が、どれも偏向的に報じられて来た経緯から判断すれば、「事実より悪くは報じても、決して良くは報じない」ってことだけはハッキリしてる。だから、そんなマスコミが、こんなふうに報じたんだから、グレグソン次官補が「市民の決断を重く受け止めるのは当然のことだ」って言って、沖縄の民意に理解を示したことには間違いないだろう‥‥ってことになる。そして、さっきのルース大使のスピーチのほうも、原文を読むと、こんな一節が出て来る。
「The U.S. is mindful, however, of Okinawa's historic experience, and recognizes the need to balance the concerns of the people of Okinawa against the island's strategic importance.」
「アメリカは、沖縄の歴史や状況に十分に配慮した上で、基地の戦略的な重要性と、沖縄の人たちが基地に対して抱えている不安という相反するもののバランスをとっていく必要があります」
これは、2006年の米軍再編成の日米合意案に対するマクラとして発言してるんだけど、こうした言葉を聞いても、沖縄の基地問題に対するアメリカ側のスタンスが、「沖縄の人たちの負担を減らす」ってことを根幹にしてることが分かると思う。つまり、ルース大使は、「沖縄の基地は、戦略的には重要だけど、それとおんなじくらいに、沖縄の人たちの気持ちも重要だ」って言ってるワケだ。それなのに、ニポンのマスコミは、こうした部分はいっさい報じない。
ルース大使のスピーチの全文を読んでみると、確かに、北朝鮮を危険視してみたり、中国が軍事力を増強してることを懸念してみたり、核兵器による抑止力を力説してみたりって、いつものアメリカンテイストが散りばめられてるけど、こと、沖縄の基地問題に関しては、本心なのか外交的な作戦なのかは分からないけど、ものすごく言葉や表現を選んで、沖縄の人たちに配慮した言い方をしてる。決して、ニポンのマスコミが報じてるような言い方なんてしてないし、どっちかって言うと、「沖縄の問題の決定権はニポン政府にあるのだから、われわれアメリカはその決定に従うだけだ」って本意がベースになってて、その上で、「アメリカとしては、また最初からいろいろと決めるのは、手間と時間が掛かって大変だから、できれば現行案のままでやってくれるとアリガタイザーなんだけど」的なニュアンスで話してる。
‥‥そんなワケで、ぜんぶで14500文字もあるルース大使のスピーチの原稿の中から、わずか3%にしかあたらない500文字だけを抜き出した上に、それを偏向的に加筆したり、挙句の果てには正反対の意味に「故意に誤訳」して報じるなんて、ニポンのマスコミのデタラメぶりにも呆れ返っちゃうけど、それもこれも、いつまでも態度をハッキリさせないハトポッポ内閣の不甲斐なさが原因だろう。マスコミがどんなにデタラメな報道を繰り返したって、閣僚それぞれが好き勝手なことを言い散らかしたって、トップのハトポッポが「辺野古には基地は造らないし、もちろん県内移設も絶対にありません!」ってビシッと言ってくれれば、沖縄の人たちを始め、平和を愛する国民すべてが安心できて、日比谷の野音に集まらなくてもよくなるのに‥‥って思った今日この頃なのだ。
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