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2011.05.20

政府が隠す首都圏の汚染レベル

5月15日(日)、夜10時からNHK教育テレビで放送された「ETV特集」の「ネットワークでつくる放射能汚染地図 ~福島原発事故から2か月~」は、これまでの政府や東電、保安院などの発表をくつがえす衝撃の内容で、反響もものすごかった。そのため、NHKでは、急きょ、5月20日(木)25時30分から(NHK総合)と、28日(土)15時からの再放送を決めた。あたしは、最初の放送もゆうべ深夜も放送も観たけど、観逃しちゃった人は、28日(土)15時からの再放送をぜひ観てほしい。

で、どんな内容なのか、ザクッと説明すると、放射線衛生学を専門とする研究者の木村真三さんが、事故後から研究者仲間と独自に福島県の調査をした様子を追ったドキュメンタリーだ。木村さんは、かつて「放射線医学総合研究所」に勤務してて、その時には東海村JCO臨界事故の調査を手がけ、その後、「厚生労働省の研究所」に移ってからは、自主的にチェルノブイリの調査を続けてきた人だ。もちろん、これらの調査は、狭い国土に数多くの原発が林立するニポンで、いつか大きな事故が起こった場合に、過去の調査結果をフィードバックして対応するためだ。

だけど、今回の事故の直後、木村さんが福島県の調査を始めようとしたところ、研究所の幹部から自発的な調査をしないようにと止められてしまった。木村さんにしてみれば、今こそ、これまでの調査結果、研究結果を生かす時だと思ったのに、これじゃあ何のために今まで研究してきたのか分からない。それで、木村さんは悩んだんだけど、3歳6ヶ月になる自分の娘を見て、「子供たちを救わなきゃならない」って思いから、厚生労働省の研究所に辞表を提出して、独自に調査を開始した今日この頃、皆さん、いかがお過ごしですか?


‥‥そんなワケで、28日(土)15時からの再放送を観る人も多いと思うので、何から何までぜんぶ書くことは避けるけど、何よりも驚いたことは、現場のあまりにも高い汚染度と、それを知らずに暮らしてた人たちだ。たとえば、木村さんが最初に向かった、原発から35キロ西にある田村市立常葉中学校、ここは「30キロ圏外」だから避難地区には指定されてないけど、校長先生の許可をとって木村さんが敷地内の土壌を計測したところ、9種類もの高濃度の放射性核種が検出され、特に数値の高かったヨウ素131は、1平方メートルあたり515万ベクレルもの濃度だった。

そして、そこから原発のほうへ車で近づき、原発から22キロ地点の田村市都路町の土壌を計測すると、1平方メートルあたり24万ベクレルのセシウムが検出された。これは、チェルノブイリだと、国によって移住が補償されるゾーンの数値になるそうだ。だけど、本当に恐ろしいのは、こうした「原発の近くの汚染地域」じゃなくて、「原発から離れたホットスポット」だ。木村さんの調査車両が福島市の渡利(わたり)地区に差し掛かると、急に放射線の数値が高くなった。見ると、目の前に「福島市立渡利中学校」がある。そこで、木村さんが車を降りて、学校の前の汚染度を計測すると、現在のチェルノブイリの原発から3キロ地点とおんなじレベルだった。

チェルノブイリは、事故から25年経った現在も、30キロ圏内は立ち入り禁止になってるから、原発から3キロ地点なんて人間の住めるレベルじゃない。だけど、この中学校には、普通に子供たちが通ってたのだ。何でかって言うと、ここは、原発から60キロも離れた福島市内だったからだ。政府は、原発から30キロ圏内だけを避難区域に指定して、こうした「原発から離れたホットスポット」については何の対策も警告もしてこなかったから、先生も子供たちも、まさか自分の学校が高濃度に汚染されたホットスポットだとは知らずに、安心して通ってたワケだ‥‥ってことで、今回の政府の対応の酷さに関しては、放送を観ながらつぶやいた、あたしのツイートを2つ紹介する。


「きっこさんのつぶやき」

文部科学省は3月15日の時点で浪江町赤宇木の汚染度が通常の5500倍だったことを把握して官邸にも伝えていたのに、この報告を聞いた政府は枝野官房長官に「直ちに健康に害のあるレベルではない」と発表させ、住民たちを避難させなかった。(NHK「ネットワークでつくる放射能汚染地図」より)

政府は浪江町に計測データを報告していたが、地名がすべて伏せてあったため、浪江町の人たちは自分のいる場所の汚染度が分からず、自主避難することができなかった。文科省は地名を伏せた理由を「パニックを起こさないため」と説明。(NHK「ネットワークでつくる放射能汚染地図」より)


‥‥そんなワケで、あとは、5月28日(土)15時からの再放送を観てもらうとして、これらの政府の対応を見れば分かるように、政府は、国民の命を救うことなんか、それほど重要視してないことが分かったと思う。その何よりの例が、首都圏では空間線量だけを発表して、「安全だ」「問題ない」と繰り返してることだ。それも、地上から何十メートルも高い場所を測定して、「今日も問題ありません」て言葉を繰り返してる。たとえば、「ポストセブン」の以下の記事によると、専門化が都内の放射線量を測定してみたら、政府が発表した数値の2倍から5倍だったと伝えてる。


「専門家が再測定 東京・葛飾区の放射線量は政府発表の5倍」

(前略)
1時間あたりの全国各地の放射線量は連日、文科省が発表し、新聞にも毎日掲載されている。1時間あたり、2.283マイクロシーベルト以上となると、原発周辺の地域のみだが、0.114となると、つくばや日光も含まれてしまう(5月15日測定分)。また、東京都内では新宿の数値が発表され、0.0632となっている(同)。0.114以下なので安心かと思いきや、実は発表されている数値にはとんでもない“誤差”があった。近畿大学原子力研究所講師・若林源一郎氏が話す。

「文科省が発表しているのは、各地の測定所から送られてくる数値を集めたもの。測定する場所に決まりはないので、測定器が公共施設や研究施設の屋上にとりつけられているところもあります」

地上から10m以上だったり、場所によっては、20m近い位置での測定値ということもあるという。

「事故発生から2か月以上。大気中に放出された放射性物質はほとんどが地表に降下しているので、地表近くでの測定値は、建物の屋上で測定されたものより高い数値を示すことがあります」(若林氏)

若林氏は放射線や原子力教育の関係者を有志で募り、全国の放射線量モニタリングを行った。測定位置を地上から100cmに統一して計測したところ、ほとんどの地域で文科省のデータより高い測定値が出た。5月10日に文科省が測定した東京(新宿区)の値0.0662に対し、若林氏らのチームが測定した値は0.124と約2倍。さらに同じ東京都内でも葛飾区では0.359という5倍にも相当する値が出た。先に計算した年間1ミリシーベルト=1時間0.114マイクロシーベルトを基準と考えた場合、原発から200km以上離れた都内でも、葛飾区や新宿区、文京区、渋谷区では子供にとって警戒が必要な数値となってしまう。他にも関東地区では千葉県柏市や茨城県水戸市、ひたちなか市、つくば市などが0.114を超えている。

http://www.news-postseven.com/archives/20110520_20864.html


‥‥そんなワケで、空間線量も政府の発表は鵜呑みにできないけど、菅さんが隠蔽した事故直後の「SPEEDI」のデータによれば、東京を含んだ関東全域に大量の放射性物質が降下したんだから、本来なら「空間」じゃなくて「地表」を計測しなきゃならないのに、そっちはスルーしてる。それは、地表の汚染度を公表したら、これまでの政府の発表に対して、首都圏の人間が疑心暗鬼になるからだろう。インターネットにはリンクされてないので、目にした人は少ないと思うけど、5月15日(日)の「朝日新聞」の朝刊5面に、こんな記事が掲載された。


「東京、一部で高濃度 土壌の放射性セシウム、茨城超す」

東京都の土壌で放射性セシウムの濃度が1キロあたり3千ベクレルを超え、東京電力福島第一原発により近い茨城県より高い地点があることが、近畿大の山崎秀夫教授(環境解析学)の調査でわかった。濃度は高い場所でも福島市の9分の1ほどだが、茨城県や埼玉県の一部の2~6倍。放射能による土壌汚染は、原発からの距離が同じでもばらつきが大きいことが指摘されてきた。東北3県と関東6県は、農林水産省の指導で水田や畑のセシウム濃度を調べているが、都は事故後の土壌調査をしていない。山崎教授らは、4月10~20日に採取した東京都の4地点を含む首都圏の土壌試料を分析した。東京都江東区亀戸で1キロあたり3201ベクレル、千代田区の二重橋横で同1904ベクレルだった。原発から約55キロの福島市南部(同市光が丘)の土壌は3月19日時点で同2万7650ベクレル。都内より福島に近い茨城県神栖市は同455ベクレル、ほぼ同距離の埼玉県朝霞市は484ベクレルだった。放射性ヨウ素も同様の傾向だった。単位面積あたりに換算して農水省などの調査とそろえると、都内の土壌の放射性セシウム濃度は稲作禁止の制限値の20分の1以下だが、1960年代の大気圏内核実験で年間に降った量の3~10倍あった。山崎教授は「放射性物質を多く含んだ雲のようなもの(プルーム)が飛来した地点では、局地的に土壌の放射能が高濃度になる。首都圏でも細かい状況調査が必要だ」と話す。京都市である国際分析科学会議の緊急シンポジウムで24日発表する。


■首都圏の土壌の放射性セシウム濃度(数値はベクレル/キロ)
試料採取地            濃度   採取日
◆東京
千代田区二重橋横        1904 4月10日
千代田区皇居東御苑天守閣跡   1311 4月10日
中央区築地           1147 4月10日
江東区亀戸           3201 4月16日
◆埼玉
朝霞市荒川土手          484 4月10日
◆千葉
千葉市千葉モノレール天台駅前  1327 4月11日
千葉市JR千葉駅前        358 4月14日
館山市              127 4月20日
◆茨城
神栖市              455 4月20日
◆福島
福島市光が丘         27650 3月19日

(「朝日新聞」2011年5月15日朝刊より引用)


この計測値を見れば分かるように、東京23区内のほうが、場所によっては、茨城や埼玉や千葉よりも汚染されてるってワケだ。そして、この事実を裏付けるニュースが、もう1つある。それは、東京の下水の汚泥の焼却灰から高濃度のセシウムが検出されたってニュースだ。


「汚泥の焼却灰から高濃度の放射性物質 東京」(日テレ24)

東京都の下水処理施設から出た汚泥の焼却灰から、一キロあたり17万ベクレルという高濃度の放射性物質が検出されていたことが日本テレビの取材でわかった。東京都によると、江東区の下水処理施設「東部スラッジプラント」で3月25日に採取した汚泥の焼却灰から、一キロあたり17万ベクレルの放射性物質が検出されていた。同じ時期に採取した別の2つの施設の焼却灰からも、一キロあたり10万ベクレル以上検出されていたという。これらの焼却灰は、すでにセメントや建築資材などに再利用されている。国は、12日になって福島県に対しては一キロあたり10万ベクレルを超える汚泥は県内で焼却するなどした上で、焼却灰は容器に入れて保管すべきとの指針を出したが、福島県以外に対する基準は現在もない。(2011年5月13日)

http://news24.jp/articles/2011/05/13/07182670.html


これが何を意味するのかって言うと、東京はアスファルトやコンクリートで覆われた地面が多い大都市だってことだ。各地の調査で分かってるように、空から降下した放射性物質は、土や砂や植物などに溜まっていく。たとえば、畑などに降下した場合、すぐに土の表面を削り取らないと、雨によって地中へと染み込んでいき、取り返しのつかないことになる。だけど、アスファルトやコンクリートに降下した放射性物質は、風に飛ばされたり雨に流されたりして、その多くは下水へと流れ込む。

東京では、複数の下水処理施設で、1日に合計100トン前後の下水の汚泥を処理してるんだけど、全体量を減らすために焼却処理してるから、燃えない放射性物質は濃縮される。だから、汚泥の段階では1キロあたり数百から数千ベクレルだったセシウムも、焼却して灰になると1キロあたり17万ベクレルなんていう恐ろしい濃度になっちゃうのだ。

で、あたしが言いたいのは、東京の「アスファルトやコンクリートで舗装されてない場所」についてだ。さっきの「朝日新聞」の記事の、千代田区二重橋横の1904ベクレル、皇居東御苑天守閣跡の1311ベクレル、中央区築地の1147ベクレル、江東区亀戸の3201ベクレルってのは、すべて「土壌の土」を採取、計測したもので、アスファルトやコンクリートで舗装された場所じゃない。実際、舗装された場所を計測してみると、土のある場所よりも遥かに低い数値になる。舗装してある場所に降下した放射性物質は、その多くが下水へと流れたワケだから、そんなに神経質になることはない。問題なのは、この先、何十年も何千年も何万年も消えることのない、土壌に降下した放射性物質なのだ。

現在のチェルノブイリは、事故から25年も経ってるので、規制区域の外であれば、空間線量は人間に害のないレベルに落ち着いてる。だけど、それは、あくまでも空間線量だけの話であって、場所によっては、原発から何百キロも離れてるのに、ガイガーウンターを地面や雑草に近づけたトタンに「ピーピーピー」って鳴り出すエリアも存在する。これは、セシウム137の約30年7ストロンチウム90の約29年から、プルトニウム239の約2万4000年やウラン235の約7億年まで、原発事故によって飛散した放射性物質の半減期から考えれば当然のことだろう。

‥‥そんなワケで、東北はもちろんのこと、関東一円で生活してる人も、なるべくアスファルトで舗装された場所だけを歩くようにして、できるだけ土や砂や雑草のある場所には近づかないようにすることが重要だ。東京でも、公園や河川敷、校庭やスポーツグラウンドなど、地面が土や砂や芝生などの場所は、少なくとも1000ベクレル以上の汚染が予想されるので、特に子供は絶対に近づけないようにしてほしい。小さな子供にマスクもさせずに公園の砂場なんかで遊ばせたら、どれほど内部被曝するか分かったもんじゃない。23区の中心の千代田区でも、1000~1900ベクレルもセシウムに汚染されてて、これは土の表面を削らない限り、これから何十年も続くことなんだから、関東から避難ができないのなら、せめて、子供の内部被曝を最小限に抑えるようにしてほしいと思う今日この頃なのだ。


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