生まれて初めての体験
人間、いくつになっても、「生まれて初めての体験」ってのはワクワクするもんで、あたしは、今回の疎開で、この「生まれて初めての体験」がメジロマックイーンのメジロ押し状態になってる。まず、生まれて初めて新幹線に乗ったし、生まれて初めて新幹線の中のおトイレに入ったし、生まれて初めて新幹線の中でガラガラ押してくるお姉さんからコーヒーを買って飲んだし、そしたら「次回50円引き」の割引券をくれたから、京都から乗った次の新幹線で、生まれて初めてその券を使って50円安いコーヒーを飲んだし‥‥ってふうに、新幹線ひとつを見ても「生まれて初めての体験」がいくつもあった。
(※鉄っちゃんにツッコミを入れられないように書いときますが、これは品川駅じゃなくて、急用で姫路から新大阪に戻る時に姫路駅のホームで撮った写メです。品川駅で撮ったのはブレまくりで失敗してしまいました。)
そして、生まれて初めて足を踏み入れた県もいくつもあるし、生まれて初めて見たものもたくさんあるし、生まれて初めて食べたものもいっぱいある。たとえば、ひとつだけ具体的に言うと、ずいぶんお世話になった山陽本線は、もちろん、乗ったのも生まれて初めてだったけど、小田急線の駅に「箱根そば」があるように、主要の駅に「まねき食品」の駅そばがある。たとえば、姫路駅なら、こっちのホームにもあっちのホームにもおんなじ形の四角いお店があって、外に面した部分では駅弁を売ってる。
中に入ると、東京の立ち食いそば屋さんと変わらない造りなんだけど、頭上に並んでる写真のメニューを見て、あたしが理解できなかったのが、「うどん」と「そば」の2種類じゃなくて、「うどん」と「そば」と「えきそば」の3種類があったのだ。その上、天ぷらなら、「うどん」が390円、「そば」が380円、「えきそば」が350円‥‥ってふうに、「そば」より「えきそば」のほうが30円安い。それで、あたしは、最初、天ぷらそばをお持ち帰りすると380円で、このお店で食べる、つまり、「駅」で食べると「えきそば」になって30円安くなるのかな?って思ったんだけど、そうすると「えきうどん」がない。で、お店のおばさんに聞いてみたら、ナナナナナント!「えきそば」ってのは、おそばのダシに中華麺を入れるっていう「未知との遭遇」だった今日この頃、皆さん、いかがお過ごしですか?
‥‥そんなワケで、母さんは無難に普通の「天ぷらそば」にしたんだけど、「生まれて初めての体験」の連続にワクワクしっぱなしだったあたしは、当然、「きつねえきそば」にチャレンジしてみた。そしたら、中華麺て言っても、ラーメンの麺とは違って、ちゃんと和風のおそばのダシに合うように、腰を抑え目にした細麺になってて、中華麺て言うよりも「おそばの太さにしたお素麺」て感じだった。ダシは透き通ってて上品な関西特有のダシで、大きなキツネの上に細切りした青ネギがタップリと乗ってて、なかなか美味しかった。その上、たまたま入ったのが午後2時すぎだったから、午後2時から5時までの50円引きになるタイムサービス中で、母さんと2人で100円も得しちゃった。
三ノ宮から姫路、姫路から岡山、岡山から三原、三原から広島と、お友達のお家に一泊ずつしながら、3泊4日かけて移動したあたしは、この区間だけは山陽本線を使ったワケで、この「まねき食品」の駅そばにも2回ほどお世話になった。ちなみに、あたしは2回とも「えきそば」を食べたんだけど、母さんは2回とも普通の「そば」を食べてた(笑)
で、ちょっと話が前後しちゃうけど、あたしは、大阪にはお仕事で行ったことがあるけど、神戸には行ったことがなかった。だから、今回、生まれて初めて神戸に立ち寄ってみて、「大阪が東京なら、神戸は横浜」って言われてることがよく分かった。東京に住んでると、大阪も神戸もイッショクタにして「関西」で片づけちゃうけど、実際に行ってみると、大阪と神戸はぜんぜん違ってた。神戸はホントに横浜に似た雰囲気で、「ポートアイランド」は横浜の「みなとみらい」みたいだったし、ちゃんと「モトマチ」まであった。それに、そうした有名な場所だけじゃなくて、道路の感じとか、電車のガード下の感じとか、そうしたナニゲない風景が横浜によく似てた。
姫路駅では、サスガに観光旅行じゃないから、姫路城までは行けなかったけど、駅の周辺を1時間ほどウロウロと散策して、あまりにも都会なので驚いた。あたしが降りた時は、ちょうど姫路城方面の出口までの通路が改装工事中で、白いパネルで両側を覆われた通路をジグザグに進んだんだけど、とにかく何もかもが広いから、駅から出るだけでも疲れちゃった。今まで、あたしは、「姫路=姫路城」ってイメージしかなかったから、静かな城下町で、高いビルなんてほとんどなくて、老舗の旅館とか和風のお店みたいなのがポツンポツンとあるような風景を想像してた。
それが、まったく違ってて、東京で言うと、新宿レベルの都会だった。何しろ、駅のどっちの出口を出ても、ずっと先まで大きなビルが並んでるし、何本もあるアーケード街にはいろんなお店がいっぱいあったし、キャバクラのお姉ちゃんの看板もあちこちにあった。駅の近くのビルの前には、見たことのない自販機があったから、何かと思って近寄ってみたら、新幹線のキップを安売りしてた。つまり、この自販機でキップを買えば、駅で買うよりも得するってワケだ。
それから、岡山駅では、降り立ったのが夜だったんだけど、地元のお友達が車で迎えにきてくれるまでの30分、「西日本横断ブログ旅」で稲垣早希ちゃんがはしゃいでた駅前の「桃太郎の像」を見たり、そのすぐ先にある噴水を見たりしてた。岡山駅の周辺は散策できなかったけど、駅前の様子を見ただけの感じで言えば、姫路駅よりも、さらに都会だった。広い道路の向こうには大きなビルが並び、サラ金の巨大な看板が煌々と輝き、ビルのどの階にもいろんなお店がひしめき合ってて、「ザ・繁華街」って感じだった。
それに比べて、三原駅は、駅や道路や周辺の建物はキレイだったけど、一気に都会臭さがなくなって、思わず「遠くに来たんだなあ‥‥」って気持ちになれた。何よりも、駅のすぐ後ろに大きな山が見えたし、とにかく、人の数が少なくてホッとできた。だけど、これは、一時的なことで、次の目的地の広島駅に到着したら、姫路駅よりも岡山駅よりも遥かに「新宿」だった‥‥ってワケで、ここから先のルートは秘密だけど、今回、あたしが、いくつもの「生まれて初めての体験」をした中で、この「地方都市はどこも新宿テイストだった」っていう発見が、それなりの収穫だった。
もちろん、姫路駅と岡山駅と広島駅の3ヶ所だけを見て「地方都市はどこも」って決めつけるのは乱暴だけど、大阪から西には、中国地方も四国も九州も飛ばして沖縄にしか行ったことがなかったあたしとしては、この未知の領域である「中国地方の山陽サイドの雰囲気」を初体験できたことが貴重だった。そして、何となく漠然と、「いくら都会って言っても、地方なんだから東京みたいにゴチャゴチャしてることはないだろう」って想像してた脳内の「地方都市像」が、ガラガラと音を立てて崩れ去った。
‥‥そんなワケで、ここまでは移動中の「生まれて初めての体験」で、今の場所に腰を落ち着けてからも、ジャガイモを植えたり、キャベツを収穫したり、シカの角を拾ったり、田んぼの溝さらいのお手伝いをしたりって、「生まれて初めての体験」は、ここに来てからのほうが遥かに多い。だから、ここでの体験については、そのうちマトメて発表しようと思って、何かあるたびにチョコチョコと書き溜めてる。だけど、今は、こんなに長いこと母さんと一緒の時間を過ごしてるっていう体験こそが何よりも嬉しいから、まずは、1日1日を大切に暮らしてる今日この頃なのだ。
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