3ヶ月後のウンコ
6月7日、政府がIAEA(国際原子力機関)に提出する報告書の内容が明らかになり、その中に「3月11日の震災発生から数時間後に、1~3号機の原子炉の底部から溶融した核燃料が漏れ出すメルトスルーが起こっていた」という事実が国民の知るところとなった。東電も政府も、この事実を当初から認識してたそうで、あれほど何度も何度も「メルトダウンなど起こっていない」「燃料棒は安定して冷却されている」って会見で繰り返してきたのは、みーーーーんなウソッパチだったってことまでバレちゃった。だけど、事故から3ヶ月も経って、国民の感覚がマヒしてきたころを見計らっての情報公開だったから、それほど大騒ぎにはならなかった。東電と政府の作戦に、まんまとハメられたってワケだ。
今、全国に広がってるセシウム汚染牛肉の問題にしても、意図的に情報をインペイしてたワケじゃないにしろ、これまた「3ヶ月も経ってから」の発覚だった。4月に出荷された牛肉がセシウムに汚染されてたなんて、7月になってから発表されたって、消費者はどうしようもないじゃん。「朝ごはんで食べたものが腐ってました」って、その日の夜に言われても困るのに、3ヶ月も前に食べたかもしれない牛肉に「放射性セシウムが3000ベクレルも入ってました」なんて言われても、食べちゃった人はどうすることもできない。そして、セシウムが体外に排出されるまでには100~200日も掛かるって話だから、牛肉自体はトックの昔にウンコになって出ちゃってるのに、セシウムは3ヶ月経った今も、その人の体内で24時間ずっと有害な放射線を放射し続けてるってワケだ。
故意にしろ故意じゃないにしろ‥‥って、ナニゲに早見優の「夏色のナンシー」みたいな言い回しになっちゃったけど、自分の健康どころか命にも関わる重要な情報が、3ヶ月も経ってからじゃないと分からないなんて、いったいぜんたいこの国は、いつから北朝鮮みたいになっちゃったんだろう?‥‥って思う今日この頃、皆さん、いかがお過ごしですか?
‥‥そんなワケで、今回の震災や原発事故に関連した情報のほとんどは、何故だか「3ヶ月経ってから公表される」ってパターンが定着しつつある。これは、「人の噂も75日って言うし、3ヶ月くらい経てば国民の怒りや不満も多少はおさまってるだろうから、マズイことを発表する時は3ヶ月後ってのを目安にしよう。でも、脱原発とか、国民に受けのいいことに関しては、実現性がなくても思いついた時点でどんどん言っちゃえ」ってことなんだろうか?
で、この国の総理大臣の菅さんが、3ヶ月前にどんなことをノタマッてたのかを検証してみると、とっても面白いことが分かる。今からちょうど3ヶ月前の4月26日、衆院予算委員会で、自民党の小野寺五典議員から「被災者たちの仮設住宅の建設が遅々として進んでいない。いったいどうなっているのか?」って質疑された菅さんは、こんなふうに答弁したのだ。
「お盆のころまでには希望者全員に仮設住宅に入っていただけるよう全力を挙げて努力する」
あたしはテレビで国会中継を見てたけど、菅さんは自民党の小野寺議員からの質疑だけじゃなく、額賀福志郎議員からの同様の質疑に対しても、繰り返して「お盆のころまでには全員が入居できるように努力する」って何度も答弁してた。ま、この時点では、菅さんはあくまでも「努力する」って言ってるだけだから、たとえ実現しなくたって約束を反故にしたことにはならない。だけど、問題なのは、この6日後の5月1日の参院予算委員会での発言だ。この26日の発言に対して、再度、自民党の野村哲郎議員から質疑された菅さんは、今度はこう言ったのだ。
「お盆までに仮設住宅希望者を全員入居させる。私の内閣の責任で急がせて必ずやらせる」
今度は「努力する」じゃなくて、完全に「やります」って断言しちゃったのだ。その上、この菅さんの答弁に続いて、担当省庁のトップの大畠章宏国土交通大臣は「1~2週間のうちに自治体ごとの仮設住宅整備計画を示す」って断言した。そして、期限の「1~2週間」が過ぎた5月17日、大畠国交大臣は、それなりの自治体ごとの計画を示したんだけど、実現性は乏しかったみたいで、「お盆までに必要戸数を供給できる見通しが立ちつつある」なんて言うお茶を濁した言い方に終始してた。今考えると、大畠国交大臣は、すでにこの時点で「無理だ」ってことが分かってたんだと思う。
そして、1ヶ月半ほど経過した7月8日、大畠国交大臣は、「お盆までの全員の入居は厳しい状況だ」って言い始めた。これは、「ずっと努力してきたけど無理っぽいことが分かった」って感じじゃなくて、「最初から無理だと分かってたけど、菅さんがあそこまで断言しちゃった手前、あんまり早いうちに無理だって言うワケにも行かず、言い出すチャンスを探ってた」って感じなのが見え見えだったから、テレビで見てて気の毒になっちゃった。なんか、ダメな上司の尻拭いをされられてる部下みたいで。
‥‥そんなワケで、菅さんが、何の根拠もなく、その場のイキオイだけで口にしちゃった「お盆までに仮設住宅希望者を全員入居させる」って言う国民との約束は、一応は努力した雰囲気も作ったし、2ヶ月半の時点で担当者の大畠国交大臣に「厳しい状況だ」って言わせたし、これでお膳立てはすべて揃ったワケだ。何がって、そりゃあもちろん、言い出しっぺの菅さんが「無理でした」って認めるためのお膳立てだ。そして、原子炉のメルトスルーや肉牛のセシウム汚染と同じく、4月26日の発言からちょうど「3ヶ月」が経過した7月22日の参院予算委員会で、菅さんは、ついに重たい口をひらいた。
「お盆までには完成しないかもしれない。見通しが甘かったと言われればお詫びする」
ま、最初から分かってたことだけど、一国の総理大臣が「私の内閣の責任で必ずやらせる」とまで言ったんだから、できなかったってことは、大畠国交大臣の更迭とか、内閣が何らかの形で責任を取らなきゃおかしいよね。自民党みたいに、いつでも「努力する」とか「善処する」とかって逃げ場を作った卑怯な言い回しをしとけば、実現できなくても「努力はした」「善処はした」って幼稚なイイワケができたのに、菅さんてば、ホントに政治家に向いてない人だよね‥‥ってことで、今回の菅さんの目標断念発言に対して、被災地の自治体からは、「現地の状況を何も知らず目標を掲げていたのでは?」っていう声も出てるそうだ。
で、今回は、こうした菅内閣の仮設住宅への対応を取り上げた流れとして、実際に被災された人からの仮設住宅に関するメールを紹介したいと思う。これは、1週間ほど前に、宮城県石巻市の女性からいただいたメールなんだけど、「ブログで紹介させて欲しい」と打診したところ、快諾をいただけたので、今回、紹介することにした。
きっこさん。
はじめまして、私は宮城県石巻市に住んでいる主婦のA子といいます。
最近は更新が少なくてちょっとさみしいですが、毎回興味深くブログを読んでいます。
今回、震災後の石巻市のことについて聞いてほしくてメールしました。
私の住んでいる周辺は、海からはだいぶ離れているのですが、津波の被害があった地域です。
津波が到達してからじわじわと水位が上がり、数日間、背丈ほどの水が引かなかったため、我が家も床上浸水で家具、家電ともにほとんどダメになりまして、大規模半壊と言う罹災証明書をいただきました。
ところが、震災後、早い時期の混乱した中で罹災証明書の受付に行った方たちの中には、アパートなどの2階以上で津波の被害がまったくない部屋なのに、部屋番号を申請せず、住所のみで大規模半壊などの証明書をもらい、仮設住宅の申し込みや義援金、生活再建支援金の申し込みをしている方が数多くいるそうです。
私は家族の安否確認で忙しかったため、罹災証明書などの申請の情報も届かず、手続きできたのは震災後ずいぶん日にちが経ってからでした。
でも、津波の被害を受けずに無事だった人たちは、私たち被災者よりも早くに申請に行っていたとか…
その中でも、直に本人から話を聞いて、あまりにもびっくりしたのは、やはり2階に住んでいる方が2階と申請せず大規模半壊の証明書をもらい、
「無事だったけど仮設に入るよ。家電製品、新しいのが色々もらえるからね。ご飯の用意も面倒だから狭いけど避難所(体育館)に暫くいるから遊びにおいで。」
「さっぱり仮設住宅当たらないし、避難所でお世話してくれるボランティアの人がそろそろ解散らしくって、自分たちで当番制で色々しなくちゃならなくなるから、家に帰ることにしたよ。」
と、大規模半壊だという罹災証明書を持って、何事もなかったかのように数か月ぶりに家に帰ったことです。
私はこの話を聞いて、石巻市役所に「ちょっとおかしくないですか?」と話をしましたが、
「最近じゃないですよね?最近はPCに住所を入力すると部屋番号も出るので、そういうことはないはずです。」
ということでしたが、それも逆に変だと思うのです。
今でも2階以上の方が受理されているのなら、石巻はそういう基準なのだと割り切ることもできるのですが、石巻市役所の職員の方は「混雑していた時はしょうがない」という言い方でしたので、私は納得できませんでした。
もうPCがきちんと動いているのだから、今からでも再確認なりをすべきなのでは?という話を職員の方々にしましたが、誰も真剣には聞いてくれませんでした。
津波の勢いが大きかった場所では、1階が突き抜けたようになっていて2階に上がれないところもありますので、一概に「2階だから被害がない」とは言えませんが、「実際にその住宅を確認してから罹災証明を出す」という初めの話の通りにしていれば、きちんとした罹災証明書が出せたと思います。
市役所には我が家の周辺の人たちだけではなく、もっと色々な場所の他の方たちも言いに行っているようなのですが、市役所の職員の方はこうした声を聞いているのかいないのか…です。
義援金や生活再建支援金などの金銭面の手当てでも同じことが言えますが、「家が無事でも罹災証明書があれば家電がもらえる」とか「家賃が2年タダだから」などの理由で、自宅が何の被害も受けていないのに仮設住宅に申し込む人たちがいるせいで、市内の公園のほとんどが仮設住宅用地になっていて、子供たちの行く場所もなくなっているのが現状なのです。
義援金の分配などの金銭的なことは、「皆が被災者なのだから、ずるいとかずるくないとか言うな」という意見もブログなどでは見かけますし、私もそう思っています。
でも仮設住宅に関しては、一度建ったら最低2年はそこにあり、そして建てるのも壊すのも税金なのですよね。
お酒もたばこもまた値上がりするかもしれない、との話ですが、その前に使わなくてもいいお金は使わないでもらいたいです。
お金が有り余っているなら別ですが、借金をしたり増税をしたりして建てた仮設住宅が、こうした人たちのために使われるなんて、どうにかならないものでしょうか?
今回の震災に関して、行政に対する不満は他にも色々とあるのですが、この地域の多くの被災者が何より不満に思っているのが、この仮設住宅の問題なのです。
こうした現場の人間の気持ちは、どうやったら国に伝えられるものなのか…
宮城県へもメールを送ったのですが、何も変わらず…です。
もう動きだしてしまったものはしょうがないのでしょうかね…
長々と書いてしまいましたが、きっこさんに読んでもらえるかもと思うだけで少しすっきりしました。
最後まで読んでくださり、どうもありがとうございました。
宮城県石巻市 A子
‥‥そんなワケで、A子さん、貴重なメールをホントにありがとうございました♪‥‥ってことで、こうして現場の被災者からの生の声を聞くと、連日、国会でやってることが、いかに被災地の人たちの現状や思いとカケ離れてるのかってことがよく分かる。菅さんが3ヶ月前に「お盆までに仮設住宅希望者を全員入居させる」って約束したことも、3ヶ月経ってから断念して「見通しが甘かったと言われればお詫びする」って謝罪したことも、それに対して自民党や公明党が鬼の首を取ったかのように攻撃してることも、すべては雲の上でやってる茶番劇みたいなもんで、被災地の人たちの思いなんてまったく反映されてないことが分かる。実際には、何の被害も受けてない人たちがイカサマで手に入れた罹災証明書を使ってイイ思いをしていたり、大きな被害を受けた人たちが未だに辛い生活を余儀なくされてるのが現状だ。そして、それもこれもが、すべては行政の怠慢によるものなのだ。
被災地支援のために6月から始まった中大型車対象の東北地方の高速道路無料化にしたって、被災地とは無関係な車両が、この制度を悪用してやりたい放題なのが現状だ。この制度は、発着点のどちらかが無料化対象区間内なら、対象区間外の高速道路の料金もタダになるっていうザル法だから、これを悪用して、首都圏から西に向かうトラックとかが、無料化対象地域の水戸インターチェンジから一度「常磐道」に乗って、それから逆方向に乗り直して西の目的地へ向かうってパターンが炸裂してる。こうすれば、どこまで行ってもタダだからだ。
こうして見てみると、仮設住宅にしたって、東北地方の高速道路無料化にしたって、菅内閣が「被災地の人たちのため」としてやってることが、みんな裏目裏目に出ちゃってる‥‥って言うか、発想は間違ってないんだけど、どれもツメが甘くて制度が確立されてないから、悪いことを考えるヤツラに悪用され放題なのだ。その上、こんなに間抜けな政策を連発しておいて、口をひらけば「増税」の2文字しか出てこない与謝野ちゃんみたいな無能無策な賞味期限切れのオヤジなんかを経済財政政策担当大臣にしちゃってるんだから、菅内閣自体の底の浅さが知れちゃうことウケアイだ。
‥‥そんなワケで、今、国民の間に広まってる「増税もやむなし」「値上げもやむなし」って感情は、あくまでも「被災地の人たちのために」「復興のために」っていう枕詞がついての話だろう。あたしにしたって、こんなに大変な時に増税や値上げを乱発させられたらたまったもんじゃないけど、それが被災地の人たちのために、復興のために使われるのなら、「仕方ない」ってよりも「喜んで払おう」って気持ちになる。だけど、何の被害も受けてない人たちに新品の家電を配ったり、被災地とまったく関係ないトラックの運ちゃんの小遣い銭のために使われるんなら、あたしは1円たりとも払いたくない。だから、菅さん、増税した3ヶ月後に「実は増税ぶんはすべて官僚の天下り先へ流れていたことが分かった。見通しが甘かったと言われればお詫びする」とかって、「3ヶ月後のウンコ」みたいなことを言うのだけはやめてほしいと思う今日この頃なのだ。
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