使用済み核燃料にも原発利権
原発の最大のデメリットは、もちろん「事故が起こったら甚大な被害が出る」ってことだけど、もう1つのデメリットが「使用済み核燃料」という人類史上もっともヤッカイな粗大ゴミの問題だ。「使用済み」って言っても、人間が近づくことすらできないほど危険な高レベル核廃棄物なワケで、役目を終えて原子炉から取り出された使用済み核燃料が完全に無害になるまでには、100万年以上の年月が掛かるって言われてる。で、そんな使用済み核燃料だけど、未だに安全な処分方法は見つかってない。
原発を始めた当初は、「使用済み核燃料はロケットに乗せて宇宙へ飛ばしちまえ!」っていう、宇宙人もビックル一気飲みしちゃうようなデタラメな計画までもがマジメに議論されてたほどで、この計画がコスト的に無理だって分かった現在でも、「使用済み核燃料は深い穴を掘って埋めちまえ!」っていう、地底人も一気飲みしたビックルを鼻から噴き出しちゃうようなデタラメな計画が「唯一の処分方法」として進められてるのが現状だ。
これが、未来の人たちに核のゴミを押しつけちゃうっていう大迷惑な方法、通称「地層処分」て呼ばれてるあまりにも無責任な処分方法なんだけど、これも現時点では「机上の空論」みたいな話で、世界中のどこにも、まだ実現した「地層処分場」はない。アメリカでは、ネバダ州に有名な「ユッカマウンテン」ていう地層処分場が90億ドル(約1兆円)もかけて建設されてたんだけど、今のオバマ大統領が「ユッカマウンテン最終処分場の計画は地下に活断層や地下水脈があって極めて危険なので白紙に戻す」ってのを公約に掲げて当選しちゃったから、この計画は頓挫した。
ちなみに、ニポンの中央競馬では、去年の夏に「ユッカマウンテン」ていう競走馬がデビューした。デビュー戦で5着に入賞し、その後、3着、2着と成績を上げてきたのもトコノマ、今年1月14日の中山5R「未勝利戦」で1番人気に推されたのにもかかわらず、8着に沈んじゃった。ナニゲに競走馬のユッカマウンテンも、アメリカのユッカマウンテン最終処分場の計画と似た感じの軌跡をたどってる気がする今日この頃、皆さん、いかがお過ごしですか?
‥‥そんなワケで、CNNの今年1月の最新の報道によると、オバマ政権がユッカマウンテンの計画を白紙に戻したため、「代替地を選定するのに20年くらい掛かるだろう」ってアメリカの原子力規制委員会がコメントしてた。ニポンの25倍もの広大な国土を持つアメリカでさえも、未だに使用済み核燃料を地層処分するための最終処分場の場所すら決まってないんだから、国土が狭いだけじゃなくて、地下に2000を超える活断層が縦横無尽に走ってるニポンでは、100年経ったって最終処分場なんて造れないだろう。
だけど、現在の人類の科学力じゃ、この地層処分しかないんだから、場所のことは後回しにして、とにかく「地層処分するしかない」ってことで話を進めてく。念のために言っとくけど、これは、あたしが地層処分に賛成ってことじゃない。あくまでも話の流れとしてだ。
で、今回、未曽有の大事故を起こし、未だに収束のメドも立ってないどころか、いつ再臨界するかも分からない福島第一原発だけど、今、2号機とともに極めて危険だって言われてるのが、震災時に燃料棒を抜いて点検中だった4号機だ。1号機から3号機までは運転中だったから、事故が起これば危険な状態になるのは当然だけど、なんで燃料棒を抜いて停止してた4号機までもが危険なのかって言えば、それは、原子炉建屋内の冷却用プールにたくさんの使用済み核燃料が保管されてたからだ。
それぞれの原子炉建屋内には、巨大な冷却用プールがあり、使い終わった燃料棒は、そのプールで冷却される。福島第一原発の場合は、1号機に292本、2号機に587本、3号機に514本、4号機に1331本、5号機に946本、6号機に876本、こんなにたくさんの使用済み核燃料が保管されてる。そして、まだ使用してない新品の核燃料も一緒に保管されてるんだけど、これは、1号機に100本、2号機に28本、3号機に52本、4号機に204本、5号機に48本、6号機に64本ある。
ここで、原発の核燃料の使い方をフランク・ザッパに説明しとくけど、これは懐中電灯の電池みたいに「電気が点かなくなったら新しい電池と交換する」ってワケじゃない。ニポンの原発の場合は、13ヶ月ごとに定期点検があるので、その時に核燃料が残ってても新しいものと交換しちゃう。中には半分近くも核燃料が残ってるのに交換したものもたくさんある。そして、4号機の冷却用プールにある1331本の使用済み核燃料のうち、ナナナナナント! 548本も「まだ使い終わってない核燃料」が混じってるのだ!
つまり、4号機は、使用済み核燃料の本数も一番多いし、新品の本数も一番多いけど、何よりも危険なのが、この「まだ使い終わってない核燃料」が大量に混じってるってことだ。「まだ使い終わってない核燃料」ってことは、熱量も比較にならないほど大きくて、安全に移動できる状態になるまで、最低でも10年は冷却が必要なものだ。それが548本もあるオカゲで、プール全体の熱量は3号機のプールの10倍以上だって言われてる。
そんな4号機の建屋が、今にも倒壊しそうな状態になってて、現在は間に合わせで入れた鉄骨をツッカイ棒みたいにして下から支えてるけど、大きな地震が起きなくても時間の問題みたいな状況だ。で、もしも倒壊したらどうなるのかって言えば、プールの中ではお互いに干渉しないように、一定の間隔をおいて冷却されてる使用済み核燃料が、ぜんぶ完全に冷却水から出ちゃう上に、ガンガンぶつかり合っちゃうワケで、アッと言う間に核爆発。福島第一原発の核燃料と使用済み核燃料の放射性物質の総量は7億2000万テラベクレル、チェルノブイリの事故で放出された量の10倍だから、ニポンどころか北半球はジ・エンドだ。
‥‥そんなワケで、いったん落ち着いて、使用済み核燃料の処分について説明する。原子炉で使われて御用済みになった核燃料は、こうした原子炉建屋内の冷却用プールで数年から10年ほど冷やされて、何とか移送できる状態になったら、再処理施設へ移送される。ニポンでは青森県の六ヶ所村の再処理施設に運ばれるワケだけど、あそこは1997年に運転開始の予定だったのが、数々の事故が連発した上に耐震偽装まで発覚しちゃって、2008年に試験を中止したから、今はイギリスやフランスの再処理施設に船で運び、莫大な費用を支払って再処理してもらってる。
使用済み核燃料は、そのままじゃ危険すぎるから、溶かしたガラスと混ぜて固体化する「ガラス固化」って作業をする。約1トンの使用済み核燃料が、150リットルほどの個体になり、これを直径40センチ、高さ130センチの円筒形の容器に封じ込めるんだけど、この状態でも極めて危険で、この容器の前に人間が立つと、2~30分で死んでしまうと言われてる。だから、このまま地中に埋めるワケには行かないので、この容器の周りを分厚い粘土で塗り固め、さらに分厚い金属のカバーで覆う。重さは1本で約500キロになる。
これが、人類が生み出した史上最悪の「未来への悪魔のタイムカプセル」ってワケで、ニポンの場合は、この形に換算して、約2万4000本もの使用済核燃料がある。ザックリ言えば、イギリスとフランスに再処理を委託してるぶんが約7500トン、全国の原発の冷却用プールに保管されてるぶんが約1万3500トン、六ヶ所村の再処理施設に保管されてるぶんが約2700トンだ。ちなみに、六ヶ所村の再処理施設のプールのキャパは3000トンなので、もうギリギリだ。そこで、原発利権に首までドップリと浸かってる青森県知事は、むつ市に新たな3000トンと2000トンの「中間貯蔵施設」を造ろうとしてる。
‥‥そんなワケで、今から8年前、2004年3月17日の参議院予算委員会で、オムライス党の福島みずほたんは、自民党政権が推し進めてた六ヶ所村の核燃料再処理施設の事業に関して、「国の予算が52兆円なのに、19兆円は莫大な金額だ。少しでも安くするために、再処理せずに処分した場合のコストはどれくらいなのか」ってことを質疑した。全体には当時の中川昭一経産大臣が答弁してるんだけど、この部分に関しては、政府参考人として呼ばれた当時の経済産業省資源エネルギー庁長官の日下一正が答弁してる。
福島瑞穂君 「私が質問しているのは、安全性の問題もさることながら、コストが余りに大きい。十九兆円というのは、それは日本の経済にとっても大きな痛みとなってしまうんではないか。では、お聞きをいたします。再処理をしない場合のコストは幾らでしょうか。」
政府参考人(日下一正君) 「私どものところ、日本におきましては再処理をしない場合のコストというのを試算したものはございません。これは、昨年十月に閣議決定されましたエネルギー基本計画におきましても、核燃料サイクル政策を推進することを国の基本的な考え方としていることも受けているわけでございます。しかしながら、一定の条件の下での計算でございますから、必ずしも我が国に直接当てはめることはできませんが、OECDのレポートにおきまして、再処理をする場合の方が再処理をしない場合と比較して約一割程度費用が高く掛かるという試算もなされていると承知しております。しかしながら、資源の有効利用などの観点から、御承知のように、イギリスやフランスにおきましては我が国と同様、再処理政策を採用しているところでございます。」
この時の質疑と答弁の全文は、こちらを読んでもらうとして、ここでは日下一正の答弁だけを引用したけど、ようするに、「六ヶ所村の再処理施設で使用済み核燃料を再処理して地層処分するまでに18.8兆円かかる」って言ってる自民党政権に対して、みずほたんは「18.8兆円は大きすぎる。それなら再処理せずに地層処分した場合はいくらになるのか?」って聞いたワケだ。そしたら、日下一正は「そんな試算はしていない」って答えたワケだ。
だけど、これが大嘘だった。ここからさかのぼること6年、1998年の時点で、すでに「原子力環境整備センター」が再処理せずに直接処分した場合のコストとして「4兆2000億円~6兆1000億円」ていう数字を出してて、これを経済産業省の担当者はちゃんと把握してたのだ。つまり、プルサーマルのための再処理など行わずに、使用済み核燃料をそのままガラス固化して地層処分すれば5兆円前後でできるのに、それを言ったら19兆円のビッグビジネスが飛んでっちゃうから、この「安いほうの試算」を隠蔽したってワケだ。そして、原子力ムラの面々は、とにかくどんなことをしても六ヶ所村の再処理施設を稼働させて、みんなで甘い汁を吸おうと目論んでたってワケだ。
で、コイツの名前だけは覚えといてほしいんだけど、経済産業省の安井正也官房審議官てのが、自分の部下たちに「直接処分の試算は存在しないことにしろ」って命令した上に、国会で日下一正に読ませる「嘘の答弁書」を作成した張本人だ。コイツの隠蔽工作によって、「ニポンの原発から出た使用済み核燃料は六ヶ所村の再処理施設で再処理して地層処分する」ってことが決定しちゃったのだ。このまま、この計画が進んで国内での再処理が始まれば、危険なのは当然として、国民に莫大な金銭的負担も強いられるようになる。
この安井正也は、今年の4月に発足する「原子力安全庁」の準備にも関わってる。私利私欲のために部下に国会で嘘の答弁までさせるような隠蔽野郎が、よくもまあ涼しい顔して「原子力安全庁」の発足に口出しできたもんだ。ま、この件に関しては、今、みずほたんが国会でビシバシやってくれてるので、詳しくは、みずほたんの2月10日の「どきどき日記」を読んでみてほしい。
だけど、コイツラの腐り具合はこんなもんじゃない。さらには、もっとシビレちゃうことまで発覚したのだ。この「嘘の答弁」の2年前の2002年10月、ロシアから「我が国ではニポンの使用済み核燃料を受け入れることができる」っていう外交文書が届いた。ようするに外貨稼ぎのための提案てワケだけど、わざわざロシアのほうから言ってきてくれたんだから、これほどアリガタイザーな話はないだろう。それなのに、原子力ムラの面々にとっては、あくまでも六ヶ所村の再処理施設を稼働させなきゃカネが儲からない。大切な使用済み核燃料をロシアなんかに渡してたまるか!‥‥ってなワケで、資源エネルギー庁の幹部たちや原子力委員会の委員たちが結託して、このロシアからの外交文書を隠蔽しちゃったのだ!
ここまでの流れを見れば、原発の最大のデメリットの1つである「使用済み核燃料」までもが、原発利権に群がる守銭奴どもにとっては「カネの成る木」だったってことが分かるだろう。今、自分たちがどれだけ美味しい思いができるか、常に国民から搾取することしか考えてないカネの亡者たちにとって、未来の人たちのことなんてどうでもいい。おんなじ時代に生きてる一般市民のことだってどうでもいいんだから、未来の人のことなんか1マイクロシーベルトも考えてないに決まってる。だから「地層処分」てワケだ。
‥‥そんなワケで、使用済み核燃料を「地層処分」して地下500メートルから1000メートルに埋めた場合、果たしてどれくらいの年月が経てば危険じゃなくなるのか?ヨーロッパでは「最低10万年は監視が必要」って言ってるし、アメリカでは「最低100万年は監視が必要」って言ってる。だけど、ホントに完全に無害になるまでには、一説では1000万年とも1億年とも言われてる。
1000万年や1億年なんてともかく、10万年や100万年でも想像を絶する長さだけど、とりあえず1万年てのがどれくらいのものだか、今から1万年前を見てみると、ニポンは縄文時代だった。そして、もう少しさかのぼった1万3000年前には、まだニポンは大陸の一部だった。1万3000年前に起こった大きな地殻変動で、大陸の一部が切り離されてニポン列島が誕生したのだ。
1万3000年前には、このニポン列島は存在してなかったのに、そんなニポンに、10万年も100万年も監視が必要な使用済み核燃料を埋めるということがどういうことなのか。あたしたちが生きてるわずかな時間の中でさえ、巨大な地震が何度も起こってるのに、この先、10万年も100万年も、ニポン列島がこのままの形で存在してるなんて誰が保障できるのか。
さらに言えば、「10万年も100万年も監視が必要」と言いながら、地中に埋める使用済み核燃料の外装は、最長でも1000年程度しか持たないって言われてる。つまり、最初の1000年だけは放射性物質が外に出ないようにある程度は外装に守られてるワケだけど、その先の99万9000年は中の容器がムキ出しになるワケだし、その容器にしたって、いくらなんでも100万年も持つワケない。これほど無責任な話はないだろう。
‥‥そんなワケで、さっき、地中に埋める形に換算して「約2万4000本もの使用済み核燃料がある」って書いたけど、今のまま原発を使い続けてくと、8年後の2020年には「約4万本」になるって言われてる。いつ大地震が起こるか分からない世界一の地震大国で、処分する方法が分からない使用済み核燃料が増え続けてく恐怖。今ある2万4000本だけだってどうしたらいいのか分からないのに、それでも原発を推進するカネの亡者どもと、さらには、使用済み核燃料までをも金儲けの道具にしようとしてる銭ゲバども。あたしは、巨大な活断層がある六ヶ所村の再処理施設の隣りに深~~~い穴を掘って、こうした原子力ムラの懲りない面々こそを「地層処分」しちまったほうが世の中のためだと思ってる今日この頃なのだ。
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