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2011.02.07

「見ちゃう派」と「見ない派」

あたしとおんなじネズミ年だから、ちょうど、ひとまわり年下の美容師のT子が、突然、こんなことを言った。


「きっこさんて、カレシのケータイとか見ちゃう派ですか?」


あたしは、「えっ?」って思った。だって、カレシだのカノジョだのに限らず、夫婦であろうが、親子であろうが、友人であろうが、「人のケータイを無断で見る」ってことは、あたしの常識じゃアリエナイザーなことなのに、T子の質問の仕方は、まるで世の中には「見ちゃう派」と「見ない派」が半々に存在してるかのような表現だったからだ。別にアンケートをとってみたワケじゃないけど、あたしの感覚だと、テーブルの上とかに置いてある人のケータイをコッソリと無断で見るような人なんて、100人のうち2~3人、多くても10人以下だろうって思ってる。

だから、T子のこの質問は、あたしにとって、「きっこさんて、パジャマのままコンビニとか行っちゃう派ですか?」ってのと同レベルの二択になる。あたしは、心の中で、「そんなこと聞かなくても分かるでしょ?」って思いつつ、こんな質問をするくらいだから、きっと「T子の常識」の中では、人のケータイを無断で見ちゃう人たちも、それなりの派閥を構成してるんだろうって推測した。それで、あたしは、当たり障りのない答え方をした。


「なんでそんなこと聞くの?」


そう、「人のケータイなんて見るワケないじゃん!」なんて答えちゃうと、もしもT子が「見ちゃう派」だった場合にカドが立っちゃう。だから、あたしは、「質問に答えずに質問で返して様子を見る」っていう反則技を繰り出してみた今日この頃、皆さん、いかがお過ごしですか?


‥‥そんなワケで、T子の説明によると、前日の夜、女友達4人で飲みに行って、今どきの「女子会」ってのをやってる時に、その中の1人が、カレシのケータイをコッソリと見て浮気を発見したっていう話をしたそうだ。で、分かりやすくするために、T子から聞いた話をあたしが脚色して、会話風にして書いてみようと思う。T子の友達の3人は、便宜上、A子、B子、C子ってことにしとくけど、高校の同級生だそうだから、みんなT子と同い年、あたしのひとまわり下で26歳だ。

ちなみに、全員が独身で‥‥っていうか、同級生の女子の中には、もちろん結婚してる子もいるんだけど、高校時代に仲が良くても、結婚したことによって生活形態がクルリンパして、独身のT子とはジョジョに奇妙に疎遠になった子もいれば、この3人のうちの2人みたいに、高校時代はそれほど仲良くしてなかったのに、卒業して何年後かの同窓会で再会したのをキッカケにして、こんなふうに時々飲み会をするようになった子もいるってワケだ。

で、T子は美容師だけど、A子とB子とC子はそれぞれ別の仕事をしてて、会社員だったり販売員だったりするそうだけど、本題に関係ないから割愛しちゃう。本題に関係ありそうな情報としては、この4人のうち、T子とA子とB子には現在カレシがいて、C子だけがカレシと別れたばかり‥‥ってことだ。


A子 「それでね、どうも去年のクリスマスあたりからカレシの様子がおかしくなったのよ」

T子 「あの、イヴの日にドタキャンされたって話でしょ?」

A子 「そうそう、それでさあ、そのあとも、前はメール打てばすぐに返ってきたのに、クリスマスを過ぎてからは、なかなかメールが返ってこなかったり、シカトされるようになって‥‥」

B子 「年末で仕事が忙しかった、とかじゃなくて?」

A子 「そんなワケないよ。あいつの仕事、ヒマだもん」

C子 「それで?」

A子 「でね、先週の週末にあたしの部屋に泊まりにきた時、夜中にお酒がなくなってさ、近くのコンビニまで買いにいってくれたんだけど、その時、テーブルの上の自分のケータイをね、パッと取ってポケットに入れてったのよ」

T子 「それがどうしたの?」

A子 「今まではね、そんなこと一度もなかったの。あたしの部屋にきた時に、コンビニとかに何か買いにいってくれる時って、ケータイはテーブルの上に置いたままだったのよ。だからあたしも、あたしのこと信頼してくれてるんだな~って思ってたの」

B子 「たまたまなんじゃないの?たまたま!」

A子 「ううん、その何日か前に中華を食べに行った時も、いつもならテーブルの上にケータイを置いたままトイレに行くのに、その時はパッとポケットに入れてトイレに行ったのよ」

C子 「怪しいね~」

A子 「うん、それでね、どうしても気になって眠れなかったから、カレシが寝たあとにコッソリとケータイを見たんだ」

T子 「ええっ?勝手に見たの?」

A子 「うん、だって怪しすぎるんだもん。そしたらさあ、思った通りで、高橋って名前のヤツとヒンパンにメールしててさあ、昨日はごちそうさまでした、ハート、また連れてってね、ハート、みたいなメールが次から次に出てきたのよ」

T子、B子、C子 「ええ~~~!!」

B子 「それで?それで?それで?」

A子 「まだ何も言ってないんだ‥‥」

B子 「なんで?なんで?なんで?」

A子 「だって~~なんて言えばいいのよ? ケータイ見たけど高橋って誰?‥‥なんて言えないでしょ?」

C子 「どうして?ケータイのメールが動かぬ証拠なんだから、ハッキリ言ってやればいいのに!」

B子 「そうよ!そうよ!そうよ!」

T子 「B子、C子、ちょっと待って! ケータイ見たけど‥‥はサスガにマズイでしょ?」

A子 「でしょ?」

C子 「え~? どうして~? 悪いのはA子を裏切ったカレシのほうなんだから、別に遠慮することなんてないのに~!」

B子 「うん!うん!うん!」

T子 「もちろん悪いのはカレシのほうだけどさあ、それと人のケータイをコッソリ盗み見たこととは別じゃない?」

A子 「あたしもね、それがあるから何て言えばいいのか困ってるのよね」

C子 「だけど、ケータイ見たって言わなきゃ問い詰められないじゃん」

T子 「そんなことないよ。たとえばさあ、あなた最近様子がおかしいけど浮気でもしてんじゃないの?‥‥って切り出して、カレシが、そんなことないよ!って言ったら、じゃあケータイ見せなさいよ!‥‥って言うのはどお?」

A子 「うん、そのパターンも考えてみたんだけど、あいつの性格からすると、意地でもケータイを見せずに、そんなにオレのことが信用できないのか? それなら別れてもいいんだぜ!‥‥ってひらきなおると思うんだ」

T子 「そっか~~」

B子 「そっか!そっか!そっか!」


‥‥そんなワケで、B子のキャラは置いといて、ザクッとかいつまんでみると、4人のうち、あたしに質問したT子と、当事者のA子は、人のケータイを無断で見ちゃうことについては、やっぱり「よろしくないこと」だって認識だ。結果から言えば、A子は見ちゃったワケだけど、自分のカレシの様子がおかしくなって、もしかしたら浮気してんじゃないか?‥‥っていう不信感を抱いたから見ちゃったワケだ。カレシの態度が何もおかしくなければ、こんなことはしなかった。そして、B子とC子は、人のケータイを無断で見たって、その人に原因がある場合は「悪くないこと」って認識みたいだ。つまり、T子にしてみれば、4人のうち2人が「見ちゃう派」で、2人が「見ない派」だったってワケで、それで、あたしに聞いてきたってワケだ。

ただ、こうしたケースの場合は、一般論とはちょっと違ってくる。あたしがマクラで書いた「人のケータイを無断で見る」ってのは、カレシに何ひとつ怪しい様子もないのに、自分の知らないとこでのカレシの行動が気になって気になって仕方なくて、カレシがお風呂に入ってる時とかに、毎日のようにコッソリとケータイを盗み見たりする病的なケースのことだ。こういう人って、完全に神経が麻痺しちゃってるから、カレシに限らず、そこに誰かのケータイが置いてあれば、平気で勝手に見ちゃったりもする。

最初に、T子から、「きっこさんて、カレシのケータイとか見ちゃう派ですか?」って聞かれた時、あたしは、カレシの様子がおかしくなったとか、カレシに浮気の疑惑があるとか、そうした前提はナシで、ただ単に日常的にカレシのケータイを無断で見ちゃうタイプなのか?‥‥っていう質問なんだと思った。だから、心の中で、「そんなこと聞かなくても分かるでしょ?」って思ったワケだけど、こうして質問のバックボーンを聞かされると、あたしの意見もビミョ~に変わってくる。

もちろん、あたしの感覚だと、たとえカレシに浮気の疑惑があったとしても、無断でケータイを見たり、無断で日記や手帳を見たり、無断で郵便物を開封して見たりするつもりはない。だけど、これは、あくまでも、そうした状況に置かれてない「冷静な状態」での考えに過ぎない。もしも、あたしが、A子とおんなじ立場になったとしたら、いくら頭では「人のケータイを無断で見るなんて最低だ」って分かってたとしても、理性よりも真実を知りたい欲望のほうが勝っちゃって、A子とおんなじ行動に出ちゃう可能性もある。実際、A子だって、悪いことだと分かってたのに盗み見ちゃったんだから、あたしだってどうなるか分からない。

それに、カレシとカノジョなんていう軽い関係じゃなくて、これが夫婦だったとする。そして、まだ小さな子供がいたとする。こんな状況で、ある日からダンナの様子が急変したとする。急に帰りが遅くなったり、あたしのとは違う香水の匂いがしたり、コソコソとトイレでケータイを使うようになったりすれば、誰だった怪しく思うだろうし、不安になるだろう。そしたら、ダンナのケータイを盗み見たり、カバンの中や手帳を見たり、コッソリと後をつけたり、挙句の果てには探偵に浮気調査を依頼しちゃうかもしれない。そして、こうした行動は、自分の嫉妬心の問題だけじゃなくて、子供の将来のことも関わってるっていう大義名分があるから、罪悪感なんて感じずに行動できちゃうかもしれない。そして、そうなったら、あたしは、B子とC子の感覚のほうに近くなっちゃう。

‥‥そんなワケで、この問題を考えてる過程で、あたしの頭にパッと浮かんだのが、国際環境保護団体「グリーンピース・ジャパン」のメンバー2人によるクジラ肉の窃盗事件だ。ニポンの調査捕鯨船「日新丸」の乗組員たちが、調査捕鯨で捕獲したクジラ肉を仲間内で山分けしてるっていう情報をつかんだ「グリーンピース・ジャパン」のメンバー2人は、その証拠を得るために、今から3年近く前の2008年4月、青森県の西濃運輸の配送所に忍び込んで、乗組員が自宅宛てに送ろうとしてたダンボールを盗み出した。そして、その中に23キロもの大量のクジラ肉が入ってたことを確認した上で、これを証拠として調査捕鯨船の乗組員によるクジラ肉の横領を東京地検に告発した。

だけど、東京地検は、これほどの「動かぬ証拠」がありながら、調査捕鯨船の乗組員を不起訴処分にした上に、告発した2人のメンバーのほうを警視庁公安部に逮捕させたのだ。そして、2人のメンバーは、窃盗と建造物侵入の罪に問われ、2010年9月、青森地裁で、執行猶予付きの有罪判決を受けた。2人は判決を不服として控訴したけど、これは通らないと思う‥‥ってワケで、あたしは、この事件って、今回のA子のカレシの浮気のケースとソックリだと思った。悪いのは、誰がどう見たって、クジラ肉を山分けしてた乗組員たちだろう。

百歩ゆずって、1キロや2キロくらいなら「お土産」だってことで目をつぶるけど、1人で23キロだなんて、どう考えたって「横領」だ。クジラ料理の専門店に持ち込めば、相当の金額で買い取ってもらえるだろうし、実際、過去にもそうしてきたんだろう。それも、メンバーが盗み出したのは1箱だけど、運送会社の倉庫には最低でも同一のダンボール箱が47箱も確認されてる。単純計算しても、23キロが47箱だから合計で軽く1トンを超えちゃう。調査捕鯨船の乗組員たちが、1トンを超えるクジラ肉を山分けして、それぞれが自宅宛てに大量に送ってただなんて、どんなにヒイキ目に見たって、完全に「組織的な犯罪」じゃん。

だけど、いくら悪党どもを告発するためだったとは言え、捜査権を持たない単なるNGOの職員が、運送会社の配送所に忍び込み、倉庫から荷物を盗み出せば、罪に問われるのは当然だ。「グリーンピース・ジャパン」の弁護側は「クジラ肉の組織的な横領を告発するための正当な行為」だって主張したけど、もちろん通用しなかった。だから2人は有罪判決を受けたんだけど、あたしは、これは仕方ないと思う。だけど、あたしが納得いかないのは、これほどの悪事を長年に渡って続けてきた調査捕鯨船の乗組員たちが、みんな不起訴処分になったことだ。「グリーンピース・ジャパン」のメンバーにしても、乗組員たちが起訴されて有罪になったなら、自分たちが罪に問われても納得したと思う。

‥‥そんなワケで、この事件の例を見ると、ニポンの法律では、不当な方法で入手した証拠は、証拠として使えないんじゃないかって感じがする。だから、A子の場合も、「持ち主の許可を得ずにケータイを勝手に見る」って行為は、法的には分からないけど、少なくともモラル的には不当な方法だと思うから、そうして得た情報を証拠としてカレシの浮気を糾弾しても、カレシに責任を取らせるのは難しいのかもしれない。相撲の場合は、ちゃんとした捜査権を持ってる警察が力士たちのケータイを押収して、そこから八百長の証拠が出たワケだから、何も問題はない。だけど、あたしたち一般の人間は、「グリーンピース・ジャパン」のメンバーと同様に、捜査権を持ってない。だから、たとえ「動かぬ証拠」が見つかったとしても、それが不当な方法で入手したものであれば、逆に、自分のほうが罪に問われちゃうかもしれないのだ‥‥ってワケで、やっぱり、あたしは、自分の感性に従って、どんな状況になろうとも、「人のケータイを無断で見る」ってことだけは、やめとこうと思った今日この頃なのだ。


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