世間の常識は角界の非常識
お相撲のことを「角力」って書くことから、土俵は丸いのに「角界」って言うワケだけど、そんな角界での賭博フィーバーが話題になってる。日本相撲協会が「自分から申し出れば軽い注意で許してやる」的なことを言ったら、ナナナナナント! 65人もの力士が「賭博をやってました」って名乗り出たそうだ。内わけは、野球賭博が29人、花札や麻雀やゴルフでお金を賭けてたのが36人だそうだけど、元力士の話では「これは氷山の一角。実際にはもっと多いはず」ってことだった。
で、テレビのワイドショーに並んでる「自称文化人」の皆さんは、またまた好き勝手なコメントを垂れ流してるし、朝青龍の問題の時にも1人で飛ばしてた元力士でタレントの龍虎さんなんて、「私が現役の時は親方も力士もみんな賭け麻雀をやってましたよ」って言ってた。まあ、お金を賭けずに麻雀を打つ人なんてほとんどいないだろうし、麻雀マンガ雑誌にたくさん載ってる雀荘の広告にも、必ず「風速3の店」とかって、そのお店の賭け金のレートが明記してある。ちなみに「風速3」てのは「1000点30円」てことで、ハコになってウマがついても半チャンで1500円程度の支払いで済む「学生さん向きのお店」ってことだ。
パチンコにしたって、本来はギャンブルじゃないのに、店内のカウンターで交換した景品を店外の窓口で現金に交換するっていう方式によって、長年に渡って白昼堂々と賭博行為が行なわれてる。そして、競馬、競輪、競艇、オートレース、宝クジみたいに、国が認めてるギャンブルもあるし、細かいことを言えば、食事代や飲み代を誰が支払うかでジャンケンすることだってギャンブルってことになる。だから、力士たちにしてみれば、親方や先輩に誘われて野球賭博をやることも、花札や麻雀やゴルフでお金を賭けることも、まったく罪の意識なんかなくて、それこそ競馬やパチンコと変わらない感覚で楽しんでたんだと思う今日この頃、皆さん、いかがお過ごしですか?
‥‥そんなワケで、今回の角界の問題は、「野球賭博と、それ以外の賭け事とを分けて考えるべきだ」って意見が多い。これは、暴力団の資金源になってる野球賭博と、仲間うちでお金のやり取りをしてる他のギャンブルとは性質が違うってことなんだけど、あたしは、そんなに単純には分けられないと思ってる。だって、野球賭博をしてた力士でも、琴光喜(ことみつき)みたいに暴力団が胴元のトトカルチョに首を突っ込んでた力士もいれば、仲間うちだけでやってた力士もいるんだし、賭け麻雀や賭けゴルフでも、暴力団の関係者とやってた力士だっているかもしれないからだ。
だから、今回の問題を「賭博行為」と「暴力団との交流」との2つの問題に分けて考えて、前者は微罪、後者は重罪ってことにするのなら、やってたギャンブルの種類で区別するんじゃなくて、個々のケースをキチンと調べて、それぞれに対応しなきゃダメだと思う。もちろん、長年に渡って習慣的に行なわれてたことだから、個々のケースを調べるのは大変だと思うけど、もしもこれがあたしたち一般人だったとしたら、確実に警察に逮捕されてる「犯罪」なんだから、相撲協会の中だけで勝手に片づけていい問題じゃないと思う。
あたしの個人的な感覚だと、「大麻を吸った疑いがある」ってだけで、逮捕も起訴もされてない外国人力士を解雇処分にした前例がある以上、完全に法律に触れてる賭博行為をしたんだから、どんなに軽いケースでも「厳重注意」だけってのは筋が通らないと思う。暴力団と関わってた力士は全員解雇処分、仲間うちだけの賭け事でも最低1場所以上の休場処分、これくらいしなかったら前例とのツジツマが合わなくなる。もちろん、こんなことをしたら、名乗り出た65人の力士のうち、20人が解雇、45人が休場って感じになって、次の場所が開催できなくなるかもしれないけど、こうでもしなかったら角界の体質は何も変わらないと思う。
‥‥そんなワケで、1人で貧乏クジを引かされちゃった琴光喜は、お笑いコンビ「ザブングル」の加藤歩とソックリの顔で「悔しいです!」って言ってそうだけど、ずっと否定してた野球賭博の疑惑や暴力団との関係をとうとう認めちゃった。暴力団が胴元の野球トトカルチョを繰り返してたことや、それをネタに暴力団から恐喝されて300万円もの口止め料を支払ってたことをすべて認めたのだ。そして、これを受けて、佐渡ケ嶽親方は、本人の謹慎と次の名古屋場所への出場辞退を申し出たけど、琴光喜が野球賭博で負けた金額って、合計で数千万円て言うんだからビックル一気飲みだ。
琴光喜と言えば、日本テレビの「おもいっきり DON!」の司会でもオナジミの中山秀征と家族ぐるみの付き合いをしてるから、中山秀征に相談すれば良かったのに。面倒見が良くて多方面に人脈がある中山秀征なら、うまいこと話をマトメてくれたかもしれないのに‥‥なんてことも言ってみつつ、琴光喜の趣味はパチンコだから、野球賭博もパチンコの延長線上みたいな感覚で、まったく罪の意識なんか持たずにやってたんだと思う。でも、合計で数千万円も負けたってことは、どう見ても「単純賭博」じゃなくて「常習賭博」だから、刑法で言えば罰金刑じゃなくて懲役刑になる犯罪だ。
力士だとか一般人だとかってことを抜きにしても、暴力団が胴元の賭け事に手を出して、数千万円も負けてたってことは、その一部は暴力団の資金源になってたワケで、これは「反社会的行為への加担」って言われても仕方がない。コイズミがアメリカのイラク攻撃を支持して莫大な税金を上納したこととおんなじで、「お金は払ったけど人殺しはしてませんから私は何の罪もありません」てワケには行かない。イラク戦争に加担した他の先進国のように、ニポンでも国会でキチンと検証して、コイズミを始め自民党と公明党の責任を明確にすべきだ。
‥‥そんなワケで、また話がダッフンしちゃったからクルリンパと戻すけど、最初にも書いたように、世の中の多くの人たちは、暴力団の資金源になってる野球賭博と、仲間うちでお金のやり取りをしてる他の賭け事とは分けて考えるべきだ‥‥って雰囲気になってるし、あたしもそう思ってた。だけど、いろいろと詳細が分って来ると、仲間うちでお金のやり取りをしてる他の賭け事でも、ちょっとイメージが変わって来た。だって、仲間うちでの花札や麻雀でも、場合によっては、一晩で数百万円ていう大金が動くような高額の勝負をしてるって話だからだ。
これは、あくまでも推測だけど、中には、こうした仲間うちの賭け事で相手に大きな借金を作り、それをチャラにしてもらうために、次の場所でその相手にワザと負けるっていう八百長相撲をした力士だっていたかもしれない。そうなって来ると、「たかが賭け麻雀ごときで目クジラを立てるなよ。誰でもみんなやってることだろう」とは言えなくなる。だから、あたしは、たとえ仲間うちだけの賭け事だったとしても、どれくらい金額が動いたのか、現時点でどの力士がどの力士にどれくらい借金をしてるか、すべてを公表すべきだと思う。
だけど、そうも言ってられないのが、角界の賭博フィーバーのディープさなのだ。今回、相撲協会に名乗り出たのは、力士は65人だったけど、その他に、数人の親方や、力士の髷(まげ)を結う床山さんまで名乗り出たそうだ。つまり、角界自体が「日常的に賭博をする世界」になってたワケで、力士だけを処分すれば済むって問題じゃない‥‥つーか、親方から床山さんまでが日常的に賭け事をしてれば、中学や高校を卒業してお相撲の世界に入って来た純粋な子供たちは、それが当たり前の世界だと思い込むだろう。
そして、その親方たちだって、自分たちが現役の時代には、先輩や親方からギャンブルの手ほどきを受けたワケで、それが連綿と続いて来たんだろうから、単純に「力士が悪い」とか「親方が悪い」って問題じゃないと思う。しいて言えば、世の中の常識とはカケ離れた感覚がマカリ通ってる時代遅れで閉鎖的な角界そのものが問題だったワケで、まるで、今の自民党を見てるようだ。だから、あたしは、決して暴力団と関わってた力士たちを擁護するワケじゃないけど、今回の問題に関しては、力士に対する個人攻撃は筋が違うと思う。
今は、たまたま名前の出ちゃった琴光喜だけが「賭博力士の代表」みたいになっちゃってるけど、ホントにこの問題を根本的に解決しようと思ったら、まずは相撲協会の隠蔽体質こそを改めるべきだと思う。賭博をしてた力士、親方、床山さん、全員の名前を公表して、警察による全員の事情聴取が終わって処罰が決まるまでは、全員にキッチリと反省してもらうために、お相撲はお休みにすべきだと思う。こうでもしなかったら、今回名乗り出なかったヒキョ~な力士や親方だけが得をして、「バレなきゃいい」の世界に逆戻りだからだ。
‥‥そんなワケで、あたしもギャンブルが大好きで、パチンコは収入源、競馬は趣味、麻雀は頭の体操って分けて楽しんでるけど、他にも、花札も好きだし、ブラックジャックも好きだし、チンチロリンも好きだ。将棋や囲碁は弱いから、賭け将棋はやったことがないけど、町の将棋のお店では、賭け将棋をしてる人がいっぱいいる。ビリヤードでも、ダーツでも、お金を賭けて楽しんでる人はいっぱいいるし、あたしの知り合いには、酔ったイキオイで「1000円ジャンケン」をする人たちもいる。テーブルの真ん中に箱を置いて、お酒を飲みながら、全員がその箱に1000円ずつ入れて、ジャンケンで勝った人が総取り。これを何度も繰り返すんだけど、芸能人でもブロスポーツ選手でもなく、みんな一般人だから問題にはならない。そして、こうした現状を見ると、「たかがギャンブルくらいで」って気持ちになることは事実だけど、それでも、今回発覚した角界の問題はぜんぜん性質が違うから、ウヤムヤにしないで欲しいと思う今日この頃なのだ。
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