ジャンク級の総理大臣
なんか、この国の総理大臣て、マトモにニポン語の読み書きもできないレベルの人が順番に担当してるっぽい感じなんだけど、答弁のたびに文脈と関係なく「ある意味」って言葉を何度も何度も織り込む菅直人にしても、何を言いたいんだかチンプンカンプンな国語力だ。そして、そんな菅直人は、27日、アメリカの格付け会社による日本の国債の格下げ評価に対して「私はそういうことには疎い」って発言して、この発言が批判を浴びると、28日、「これは格付けに詳しくないという意味ではなく、ある意味、詳しく聞いていなかったという意味だ」なんて、さらにトンチン菅なイイワケを炸裂させた。
子供でも分かるように、「疎い」ってのは、そのことに詳しくない、よく分からないって意味であって、どんなに無理に解釈したって、「詳しく聞いていなかった」なんて意味にはならない。こんなデタラメなニポン語を使われると、菅直人って、ニポン語そのものに疎いんじゃないかと思えてくる‥‥ってなワケで、すでにネットでは大ブレイクしちゃってるけど、まずは、コレを読んでみて欲しい。
「日本の国債に対するムーディーズの格付けが二段階下がった。景気回復が見込めず財政悪化に歯止めがかからないと見られた結果。日本の国債はほとんどが日本国内で消化されその多くは銀行が買っている。通常なら格付けが下がれば国債も下がるのだが銀行は資金運用先が国債以外に無いため、国債の価格が下がらないという奇妙なことになっている。外国に資金が流出し始めれば一挙に国債は暴落する恐れがある。能天気な総理や財務大臣には分かっているのだろうか。」
http://www.n-kan.jp/2002/05/post-1294.php
で、コレが何なのかって言うと、今から9年前の2002年5月31日付で、当時、民主党の代表だった菅直人が、自分のホームページで公開した「自民党に対する強烈な批判」だ。2002年と言えば、自民党の総裁&ニポンの総理大臣はコイズミだ。そのコイズミに対して、菅直人は、ニポンの国債の格付けが下がったことを「能天気な総理や財務大臣には分かっているのだろうか」って強烈に批判してた今日この頃、皆さん、いかがお過ごしですか?
‥‥そんなワケで、2002年5月って言えば、コイズミ内閣の最初の年だから、菅直人の言う「能天気な総理」ってのはコイズミのことだし、「(能天気な)財務大臣」ってのは塩川正十郎のことだ。皆さんご存知の通り、コイズミは、「国債の発行額を30兆円以内に収める」っていう公約を掲げたけど、総選挙に勝ったトタンに手のひらを返して、ジャンジャンと国債を発行し始めた大嘘つき野郎ってワケだ。
分かりやすく時系列で書いてくけど、ほんの12年前、1998年(平成10年)までは、ニポンの借金の総額は約395兆円だった。これでもすごい金額だけど、取りあえずは今の半分以下だった。で、この年に、当時の小渕総理が、経済対策として40兆円もの国債を発行したのを皮切りに、この国の経済は「財源が足りなくなれば借金すればいい」っていう自転車操業のエンドレス地獄へと足を踏み入れちゃったのだ。
で、自民党政権が、なんでこんなに国債を発行して借金を増やし続けたのかって言うと、「政官財の癒着システム」で自分たちも甘い汁を吸い続けるために、官僚の言いなりになって、湯水のごとく税金をムダづかいして来たからだ。自民党政権は、献金をくれる企業を潤すために不必要な道路やダムを造り続け、官僚どもの天下り先を確保するために中身のない外郭団体を作り続け、大赤字を生み出す箱モノを作り続けてきた。
そして、小渕と森が毎年30~40兆円ずつ借金を増やし続けたあとに、コイズミが登場して、「このまま自民党に任せていたら日本は潰れてしまう!」「私が自民党をぶっ壊す!」って言って、公約のひとつに掲げたのが「国債の発行額を30兆円以内に収める」ってものだった。総選挙までの3年間の国債発行額は「107兆円」だったんだけど、コイズミはこれを「30兆円以内に収める」って国民に約束したのだ。そして、コイズミは、総選挙で大勝利したワケだけど、総理大臣になったトタン、クルリンパと手のひらを返して、それまでの小渕や森よりも国債を発行し始めちゃった。コイズミが総理に就任してからの3年半で、なんと「206兆円」もの国債を発行しやがったのだ。この呆れ返る発行額は、歴代の総理大臣の中でも、2位以下を大きく引き離したワースト1の数字なのだ。
あたしだって鬼じゃないから、「国債の発行額を30兆円以内に収める」って公約に対して、「31兆円だったから公約違反だ!」なんて厳しいことは言わない。それどころか、50兆円でも70兆円でも文句は言わない。それまでの3年間の発行額が「107兆円」だったんだから、この金額よりも低ければ文句を言うつもりはなかった。だけど、コイズミが発行した国債は、就任から3年で合計「206兆円」、それまでの2倍なのだ。「発行額を減らす」って公約に掲げておきながら、減らすどころか2倍も発行しちゃうなんて、これほどの公約違反はないだろう。そして、野党から「公約違反だ!」って批判されたコイズミは、こともあろうに、「この程度の公約を守れなかったことなど大したことじゃない!」ってノタマッて、ニポン中を呆れさせたのだ。
そんなこんなで、自民党に政権を任せてたら、たった10年で、ニポンの借金は395兆円から2倍以上の900兆円へと膨れ上がっちゃったワケだけど、これは、小渕と森が下地を作り、コイズミが一気に膨らませ、それを安倍、福田、麻生の3バカが引き継いだ結果だ。そして、こんな状況で政権交代したんだから、民主党政権にしてみれば、最初から莫大な借金を背負った倒産寸前の会社を任されたようなもんで、ゼロからのスタートどころか、ものすごいマイナスからのスタートってことになった。だから、多くの国民は、最初のうちだけは、温かい目で見てたんだと思う。
‥‥そんなワケで、次から次へと公約を反故にする民主党政権のテイタラクさは、もう書く気にもならないほど期待ハズレなので、今回は「国債の格付け」ってものについて、テレビから消えてく池上彰の代わりに、あたしが解説してみようと思う。まず、「国債」に関してだけど、これには、長期とか短期とかいろんな種類があるんだけど、そこから解説してると長くなっちゃうので、今回はぜんぶマトメて「国債」ってことで進めてく。で、その「国債」が何なのかって言うと、フランク・ザッパに言えば、国が発行する株券みたいなもんだ。だから、その国が発行した国債を買った人は、利息で儲けることができる。
つまり、国債は、世の中に掃いて捨てるほどいる「投資家」って種族の対象になってるワケだ。そして、投資対象だからこそ、第三者機関による評価が必要なワケだ。それぞれの国の経済状況を調査して、その国の国債の価値や安全性を段階評価で格付けする。こうした国債の格付け会社がいくつもある。たとえば、ニポンとおんなじように、毎年毎年、膨大な国債を発行し続けて、とうとう破綻しちゃったギリシャなんかは、「フィッチ・レーティングス」っていう格付け会社によって、当初は「BBBマイナス」っていう投資適格水準の中で一番下の評価をされてた。ようするに、「投資の対象としてはギリギリですよ」ってことだった。
だけど、去年の4月に、「S&P(スタンダード・アンド・プアーズ)」っていう格付け会社が、ギリシャの国債を3段階引き下げて「ジャンク級」にして、6月には「ムーディーズ・インベスターズ・サービス」も4段階引き下げて「ジャンク級」にした。この「ジャンク級」ってのは、「ジャンクフード」とか「ジャンク屋」って言葉でオナジミの「ガラクタ」って意味で、専門的な言葉だと「投機的水準」て意味になる。で、今まで「投資適格水準」だったものが「投機的水準」にまで引き下げられたってことは、「投資には不適格である」っていう太鼓判を押されちゃったワケで、「投機」、つまり、「すぐに紙クズになっちまうから少しでも高く売れる時に投げ売りしちまえ!」ってことだ。
‥‥そんなワケで、自分の買った国債が「投資適格水準」であれば、その国際の期限がくるまで持ってれば、利息を上乗せした金額で売ることができるから、これは「投資」になる。だけど、それぞれの国の国債の評価は、常に変動してるから、投資家たちは、こうした格付け会社の評価を見て、「そろそろ危ないな」って感じた国債は、まだ「投資適格水準」のうちに手放したりするワケだ。だから、この辺の売り買いに関しては、株と似たようなもんなんだと思う。
で、ニポンの国債だけど、今回、騒がれてるのは、「S&P」がニポンの長期国債の格付けを今までの「AA(ダブルA)」から「AA-(ダブルAマイナス)」へ1段階引き下げたことを受けて、記者から質問された菅直人が、「私はそういうことには疎い」って答えたことだ。仮にも一国の総理が、自国の国債の格付けが下がったことに対して、このコメントはまずいだろう。そして、菅直人は、すぐに「これは格付けに詳しくないという意味ではなく、ある意味、詳しく聞いていなかったという意味だ」ってイイワケをしたけど、もしもホントにそうだとしたら、これはこれで、また別の問題が発生しちゃう。だって、ニポンの国債の格付けが下がるって話は、去年の暮れから流れてた情報だからだ。
あたしたち一般市民で、株だの国債だのとは無縁に生きてる普通の人間なら、こうしたニュースは、テレビや新聞で報じられた時点で知るもんだけど、総理大臣は別だろう。去年の暮れに情報が流れた時点で、すぐに的確に対応してれば、たとえマイナス評価を避けることができなかったとしても、間違っても「私はそういうことには疎い」だなんてセリフは口にしなかったハズだ。「日本の長期国債の格付けが1段階下がるという情報は昨年末から知っていたが、そのためにも財政をしっかりと立て直すためにベテランの与謝野さんに協力を要請した」とかって言って、ブーイングを浴びてる与謝野の入閣をもプラスに転換させちゃうような対応だってできただろう。
だけど、こうした対応ができないのが、菅直人って人間の無能さの表われであり、人望の無さの表われなんだと思う。どんなにシッポを振ってすり寄ってっても、財務官僚からも公明党からもソッポを向かれちゃう。それが、菅直人だ。野党時代とは言ってることが180度クルリンパしても、分厚いツラの皮で平然とテレビに映ってる。それが、菅直人だ。
‥‥そんなワケで、菅直人が1998年に出版した著書、『大臣』(岩波新書)では、当時の自民党政権を「官僚にコントロールされた官僚内閣制」だと断じて、「脱官僚」を掲げてる自分たち民主党への政権交代が必要だって書きまくってる。たとえば、こんなことも書いてる。
「「どんな人が大臣になっても務まるように、挨拶文から答弁書まですべて私たちが用意します。大臣は私たちの言う通りに動いていただければ、1年の在任期間中、大過なくすごせるようにしますから」と言って、実権を政治家の手から奪っていった。自民党政権が続いていると言われながらも、実態は官僚政権、霞ヶ関政権が続いている。」『大臣』(岩波新書)より引用
もちろん、これは、1998年の時点での考えなんだろうけど、菅直人は、去年の3月にも、民主党本部での講演で、「(官僚は)知恵も頭も使っていない。霞ヶ関なんて学校の成績が良かっただけで大バカだ」って発言してる。これは、鳩山内閣で、菅直人は「副総理」って立場での発言だ。だから、『大臣』を出版したのは10年以上前だけど、少なくとも去年の3月までは、菅直人は官僚主導の政治を批判してたってことになる。たとえば、ここに、野党時代の菅直人のメッセージ映像があるけど、ここでも「現在の日本は官僚が自分たちの天下り先をつくるために税金を無駄遣いしている官僚集権国家だ」ってこと、そして、政権交代によって政治を官僚の手から取り戻すんだってことを力説してる。
だけど、菅直人は、自分が総理大臣になったトタンに、これまで何十年も貫いてきた姿勢を瞬間的にクルリンパしちゃった。去年の6月の代表選に勝ち、総理大臣になったトタンに、記者会見でこんなことを言い出しちゃったのだ。
「国民の立場をすべてに優先する中で、官僚の力を使って政策を進めていく内閣を作っていきたい。官僚こそが政策や課題を長年取り組んできたプロフェッショナルだ。官僚を排除して政治家だけでものを考え決めればいいということでは全くない」
これを聞いて、全国の人たちは、特に民主党を支持して政権交代を望んでた人たちは、全員が声をそろえて「おいおいおいおいおーーーーい!」って叫んだだろう。だって、民主党は、「官僚主導から政治主導へ」って看板を掲げて総選挙を戦い、それで自民党を蹴散らして政権交代を果たしたからだ。それなのに、官僚批判の急先鋒だったハズの菅直人が、こともあろうに、この豹変ぶりだ。アマゾンの熱帯雨林にいるカメレオンでも、ここまでは変われないだろう。
‥‥そんなワケで、マクラに書いたように、コイズミ政権下の2002年、「ムーディーズ・インベスターズ・サービス」がニポンの国債の格付けを「A(シングルA)」に引き下げた時に、菅直人は、これを「景気回復が見込めず財政悪化に歯止めがかからないと見られた結果」だと言って、「外国に資金が流出し始めれば一挙に国債は暴落する恐れがある」と危惧した上で、当時のコイズミと塩川正十郎のことを「能天気な総理や財務大臣には分かっているのだろうか」って厳しく批判してた。だけど、今回、自分がおんなじ立場になったら、「私はそういうことには疎い」ってんだから、それこそ開いた口が塞がらない。9年前の自分のセリフを振り返ってみれば、国債の格付けが下がるのは「景気回復が見込めず財政悪化に歯止めがかからないと見られた結果」なワケなのに、それを平然とスルーできるなんて、すでに菅直人はコイズミ以上の「能天気な総理」、「ジャンク級の総理」になっちゃってるんだと確信した今日この頃なのだ。
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