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2011.01.30

夢遊病の女

今日、ものすごく不思議なことがあった。洗濯機を回し始めてから、「そうだ!」って思って、枕カバーも一緒に洗うことにして、枕から外したら、中から靴下が出てきたのだ。あたしのお部屋はマグロの倉庫みたいに寒いから、もちろん寝る時も重装備で、上も下も何枚も重ね着してるのは当然として、靴下も2枚重ねで履いてる。それが、数日前のこと、朝、目が覚めたら、片方の靴下が無くなってた。ようするに、右足は靴下を2枚履いてるのに、左足は1枚になってたのだ。

お布団の中も、ベッドの後ろ側も、ベッドの下も、念のためにシーツの下も、考えられる場所はぜんぶ探したんだけど、見つけることができなかった。それで、あたしは、キツネにつままれたみたいな気分になりつつも、「そのうち見つかるだろう」ってことで、その靴下のことは忘れることにした。そしたら、今日、枕カバーの中から出てきたってワケだ。だから、あたしは、寝てる間に、無意識のうちに自分で入れちゃったんだと思うけど、それが、ちょっと考えられないのだ。

たとえば、枕にバスタオルみたいなのをグルリと巻いてあるだけとか、単なる袋状の枕カバーで、枕を入れたら口のほうを折るだけとか、こういうカバーなら、無意識のうちに靴下を押し込んじゃう可能性もある。だけど、あたしの枕カバーは、口のとこがジッパーになってて、枕を入れてからジッパーを閉めるタイプの本格的なものだ。それも、寝てる時にジッパーがジャマにならないように、一番細かい目のジッパーが、口よりも数センチ奥まった部分についてるから、ふだんでも開け閉めが大変なのだ。

指でつまむ部分も小さいし、片方の手で反対側をピンと引っぱってから開け閉めしないとジッパーがスムースに滑ってくれない。だから、とてもじゃないけど、寝たままの姿勢で、その枕に頭を乗せたままでジッパーを開けて、そこに靴下を入れてから、また閉めるなんてことはできないと思う今日この頃、皆さん、いかがお過ごしですか?


‥‥そんなワケで、寝てる間に無くなった片方の靴下が、たとえば、おトイレで見つかったとしたら、それは、片方の靴下が脱げかけてる状態で、夜中におトイレに行き、その時に自然に脱げちゃったって考えれば、ちゃんと納得できる。たとえば、冷蔵庫の中で見つかったとしたら、それは、夜中に寝ボケて自分で冷蔵後に入れちゃったって考えれば、それなりに納得できる。だから、枕カバーの中に入ってたのも、これとおんなじで、寝ボケての行動だってことで納得できる。

だけど、状況的には納得できても、物理的には納得できないのだ。百歩ゆずって、枕カバーのジッパーが開いたままになってたとかなら、まだ少しは納得できる。寝ボケて枕のジッパーを開けて、そこに脱げた靴下を押し込んだまま、また深い眠りについた‥‥って感じになるからだ。これで、枕を抱えるような形で目が覚めてれば、こうした推測もアリエールな感じになってくる。

でも、現実には、枕はちゃんといつもの位置にあったし、ジッパーもキチンと閉まってた。さっきも書いたように、この枕カバーのジッパーは、開ける時も閉める時も、反対側をピンと引っぱってやらないと滑ってくれないから、片手での開け閉めは絶対に無理なのだ。だから、ホントにあたしの仕業なんだとしたら、あたしは、無意識のうちにベッドの上にムクッと起き上がり、枕を縦に持って、両手を使ってジッパーを開け、そこに片方の靴下を押し込んでから、またジッパーをキチンと閉めて、それから枕を元の定位置に置き、それで、また寝たってことになる。

いくら何でも、これだけシッカリした行動をしてたら、目が覚めてからも薄っすらと記憶に残ってそうだし、それ以前に、この行動の最中に目が覚めると思う。だけど、あたしには、何の記憶もないんだから、これがあたしの仕業だとしたら、これだけの作業を寝ボケたままの状態でやってたってことになる。だとしたら、これはもう、単なる「寝ボケ」とかのレベルじゃなくて、完全に「夢遊病」だ。ベッドに寝たまま、脱いだ靴下をお布団の外に蹴り出しちゃうくらいなら普通だけど、ベッドの上にムクッと起き上がり、両手を使う作業をしてたんだとしたら、どう考えてもヤバイ状態だ。

もしも、あたしが「夢遊病」だったとしたら、夜中にムクッと起き上がり、そのままキッチンへ行って、お鍋をガスにかけてお湯を沸かして金ちゃんラーメンを作り、どんぶりに入れてツルツルと食べてから、どんぶりやお鍋を洗って片づけて、またベッドに戻ってきて寝たのに、朝になると何も覚えてない‥‥ってことも起こりえる。つーか、これなら別に問題はないけど、作ったラーメンを「食べる」とは限らない。だって、現に、靴下は枕カバーの中に入ってたからだ。「寝ボケ」にしろ「夢遊病」にしろ、通常では考えられないヘンテコなことをしちゃうんだから、作ったラーメンを頭からかぶったりしちゃうかもしれない。そしたら大ヤケドだし、ガスの火で火事になっちゃう危険性もある。

‥‥そんなワケで、アニメの「アルプスの少女ハイジ」では、アルムの山からフランクフルトのクララの家に連れてこられたハイジが、夜中にムクッと起き出して、外へ行こうとする。もちろん、ハイジ本人は眠ってる状態で、体だけが無意識のうちに動いてたんだから、完全に「夢遊病」だろう。だけど、これには、都会での生活がストレスになってて、心の中でアルムの山に帰りたいと思ってる深層心理が働いてたんだから、「無意味な行動」とは言えない。ちゃんと原因があって、その原因に対しての意味ある行動だ。

だけど、おんなじアルプスが舞台でも、ベッリーニのオペラ、「夢遊病の女(La sonnambla)」では、主人公のアミーナが、眠ったまま窓から外へ出て、水車小屋の屋根の上を歩き回っちゃう。もしも落っこちたら、よくて骨折、ヘタしたら死んじゃう。これも、ストーリーの流れから見れば、婚約者のエルヴィーノに他の男との仲を疑われて、婚約を破棄されちゃったあとの出来事だから、アミーナには「絶望」っていう原因がある。だけど、アミーナは、屋根から普通に下りてくるし、その様子を見たエルヴィーノは、自分が彼女の夢遊病状態の姿を見て誤解してたってことに気づき、2人は結ばれる‥‥って流れなんだから、アミーナが「死」を覚悟して屋根に上ったとは考えにくい。

つまり、おんなじ夢遊病でも、何らかの深層心理が働いてるケースもあれば、まったく無関係なケースもあるんだと思う。たとえば、夜中にムクッと起き上がり、眠ったままの状態でキッチンへ行き、冷蔵庫の中のものをムシャムシャと食べちゃうような夢遊病の人がいたとしても、厳しいダイエットを続けてたことによって、ずっと「何か食べたい」って思ってたような人なら、ちゃんと原因があっての行動ってことになる。そして、ちゃんとお腹いっぱいにご飯を食べてるのに、原因もなく、おんなじことをしちゃう人もいるかもしれない。

ただ、あたし自身のこととして考えると、深層心理が働いてようがどうだろうが、とにかく、ケガをしたり、火事になったりするのだけは絶対に避けたい。だけど、無意識のうちに、枕カバーの中に靴下を仕舞っちゃうってことは、そのうち、とんでもないことをしでかしちゃうかもしれない。だって、枕カバーの中に靴下を仕舞っちゃうっていう行動自体の「突拍子の無さ」もさることながら、両手を使っての細かい作業をこなしちゃったっていう「技術的な精度」も備わってるっぽいからだ。これだけのことを眠った状態でこなしちゃったってことは、そこらの夢遊病者には技術的に無理なことでも、あたしならオチャノコサイサイかもしれない。

‥‥そんなワケで、古今東西、夢遊病でとんでもないことをした人のことを検索してみたら、まず初めに見つかったのが、縁起でもないんだけど、自分で自分をピストルで撃っちゃった男のニュースだった。ここに英文の記事があるけど、去年の10月26日のこと、アメリカのコロラド州に住む63歳のサンフォード・ロスマンさんが、大きな銃声で目を覚ますと、自分の足が血まみれになってて、足元にピストルが落ちてたそうだ。幸い、すぐに病院に運ばれて命に別状はなかったそうだけど、記事によると、ロスマンさんはお酒も麻薬もやってないから、原因は「sleepwalking (夢遊病)」だって書かれてる。

ま、あたしはピストルなんか持ってないから、どんなに激しい夢遊病状態になったとしても、ロスマンさんみたいなことにはならない。だけど、落ち着いて考えてみると、キッチンには包丁が何本もあるし、テーブルのペン立てにはカッターやハサミがさしてあるし、仕事用のバッグにはシザーのセットが入ってるし、他にも、お部屋の中には凶器になりうるものがたくさんある。いくら銃社会のアメリカだからって、ロスマンさんがピストルをテーブルの上とかに出しっ放しにしてたとは思えない。普通は引き出しの中とかに仕舞ってるだろうから、ロスマンさんの場合も、眠ったままの状態で机のとこまで行き、引き出しを開けて、そこからピストルを取り出して、自分の足を撃っちゃったんだと思う。

つまり、あたしが、眠ったままの状態でキッチンへ行き、引き出しを開けて包丁を取り出し、それで自分の体に傷をつけちゃうことだって、可能性としてはアリエールってことになる。そう考えると、何だか怖くなってくるけど、だからって、毎日ヒンパンに使う包丁を毎日寝る前に金庫に仕舞うワケにもいかないし、それ以前に、あたしは金庫なんて持ってない。それに、危険なものをどこか安全な場所に仕舞うとしても、包丁からカッターからハサミから工具に至るまで、何から何までを毎日仕舞うなんて無理に決まってる。

でも、ホントに危険だと思ったら、こんなにメンドクサイヤ人なことをしなくても、たとえば、寝室には絶対に危険なものを置かないようにして、寝室に複雑な鍵をかけるって方法もある。あの数字を合わせる鍵で、5桁くらいのやつにすれば、夢遊病状態なら開けられないだろう‥‥って思ったのもトコノマ、次にあたしがビックル一気飲みしちゃったのは、2年前のこの記事だ。この記事では、オハイオ州のトレド大学の論文雑誌、「Sleep Medicine」に掲載された事例を紹介してるんだけど、これが驚くべきものなのだ。

「44歳の女性」とだけ書いてあるんだけど、この女性は、夜の10時に就寝した。そしたら、2時間後にムクッと起き上がり、眠ったままの状態で、自分のパソコンを立ち上げて、自分の名前とパスワードを打ち込んでメールフォームにログインして、3通のメールを打って送信しちゃったのだ。もちろん、本人は、そんなことはまったく覚えてない。朝、目が覚めたら、自分のパソコンにメールを送信した痕跡があり、送信済みメールを見てみたら、大文字と小文字の入り混じった意味不明なメールが見つかったってワケだ。

だけど、送信されてた他のメールには、「明日、この地獄の穴を整理してくれ」とか、「夕食と飲み物は午後4時に。ワインとキャビアだけを持ってきて」とか、ちゃんと文章にはなってるけどヘンテコなものもあって、この女性はショックを受けたそうだ。送信先については、この記事には書かれてないけど、ちゃんと送信されてたってことは、誰かのアドレスに送ったことになる。

あたしは、この記事を読んで、最初のピストルの記事よりも怖くなった。だって、ちゃんと目が覚めてる状態でも、相手を怒らせちゃうようなメールや日記を書いちゃうこともあるあたしなんだから、夢遊病でメールなんて打ったら、とんでもない相手にとんでもないメールを送信しちゃうことウケアイだからだ。それに、お友達とかに変なメールを送るくらいなら謝れば済むけど、日記やブログに変なことを書いてアップしちゃったら、それこそ取り返しがつかなくなる。どっかの陰湿なヤツにソッコーで魚拓を取られて、翌朝、目が覚めて気づいた時には、もう全国区になってるだろう。そして、いくら「夢遊病でやってしまったことだ」って説明しても、絶対に信用してもらえないだろうし、それを証明することもできなそうだ。

‥‥そんなワケで、この記事の続きを読むと、さらに恐怖が膨らんでくる。この記事が引用してる論文によると、夢遊病はそこらを歩き回るだけじゃなくて、車の運転をしたケース、料理を作ったケース、楽器を演奏したケース、絵を描いたケースなんかが報告されてるそうだ。そして、極めつけは、強姦や暴力や殺人のケースだ。つまり、本人はまったく記憶がなくて、脳みそ的にはグッスリと眠ってる状態なのに、その体が外を歩き回り、見ず知らずの女性を強姦したり、見ず知らずの人に暴力を振るったり、果ては人殺しまでしちゃうのだ。

そして、何よりも怖いのが、これはあくまでもアメリカやカナダでの例だけど、夢遊病状態で殺人を犯した犯人が、夢遊病だったってことが立証されて、嫌疑を取り下げられたケースもあるってことだ。こうなってくると、加害者はともかく、被害者のほうがシャレにならなくなってくる。ま、サスガに、人を殺すとか殺されるとかってケースはマレだと思うけど、自分が大ケガしちゃうケースはたくさんあるみたいだ。たとえば、ドイツのデンミンて言う街に住む17歳の少年は、夜中にムクッと起き上がり、夢遊病でアパートの4階の窓から飛び降りちゃった。

それも、窓は高い位置にあったのに、わざわざダンボール箱を踏み台にして窓から飛び降りたのだ。そして、10メートル下の知面に叩きつけられて、手足を骨折したのに、それでもまだグーグーと眠ってたそうだ。あたしのお部屋はマンションの2階だけど、ベランダの真下には鉄の柵があるから、もしも夢遊病で飛び降りたら、大ケガするのは間違いないし、心臓とかに柵が突き刺さったら死んじゃうかもしれない。

で、ナニゲに恐ろしい夢遊病だけど、自分の体を亀甲縛りでもしてベッドに括りつけとくくらいしか対策は思いつかない。だけど、そんなことできないし、中には、夢遊病をうまく利用してる人もいる。北ウェールズの30代の看護師、リー・ハドウィンさんは、普段はものすごく絵がヘタクソなのに、寝てる間にムクッと起き上がり、ミゴトな絵を描いちゃう。最初は、目が覚めると、あまりにも上手な絵が描いてあるので、マサカ、自分が描いたものだとは思わなかったそうだ。それで、ビデオカメラをセットしてみたら、夜中に自分が起き上がり、絵を描いてる姿が映ってたのだ。普段から絵がうまい人が、夢遊病でうまい絵を描くなら分かるけど、ハドウィンさんの場合は、寝てる間にだけ潜在的な才能が開花するってワケだ。

‥‥そんなワケで、あたしも、このハドウィンさんとおんなじパターンの夢遊病になれば、寝てる間に競馬の予想をして、翌朝、テーブルの上の紙に書かれた数字の通りに馬券を買えば、3連単が連発しちゃうとかってことも考えられる。だから、今夜からは、ノートとボールペンを枕元に用意して、寝てみようと思う。だけど、明日の朝、目が覚めると、ノートとボールペンが無くなってて、どこを探しても見つからない。そして、何日後かに枕カバーをお洗濯しようと思って外すと、枕カバーの中からノートとボールペンが出てくるような気がしてる今日この頃なのだ(笑)


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