脳内変換の日々
2週間も前のことだけど、5月14日、スーパーモデルのクラウディア・シファー(39)と、ダンナの映画プロデューサーのマシュー・ヴォーン(39)の間に、3人目の子供が生まれた。で、数日前のこと、2人はこの女の子に「Cosima(コジマ)」って名前をつけたって発表した。正確には「Cosima Violet Vaughn Drummond(コジマ・ヴァイオレット・ヴォーン・ドルモンド)」って名前なので、「ヴァイオレットちゃん」って呼び方もあるのかもしれないけど、基本的には「コジマちゃん」てワケで、「コジマ」っていう名字があるニポン人のあたしとしては、なんか変な感じがした。
ちなみに、7才の長男の名前は「Caspar(カスパル/キャスパー)」、5才の長女の名前は「Clementine(クレメンタイン/クレモンティーヌ)」なので、どっちもよくある名前だ。クラウディア・シファーがドイツ人で、マシュー・ヴォーンがイギリス人てことは関係ないと思うけど、2人とも世界を舞台に活躍してるから、子供の名前も、いろんな国で通用する名前にしたような気がする。もちろん、次女につけた「コジマ」って名前も、そんなに突飛な名前ってワケでもなくて、古くは、クラシック音楽の作曲家のリストの娘で、ワーグーナーの2番目の奥さんになったコジマ・ワーグナーがいるし、最近では、オーストラリアの女性ポップシンガー、コジマ・デヴィートがいる。
この「Cosima」ってのは、ギリシャ語に由来する「良識」って意味の単語だそうだけど、この3人のコジマさんの例だけで見れば、男性よりも女性の名前として適してるようだ。ま、どっちにしても、長男に「カスパー」、長女に「メルキオール」、次女に「バルタザール」ってつけて、3人合わせて「MAGIシステム」とか言われたらシャレになんないから、ニポン的には違和感があっても、イギリス的には「コジマちゃん」で良かったと思う。自分の子供に暴走族の「夜露死苦(よろしく)」みたいなヘンテコなアテ字の名前をつけるニポンのバカ親と比べるのは失礼だけど、名前は一生のものだから、前例のない突飛な名前をつけるのだけは子供がかわいそうだと思う今日この頃、皆さん、いかがお過ごしですか?
‥‥そんなワケで、欧米的には、そんなに突飛じゃない「コジマちゃん」だけど、偶然に「コジマ」っていう名字があるニポン人のあたしには、やっぱり違和感がある。たとえば、ナオミ・キャンベルみたいに、ニポンにある名前でも、名字じゃなくて名前のほうと一緒なら、別に違和感はない。だけど、この「コジマちゃん」てのは、ようするに、「タナカちゃん」とか「スズキちゃん」てのとおんなじで、ファーストネームとしては違和感がある‥‥って言っても、ニポンには松尾スズキさんがいるけど(笑)
でも、松尾スズキさんは芸名なワケで、本名が「松尾鈴木」だったり「佐藤田中」だったりしたらたまんない。たとえば、「ショウジ」みたいに、名字にも名前にも共通してるものもあるけど、その場合は、「東海林」とか「庄司」とか書けば名字で、「正二」とか「章次」とか書けば名前だって判別できる。だから、「サトウショウジ」って人の場合は、「佐藤正二」とか「佐藤章次」とか書くワケで、まったく違和感はない。そして、もしも「佐藤東海林」って書く人がいたら、視覚的には違和感マンマンだけど、耳で聞くぶんには問題ない。
だけど、耳で聞くだけでも違和感マンマンなのが、「松尾スズキ」だったり「佐藤タナカ」だったりするワケで、そこに登場したのが「コジマちゃん」てワケだ。「松尾コジマ」でも「佐藤コジマ」でも違和感があるし、「小島コジマ」だったりしたらナオサラだ。児島玲子ちゃんは、一応「本名非公表」になってるから、ここには書かないけど、もしも本名が「児島コジマ」だったら大変なことになる。いや、別に大変なことにはならないけど、少なくともイメージは大きく変わっちゃう。
「玲子」や「玲奈」の「玲」って漢字は、玉や金属が触れ合って鳴る「清らかで透き通った音」を表わしてる。そのため、この文字を名前に使うと、周りの人たちを楽しくさせるような明るくて才能あふれた人物になるって言われてる。児島玲子ちゃんやMAXの玲奈ちゃんは、まさしく、この文字の通りの人物で、玲子ちゃんはプロアングラー、玲奈ちゃんはエンターテイナーと、活躍してる世界はぜんぜん違うけど、それぞれの世界で、数え切れないほどの人たちに夢を与えて幸せにしてる。
‥‥そんなワケで、もしも「児島玲子」が「児島コジマ」になっちゃったら、やってることはおんなじでも、名前から受けるイメージは大きく変わっちゃう。それに、何よりも、「コジマ電気」の関係者かと思われちゃうだろう‥‥ってことで、あたしは、この、名前によるイメージって、意外と大切だと思ってる。たとえば、タイに「サムイ島」っていうリゾートの島があるけど、春先から気温が40度くらいになる南の島だ。だけど、何しろ名前が「サムイ島」だから、ぜんぜん南のリゾートって感じがしない。
だから、一度でも行ったことがある人は別だけど、初めてタイに行く人に「プーケットとサムイとどっちがいい?」って聞けば、たいていの人は「プーケット」って答えるだろう。これは、タイの「サムイ島」っていう固有名詞が、たまたまニポン語の「寒い」って言葉とおんなじだから、無意識のうちにニポン語の「寒い」に脳内変換しちゃって、そのイメージを重ねちゃうからだ。そして、これとおんなじで、最初の「コジマちゃん」の場合も、いくらカタカナで「コジマちゃん」て書いても、脳内では「小島ちゃん」とか「児島ちゃん」とかに変換されちゃう。だから、まるで名字に「ちゃん付け」して呼んでるみたいな感じになっちゃうのだ。
その上、ニポン人の名字の漢字には、それぞれ意味がある。「小島」なら「小さい島」だし、「鈴木」なら「鈴の木」だし、「田中」なら「田んぼの中」ってふうに、2つの漢字が組み合わさって何かの意味になってる。だから、たまたまニポン人の名字とおんなじ外国語があると、その漢字の意味までイメージしちゃう場合がある。でも、英語圏の名前の場合は、言葉自体には意味のない名前も多い。たとえば、「ジョージ・ワシントン」の場合なら、「ジョージ」は「ジョージ」、「ワシントン」は「ワシントン」で、別に意味はない。
だけど、ニポン人の名字みたいなパターンもある。たとえば、「アームストロング」なんてのは、「アーム」と「ストロング」の組み合わせになってて、直訳すれば「腕っぷしが強い」ってことになる。「鋼の錬金術師」に出て来る「アレックス・アームストロング少佐」なら、もしもニポン人だったとしたら、「豪腕太郎」とかって感じの名前になると思う。他にも、「スプリングフィールド」なんてのもある。直訳すれば「春の野原」って感じだけど、ここは少しひねって、「スプリング」のイメージから「桜」、「フィールド」のイメージから「庭」ってことにすれば、「桜庭(さくらば)」って名字になる。だから、こないだ来日した「リック・スプリングフィールド」が、もしもニポン人だったとしたら、「桜庭 陸(さくらば りく)」って感じになる。
もちろん、こうした2つの単語の組み合わせだけじゃなくて、ニポン人には漢字1文字の名字があるように、英語圏でも単語1つの名前がある。たとえば、ローリングストーンズの「ロン・ウッド」の場合は「木」って意味だし、ゴルフの「タイガー・ウッズ」の場合は、「木」が複数になってる。で、ニポンには、あたしの知る限りでは、「木」っていう名字の人はいないと思う。だけど、「林」とか「森」とかって名字の人はいっぱいいる。だから、これにあてはめれば、「ロン・ウッド」は「林 六郎」って感じになるし、「タイガー・ウッズ」は「森 寅之助」って感じになる。
‥‥そんなワケで、あたしは、英語圏の人の名前を目や耳にするたびに、ついつい「もしもニポン人だったらどんな名前になるか」ってことを考えちゃうクセがあるんだけど、ほとんどの場合、ニポン語に変換することができない。さっきのローリングストーンズのメンバーにしても、ロン・ウッドだけは「木」って意味だけど、ミック・ジャガーにしても、キース・リチャーズにしても、チャーリー・ワッツにしても、ビル・ワイマンにしても、名字に意味はない。たまに、ミック・ジャガーの「ジャガー」を「豹」のことだとカン違いしてる人がいるけど、ミック・ジャガーは「Jagger」、豹は「Jaguar」、別の言葉だ。
あたしの大好きなザ・フーの場合も、ピート・タウンゼント、ロジャー・ダルトリー、ジョン・エントウィッスルはニポン語にできないけど、一番好きな「キース・ムーン」だけは「月」って意味だから、ニポン語の名前に変換することができる。ちなみに、あたしが考えたのは、「望月 健」だ‥‥ってワケで、これらの例を見れば分かるように、名字をニポン語に変換できるのは、1つのバンドに1人くらいしかいない。キッスの場合も、初代のメンバーだと、ジーン・シモンズ、エース・フレイリー、ポール・スタンレー、ピーター・クリスって、1人もいない。だけど、何度かメンバーチェンジをして、現在はエリック・シンガーがドラムスを叩いてるから、ドラマーなのに「シンガー」ってのもおかしいけど、一応は「歌田 栄太郎」って名前をつけてあげた。
で、あまりにもバカバカしい遊びだけど、高校生のころから20年近くも続けて来ると、2~3年に1回くらい、自分でも噴き出しちゃうようなヒットが出る。たとえば、ディープ・パープルやレインボーの「リッチー・ブラックモア」だ。「ブラック」が「モア」なんだから、和製英語的に考えれば「もっと黒を!」ってことで、リッチーの頭髪事情を知ってる人なら、誰もが納得するように、これは、まるでリッチーの心の叫びのようだ。で、あたしが考えたのが、「増毛 良一(ましげ りょういち)」だ。「増毛」と書いて「ましげ」と読ませてる。パッと見、「市毛 良枝」に似ちゃったけど、「リッチー・ブラックモアズ・レインボー」をニポン語に変換したら、「増毛良一の虹」ってワケで、ナニゲに、「三丁目の夕日」的な、そこはかとないペーソスが醸し出されてると思う。
‥‥そんなワケで、「ニコラス・ケイジ」のことを「ニコラス刑事」だと思い込んでたっていうネタはよく聞くけど、こんなネタはぜんぜん面白くない。だって、ホントに「ニコラス刑事」だと思い込んでたワケないからだ。だけど、最初から意図的に英語をニポン語に変換すれば、100回に1回くらいは「おおっ!」って言うヒットが出る。だから、あたしは、「英語の名前を無理やりにニポン語に変換する」っていう何の意味もない「脳内遊び」を20年も続けて来てる。そして、今日は、もったいぶって書かなかったけど、あたしのメモ帳には、思わずカモミールティーを噴き出しちゃうようなニポン語の名前が8人ほど書いてある。これは、「10人になったら発表しよう」って思ってるからだ。だから、気になる皆さんは、申し訳ないけど、あと5~6年ほど「きっこの日記」を読み続けて欲しいと思う今日この頃なのだ(笑)
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