乗用車廃止法案
今、競馬は、「函館」と「新潟」と「小倉(こくら)」の3ヶ所で開催されてるけど、あたしは自分が馬券を買ってないもんだから、そんなに真剣には見てなかった。金曜日の夜にTOKYO FMの「杉本清のK-BAR」を聴いてるのと、土曜日にテレビ東京の「ウイニング競馬」、日曜日にフジテレビの「みんなのケイバ」を観てるけど、やっぱり、自分が予想したり馬券を買ったりしてないと、どうしても競馬は「他人事」になっちゃう。ナシクズシ的に中継を観てて、自分の知ってる馬が出ると、何となくその馬を応援しながら観てる‥‥って感じで、馬券を買ってる時みたいな、瞳の奥に炎がメラメラと燃え上がる「星飛雄馬」的な状態にはならない。
で、日曜日のこと、夕方の6時から「ちびまる子ちゃん」を観て、そのあとに晩ご飯食べてから、「飛雄馬伝」‥‥じゃなくて、「競馬伝」‥‥じゃなくて、「龍馬伝」を観てたら、何だか右手の痺れが酷くなって来たので、ソファーに寝転がってマッサージをした。鍼灸院の先生に教えてもらった通りに、あんまり力を入れないように気をつけて、麻痺してる指先から順番にクックックックッて揉んでるうちに、エアロスミスなら「Dream On」、井上陽水なら「夢の中へ」、フェイ・ウォンなら「夢中人」てワケで、あたしは眠っちゃった。
そして、何時間後か分かんないけど、ハッと気づいたあたしは、ツケッパナシだったテレビのチャンネルを一周させてみたら、どこかの局で競馬のダイジェストをやってた。もう、日付けの変わった深夜2時半で、久しぶりにサウナ風呂状態から解放された過ごしやすい気温だったから、あたしは、知らないうちに6時間も熟睡しちゃってた。それで、ぼんやりする寝起きの頭で、ナニゲに競馬のダイジェストを観てたら、メインレースのあとに、その他のレース結果をチャチャッと流し始めた。そしたら、新潟競馬の第5レースの新馬戦で1着になった馬が、ナナナナナント!「クリーンエコロジー」っていう名前だった今日この頃、皆さん、いかがお過ごしですか?
‥‥そんなワケで、とうとう競走馬の名前にも、地球温暖化を気にしたものが登場しちゃったワケだけど、あたしは、これって一理あると思った。だって、前自民党政権と現民主党政権が揃いも揃って炸裂させてる大バカ政策の「エコカー減税」なんて、エコはエコでも「エコロジー」じゃなくて「エコノミー」のほうで、まったく地球温暖化の対策になってないことは一目瞭然だからだ。電気自動車やハイブリッドカーだけを減税するなら分かるけど、ガソリン車だろうと何だろうと、ほとんどのメーカーのほとんどの車種が「エコカー減税」の対象だなんて、こんなもん、単なる「自動車大安売り」じゃん。
それも、どこの官僚が考えたのかバレバレだけど、5000ccもの大型エンジンを積んでて、タップリと排気ガスを出すトヨタの最高級車のレクサスは100%減税されてるのに、660ccのスズキのアルトは半分の50%しか減税されてないのだ。あたしたちシロートが見たって、5000ccのセダンと660ccの軽自動車だったら、どっちが環境にやさしいか分かるだろう。燃費にしても、排気ガスにしても、道路への負担にしても、すべての面で軽自動車のほうが環境にいいハズなのに、大型の乗用車やワゴン車のほうが減税率が大きく設定されてるのだ。こんなデタラメ、聞いたことがない。ようするに、環境なんてどうでいいと思ってる政府が、環境をダシにして莫大な税金を使い、トヨタの売り上げに協力してるってだけのことだ。
だから、あたしは、「クリーンエコロジー」って名前の馬が1着になったことを知って、「おおっ!」って思った。だって、これこそが、ホントの意味での「エコ」だって思ったからだ。5000ccのレクサスよりは、660ccのアルトのほうが環境にやさしいけど、それでも、ガソリンを燃やして排気ガスを出して走ってることに変わりない。ハイブリッドカーにしたって、ガソリンも使うし、巨大な電池を作るためにレアメタルが必要で、世界のアチコチでレアメタルの発掘戦争が勃発してる。そう考えたら、たとえハイブリッドカーだろうが電気自動車だろうが、環境を破壊してることには変わりない。
だけど、馬はどうだろう? ガソリンの代わりに水を飲み、レアメタルの代わりにニンジンを食べて、排気ガスなんていっさい出さずにパカパカと走ってくれる。これほどクリーンでエコロジーな乗り物は他にない。まさに、「クリーンエコロジー」っていう名前をつけるに相応しいと思う‥‥ってワケで、あたしは、アメリカや中国みたいに広大な国はともかくとして、ニポンみたいに狭い国の場合は、自動車の代わりに馬やロバを利用したらどうだろう?‥‥って思った。
もちろん、すべての自動車を馬やロバにすることはできないから、公共のバスとか、長距離を走る大型トラックとかは、今まで通りに自動車を使うとしても、個人が所有してる乗用車を始め、タクシーみたいに乗用車ベースの営業車なんかも、ぜんぶ馬やロバに替えちゃう。ようするに、「乗用車」っていうカテゴリーのものをすべて法的に禁止にして、その代わりに、馬やロバに乗って道路を走ってもいいってことにするワケだ。
だけど、誰でも自由に馬に乗って走っていいことにしたら、収拾がつかなくなっちゃうし、事故も多発するだろう。だから、当然のことながら、免許制度にする。そのためには、まず、全国の自動車教習所を乗馬クラブに模様替えして、自家用車の代わりの自家用馬を持ちたい人は、乗馬クラブに通って、最低限の技術を身につけなきゃなんない。ちなみに、現在の道路標識や信号なんかは、そのまま流用するから、すでに自動車の免許を持ってる人は、道交法はOKってことで、乗馬の実技をマスターするだけで「普通乗馬免許」が交付される。
‥‥そんなワケで、免許を取得したら、次は自分の馬、そう、「自家用車」ならぬ「自家用馬」を買いに行くってワケだけど、お金のないあたしは、「新車」ならぬ「新馬」なんて手が届かないから、「中古車センター」ならぬ「中古馬センター」に買いに行くってワケだ。だけど、芦毛の馬が欲しかったあたしとしては、ディーラーに行って3歳や4歳の新馬を買うよりも、中古馬センターに行って8歳を超えた5年落ちの中古馬を買ったほうが、値段が安いだけじゃなくて、カラーリングも純白に近くなってるから嬉しいってワケだ。
で、環八沿いの中古馬センターに行って、8歳のホワイトフォンテンを36回払いで買ったあたしは、ウキウキしながら「納車」ならぬ「納馬」の日を待ってた。マンションの「駐車場」ならぬ「駐馬場」も、ちゃんと1区画を借りて、あたし専用の「ワラ」や「カイバ桶」もセットされてる‥‥って言うか、先に駐馬場を確保して、最寄の警察署で「駐馬場証明」を発行してもらっておかないと、自家用馬を買って自分の名義にすることはできないのだ。
とってもお天気のいい日曜日、中古馬センターの担当者が、ホワイトフォンテンの納馬にやって来た。ホワイトフォンテンは、全身をピカピカに磨かれて、新馬と見間違えそうなほどだった。長くて美しいシッポの根本には、サービスで付けてくれたオプションの赤いリボンが結ばれてた。それから、蹄鉄は、街乗りがメインのあたしのために、グリップが良くて長持ちするラジアルタイプを装着してもらった。鞍(くら)と鐙(あぶみ)はホールド性を重視してレカロで揃えて、手綱(たづな)はクイックなモモにした。少し値段が張ったけど、初めての自家用馬だから、パーツは気に入ったものにした。
ちなみに、あたしの駐馬場のお隣りさんは、マンションの3階に住んでるご家族のスペースで、中学生と小学生の子供が2人いる4人家族だから、2頭だての立派な「ワンボックス馬車」を駐馬してる。ずいぶんと高かったみたいで、とっても大切にしてて、よく駐馬場の隅の水道のとこで、「洗車」ならぬ「洗馬」をしてる‥‥ってワケで、あたしは、中古馬センターの担当者から、ひと通りの説明を受けて、任意保険の証書も受け取ったので、いよいよ初めてのドライブに出発することにした。
あたしは、純白のホワイトフォンテンに颯爽と飛び乗り、246の急坂を一気に駆け上がり、瀬田の交差点を左折して、環八を用賀方面へと向かった。用賀インターから東名高速に乗って、厚木のほうまで飛ばしてみようと思ったからだ。こんな時、新馬だと「ならし運転」が必要なんだけど、中古馬の場合は関係ない。納馬されたその日から、レッドゾーン仏血義理!ガンガンに飛ばすことができる。ただ、馬の場合は、牛みたいに「反芻(はんすう)」ができない。つまり、「食いだめ」ができないってワケで、牛なら、お腹が空いた時に、胃の中の食べ物を口の中に戻して、それをもう一度食べる「反芻」って必殺技があるけど、馬はお腹が空いたら、その場でご飯を食べさせなきゃなんない。だからって、遠出するたびにニンジンやワラを山積みにしてくワケにも行かない。
だけど、皆さん、ご安心を。2011年に「きっこ内閣」が制定した「乗用車廃止法」によって、全国のガソリンスタンドは無用の長物になっちゃったから、みんな「ニンジンスタンド」へと商売替えをした。ちなみに、「ニンジンスタンド」ってのは愛称で、ニンジンだけじゃなく、リンゴやワラを始めとした馬たちの好物が各種、取り揃えてあるし、清潔な水飲み場もあれば、ドライバーのためのコンビニも併設してある。「洗車機」ならぬ「洗馬機」もあるし、蹄鉄や鞍や鐙のメンテナンスも行なってくれる。そのスタンドの会員になれば、利用するたびにスタンプ帳にニンジンのスタンプを押してくれて、1冊ぶん貯まれば、いろんなグッズと交換してくれる。
‥‥そんなワケで、国民のほとんどが自動車の代わりに馬を利用するようになったから、全国にある「自動車教習所」は「乗馬クラブ」へ、「駐車場」は「駐馬場」へ、「ガソリンスタンド」は「ニンジンスタンド」へ、「カー用品ショップ」は「馬具ショップ」へと、それぞれ商売替えをしたワケだし、タクシーやハイヤーも小型の馬車に変わったワケだし、路線バスや小型トラックも4頭だての大型馬車に変わったワケだ。そして、法的に残された自動車は、高速道路で500キロ以上を走る長距離バスや長距離トラック、巨大な物を運搬するトレーラーくらいで、一般道を走る自動車の姿は見ることがなくなった。
そして、そうなってくると、何よりも優先して変更しなきゃならないのが、やっぱり「道路」だろう。今の道路は、自動車が走りやすいよう舗装してあるけど、こんなに硬い路面を走ったら、馬の脚には負担が掛かり過ぎる。だから、最初のうちは、裏に硬質ラバーを貼った「ラジアル蹄鉄」を履かせることで対応してたけど、自家用馬の普及にともなって、全国の道路の「土化」や「芝化」が公共事業として行なわれることになった。使用頻度の高い国道や県道を優先して、硬い路面を剥がし、良質の土を敷き詰めて、馬の脚にも環境にもやさしい道路作りが始まったのだ。
全国を縦横無尽に走ってる舗装路が、すべて土や芝の道路に変われば、これだけでも地球温暖化の対策になるし、雨が染み込む自然のままの道路は、ゲリラ豪雨の被害も軽減してくれる。そして、道路が土や芝に変われば、道路上に散乱してる馬糞の回収も効率よくできるようになる。1日に何度か、「資源再生局」の専用馬車が決まったルートを走り、道路上の馬糞を回収して行く。回収された大量の馬糞は1ヶ所に集められ、乾燥して化石燃料の代わりとして再利用される。そう、馬糞発電だ。石油や石炭のように枯渇する恐れもなく、風力や水力のように不安定でもなく、そして、原子力のように未来の子供たちに負の遺産を残すこともない、本当の意味での次世代の発電、それが馬糞発電なのだ。
口蹄疫の拡大で大打撃を受けた宮崎県の牧場は、全国的にニーズが高まった自家用馬の生産に乗り出した。気候のいい宮崎県で生産された自家用馬は、その乗りやすさと毛並みのよさから大人気になり、一気に巨大産業へと成長した。それに、馬は口蹄疫に感染しないから安心だ。そして、苦しい生活を余儀なくされていた全国の過疎地の農家も、急激に増えた自家用馬の飼料として、ワラやニンジンなどを生産するようになり、国がまとめて買い取るシステムで、生活が安定した。馬の飼料としてのニンジンは、人間が食べる野菜のように見た目を重視する必要がないため、大量の農薬を使う必要もなくなり、土地そのものが改善されて行った。
‥‥そんなワケで、「きっこ内閣」が断行した「乗用車廃止法」によって、今まで環境を破壊し続けて来た自動車メーカーは次々と倒産して、多くの失業者があふれる事態になった。しかし、それは一過性のもので、自家用車に代わって急激に拡大した自家用馬に関する産業が一気に増加したため、労働力は引く手あまたとなり、ほとんどの求職者は数ヶ月のうちに職を得ることができた。全国の道路を「土へ戻す」という公共事業も、不況続きだった建設業界に福音をもたらした。アスファルトやコンクリートでフタをされていた地面が顔を出し、地球が呼吸を始めたために、夏は熱気を土が吸い取ってくれて、冬は地熱の暖かさが感じられるようになった。そして、都会から自動車が消え、排気ガスが消えたことによって、東京でも満天の星空が見られるようになった。あたしは、マンションの駐馬場に降りて行き、愛馬のホワイトフォンテンと一緒に、夜空をまたぐ天の川を見上げながら、「きっこ改革、コンプリート!」と言って、小さくガッツポーズをするのだった‥‥って、「クリーンエコロジー」って馬が1着になったことから、こんなとこまで妄想しちゃった今日この頃なのだ(笑)
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