自分の味覚で自分のレシピ
いつものスーパーに寄ったら、もやしが10円になってたので、いとうあさこと年齢が近いあたしは、イライラしちゃった。だって、こんなに安くなってるなら、5袋とか10袋とかマトメて買っときたいのに、もやしは日持ちしないから、ひとり暮らしのあたし的には、2袋が精一杯だからだ。いっぱい買いたいほど安くなってるのに、保存できないから、いっぱい買うとムダになっちゃう。これは、灼熱の砂漠の真ん中をさまよってる時に、1本1円で在庫処分セールをやってるアイスキャンディー売りのおじさんと遭遇したくらいイライラしちゃう。今後のことを考えたら、ありったけのアイスキャンディーを買っときたいのに、買ったそばから融けはじめちゃう状況だから、どんなに急いで食べても、2本が限界だ。何十本も買っても、食べる前にどんどん融けちゃって、足元の灼けた砂へと染み込んでっちゃう。
世の中には、「安くなってると買わなきゃ損」て感覚の人が多いけど、あたしの場合は、どんなに安くなってたとしても、ムダなものを買うことこそ損だと思ってる。だから、食べ物に関して言えば、保存できないものは、決して大量には買わない。えのきやしめじなら、安くなってる時にマトメて買って来ても、石つきの部分を包丁で落として、バラバラにして、ビニール袋に入れて冷凍しとけば、いつでも使いたいぶんだけ使うことができる。インゲンとかなら、サッと湯通ししてから、小分けして冷凍しとけば、おんなじように使える。でも、もやしの場合は、冷凍することができない。出来ないワケじゃないけど、一度冷凍しちゃうと、もやしの命とも言える「シャキシャキ感」がなくなっちゃうから、ぜんぜん美味しくなくなっちゃう。
もやしの場合、袋のまま冷蔵庫に入れとくと、美味しく食べられるのは3日がいいとこだし、袋から出してお水に浸けて冷蔵庫に入れといて、毎日、新しいお水に替えたり、いちいちヒゲ根を切ったりすれば、まあ5~6日はなんとか持つ。だけど、100円も200円もするお野菜ならともかく、高い時でも30~40円で買えるもやしに対して、そこまで手間をかけるくらいなら、安いからってマトメて買わないで、必要な時に通常の値段で買ったほうがいいと思う今日この頃、皆さん、いかがお過ごしですか?
‥‥そんなワケで、あたしは、10円のもやしを2袋買って来たワケで、1袋は冷蔵庫に入れて、1袋はすぐに湯通しした。お鍋に半分くらいお湯を沸かして、沸騰したら火を止めて、そこにもやしを1袋、ドバッと入れて、フタをして、1分30秒したらザルにあける。これでOKだ。タマに、火にかけたままのお鍋で、もやしをグツグツと煮る人がいるけど、阿藤快じゃなくても「なんだかなぁ~」って感じで、あたしには信じられない。まあ、中には、「シャキシャキ感」よりも「脱力感」のほうが好きな人もいるのかもしれないけど、あたしにとっては、「シャキシャキ感」のないもやしなんて、マニフェストを守らない民主党みたいなもんで、これじゃあ自民党と何も変わらない。
もやしの湯通しってものは、カップ麺の作り方とおんなじだ。カップ麺て、パッケージには、お湯を入れて3分とか、4分とか、それぞれ時間が書いてあるけど、その通りに作る人もいれば、時間よりも早めに食べ始める人もいる。あたしは、硬めの麺が好きだから、一般的なカップ麺は2分から2分半で食べるし、カップ焼きそばの場合は、1分半だ。で、もやしもおんなじで、一般的な「シャキシャキ感」なら、沸騰したお湯に入れて、フタをして、3分してからザルにあける。でも、より「シャキシャキ感」を追求してるあたしの場合は、1分半だ。
そして、この湯通しだけしとけば、あとは、どんなお料理にも簡単に使える。あたしは、和え物が好きなので、1袋の半分くらいのもやしに対して、お醤油を大さじ1、ゴマ油とラー油を小さじ1くらいの割合でチャチャッと混ぜて、仕上げに白ゴマをふりかけて、「もやしのピリ辛和え」にしちゃうことが多い。もちろん、これはベースだから、他の材料があれば、ニンジンを千切りして湯通ししたものや、油揚げを千切りにして湯通ししたものや、チクワを薄い輪切りにしたものなど、あり合わせのものを一緒に和えれば、味だけじゃなくて見た目にも美味しくなる。まだ、もやしに余熱がある出来立ても美味しいし、冷蔵庫でちょっと寝かせても味かまとまって美味しい。
それから、三杯酢や二杯酢も簡単にできる。乾燥ワカメをお湯で戻して、キュウリを輪切りにして、湯通ししたもやしと和えるだけだ。これだけでも十分に美味しいし、タコがあれば、文句なしの一品になる。冷凍のシーフードミックスがあれば、その中のイカを薄切りにして和えてもいいし、エビを乗せれば豪華絢爛だ。ちなみに、二杯酢は、お醤油とお酢を1対1の同量で合わせたもので、三杯酢は、お醤油とお酢とみりんを1対1対1の同量で合わせたものだけど、この方式の三杯酢は、みりんをお鍋で煮きらなくちゃなんない。「煮きる」ってのは、ひと煮立ちさせてアルコールを飛ばすってことだ。
だから、普通は、メンドクサイので、みりんの代わりにお砂糖を使う。つまり、みりんの甘さをお砂糖で代用するワケだから、みりんよりも量を少なくする。お醤油とお酢とみりんなら、1対1対1だけど、お醤油とお酢とお砂糖の場合は、1対1対0.3~0.5って感じだ。なんか、数学みたいになってきちゃったけど、お醤油とお酢を大さじ1杯ずつ容器に入れたら、普通の味がいい人は、お砂糖を大さじ3分の1くらい、甘めが好きな人は大さじ半分くらい加えて、あとは混ぜるだけだ。それから、使ってるお醤油の種類にもよるけど、舐めてみて味に物足りなさを感じた時には、ほんの少しだけお塩を足すといい。そうすると、味がビシッと立つ。
そして、三杯酢や二杯酢が出来たら、これにカツオのダシをプラスすると、土佐酢になる。わざわざ高価なカツオブシでダシをとらなくても、粉末や顆粒の「ダシの素」を少量のお湯で溶かして、あとから足せばいいだけだ‥‥ってワケで、あとは、この三杯酢と二杯酢と土佐酢をそれぞれの素材に合わせて使い分けるだけなんだけど、ここに大きなポイントがある。それは、この三杯酢と二杯酢と土佐酢ってのは、そんなに明確に分かれてるものじゃないってことだ。
三杯酢と二杯酢との違いは、みりんやお砂糖で甘みをつけてるかどうかなんだけど、三杯酢でも、どんな材料を和えるかによって、甘みを変える。ワカメとキュウリの場合は、お醤油とお酢とお砂糖を1対1対0.5くらいの甘めでもいいんだけど、ここに、もやしをプラスする場合は、1対1対0.3の平均的な甘さのほうが美味しい。そして、これに、タコやイカなんかの魚介類をプラスする場合には、1対1対0.1~0.2くらいに甘みを抑えたほうが美味しい。ま、タコやイカを使う時には、三杯酢よりも二杯酢にすることのほうが多いくらいだから、「魚介類を使う時には甘みは抑える」ってのは基本なんだけど、これも人それぞれの好みだから、自分の好きな味にすればいい。
あたしの場合は、あんまり甘いのは好きじゃないから、もやしだけの酢の物でも、お醤油とお酢とお砂糖を1対1対0.1~0.2くらいで作る時も多いんだけど、普通の味覚の人にしてみれば、これは、「限りなく二杯酢に近い三杯酢」ってワケで、こうなって来ると、甘みを抑えた三杯酢なのか、少し甘めにした二杯酢なのか、分からなくなって来る。三杯酢でも二杯酢でもなく、言うなれば「2.5杯酢」だ。
そして、カツオダシを加えた土佐酢になると、よくあるのは「もずく酢」だけど、あたしの場合は、ヤマイモやナガイモを食べる時に使ってる。ヤマイモやナガイモは、短冊に切ってワサビ醤油で食べるのが一番好きなんだけど、たいていは1回で食べきれないほどの量をいただいたりするから、とろろそばにしてみたり、摩り下ろしてフライパンで焼いたり、いろいろと楽しむ一環として、短冊に切って土佐酢でいただく。
この場合は、お砂糖を入れない二杯酢に、カツオダシを少なめに足した「濃いめの土佐酢」を作って、短冊に切ったヤマイモにかけて、上から焼き海苔を散らす。これだけでも美味しいけど、ここに、ナナメに切ったオクラを入れて、「ヤマイモとオクラの土佐酢サラダ」にしても美味しいし、ヤマイモを少し細かく切って、オクラも輪切りにして、さらに納豆を混ぜて、土佐酢で和えてからご飯にかけるとサイコーだ。
‥‥そんなワケで、居酒屋さんのお通しで出て来た小鉢の酢の物をひとくち食べただけで、ゲホゲホとむせちゃうほどお酢がきつかったり、お友達のお家で出された酢の物を食べたら、甘すぎて気持ち悪くなっちゃったりって、酢の物の味って、各家庭によって、お店によって、ホントに様々だ。だから、あたしは、酢の物こそ、自分の味覚に合わせて、自分で作るべきだと思ってる。そして、どこかの誰かの味覚に合わせて書かれてるレシピなんか参考にしないで、自分の味覚で自分のレシピを作るべきだと思ってる。三杯酢と二杯酢と土佐酢にしても、これらを明確に区別して使うんじゃなくて、その時の食材や食べ方によって、「限りなく二杯酢に近い三杯酢」だったり、「ほんのちょっとだけカツオダシを加えた土佐酢」だったりしても、自分が美味しいと感じたら、それが何よりのレシピになる。さらには、三杯酢のお砂糖の量を増やせば「甘酢」になるし、これに片栗粉でトロミをつければ中華の「甘酢餡」になるし、タカノツメを入れれば「南蛮漬け」のタレになる。これらも、人それぞれの味覚があるんだから、自分で作るのが何よりだと思う今日この頃なのだ。
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