夕涼み
とにかく、これでもか!これでもか!ってくらい暑い日が続いてて、全国各地で、最高気温の新記録や、連続猛暑日の新記録や、熱中症で救急搬送された人数の新記録や、ガリガリ君の生産が追いつかなくなる新記録や、いろんな新記録の更新が続いてる。「節約」と「原発反対」のために、数年前からエアコンを使わない生活を続けてるあたしとしては、今年の夏ほど、くじけそうになった年はない。だけど、「もうじき9月になる」「9月になればだんだんに涼しくなるだろう」って自分に言い聞かせて暑さに耐えてきたのもトコノマ、25日に気象庁が発表した「3ヶ月予報」を聞いて、あたしはクラクラしちゃった。だって、テレビのきれいなお天気お姉さんは、屈託のない笑顔を振りまきつつ、こんなセリフをノタマッたのだ。
「今年の夏は猛暑が続いていますが、気象庁が、今日、発表した3ヶ月予報によりますと、9月や10月になっても夏日や真夏日が続き、例年並みの気温に戻るのは11月に入ってからだそうです」
出川じゃないけどオーマイガー!!ってワケで、すでに限界ギリギリのあたしとしては、「9月になれば」って気持ちだけで今日まで耐え続けてきたのに、9月どころか10月まで暑いだなんて、もう完全にアッチョンブリケだ。つーか、「夏日や真夏日」って何なんだよ?って思ったので、さっそく調べてみた。そしたら、その日の最高気温が25度を超える日が「夏日」、30度を超える日が「真夏日」、そして、35度を超える日が「猛暑日」だってことが分かった。ついでに言えば、夜間の最低気温が25度以上のことを「熱帯夜」って言う。だけど、現実問題として、「35.1度なら猛暑日だから厳しいけど、34.7度なら1ランク下の真夏日だから、いくらか過ごしやすい」なんてこたーない。35.1度だろうと34.7度だろうと「暑いものは暑い!」って感じの今日この頃、皆さん、いかがお過ごしざんしょ?(笑)
‥‥そんなワケで、30度を超えると「真夏日」、35度を超えると「猛暑日」って言ってるのは、あくまでも日陰の「百葉箱」の中の話であって、ギラギラと太陽が照りつけてる場所に温度計を出せば、アッと言う間に50度を超えちゃう。特に地面がアスファルトやコンクリートの場所では、地面が熱く焼けてるから、地面から1メートルくらいまでの一帯は60度もあったりする。だから、前にも書いたことがあるけど、小さい子供を連れてる親、ベビーカーに赤ちゃんを乗せてる親、犬の散歩をしてる人たちは、十分に注意が必要だ。自分の顔がある高さの気温よりも、子供や赤ちゃん、犬がいる高さの気温のほうが、10度も高いからだ。自分は大丈夫でも、子供や犬が熱中症で倒れちゃうこともある。
だから、これから9月になり、10月になったら、今よりも注意が必要になるかもしれない。今は、まだ自分も倒れそうなくらいに暑いから、小さな子供を連れてる親も、それなりに子供にも注意を払ってるだろう。だけど、9月や10月の「夏日」や「真夏日」は、いくら暑いとは言え、今の暑さよりはやわらぐだろうから、ついつい子供のことまで気にしなくなる可能性がある。でも、親がそんなに暑くなくても、連れてる子供は、親よりも気温の高い場所を歩いてるのだ。たとえば、気温が25度の「夏日」なら、直射日光が当たる場所でも35度くらいだろうから、親はいいとしても、連れてる子供は45度くらいの場所を歩くことになるから、十分に注意してほしいと思う。
で、子供もいないし犬も飼ってないあたしとしては、当面、自分の心配だけしてりゃいいワケだけど、さすがのあたしも、これだけ暑い日が続いた上に、さらにあと2ヶ月も続くのかと思うと、いいかげんウンザリしてくる。だけど、ここまでエアコンを使わずにがんばってきたんだから、ここで「エアコンのスイッチを入れちゃう」っていう誘惑には負けたくない。これまでも、あたしは、室内の暑さに耐えられなくなると、水風呂に入ったり、冷たいタオルを首に巻いたり、氷枕をして横になったりして、それでもダメな時は、図書館へ行ったり高島屋へ行ったりして、なんとかシノいできた。ようするに、エアコンの効いてる涼しい場所へ避難してきたのだ。
ちなみに、夏場に涼しい場所へ行くことを普通は「避暑」って言うけど、場合によっては室温が50度を超えちゃって、テーブルの上に生タマゴを置いといたら30分で温泉タマゴになっちゃうようなあたしのお部屋から逃げ出すことは、「避暑」じゃなくて「避難」て言ったほうがピッタリだ。実際、水槽のお水も30度を超えちゃって、黒メダカやクチボソたちが煮魚になっちゃいそうなので、水槽のお水を半分ずつ頻繁に入れ替えたり、出かける時にはペットボトルにお水を入れて凍らせたやつを水槽に入れたりしてるほどだ。
‥‥そんなワケで、あたしは、ふと思ったんだけど、自分のお部屋の暑さに耐えられなくなったからって、エアコンが効いてて涼しい図書館や高島屋へ避難するのは、藤木くんなんじゃないかってことだ。そう、「卑怯」ってことだ。だって、あたしのお部屋にエアコンがないならともかくとして、あたしの場合、エアコンはあるのに自分の意思で使わないことにしてるんだから、自分のお部屋のエアコンを使わない代わりに、エアコンの効いてる他の場所へ避難したら、ちょっとズルイと思うからだ。
最初にも書いたように、あたしがエアコンを使わないのは、「節約」と「原発反対」が二大理由だ。なので、「節約」に関しては、あたしが図書館へ涼みに行こうが、高島屋へ涼みに行こうが、お部屋のエアコンさえ使わなければいいんだから、まったく問題ない。それどころか、どこかへ出かけてれば、エアコンだけじゃなくて、パソコンの電源も落としてるし、テレビやラジオもつけないから、すごく節約になる。
だけど、「原発反対」に関しては、東京に住むあたしたちが涼しい思いをするために、ゼイタクな思いをするために、他県の見ず知らずの人たちに危険きわまりない原発を押しつけてることがガマンならないのだ。夜の最低限の照明とか、冷蔵庫や洗濯機とか、生活する上でどうしても必要なぶんの電気に関しては仕方ない。だけど、自分が涼しくなりたいなんていうワガママなことのために、他県の人たちに迷惑をかけてるなんて、こんなことは絶対に許されない。そして、そのために、あたしはエアコンを使わないようにしてるのに、自宅のエアコンの何十倍、何百倍も他県の人たちに大迷惑をかけてる図書館や高島屋に涼みに行ったら、あたしがやってることは無意味になっちゃう。
もちろん、図書館も高島屋もずっとエアコンを効かせてるんだから、あたしが行こうが行くまいが、消費電力は変わらない。あたしが行こうが行くまいが、他県の人たちにかけてる迷惑の量は変わらない。だけど、あたしの気持ちの問題として、やっぱり筋が通らないと思う。たとえば、読みたい本があって図書館に借りに行ったり、お買い物があって高島屋に行ったりしたのなら、ちゃんとした目的があるワケだから、本を探してる間やお買い物をしてる間にエアコンで涼しい思いをするのは副産物的なことになる。だけど、何の用事もないのに、最初から涼しくなる目的で行くなんて、やっぱり藤木くんになっちゃう。
「原発反対」だなんて偉そうなことを言ってなければ、図書館へ涼みに行こうが、高島屋へ涼みに行こうが、山手線の冷房車に乗ってグルグル回ってようが、どんな涼み方をしても自由だ。でも、あたしの場合は、この「きっこの日記」でも原発に反対する内容を何度も書いてるんだから、他県に押しつけた原発で作った電気で涼しい思いをしながら書いてたら、説得力がゼロになっちゃう。原発に反対するなら、まずは電気を使ったゼイタクをやめることから始めなかったら意味がない。
‥‥そんなワケで、あたしは、藤木くんにならずに、この暑さを乗り切る方法として、ニポンの伝統的な「夕涼み」のシステムを導入することにした。あたしのお部屋が暑いのは、コンクリートに熱がこもる古いマンションだからだけど、1日の流れをフランク・ザッパに説明すると、午前中はガマンできるレベルで、建物自体に熱が浸透してくる午後1時くらいから本格的に暑くなってくる。そして、外の気温が下がり始める夕方になっても、お日様が沈んで暗くなっても、コンクリートが熱を持ったままだから、ずっと暑い。ようするに、午前中は室内よりも外のほうが暑くて、夕方から夜にかけては外よりも室内のほうが暑くなるってワケだ。
だから、午後の灼熱タイムもつらいけど、夕方からの時間帯もなかなかつらい。午後の灼熱タイムは、外も室内も暑いから、もうどうしようもないワケで、水風呂に入ったり氷枕をしたりして乗り切るしかない。だけど、夕方から夜にかけては、暑いのは室内だけで、外は涼しくなり始めてるから、ヤマアラシのジレンマが発動しちゃう。少しでも風が通るなら、窓を開けてれば室内の温度が下がるんだけど、マンションの構造と周りの建物のセイで、すべての窓を全開にしても、ほとんど風は通らない。だから、室内の熱気を外に出すように、キッチンの換気扇を回したり、ベランダのガラス戸を開けたとこには外向きに扇風機を置いたりするんだけど、それほど効果はない。
それで、あたしは、夕方になると、駐車場に降りて、猫たちと夕涼みをしてたんだけど、ちょうどマンションの住人たちが帰ってくる時間帯なので、たくさんの人たちと顔を合わせる。だから、あまりだらしないカッコもできないし、駐車場は夜でも電灯が明るいから、スッピンてワケにも行かない。だからって、夕涼みするだけのために、熱気でムンムンしてる室内でお化粧するのもバカバカしい‥‥ってワケで、あたしが思いついたのが、「誰もいない場所へ行って夕涼みする」って作戦だった。
‥‥そんなワケで、あたしは、多摩川の河原に行って夕涼みしようと思ったんだけど、今は子供たちが夏休み中だから、駅の近くの河原は、中学生や高校生たちがタムロって大騒ぎしてて、ワビもサビもない。その上、あたしだけの秘密の場所は、東急グループの再開発でメチャクチャにされてて、立ち入ることもできない。それで、あたしは、フェラーリF2004(ママチャリ)で、ちょっと上流の静かな場所へ行ってみることにした。多摩川の土手の上にはサイクリングロードがあるから、涼しい川風を受けながらのんびりと漕いでても、10分ほどで東名高速の橋まで行ける。
東名高速の橋まで行かなくても、もっと手前に静かなポイントはたくさんあるんだけど、夕方から夜にかけて1人で夕涼みすることを考えると、何より重要なのは、変質者に襲われないようにすることだ。この辺は、変質者だけじゃなくて、スクーターに2人乗りした引ったくりも出るし、しばらく前にはホームレスのおじさんが殺される事件も起こった。だから、いくら北斗神拳の伝承者で神崎風塵流の免許皆伝のあたしでも、気をつけるに越したことはない‥‥ってワケで、東名高速の橋のとこまで来れば、河川敷には白バイの練習コースがあって、土手沿いの道には警察官が常駐してる「警視庁交通安全教育センター」がある。だから、この辺を夕涼みのポイントにすれば、変質者に襲われる確率を極限まで低くできるのだ。
まだ明るい夕方の4時半くらいに自転車で出発して、途中から土手の上のサイクリングロードに乗ってのんびり走ってると、頭上や背後には青空が広がってるけど、進行方向の西の空にお日様が沈む準備を始めてる。今の時期は、西から南の空にかけて積乱雲(入道雲)が残ってることが多いから、積乱雲の向こう側にお日様が沈みかけてて、積乱雲の面白い形がピンクに縁取られてたりする。こないだは、右を向いたゴジラにそっくりな巨大な積乱雲があって、背中のギザギザのやつまでちゃんとあって、それが夕日を受けてピンクに縁取られてたから、感動するほど美しかった。
東名高速の橋のとこに到着して、自転車を停めて、ベンチや土手のブロックに腰掛けてボーッとしてると、西の空の色が少しずつピンクから紫に変わって行ったり、オレンジとブルーに変わって行ったりして、だんだんに薄暗くなってくる。さっきまで青空だった頭上や背後が、知らないうちにしっとりしたブルーグレーに変わり、対岸のずっと先には、富士山のシルエットが小さく見える。丹沢の山々の稜線と、ところどころに見えるビルや団地の輪郭が、1枚の影絵のように溶け合っていく。お日様は、まだ雲の向こう側に残ってるから、積乱雲のずっと上に点在してる「風にちぎれた小さな雲たち」が、下のほうからの光に照らされて、薄暗い空の中でそこだけ黄金色に輝いてる。二度とおんなじ景を見ることができない、一期一会の空だ。
‥‥そんなワケで、昼間の暑さは変わらないけど、夕方になると、ほんの少しだけ秋を感じられるようになって来た。河川敷の木々から聞こえて来るセミの声も、やかましかったアブラゼミからツクツクボウシに変わったし、暗くなると蚊や羽虫を食べるために土手の上を乱舞してたコウモリの数も、ずいぶん少なくなって来た。そして、何よりも、川風の肌触りが変わった。あれほどねっとりとしてて、肌にまとわりつくような風だったのが、今はサラッとした絹のような肌触りの風に変わった。だから、1時間ほど夕涼みをしてから帰ると、まだ昼間の熱がこもったままの暑いお部屋でも、気持ちだけは涼しく過ごせる今日この頃なのだ。
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