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2010.11.21

父さんの「シャックリ焼きそば」

前回の「エリザベス女王杯」から、いちいち「獲ったどぉ~~~!」とか「負けたどぉ~~~!」とか言うのはヤメにしたけど、今日の「マイルチャンピオンシップ」も、最近アリガチな「当たったのにマイナスだどぉ~~~!」って結果になった。あたしは、14番のガルボをイチオシ、17番のキンシャサノキセキをニオシにしてて、他にも16番のサプレザや18番のキョウエイストームも候補にあげてたので、7枠と8枠から枠連を数点ずつ買ってた。何でかって言うと、7枠と8枠は3頭ずつなので、2頭だけの他の枠よりも組み合わせが多くなる‥‥って言うセコイ発想からだ。

それで、さらにセコイ発想をしたあたしは、「あたしの予想した馬は2着になることが多い」「あたしの予想した馬は3着までの中に2頭しか入らない」っていう今までのパターンを踏まえて、イチオシのガルボかニオシのキンシャサノキセキが2着になり、あたしの選んでない馬が1着になるっていう形を考えてみた。7枠と8枠の他は、あたしが予想したのは3枠6番のジョーカプチーノと6枠11番のワイルドラズベリーで、この2頭からは、最初の1000円で3連複やワイドを買ってた。だから、残りの1000円のほうでは、この2頭の枠を外して、あたしの予想した馬のいない1枠、2枠、4枠、5枠から、それぞれ7枠と8枠へ枠連を買った。

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ザクッと説明しとくと、あたしは、予算の2000円を半分に分けて、最初の1000円は「夢を買う1000円」、残りの1000円は「現実を買う1000円」ていう作戦にしてみたってワケだ。そしたら、1着は13番のエーシンフォワード、2着は8番のダノンヨーヨー、3着は15番のゴールスキーって結果、つまり、あたしのイチオシだったガルボの両隣りが1着と3着になり、結果として7枠がきちゃったのだ。そして、あたしが「現実を買う1000円」のほうで買ってた枠連の4-7が当たっちゃった今日この頃、皆さん、いかがお過ごしですか?


‥‥そんなワケで、あたしは、キンシャサノキセキが1番人気だろうって思ってたんだけど、1番人気は2着になったダノンヨーヨーで、キンシャサノキセキは3番人気だった。だから、人気の低かった7枠の馬が1着になったけど、2着には1番人気の馬が入ったため、枠連の4-7は、悪くはないけど良くもない1650円の配当だった。2000円ぶんの馬券を買って配当が1650円だから、結果はマイナス350円。そう、きっこ名物の「当たったのにマイナスだどぉ~~~!」ってワケだ(笑)

でも、この辺が競馬の難しいとこで、特に、今回みたいに、人気の低い馬が1着になり、1番人気の馬が2着になると、どんなふうに馬券を買ったのかで配当が大きく違ってくる。たとえば、1番人気の馬が1着になって、2着に人気の低い馬がきた場合には、1着と2着を予想する馬連の馬券なら、馬単でも馬複でも配当はそんなに違わない。だけど、今回みたいに、1着に人気の低い馬が入ると、馬単の配当がグンと良くなる。今回なら、馬複が14240円だったのに対して、馬単は40970円と、3倍近くにもなった。もしも1着と2着の馬が逆に入賞してたら、馬単の配当は1万円台の後半から2万円台の前半くらいだったと思う。

今回、1着になったエーシンフォワードは、18頭中の13番人気だったので、単勝が5240円、複勝が1070円もついた。だから、終わったあとに言っても意味がないんだけど、何も考えずに1番から18番までの単勝を100円ずつ買ってれば、1800円の投資で5240円の配当、差し引き3440円も儲かってたのだ。アレコレと考えて、3連複にワイド、馬連に枠連と買って、結局、マイナス収支になったあたしって一体‥‥って感じだ。

だけど、そうそうウマくいかないのが、ウマだけに競馬ってワケで、この日の京都競馬場で行われた全12レースの結果を見てみると、ほとんどのレースで、1番人気から3番人気までの馬が1着になってる。12レースのうち9レースが、単勝は200円とか300円とか400円とかの配当だ。そして、1000円ちょいと2000円ちょいの配当が1レースずつ。つまり、この「マイルチャンピオンS」以外の11レースでは、1番から18番までの単勝を100円ずつ買うなんて方式をしたら、ほぼ全滅だったってワケだ。

つまり、単勝の配当が5000円以上もついた今回の「マイルチャンピオンS」は、メッタにないケースだったってことになる。だから、1番から18番までの単勝をぜんぶ買うなんて方式をしたら、間違いなく大損をする。だいたいからして、競馬はギャンブルなんだから、こんな買い方はギャンブラーの風上はおろか、風下にもおけない。単勝を買うなら、できれば1頭、多くても3頭くらいに絞って買うのがギャンブルなワケで、こうした買い方なら、配当が低くても対応できる。

そう言えば、あたしのもっとも古い記憶、4歳の時に父さんに連れられていった府中競馬場の「AJC杯」では、あたしの気に入ったホワイトフォンテンの単勝を父さんが特券(1000円)で買って、これが7000円以上もついたから、7万円以上になった。この時は、レースの名前も馬の名前も配当も知らなくて、あたしは、帰りにレストランか喫茶店みたいなとこで大きなチョコレートパフェを食べたことしか覚えてなかったけど、大きくなってから調べて分かった。

大人になってから聞いたら、この時、父さんは、自分の予想した馬券を枠連で何点か買ってて、そこには、ホワイトフォンテンは入ってなかったそうだ。だけど、パドックでホワイトフォンテンを見たあたしが、あまりにも「あのお馬さん!あのお馬さん!」と騒ぐもんだから、それまでのレースで少し勝ってたこともあって、あたしのためにホワイトフォンテンの単勝を買い足してくれたそうだ。あたしは、父さんに手を引かれて人ゴミの中をアチコチ連れまわされた記憶しかないけど、きっとそのどこかで馬券を買ってたんだと思う。

これは、10年以上も前に父さんから聞いたことなので、あたしの記憶も定かじゃなくて、もしかしたら細かい部分は違ってるかもしれないけど、当時は、今みたいに3連単だの馬連だのワイドだのっていろんな買い方はできなくて、単勝、複勝、枠連の3種類しかなかったそうだ。その上、渋谷とかの場外馬券売り場だと、500円か1000円の馬券しか買えなかったから、今みたいに「当たれば配当の大きい3連単を100円ずつ10通りも20通りも買う」なんてことはできなかった。

あ、そうだ!これも記憶が定かじゃないけど、たしか父さんは「後楽園の場外馬券売り場なら200円から買えた」って言ってたような気がする。だから、あたしが幼稚園のころ、今から35年くらい前は、渋谷の場外は500円か1000円の馬券しか買えなかったけど、後楽園、ようするに、今の東京ドームのとこの場外は、最低単位が200円から買えたみたいだ。だけど、3連単や3連複、馬単や馬複がなくて、連勝式は枠連しかなかったんだから、今みたいに何百倍なんて配当はメッタに出ない。さらに言えば、無印の馬が1着になったとしても、その馬の同枠に1番人気の馬がいれば、枠連の配当はグッと低くなる。だから、高配当を狙って人気の低い馬の単勝や複勝を買う人も多かったんだと思う。

‥‥そんなワケで、幼稚園の年少のころと、小学校に上がった1~2年生のころ、あたしは、父さんに連れられて、渋谷の場外にも何度か行った。大きな歩道橋を渡り、渋谷警察のとこからトコトコと歩いてく道は、ずっとキレイなんだけど、場外馬券売り場への路地を曲がると、ボロボロの小さな売店とか、道路に汚いテーブルとイスと並べてるお店とかが何軒かあって、昼間から焼き鳥やおでんを食べてお酒を飲んでるおじさんがいっぱいいて、子供のあたしには完全に異世界だった。

そして、馬券売り場へ入ってくと、入り口の付近のアチコチに予想屋さんがいて、小さな木箱の上に乗って予想をしてた。人気のある予想屋さんの周りには、小さな人垣ができてて、いくらなのか分からないけど、何百円かの小銭を払った人に、小さく折った紙を渡してた。父さんは「人の予想で買ったら当たっても嬉しくない」って感じのことを言って、いつも素通りしてたんだけど、あたしは子供だったから、人垣ができてるものには興味があった。何度か父さんの手を引っぱって、父さんに肩車してもらって、人垣の外から、予想屋さんのダミ声の解説を意味も分からずに聞いてた記憶がある。

そうだ!今、思い出したけど、お家に帰ってきてから、予想屋さんのマネをしてダミ声のしゃべり方をしてたら、母さんに「何のマネをしてるの?」って聞かれて、「競馬の予想屋さん」て答えたら、ものすごく怖い顔で「やめなさい!」って怒られたんだ。今、思うと、「競馬の予想屋さん」のマネをしたことがいけなかったんじゃなくて、すでに母さんとは半別居状態だった父さんに連れられて、あたしが競馬場や場外馬券売り場に行ってることが腹立たしかったんだと思う。

当時のあたしは、競馬場ならお馬さんが見られたから楽しかったけど、場外馬券売り場はつまらなかった。ただ、父さんと会えることが嬉しかっただけで、あとは、競馬新聞と赤エンピツを持ったおじさんたちがウロウロしてるだけだったからだ。そんなあたしの唯一の楽しみが、馬券売り場の前のお店で、割り箸を刺したフランクフルトや焼きそばを食べることだった。

これは、大きくなってから推測したんだけど、渋谷の場外馬券売り場へ行ったあとに、駅のほうまで戻ってきて、東横のレストランでお子様ランチやチョコレートパフェを食べた時は、父さんが競馬で勝った日、そして、馬券売り場の前のお店でフランクフルトや焼きそばを食べた時は、父さんが競馬で負けた日だったんじゃないかって思ってる。

‥‥そんなワケで、決してキレイとは言えない売店みたいなお店の前のイスに座り、父さんが買ってくれた焼きそばを食べると、必ずシャックリが出た。そんなにパサパサしてたワケでもないし、あたしは美味しくて大好きだったんだけど、どう言うワケかシャックリが出た。ひとくち、ふたくち、みくちと食べてくと、透明のパックの3分の1くらい食べたとこで、ヒック!‥‥ヒック!‥‥ヒック!‥‥って始まっちゃう。そして、このシャックリは、父さんが三ツ矢サイダーを買ってきてくれるまで続いた。不思議なことに、三ツ矢サイダーを飲むと、シャックリはピタリと止まった。

それで、あたしは、その焼きそばのことを「シャックリ焼きそば」って呼んでた。この呼び名は、そのうち父さんも使うようになって、「きみこ、今日はシャックリ焼きそばでいいか?」なんて聞かれたこともあった。あたしは、父さんとの共通の秘密の言葉ができたみたいで嬉しかったんだけど、母さんの前では「シャックリ焼きそば」って言葉は使わなかった。父さんと会った日の夜、母さんから「今日は何を食べてきたの?」って聞かれると、あたしは普通に「焼きそば」って答えてた。理屈じゃ分からなくても、子供ながらに敏感にいろんなことを感じてたんだと思う。

そして、小学3年生くらいになると、そんな父さんとも普通の日曜日には会えなくなって、1年に2回、お正月と夏休みにしか会えなくなった。だから、父さんと「シャックリ焼きそば」を食べたのは、小学2年生の時が最後で、渋谷の場外馬券売り場も、それ以来、ずっと行ってなかった。そして、中学に上がる時には、母さんと父さんは正式に離婚して、一緒に暮らしてたおばあちゃんも亡くなり、あたしは母さんと2人きりになったので、生まれてからずっと住んでた渋谷のお家を出て、世田谷区の二子玉川のアパートに引っ越してきた。そして、あたしは、渋谷にもあまり行かなくなった。

だから、あたしが、次に渋谷の場外馬券売り場へ行ったのは、高校生になってからだった。日曜日に友達と渋谷へショッピングに行った時に、ふと、父さんと何度も行った場外馬券売り場のことを思い出して、わざわざ駅の反対側までまわり、嫌がる友達をなだめながら様子を見に行ったのだ。単なる好奇心だったのか、それとも、もしかしたら父さんに会えるかもしれないと思ったのか、その時の気持ちは覚えてないけど、何年ぶりかで見た場外馬券売り場は、美術館みたいな立派な外観に変わってた。やっぱり、圧倒的におじさんが多かったけど、それでも、父さんに連れられて来てた時には見かけなかった若い人たちもいたし、中には、親子連れもいた。

そして、あたしが何よりも時の流れを感じたのは、あんなにアチコチにいた予想屋さんが1人もいなくなってたことと、何軒もあった売店やお店がほとんどなくなってたことだ。その代わりに、小ギレイになった売店が同じ場所にあって、コンビニみたいにパンや缶コーヒーを売ってた。もちろん、道路にテーブルやイスは並べてなかったし、「シャックリ焼きそば」も売ってなかった。あたしは、頭の中に描いてた父さんの後姿が、スッと消えちゃったような気がして、不思議な寂しさを感じたことを覚えてる。

そんなこんなで、馬券の話から、ついつい思い出話になっちゃったけど、父さんが競馬に夢中になってたのは、やっぱり、目には見えない何かを掴もうとしてたんだと思った。人によって、それは、「夢」とか「希望」とかいろんな言葉で呼ばれてるけど、決してお金じゃないのだ。競馬の場合は、自分の予想が的中すれば、それは「お金」という目に見える形で返ってくるけど、それはあくまでも副産物であって、父さんが掴もうとしてたものは、「自分の予想が的中した喜び」だったんだと思う。

昨日の土曜日、京都競馬場の第7レースで、単勝の配当が1万1000円ていう大穴が出たんだけど、2着にはもっと人気の低い馬が入ったので、3連複は160万円、3連単は1180万円ていうスーパー配当になった。たった100円が1分ちょっとで1180万円になるなんて、これこそ「夢」だろう。そして、昨日、この「夢」を掴んだ人は、全国に7人しかいない。巨額の配当金は嬉しいに決まってるけど、それ以上に嬉しいのが、「的中させた」っていう事実だと思う。だって、他力本願な宝クジとは違って、自分の予想で的中させたからだ。

‥‥そんなワケで、これほどの馬券だから、普通にデータだけで予想してた人たちは、絶対に見向きもしなかった組み合わせだと思う。3連単は「1-13-7」だったんだけど、的中させた7人の中には、自分が生まれたのが「1月13日の7時」だから、この馬券を買った人もいるかもしれないし、あたしみたいに、馬の名前や騎手の名前からのコジツケで買った人もいるかもしれない。だから、あたしも、この7人の中に入れるように、これからも、データを無視した「コジツケ予想」と「夢のお告げ予想」と「直感予想」を軸にして、どこかにいる父さんと一緒に「夢」を追い続けて行こうと思った今日このころなのだ。


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