自公の廃止の次は時効の廃止
殺人などの重大事件の時効廃止を盛り込んだ改正刑事訴訟法が、27日に成立したんだけど、成立と同時に即日交付、施行されるっていう異例の早ワザだった。何でかって言うと、15年前に岡山県倉敷市で起こった殺人放火事件の時効が、28日の午前0時に迫ってたから‥‥って理由を知って、あたしは「あれっ?」って思った。だって、普通、法律が改定された時って、施行された日から起こる事件や出来事に対して適用されるんじゃないの?‥‥って思ったからだ。
もちろん、あたしは、殺人事件の時効が廃止になったことには大賛成だし、コソコソと逃げ回ってる卑劣な殺人犯なんかを擁護するつもりは毛頭ない。倉敷市の事件の犯人を始め、昨日までは時効を心待ちにしながら逃げ回ってた全国373件もの事件の凶悪犯どもが、みんな逮捕されて厳罰を受ければいいと思ってる。だけど、こうした感情的なことは別にして、純粋に法律の問題として考えた場合に、今までの法律が改定されたり、新しい法律が施行された時って、過去にさかのぼらないで、その時点からアトに適用されなきゃおかしいからだ。
たとえば、小沢一郎のことばかり報じられてるけど、自民党の町村信孝や杉浦正健も、みんなの党の江田憲司も、政治資金で不動産を購入してた。だけど、これらは、まだ政治資金で不動産を買っても良かった時代のことだから、まったく問題になってない。小沢一郎にしても、政治資金で不動産を購入したことを問題視されてるんじゃなくて、政治資金報告書に記載した時期にズレがあることを問題視されてるだけだの話だ。だけど、もしも、改定された法律を過去にさかのぼって適用してもいいのなら、政治資金規正法が改定されて政治資金で不動産を購入しちゃいけないことになる前のこれらのケースをぜんぶ捜査して起訴しなきゃいけなくなる。あたしは、こんなおかしな話はないと思う今日この頃、皆さん、いかがお過ごしですか?
‥‥そんなワケで、当然のことながら、高卒のあたしが難しい法律のことなんて分かるワケもなく、あたしに分かる法律と言えば、道交法だけだ。だから、今回の疑問も、法律を知らない無知な人間が、不思議に感じたことをそのまま書いてるだけなので、法律の専門家や、大学の法学部に通ってるような人たちから見れば、バカみたいに思われちゃうかもしれない。でも、無知は無知なりに、このムチムチのダイナマイトバディーを武器にして、感じたままを書いてこうと思う。だから、法律に詳しい人たちは、ここはひとつ、温かい目で見守って欲しい。
で、あたしが思ったのは、今回の「時効の廃止」が過去にもさかのぼって適用されるなら、事件のケースによっては、おかしなことが生じちゃうってことだ。少年犯罪の場合、「俺は少年だから人を殺しても少年法で守られてる」なんてセリフをよく耳にするけど、凶悪犯罪を犯すようなヤツラは、それなりに法律を知ってて、自分に都合よく利用するケースが多い。だから、カッとして反射的に手元にあった包丁で相手を刺しちゃったようなケースは別だけど、周到に計画して行われた保険金殺人のようなケースなら、当然、「人を殺しても25年で時効になる」ってことも知ってるワケで、その犯行には「25年逃げ切れば逮捕されなくなる」ってことが動機のひとつになってたかも知れないのだ。逆に言えば、犯行当時に「殺人罪には時効がない」ってことになってたら、サスガに死ぬまで逃亡生活を続けることなんてできないと思って、殺人の計画を取りやめにしてたかも知れないだろう。
つまり、昨日までに起きた殺人事件は、すべて「25年の時効」っていう法律のもとで起こったもので、373件の凶悪事件の犯人の中には、「25年の時効」があったからこそ犯行に踏み切ったってヤツだって何人かはいるかもしれないってことだ。それなのに、アトから改定された法律が過去にさかのぼって適用されちゃったら、「おいおいおいおい!話が違うじゃないか!それなら殺人なんかしなかったよ!」ってことになっちゃう。それに、法律が改定される前に事件を犯して、今、逃げ回ってる犯人の時効も消えるのなら、すでに時効が成立して、のうのうと暮らしてるヤツラも逮捕しなくちゃ不公平だと思う。
何年か前に、足立区の小学校の女性教師を殺して、自分の家の下に埋めて、時効が成立してから自首して無罪になった元用務員のジイサンがいたけど、年金もらってのうのうと暮らしてた上に、取材に行ったテレビ局のレポーターに逆ギレして殴りかかったりしてた。あたしは、過去の事件にも改定した法律を適用するのなら、こうしたヤツだって逮捕すべきだと思う。まあ、普通に考えたら、時効が成立した時点で、それまでの捜査資料だとか証拠品だとかを廃棄しちゃってるだろうから、すでに時効が成立してる上に犯人が特定できてない事件の場合は、新たに捜査を始めることは難しいだろう。だけど、この事件のケースみたいに、犯人が分かってるのにのうのうと暮らしてるのなんて、被害者のご遺族の気持ちを思うと絶対に許せなくなる。
‥‥そんなワケで、ここで、ひとつの仮説を立ててみる。それは、今回の改定とは反対に、「もしも時効が短くなったら?」っていう仮説だ。殺人罪の時効は25年だったけど、これが、たとえば「15年」に短縮されたとする。そしたら、この法律を過去にさかのぼって適用した場合、犯行から15年以上逃げ回ってて、25年の時効が来る前に逮捕されて、現在服役中の受刑者は、みんな釈放しなくちゃならなくなる。それどころか、犯行から15年以上逃げ回って逮捕されて、そして死刑になった犯人は、司法当局が責任を持って生き返らせなきゃならなくなる。そんなこと、できるワケないけど、改定した時効を過去にさかのぼって適用したら、こういうことになっちゃう。
今回、殺人などの最高刑が死刑の罪は、25年だった時効が「廃止」になったけど、強制わいせつ致死や強姦致死など最高刑が無期懲役の罪は、15年だった時効が30年に、傷害致死や危険運転致死など最高刑が懲役20年の罪は、10年だった時効が20年に、それぞれ2倍に延長された。そして、これらの「2倍に延長された罪」も、過去にさかのぼって適用される。だから、時効が「廃止」になった罪と、時効が短縮された仮説とを比較することは少し無理があるけど、時効が延長された罪となら、比較してもおかしくないと思う。ようするに、時効が延長された場合に過去にさかのぼって適用するのなら、今後、もしも時効が短縮されるような改定があった場合にも、同様に過去にさかのぼって適用しなくちゃおかしいってことになる。そして、その場合には、釈放しなくちゃならない服役者が出て来るってワケだ。
だけど、もしも時効が短縮されるようなことがあったとしても、絶対に過去にさかのぼっては適用しないと思う。だって、すでに刑が決まって服役してる受刑者を釈放するワケないと思うからだ。あたしは、コレって、おかしいと思う。改定した法律を過去にさかのぼって適用するのなら、時効が延長された場合も短縮された場合も、どちらもおんなじにしないとおかしいと思うからだ。それで、今回の適用を「あれっ?」って思ったあたしは、その疑問をツイッターでつぶやいてみた。そしたら、サスガ、ツイッター。すぐに、親切な人が、あたしとおんなじ疑問を持った人と、その人の質問に対する回答が掲載されてる「OK Wave」のページを教えてくださった。リンク先にアクセスできない人のために、こちらにも引用させてもらうけど、あまりにも的確に書かれてる。
【質問】
遡及処罰の禁止、事後法の禁止に反しませんか?殺人罪の時効が廃止されることが検討されています。そして刑事訴訟法改正で廃止されたあとは、過去のものにも適用するという報道を見ました。これは遡及処罰の禁止、事後法の禁止に反するのではありませんか?刑法6条にも該当しません。反しないのであれば、その理由をお願いします。
【回答】
日本国憲法(以下「憲法」といいます。)は、事後法について全面的に禁止しているわけではありません。実際、法令を遡及適用することはよくあります。憲法で禁止しているのは、遡及処罰の禁止です。要するに、国民に有利なことは遡及してもよいが、不利なことは遡及してはいけないということです。
「憲法第39条 何人も、実行の時に【適法】であつた行為又は既に【無罪】とされた行為については、刑事上の責任を問はれない。又、同一の犯罪について、重ねて刑事上の責任を問はれない。」
また、刑法第6条で規定しているのは「刑」であり「時効」ではありません。
「刑法第6条 犯罪後の法律によって【刑】の変更があったときは、その軽いものによる。」
要するに、刑罰に時効が含まれるかどうかが争点なのです。過去の例との整合性については、要するに、過去の例では、刑罰に時効が含まれるかどうかが分からないので、分からないのであれば「含まれる」と解して、過去の事件に適用することはしなかったのです。しかし、現在では「刑罰と時効は別」と考える人が多くなったことから、過去の事件にも適用しようという議論になっているのです。実際はどちらが正解なのかは、裁判所が個別具体的な訴訟事件の判決において判断します。だったら、とりあえず過去の事件にも適用しておけば、実際の裁判では必ずその点が争点となるでしょうから、その司法判断を待てばよいと、私は思います。
‥‥そんなワケで、これは、今から2ヶ月ほど前の質問と回答なので、まだ「検討されている」ってこととして書かれてるけど、今日からは現実の話になったってワケだ。あたしは、これを読んで、「遡及処罰の禁止」とか「事後法の禁止」とかって言葉を初めて知ったけど、いちいち調べなくても、読んで字のごとしってワケで、過去にさかのぼって処罰を与えちゃいけないってのが「遡及処罰の禁止」だろうし、その法律が施行される前の時例に新しくできた法律を適用しちゃいけないってのが「事後法の禁止」だろうと思った。
で、この質問は、まさしくあたしの疑問とおんなじで、この回答を読むと、「遡及処罰の禁止」は憲法で決まってるけど、「事後法の禁止」は禁止してないケースもあるって書かれてる。あたしの疑問は、改定された時効を過去にさかのぼって適用することの矛盾なんだから、後者の「事後法の禁止」にあたるワケで、憲法で全面的に禁止されてないのなら、今回の適用も憲法違反にはならないことになる。
ただ、ひとつだけ気になったのは、最初の「遡及処罰の禁止」の説明だ。ここには、「要するに、国民に有利なことは遡及してもよいが、不利なことは遡及してはいけないということです。」って書かれてる。今回の適用をこの「遡及処罰の禁止」で考えてみた場合、被害者やご遺族にとっては「国民に有利なこと」だから、過去にさかのぼるのは問題ないけど、逃げ回ってる犯人だって一応は国民なワケで、犯人側にしてみれば「国民に不利なこと」なあたる。そしたら、「遡及処罰の禁止」に抵触しちゃうことになる。
さらには、「刑法第6条」なんていう新たな使徒も攻めて来たから、あたしはますますチンプンカンプンになるかと思ったのもトコノマ、この人の回答の書き方がとっても分かりやすいので、無知なあたしにもちゃんと理解することができた。結局、この人が最後に書いてるように、とりあえず過去の事件にも適用しておいて、個々のケースについては、実際の裁判で個別に判断してくってことなんだろう。つまり、あたしが心配したように、これからは、過去にさかのぼって適用したケースで凶悪な殺人犯を逮捕した場合には、裁判で、「私は25年の時効があったから犯行に及んだ。時効がなければ一生逃げ切ることなどできないと思って犯行を思いとどまっていた」なんて弁明するヤツも現われるだろう。そして、その場合には、この言葉がホントでもウソでも、多少は減刑に作用すると思う。
‥‥そんなワケで、あたしは、凶悪犯罪の時効が廃止されたり延長されたりしたことについては大賛成だし、過去にさかのぼって適用されることについても大賛成だ。だけど、純粋な疑問として、短縮された場合には過去にさかのぼって適用できないものを延長した場合だけ適用するってのは、どこかに矛盾が生じてるんじゃないのか?‥‥って思ったことは事実だ。そして、もうひとつ、これは感情的なことだけど、すでに時効が成立して、のうのうと暮らしてるヤツラに何もできないってことが許せない。事件とは無関係なあたしでも、こんなに腹が立ってるんだから、被害者のご遺族にしてみたら、犯人が分かってるのに逮捕も処罰もできないなんて、これほどの苦しみはないだろう。足立区の事件の場合は、別の形で賠償金を請求したり、いろいろとできる限りのことをしたそうだけど、それでも、自分の愛する家族を残酷に殺した犯人が、刑務所にも行かずにのうのうと暮らしてることを想像したら、夜も眠れないほど悔しいと思う。だから、あたしは、こうした凶悪事件の場合は、刑事の時効だけじゃなくて、せめて、民事の時効も廃止にして欲しいと思う今日この頃なのだ。
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