鳩山内閣の負の遺産
多くの国民の期待を背負って船出した鳩山内閣丸が、どうして、わずか8ヶ月で沈没しちゃったのか、何の検証も反省も謝罪もないまま、菅内閣丸は強引に航海を引き継いだ。ハトポッポの遺した数々の「負の遺産」については、まるで「ハトポッポが辞任したんだからチャラ」とでも思ってるのか、菅内閣丸の乗組員は、3分の2にあたる11人が再任した。ようするに、船長の顔だけ変えて、中身はおんなじってことだ。そして、この「色だけ塗り替えた船」に乗せられてるのは、もちろん、あたしたち国民だ。
本来なら、菅内閣丸を支えてる民主党自身が、鳩山内閣丸での失敗をキチンと検証して、おんなじ轍を踏まないようにキチンと反省して、国民に対してキチンと謝罪して、それから再スタートするのが筋だと思う。だけど、新しい船長である菅さんの所信表明演説では、たったのヒトコトも、反省や謝罪の言葉は聞かれなかった。形だけは「私も前政権の一員として、こうした状況を防げなかった責任を痛感しております」って言ってたけど、具合的に何をどう反省してるのかって説明もなければ、国民への謝罪もなかった。
百歩ゆずって、菅さんが鳩山内閣で何の要職にも就いてなかったのなら分かるけど、仮にも「副総理」だったんだから、鳩山内閣丸を沈没させた責任は、船長だったハトポッポの次に重いハズだ。それなら、これほど国民に混乱と失望を与えた鳩山内閣丸の迷走に対して、まずは国民に対して、具体的に反省と謝罪を表明するのが普通の人間の感覚だろう。
だけど、新しい船長の菅さんは、「私は前内閣とは無関係」って顔で、沖縄の人たちへの謝罪すらしなかった。菅さんが口にしたのは、国民に対してじゃなくて、連立よりも選挙を優先して郵政法案を後回しにした国民新党に対する配慮の言葉だけだった。ようするに、菅内閣丸の優先順位は、まずは何よりも「選挙」で、その次が「選挙のための連立」で、一番最後が乗客である「国民」てことになる今日この頃、皆さん、いかがお過ごしですか?
‥‥そんなワケで、本来は民主党自身がやらなきゃいけない「鳩山内閣の検証」だけど、イチも選挙、ニも選挙、サンシも選挙、ゴも選挙の民主党は、そんなことやってるヒマはない。菅内閣丸が「色だけ塗り替えた船」だってことに気づかれる前に、とにかく、1日も早く選挙に突入したい。コイズミ改革を丸写ししたペテン政策のメッキが剥がれないうちに、トットと選挙を終わらせたいから、葛城ミサトよりもなりふりかまってられない‥‥ってワケで、選挙のことでお忙しい民主党の皆さんに代わって、あたしが「鳩山内閣の検証」をしてみたいと思う。
でも、次から次に公約を反故にして来た鳩山内閣は、最終的な支持率が表わしてるように、あまりにも嘘が多かった。だから、あの公約はどうだった、あの政策はどうだった‥‥って、ひとつひとつ検証してたら大変なことになっちゃう。そこで、あたしは、「鳩山内閣の検証」の一環として、「鳩山内閣が遺した負の遺産」の中のひとつ、「環境アセスメント(環境影響評価)法の改正案」について書いてこうと思う。
「鳩山内閣が遺した負の遺産」て言えば、何よりも最悪なのが、沖縄の民意も連立与党の主張も無視して強引に推し進めた普天間飛行場の日米共同声明だけど、コレに関しては、今さら説明の必要もない。そこで、あたしは、この最悪の遺産と平行して、裏でコッソリと進められてた「環境アセスメント法の改正案」のほうに焦点をあててミルコ・クロコップってワケだ。
‥‥そんなワケで、まずはザックリと説明すると、今のニポンには「環境アセスメント法」ってのがあって、大規模な公共事業などを計画する場合には、その工事が環境に悪影響を与えないかどうか、前もってシッカリと調査することになってる。そして、その結果、その事業を行なうか、計画内様を変更するか、事業を取りやめるか、詳細を決めることになってる。だけど、現行の法律では、事業の場所を始め、工事の内容を具合的に決めたあとにアセスメントを行なうことになってるから、もしも調査の結果が「NG」だった場合に、大幅な計画の変更が難しいっていう欠点もあった。
そこで、今回の「改正案」では、事業の計画の段階で、前もって複数の工事計画を提示して、それらを平行してアセスメントを行なう方式に変更することになった。つまり、今までは、A案だけを提示してアセスメントを行なってたんだけど、これからは、A案、B案、C案てふうに提示して、それぞれのアセスメントを行なう方式、「戦略的環境アセスメント(SEA)」に変更します‥‥ってのが、今回の「改正案」だった。
「それなら、ぜんぜん負の遺産じゃないじゃん」って思うだろうし、ここまでは、あたしもそう思う。だけど、環境省がこの「改正案」を作成してる時に、防衛省が「米軍や自衛隊の基地の建設は改正案から除外してくれ」って要請したのだ。そして、その理由がシビレちゃうんだけど、「米軍普天間飛行場の代替基地建設で環境アセスメントのやり直しが必要になった場合などに制限を受けないようにしたい」ってんだから呆れ返る。
つまり、防衛省は、辺野古の海を埋め立てて基地を造ることを前提にして、こんなふざけたことを環境省に要請してたのだ。で、防衛省からこんな要請を受けた環境省がどうしたかって言うと、ハッキリと「基地の建設は除外する」とは書かなかったけど、「適用から除外するケース」として、その場その場で都合よく解釈できる官僚お得意の曖昧な表現で、こんなふうに記したのだ。
「国の利害に重大な関係があり、かつ、災害の発生その他特別の事情により緊急の実施を要すると認められる事業」
そして、この項目を書き足した「環境アセスメント法の改正案」は、3月に閣議決定され、4月に参院で可決されちゃったのだ。環境省は「米軍基地が対象外となるかどうかは、そのつど判断される」って、これまた自分たちのとこに批判が来ないように逃げ道を作ってコメントしてるけど、こんな書き方をしたら、米軍基地だって原発だって「国の利害に重大な関係があり」ってことにされちゃうし、「特別の事情により緊急の実施を要する」ってことにされちゃうことウケアイだ。
だって、今回の「改正案」に、こんなトンチンカンな項目が加えられたのは、防衛省の「米軍普天間飛行場の代替基地建設で環境アセスメントのやり直しが必要になった場合などに制限を受けないようにしたい」って意向と、鳩山内閣の「2050年までに34基の原発を建設したい」って意向とが合致した結果なんだから。
‥‥そんなワケで、ハトポッポが、普天間飛行場の「県外、国外移設」を断念した表向きの理由は、「海兵隊は沖縄にいないと抑止力にならない」っていう防衛官僚からのウケウリだった。過去のロードマップや評価書に目を通してれば、大部分がグアムへ移転しちゃう海兵隊に抑止力なんてないことは小学生でも分かるのに、周りの話を鵜呑みにするだけで、自分じゃ何も調べようとしなかったハトポッポは、防衛利権にベッタリの官僚や側近たちに、いいように利用されただけだった。でも、そんなハトポッポでも、当時は、まだ国会議員を続けてくつもりだったから、自分の選挙地盤の室蘭市の経済活性のために、原発のセールスに飛び歩いてた。
あたしは、ハトポッポが辞任を表明するまでの半年間の「首相のスケジュール」をぜんぶチェキしたけど、ハトポッポが沖縄問題で動いた時間は、2回の沖縄入りだけだった。「県内移設」に反対する沖縄の県議団が上京した時も、4月25日の沖縄県民大会の翌日に代表団が上京した時も、ハトポッポはスケジュールが空いてたのに面会を拒否してる。グアムと北マリアナの州知事が面会を求めた時も、スケジュールが空いてたのに面会を拒否してる。
もちろん、これは、何が何でも辺野古の現行案に戻したいと思ってた官房長官の平野が勝手にやったことだけど、ハトポッポが本気で沖縄の問題を考えてたら、自分から進んで面会の機会を作ったハズだ。その証拠に、自分が何よりも優先してた「原発のセールス」に関しては、この半年間、驚くほど動いてる。沖縄の問題に割いた時間の10倍以上を「原発のセールス」のために動いてるのだ。まるで、そのまんま東のように、政策そっちのけでセールスに走り回り、アジアの複数の国の首長には親書まで送ってる。
‥‥そんなワケで、何が何でも辺野古に基地を造りたいと考えてる防衛省と、何が何でも原発を林立させたいと考えてるハトポッポとの利害が一致したのが、この「環境アセスメント法の改正案」に加えられた「適用から除外するケース」の一文てワケて、この「水戸黄門の印籠」があれば、これからは、どんなに住民が反対しようとも、米軍基地や原発は、政府の思い通りに建設できちゃうのだ。
「えっ?いくら基地や原発が改定案から除外するって言っても、今までのアセスメント法は適用されるんでしょ?」って思うだろうけど、今までの「環境アセスメント法」ってのは、ハッキリ言ってザル法で、いくらでも政府が好き勝手にできたのだ。そして、それが、好き勝手にしにくい「戦略的環境アセスメント」に変更されちゃうから、必死になって「除外」させるように根回しをしたってワケなのだ。
たとえば、一番分かりやすいとこで、辺野古で行なわれた環境アセスメントの実体について説明すると、とにかく、最初から「建設ありき」で行なわれたものだった。自民党政権が沖縄の民意を無視してアメリカと合意した計画は、辺野古の海を埋め立ててV字型の滑走路を造るものだったけど、ここにはジュゴンの餌場や貴重なサンゴ礁があるから、沖縄の合意には至ってなかった。住民は「移設計画の白紙撤回」を求めてたし、基地容認派の仲井真県知事でさえ「滑走路は可能な限り沖合へ移動して欲しい」って要望してて、現行案には合意してなかった。
だから、自民党の議員が、ハトポッポの迷走ぶりを批判する時に、「せっかく決まってた現行案を民主党がメチャクチャにした」とかってノタマッてたけど、あれは大嘘で、沖縄は合意してないのに、自民党とアメリカで勝手に合意してただけなのだ。だからこそ、辺野古では、13年間にも渡って住民たちが反対の座り込みをしてるワケだし、防衛省側が反対する住民たちを強制的に排除ではないのだ。沖縄県との合意がなされてれば、どんなに住民たちが反対しても、法的には住民を強制的に排除して工事を強行することができる。そして、自民党は、13年掛かっても、沖縄の合意を得ることができなかったってワケだ。
で、自民党とアメリカとの合意案を実行に移するためには、何よりも先に、沖縄県との合意が必要なのに、自民党政権では、これを無視して、辺野古の環境アセスメントを実施した。だから、辺野古で建設反対の座り込みをしてる住民たちは、カヌーやボートで海へ出て、「アセスメントを行なうなら、その前に沖縄県との合意をしてください!」って訴え続けて来たのだ。だけど、完全非暴力で、丁寧な言葉で訴え続ける住民たちに対して、防衛省に雇われた作業員たちは、暴力で応戦して来た。高い足場から落とされて、気絶して病院に運ばれた住民もいたし、船をぶつけられて、一歩間違えば命を落としてた住民もいた。
ここまで酷いことをして強行された環境アセスメント調査は、完全に「海を埋め立てて基地を造っても環境にはほとんど影響はありませんよ」っていう「結論ありき」のデタラメなもので、ようするに、形だけの調査だった。何しろ、サンゴの着床の調査をする装置が、そのサンゴ自体を破壊して取り付けられてたんだから、これほどのデタラメはないだろう。そして、こんなデタラメな調査をして作られた報告書は、意味不明な専門用語を羅列した5400ページにも及ぶ膨大な量で、とても読むことができないものだった。
環境アセスメントの通常の報告書は、平均すると200ページほどで、最大でも400ページ程度なのに、辺野古の報告書は、通常のものの30倍近い量だった。そして、この報告書は、沖縄の県庁、名護市役所、沖縄防衛局報道室などで、平日に2日間だけ市民に公開されたんだけど、コピーを取ることは許可されなかった。普通の人は仕事をしてる平日に、5400ページもある報告書を2日間しか公開しない上にコピー禁止。ようするに、市民には「読ませない」ってことを前提にしたやり方だ。
何でかって言うと、市民がこの報告書を読んで、おかしいと思う点や反論などがあった場合は、行政に対してパブリックコメントを送ることができるからだ。形だけのデタラメな調査をして、「結論ありき」のデタラメな数字が並べてある報告書なんだから、時間を掛けて内容を精査すれば、おかしな点はいくらでも見つかるだろう。だけど、たとえ仕事を休んで2日間、市役所に通って、朝から晩まで読んだとしても、5400ページもある報告書なんて読みきれない。それに、コピーが禁止されてるんだから、おかしいと思った場所をノートに書き写す時間も必要だろう。
自民党政権時代に作られた今までの「環境アセスメント法」ってのは、パブリックコメントと同様に、完全に形だけのものだった。「住民の声を無視して政府が独断でやった」ってイメージを薄めるために、形だけ「住民に発言の機会を与えてやる」ってものだった。その証拠に、多くの先進国には、パブリックコメントを募集した結果、住民や国民からの反対の声が多かった場合には、その計画を白紙に戻す「ゼロオプション」てのがあるんだけど、ニポンにはない。ニポンの場合は、全住民が「反対」ってパブリックコメントを送っても、そんなもの無視して、政府は計画を強行できる。
だから、アメリカの飼い犬のコイズミが、アメリカ産の狂牛肉の輸入再開を独断で決めた時も、内閣府が実施したパブリックコメントでは、70%以上もの国民が「反対」だったのに、こうした国民の声は完全に無視された。そして、野党から「7割もの国民が反対してるのに輸入再開は時期尚早じゃないか?」って言われたコイズミは、ニヤニヤ笑いながら「食べたくない人は食べなきゃいいでしょ」って言ったんだよね。
‥‥そんなワケで、ハトポッポ政権下で行なわれた「環境アセスメント法の改正案」自体は、自民党政権下で作られた形だけの「環境アセスメント法」をいくらかマシにするもので、それなりに意味があった。だけど、これは、米軍機地や原発など、周辺の住民や環境に計り知れないほどの悪影響を与える危険極まりない事業に対してこそ必要なものだったのに、どうしても辺野古に基地を造りたい防衛省と、どうしても原発を乱立させたいハトポッポによって、本末転倒な「除外の項目」が付け加えられて、そのまま可決されちゃったのだ。つまり、これからは、政府が「必要だ」って言った基地や原発は、従来通りの「自民党方式」のデタラメ環境アセスメントだけでホイホイと建設できちゃうワケで、あたしは、これこそが、鳩山内閣の負の遺産だと思う今日この頃なのだ。
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