沖縄へ飛んだハトポッポ
4日、ハトポッポが沖縄へ行ったけど、多くの人が意外に思ったのが、「就任後、初の沖縄入り」ってことだろう。これほど普天間基地の問題が大きくなってるのに、それも、すべては自分自身が「5月末までに決着する」って言っちゃったことが原因なのに、今まで一度も沖縄に行かずに、普天間基地も、辺野古も、どこも見ずに、杭打ち案だの分散案だのってノタマッてたワケだ。ホントにこの問題を重要に考えてるのなら、ホントに沖縄の人たちの戦後65年を超える苦しみに思いを至らせてるのなら、もっと早い時期に沖縄に行ったハズだし、せめてこの半年間に数回は沖縄に行ったハズだ。それが、自分で勝手に設定した期限ギリギリになって、まるで発車のベルが鳴って扉の閉まり始めた電車に駆け込み乗車するみたいな沖縄入り。
それも、「沖縄の人たちの生の声を聞きたい」ってことからの沖縄入りだったのに、普天間の人たちとの1時間の「対話集会」の中身は、政府側のイイワケが45分だったのに対して、住民に与えられた発言時間はたったの15分。絶対反対を訴える名護市長の稲嶺進さんとの話し合いもたったの15分。これじゃあ、ただ単に、「沖縄にも行かずに県内移設案を決めたのか!」って言われないようにするための既成事実作りとしか思えない‥‥って、ま、この辺のことは置いといて、あたしが何よりも呆れ果てたのは、「対話集会」でのハトポッポの次の発言だ。
「すべてを県外にと言うのは、なかなか現実問題としては難しく、また沖縄の皆さんに引き続きご負担をお願いしなくてはいけないと言うのが、現在の政府の考え方でありまして‥‥」
おいおいおいおいおーーーーい! 「すべてを県外にと言うのは、なかなか現実問題としては難しく、また沖縄の皆さんに引き続きご負担をお願いしなくてはいけないと言うのが」まではともかくとして、最後の「現在の政府の考え方でありまして」ってのは何だよ? 連立を組むオムライス党はハッキリと「県内移設には絶対反対!」って言ってるだろが! 「3党合意」してないのに、何で「政府の考え方」なんだよ? 何で「民主党の考え方」が「政府の考え方」なんだよ? つーか、モノゴトの順序として、まずは連立を組む与党3党で合意して、それから発言するのがスジだろが! 政権与党内でも合意できてない案なのに、沖縄の人たちが合意できるワケないし、日米だって合意できるワケないだろ!‥‥って思った今日この頃、皆さん、いかがお過ごしですか?
‥‥そんなワケで、今回のハトポッポの沖縄入りは、あまりにも場当たり的だったと思う。まるで、嫌な宿題を最後まで残しておいて、夏休みが終わるギリギリになってから仕方なく手をつけたみたいで、計画性なんてミジンも感じられなかった。何でかって言うと、5月3日から、ニューヨークの国連本部で、「核拡散防止条約再検討会議」が開催されてるのに、世界唯一の被爆国であるニポンからは、首相も外相も出席しないという信じがたいことになってるからだ。広島からも、長崎からも、多くの人たちがニューヨークへ行き、二度と核兵器による悲劇を繰り返さないためにがんばってるのに、カンジンの首相が、自分の蒔いた種の後始末に忙しくて出席できないなんて、開いた口がふさがらない。
ハトポッポは、5月1日に熊本に行って、「水俣病犠牲者慰霊式」に出席した。これは、現職の首相では初めてのことで、とても素晴らしいことだと思った。だけど、翌日の2日は、何の予定もなくて、官邸には来客すらなかった。3日は、平野官房長官や北沢防衛相らと沖縄入りについての打ち合わせをしただけで、夕方からは芸能人のパーティーに出席してる。そして、4日に沖縄入りしたワケだけど、こんな予定なら、十分に「核拡散防止条約再検討会議」に出席できたハズだ。「核拡散防止条約再検討会議」が5月3日から開催されることは、何ヶ月も前から分かってたことなんだから、いくらでも調整できたハズだ。それに、毎年ある会議ならともかく、5年に一度しか開催されない会議なんだから、ハトポッポにとっては、今の任期中に唯一の開催だった。
「タイム誌」の「世界で最も影響力のある100人」の6位に選ばれたあとなんだから、ここで「核拡散防止条約再検討会議」に出席してれば、国内はともかくとして、世界的には、ハトポッポの評価はすごく上がってたと思う‥‥ってのはゲスな話だけど、こうしたことを抜きにしても、核兵器の被害の恐ろしさ、悲惨さを訴えて、新たな核開発に警鐘を鳴らすことは、被爆国の首相としての最低限の義務だと思う。それなのに、ハトポッポは、自分が出席しないばかりか、代わりに外相を出席させることもしなかった。これは、あまりにも無責任だ。それも、自分の蒔いた種の後始末に忙しくて出席できなかっただなんて、これほど恥ずかしいことはない。
ハトポッポが磯野カツオじゃないのなら、普天間基地の問題をズルズルと先送りせずに、もっと早い時期から本気で検討して、この時期には、ある程度の道筋を作っておいただろう。そして、外相を引き連れて「核拡散防止条約再検討会議」に出席して、ニポン内外に平和への取り組みをアピールしてただろう。これが自民党政権だったら、これほどオイシイ「支持率アップ」の道具はないとばかりに、国内に山積してる問題なんかホッタラカシにして、トットとニューヨークへ飛んでたハズだ。ここが、何から何まですべてを選挙のための道具として利用して来た自民党と、自称「愚直」のハトポッポとの違いなんだろうけど、それにしても、ハトポッポの側近たちって、あまりにも頭が悪すぎる。
‥‥そんなワケで、今になって思えば、ハトポッポは、何ひとつ自分で調べたり自分で考えたりしてないように感じる。今回の辺野古の杭打ち案にしても、徳之島への分散案にしても、すべては側近たちから吹き込まれたことをそのまま口にしてるようにしか思えない。事実、4月20日に、滝野官房副長官が、徳之島の3町長に電話して政府との対談を打診した時だって、ハトポッポは「まったく知らなかった」って言ってた。つまり、今、ハトポッポが口にしてる辺野古の杭打ち案や徳之島への分散案は、すべて周りから吹き込まれたもので、本人が考えたものじゃないってことになる。
今回、ハトポッポは、沖縄で、「昨年の衆院選当時は、海兵隊が抑止力として沖縄に存在しなければならないとは思っていなかった。学べば学ぶほど(海兵隊の各部隊が)連携し抑止力を維持していることが分かった」って発言した。ようするに、自分の「最低でも県外」って発言を撤回するための方便なんだろうけど、これは、あまりにもメチャクチャな話だ。どこの誰から吹き込まれたのか知らないけど‥‥って言うか、ハトポッポは、沖縄入りする前日の3日の午後に、平野官房長官、滝野官房副長官、松野官房副長官の3人と3時間半以上も打ち合わせをしてるから、ここで吹き込まれたんだろう。
だいたいからして、普天間基地の海兵隊ってのは、常に基地にいてニポンを守ってくれてる部隊じゃない。イラクやアフガニスタンに戦争しに行ってる侵略部隊だから、そうした訓練しか受けてない。そして、今まで何度も書いて来たように、アメリカは、海兵隊の司令部がグアムへ移転するのにともなって、その大部分の部隊をグアムへ移転することにしてる。31MEU(第31海兵遠征部隊)ってのが沖縄に残るって言われてて、この中のヘリ部隊のために飛行場を造ることになってるんだけど、31MEUは、1年の半分近くは沖縄にいない。たとえば、2006年度なら、春に3ヶ月、グアムやフィリピンでの演習に出かけてるし、秋にも2ヶ月、フィリピンでの合同演習に出かけてる。つまり、1年のうち5ヶ月も沖縄を留守にしてたワケで、こんな部隊に「抑止力」なんてアリエナイザーだろう。
さらには、もともと「抑止力」なんてない部隊なのに、この31MEUも、実際には他の部隊と一緒にグアムへ移転する。これは、2008年の米国防省の軍事計画報告書にも、2009年のドラフトにも明記されてることで、どこに飛行場を移設させるかでモメにモメてるのに、カンジンのヘリ部隊はグアムへ行っちゃうのだ。たとえば、2008年9月15日付で米海軍のドナルド・ウインター長官が米国下院軍事委員会のアイク・スケルトン議長に提出した「国防総省グアム軍事計画報告書」(PDF資料)の中には、沖縄からグアムへ移転することが決定した海兵隊の部隊名が列記されてるけど、この中に「中ヘリ中隊」ってのが書かれてる。他の部隊名は具体的に書かれてるのに、これだけが抽象的に書かれてるんだけど、海兵隊の中に「中型ヘリの中隊」は普天間飛行場所属の31MEUだけなのだ。つまり、ハッキリと「31MEU」って書いちゃうと、「じゃあ代わりの飛行場は必要ないじゃないか!」ってことになっちゃうから、ぼんやりとゴマカシて書いたってワケだ。
とにかく、沖縄にいたとしても、1年の半分近くを海外演習に出かけてて、ニポンの抑止力とは無関係の31MEUだけど、それがグアムへ移転しちゃうんだから、さらに抑止力とは無関係になる。じゃあ、辺野古の海を埋め立てるだの、杭打ち方式にするだのって言ってるのは、いったい何のための飛行場なのかって言うと、これも今まで何度も書いて来たように、31MEUのヘリ部隊の「訓練用の飛行場」なのだ。いつもはグアムにいるヘリ部隊が、タマにニポンに訓練しに来た時に使う飛行場を造るために、あーだこーだとモメてるワケだ。
ヘリ部隊が常駐しない訓練用の飛行場に、何の抑止力もないことは猿にでも分かると思うし、こんなもののために何千億円もの血税をドブに捨てて、かけがえのない自然を破壊することが愚の骨頂だってことも、たぶん、猿にでも分かるだろう。でも、猿に分かることでも、鳩には分からないのだろうか? 部隊の常駐しない訓練用の飛行場なんかを「抑止力」だなんて言ってる時点で、ハトポッポがロードマップやドラフトをまったく読んでないことは明らかだし、周りから吹き込まれたデマを鵜呑みにしてることも明らかだ。ハトポッポが、ロードマップやドラフトをちゃんと読んでれば、ニポンに残るハズの31MEUのヘリ部隊も含めた「海兵隊の大半」がグアムに移転しちゃうことを理解してるワケで、部隊の常駐しない訓練用の飛行場を「抑止力」だなんて言い出すワケはない。そして、こんなデマを吹き込むヤカラがいても、ハッキリと否定してただろう。つまり、すべては、ハトポッポの勉強不足が原因だってことだ。
今回、ハトポッポは、「沖縄の基地問題に対する考えの甘さや勉強不足を認めた」って報じられたけど、もしも、ホントにそう思ったのなら、今からでも遅くないから、2009年の「沖縄からグアムおよび北マリアナ・テニアンへの海兵隊移転の環境影響評価/海外環境影響評価書ドラフト」(PDF資料)を読んで欲しい。これを読めば、すでにアメリカ側は、テニアンでヘリ部隊も含めた海兵隊の訓練をすることを前提に再編計画を進めてることが良く分かるだろう。
そして、1の23ページには、海兵隊の移転候補地の評価の一覧表があるけど、「同盟及び条約上の要件」「対処(配備)時間」「活動の自由」の3項目で、すべてプラスの評価を受けてるのは、マリアナ(テニアン)とグアムだけなのだ。一方、現在の沖縄は「活動の自由」がマイナス評価になってる。つまり、アメリカ側が調査した結果では、海兵隊の移転先は、沖縄県内よりもテニアンやグアムのほうが良いってことになってるのだ。そりゃそうだろう。アメリカは、今回の再編成で、グアムを含むマリアナ諸島全域を沖縄に代わる軍事拠点とするために、「マリアナ諸島複合訓練場計画 (MARIANA ISLANDS RANG COMPLEX )」を進めてるのに、どうしても沖縄に新しい飛行場を造って金儲けしたいと思ってた自民党の防衛族議員たちが、その大義名分として架空の「抑止力」なんてものを掲げて、「ヘリ部隊だけでも沖縄に残るってことにしといて欲しい」ってアメリカに頼んだのがすべての悪夢の始まりだからだ。
‥‥そんなワケで、沖縄の人たち全員に聞いたワケじゃないけど、ツイッターでつながってる沖縄の人たちの多くは、「5月末なんて期限を決めずに、時間をかけてキチンとした解決策を出して欲しい」って言ってる。連立与党の中で、唯一、県内移設に反対の姿勢を明らかにして、グアムとテニアンへの移設案を推してるオムライス党のみずほたんも、こんなツイートをくださった。
「mizuhofukushima @kikko_no_blog きっこさん、こんにちは。普天間基地問題は、しっかり解決しなければなりません。沖縄の人たちの民意をしっかり受け止める政治でなければなりません。多くの人と力を合わせ、しぶとくがんばります。普天間基地問題は、それこそみんなの問題です。」
だから、ハトポッポも、沖縄の人たちに謝るのなら、「やっぱり県外は無理でした。ごめんなさい」ってことじゃなくて、「やっぱり5月末までには決められそうもありません。でも必ず皆さんの思いを反映させた解決策を提示しますので、もう少しだけ時間をください」って言うべきだろう。そして、みずほたんの言うように、これは「みんなの問題」なんだから、自民党みたいにナンでもカンでも「政争の具」にしてハトポッポを攻撃する材料にするんじゃなくて、ハトポッポにデマを吹き込んでるヤツラを厳しく監視して、ホントの意味で沖縄の人たちが苦しみから解放されるように応援するのがスジだと思う今日この頃なのだ。
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