未来の子供たちのために
オトトイの日記、「放射能を撒き散らす友愛政治」の中で、あたしは、パンダのマークでオナジミの「WWF(世界自然保護基金)」が2000年に発表した報告書から、原発を推進してもCO2削減には何の意味もないってことを書いた。原発の利権に絡んでる人たちは、まるで原発に換えればCO2の排出がピタリと止まるかのような大ウソを垂れ流し続けてるけど、原発は、水力発電や風力発電よりも多量のCO2を排出するし、CO2排出量の少ないバイオガス火力発電と比べると、ナナナナナント! 7倍ものCO2を排出する。
それから、オトトイの日記には書かなかったけど、天然ガス火力発電てのがある。たとえば、あたしが知ってる場所だと、千葉県の海に近い農業地域とかで、湿地みたいとことか水路みたいなとこからゴボゴボと泡が出てる。これが天然ガスなんだけど、石油や石炭の代わりに、これを使って発電するのが天然ガス火力発電てワケで、石油や石炭と違って、ニポンでも自給できる。だけど、この天然ガス火力発電は、多量のCO2を排出するため、政府はまったく取り組もうとはしてない。だから、ニポンの地下に大量にある天然ガスは、千葉県のように、みんなゴボゴボと大気中へ垂れ流され続けてる。ああ、もったいない。
で、政府が見向きもしない、この天然ガス火力発電が、いったいどれくらいの量のCO2を排出するのかって言うと、バイオガス火力発電の7倍、そう、原発とおんなじ量なのだ。天然ガス火力発電も、原発も、1キロワットの電力を作るためには、約35グラムのCO2を排出する。つまり、地球温暖化の意味で見れば、どっちもおんなじなのだ。それなのに、政府も、電力会社も、経済産業省も、天然ガス火力発電は「多量のCO2を排出するからダメだ」って言ってるのに、原発は「CO2を排出しないから推進する」って言ってるのだ。こんなデタラメはないだろう。CO2の排出量がおんなじなんだから、原発推進の裏にヨホド薄汚い利権の構図がない限り、普通に考えたら、ニポンの地下にたくさん眠ってて、そこらの地面からゴボゴボと噴き出してる天然ガスのほうを有効利用するハズだと思う今日この頃、皆さん、いかがお過ごしですか?
‥‥そんなワケで、オトトイの日記を読んだ人たちから、「原発はCO2の排出量がゼロだと思ってた」とか、「原発に換えればCO2の排出量は一気に減少するものだと思ってた」とかってメールが何通も届いてるんだけど、これは、これまでの政府や電力会社の大ウソの広報に騙されてた人たちだ。そして、たくさんの人たちから、「きっこさんが紹介したWWFの報告書の内容をもっと詳しく知りたい」ってメールもいただいた。それで、今日は、「要約」をご紹介するので、最後までちゃんと読んで欲しい。ちょっと長いけど、これを読めば、ハトポッポの「原子力はCO2削減に関しては優等生だ。推進すべきだ」ってセリフが、完全に「無知」か「詭弁」かのどちらかだってことが分かると思う。
2000年4月6日
WWF原子力ペーパー
「気候変動と原子力」(要約)
今世紀末までに、原子力エネルギーは地球規模で拡大するであろうという見通しは、今やまったく裏切られている。 1999年末現在、32ヵ国で436基の原発が運転されているが、 これは1974年のIAEA(国際原子力機構)予測の8%にすぎない。また世界の原子力発電の70%がアメリカ、フランス、日本、ドイツ、ロシアの5ヵ国に集中していて、地球規模からは程遠い。プルトニウムを燃料とする高速増殖炉も、フランスのスーパーフェニックス級のものが全世界で540基運転されると予測されていたが、 現在世界を見渡しても、一基も商業運転されているものはない。一次エネルギーに占める原子力の割合は、 1998年で7%にすぎず、石油(40%)、石炭(26%)、天然ガス(24%)にはるかに及ばない。転換効率の点でも、コージェネレーション(廃熱利用)が70-90%に対し、原子力はせいぜい30%である。
原子力の将来は暗い。2000年現在、欧米では計画・建設中の原発は一基もない。アジアでは日本、韓国、中国、台湾で17基あるが、経済不況の影響で、完成の見込みのないものも多い。 欧米だけ見れば、稼働中の原発の数は1989年の294基を頂点に下降しており、世界規模で見ても、1999年初めて前年度よりも減少した。この流れを変えるために、 原子力産業は「気候変動問題」に賭けている。「CO2を排出しない原発」を気候変動対策の中心に置き、原子力産業の復活を狙っているが、その見込みはどう見てもない。以下はこの報告書が明らかにしている点である。
1)原発も温室効果ガスを排出する。原発のライフサイクル分析をみると、原子力発電も間接的に温室効果ガスの排出をもたらす。これはウラン濃縮技術の膨大なエネルギー消費によるもので、原子力産業もそれは認めている。電力と熱供給を合わせて考えると、その排出量は、天然ガス火力発電とそう変わらない。バイオガス火力発電に比べると、7倍ほど多い。
2)原子力への依存度が高い国ほど、需要側の効率性改善努力をしない。原発が費用効果的なのはベースロード電力を供給し続けているときである。それゆえ、原発大国は、例えば夜間のように電力需要の少ない状態を平準化しようとして、電気室内暖房など(日本は揚水発電、夜間電力利用温水器、氷畜熱)に、様々な財政的支援を行ない、ますます非効率性の強化に力を入れている。
3)原子力への依存度が高い国ほど、コージェネレーションの導入率は低い。
4)省エネルギーに投資する方が、 CO2排出抑制の面で、原発に投資するよりもコスト効果的である。アメリカでは、発電効率を改善する投資は原発投資の7分の1、フランスでも半分ですむ。世界的に見ても、エネルギー効率を高めるための投資は、原子力への投資に比べて4倍も早く回収できる。
5)長期的に見て、多くのOECD諸国では電力節減の技術的な潜在力があり、アメリカでは消費電力の70%もが節電できるとされている。これには、家庭、工業・商業部門での省エネルギー技術や再生可能な電力、コージェネレーションなどの導入が含まれる。こうした潜在力を切り開くには、原子力からの撤退が必要である。
6)脱原発政策をとっても、温室効果ガス排出量は増えない。ドイツとフランスのように、原発による発電容量を膨大に抱える国の状況を見ると、両国とも設備過剰になっている。ドイツでは、ピーク時需要と全発電設備容量との差が原発の設備容量を上回っているので、計算上は原発がなくなっても問題はないことを示している。フランスの場合は、半分ほどの古い原発35基を即時閉鎖しても、問題はない。さらに再生可能エネルギーの設備容量増大を見込むと、短期的に見ても、脱原発による温室効果ガス排出増大は見込めない。
7)世界銀行でさえ、原発には投資をしない。世界銀行によれば、原子力発電はたとえ運転費用が安くても資本費が高いため、石油・石炭の価格に関係なく、最小コストのエネルギーにはならない。さらに、「原子力発電を取りまく諸々の問題は、経済的費用のみにとどまらない。原子炉の安全性や核廃棄物の処理、核分裂性物質の拡散など複雑な要素が絡むため、炭素のコストのみに問題を絞り込むことはできず、温暖化対策とはならない。」
8)電力の構造改革により、電力供給は小規模分散型へ。電力の自由化の波で、すでにばからしいほど安い価格で売りに出されている原発もある。電力供給はますます小規模分散型になり、維持管理費の高い原発は敬遠される傾向にある。原子力に力を入れてきた大企業も、原子力部門を縮小しつつある。
9)原子力大国は、CO2大量排出国でもある。欧米だけで、世界の原子力の3分の2を占めているが、エネルギー関連CO2排出の点でも世界の40%に相当する。各国別に見ても、アメリカだけでCO2排出の4分の1を占め、世界の原子力発電の30%を発電している。EUはCO2排出は世界の15%、原子力は34%を占める。
「結論」
原子力は50年の歴史を持つが、温暖化の問題は解決されていない。
原子力発電を行なうことと、その国のCO2排出量を減らすこととは関係ない。
原子力は依然として制御するのが難しく、危険であり、全体として環境への脅威である。
放射性廃棄物処理問題は50年たっても解決されていない。
以上のように原子力発電は、どの点から見ても、「持続可能性」の条件に合わず、京都議定書のどの「柔軟性措置」によっても、温室効果ガス削減のクレジットを獲得できる資格を与えられるべきではない。
効果的な温室効果ガス削減の戦略は、堅実で持続可能な技術的支柱を基礎としてたてられるべきである。そしてその柱は、雇用を創出し、世界のどの地域でも公平に、簡単で費用効率の良い方法で実施できる、クリーンな技術のための新しい市場を生み出すものでなければならない。これを実現することができるのは、自動車から暖房にいたるあらゆるエネルギー消費部門でエネルギー効率を改善し、熱電供給のコージェネレーションを増やし、太陽光、風力、バイオマスなどの持続可能でクリーンな自然エネルギーの開発・普及を促進し、石炭、石油、原子力から天然ガス、再生可能エネルギーへと燃料転換を実現するような基盤に立った戦略である。
‥‥そんなワケで、これが、今から10年前の2000年に「WWF」が発表した報告書の要約で、「WWFジャパン」の気候変動プログラムのシニア・オフィサーをされている鮎川ゆりか先生が翻訳、要約されたものだ。鮎川先生は、上智大学の外国語学部英語学科を卒業したあと、ハーバード大学院の環境公共政策学修士を修了、原子力資料情報室で国際交渉を担当して、1997年から「WWFジャパン」の気候変動プログラムを担当してる人だ。だから、環境や原発に関しては専門中の専門の人なので、これはあくまでも「WWF」が発表した報告書の訳文だけど、ご自身でも講演や著書などで原発の危険性や前時代性を訴えてる。
で、アメリカとフランスとニポン以外のほとんどの先進国は、この報告書の内容と自国での調査結果に基づいて、10年前から「脱原発」の方向へとシフトし始めた。たとえば、ドイツの場合なら、2002年に、当時のシュレーダー首相率いる与党が「原発の段階的廃止法案」を可決して、2023年までに国内の19基の原発をすべて廃止にするって決めた。そして、翌2003年に1つ目の原発を停止したのを皮切りに、どんどんクリーンエネルギーへと移行してる。もちろん、すぐには切り替えられないから、まずは原発を停止したぶんの電力を一時的に、石炭、風力、ガスなどの発電でフォローしつつ、その間に、小水力発電や太陽光発電などの開発を進めて、段階的に移行してくって計画だ。原発が温暖化対策に何の意味もないことや、原発そのものの危険性を考えれば、これがマトモな政府、マトモな国家の姿だろう。
一方、ドイツを始めとした環境先進国とは正反対のニポンでは、一部の人間が自分たちの利権のために原発を推進し、それを正当化するために環境問題を悪用してるんだから、もはや、地球のガンみたいなもんだ。だいたいからして、「増税を検討するのは徹底的にムダを省いてからだ」って言って事業仕分けをやってるハトポッポ内閣が、どうして電力の問題に関しては、ムダを省くことよりも先に「原発の推進」や「原発の増設」を口にするんだろう? この報告書の中には、消費電力を少なくする技術を使えば、アメリカは70%の電力を削減できるって書いてあるけど、これはニポンもおんなじことだ。
‥‥そんなワケで、この報告書を翻訳した鮎川先生は、2006年、ABC朝日放送の「ガラスの地球を救え」にゲスト出演した時に、パーソナリティーの手塚るみ子さん(地球環境運動家、故・手塚治虫氏の長女)と、こんなやりとりをしてる。
手塚 「昨年は小池百合子環境大臣が『クールビズ』を提唱し、一般にも浸透しましたが、鮎川さんはこのようなことをどう思われますか?」
鮎川 「効果はあるなと思いますが、具体的な面で進んでいないなと思われることがあります。例えば発光ダイオードは消費電力が少なく省エネの切り札と呼ばれています。現在信号機にも使われていますが、他の国に比べると進んでいません。2003年度の調査で、シンガポールは100%、アメリカで18%、中国は13%なのですが、日本は昨年3月の時点で9%でした。都市レベルで言うとストックホルムとか北京は100%。東京都は28%。これはやはり政策がないからだと思います。削減出来ることがいっぱいあるのにやられていない。また省エネラベルというものがありますが、それも普及していません。お店に行ってもそういうものを見かけることがほとんどありませんので、“この商品だとこれぐらい削減出来ますよ”というお店からのメッセージが伝わってきません。またそういう商品は普通よりも高いので、それを選んだ場合の得する制度を設けたら、普及しやすくなるではと思います」
あたしは、全国に信号機がいくつあるか知らないけど、とにかく、ものすごい数があることだけは確かだし、すべての信号機は24時間稼動してるんだから、これをすべて発光ダイオードのものに換えれば、大幅に電力を節約できると思う。2005年度に9%だったってことは、それから多少は増えてるとは思うけど、それでも大したことないと思う。全国の信号機がぜんぶ発光ダイオードのものになれば、原発1基ぶんくらいの電力は節約できるんじゃないかと思う。
それから、あたしは東京で暮らしてるので、六本木にしろ、新宿にしろ、夜中にずっと昼間のように電飾や看板が光り続けてる街に囲まれてるし、あたしの住んでる東京のハシッコのニコタマでさえも、深夜でも電気をつけずに自転車に乗れるほど明るい。そして、こうした街は、全国に数え切れないほどあるだろう。こうした全国各地の電飾や看板を法律で規制して、たとえば「発光ダイオードしか使用してはいけない」ってことにすれば、原発数基ぶんの電力が節約できるハズだ。
こんなふうに考えていけば、他にも電力を節約できることはいくらでもあると思うのに、「原発の増設」だの「オール電化」だのって、政府や電力会社のやってることって「エコ」とは正反対だと思う。「原発の推進」を謳うよりも、まずは、どうしたら電力の消費を少しでも節約できるのかってことから始めるのが「エコ」なんじゃないの? そして、これこそが、ホントの意味での「CO2の削減」なんじゃないの?
‥‥そんなワケで、今の人間たちが便利で快適な暮らしをするために、何百年も何千年も消えることのない放射性廃棄物を未来の子供たちに押しつけることが、どうして「環境のため」なんだろうか? かけがえのない自然を破壊して殺人基地を造ることが、どうして「平和のため」なんだろうか? 鮎川先生がゲスト出演した手塚るみ子さんの「ガラスの地球を救え」って番組は、手塚治虫さんが亡くなる前に遺した、次のメッセージから生まれた番組だ。原発や基地を推進してる人たちは、自分の胸に手をあてて、手塚治虫さんの最後のメッセージを読んでみて欲しいと思う今日この頃なのだ。
「これ以上、人間の手によって、大切な空気や緑、そして青い海を汚してはいけない。また、次世代をになう子供たちの夢を守らなくてはいけない」
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