新刊の紹介『無菌病棟より愛をこめて』加納朋子著
大好きな作家、加納朋子さんの作品の中では、あたしは『ささらさや』と『てるてるあした』が特に大好きで、普通は発刊された順に読むのでしょうが、あたしの場合は、先に『てるてるあした』を読み、続けて『ささらさや』を読む、という流れが気に入っていて、何度もこの読み方をして楽しんでいます。
他にも、『ななつのこ』に代表される駒子のシリーズ、アリスのシリーズ、『ガラスの麒麟』、『レインレイン・ボウ』、『モノレールねこ』などのライト感覚な推理モノも好きですが、物語性を重視した『いちばん初めにあった海』や「あたしに子どもがいたら絶対に読ませたい本ナンバーワン」の『ぐるぐる猿と歌う鳥』も大好きな作品です。疎開生活で数カ月間お世話になっていた農家の小学生の男の子にも、お誕生日にこの本をプレゼントしました。
そんな加納朋子さんの新刊が、先週、久しぶりに出たのですが、大好きな作家の待ちに待った新刊を、これほど複雑な気持ちで手にしたことは、あたしは初めてでした。
この『無菌病棟より愛をこめて』の帯には、次のように書かれています。
2010年6月、私は急性白血病だと告知された。
愛してくれる人たちがいるから、
なるべく死なないように頑張ろう。
たくさんの愛と勇気、あたたかな涙と笑いに満ちた壮絶な闘病記。
あたしは、この本を知るまで、加納朋子さんが急性白血病になって闘病されていることを知りませんでした。そして、焦燥感にも似た感覚に包まれながら、すぐにアマゾンで注文しました。数日後、届いた本を一気に読み‥‥と言いたいところですが、涙で活字が読めなくなってしまい、途中で何度も中断しながら、ようやく読み終えました。
「5年生存率は3分の1」という急性白血病の宣告を受けての緊急入院。つらい抗癌剤治療、転院、骨髄移植‥‥。ご自分の身に起こった大事件なのに、随所に客観的な視点を持ち続けていることや、細部の表現や言い回しなどに「加納朋子さんらしさ」を感じ、それが嬉しい反面、「ああ、やっぱり本当に朋子さんは白血病になってしまったんだ‥‥」という悲しさがこみあげてきました。
でも、あとから「本の話WEB」の「自著を語る」のコーナーで、この本についての加納朋子さんの「白血病患者面会マニュアル」という寄稿文を読み、次の「最後の一節」を読んだ時、少しだけ心が軽くなりました。
『事実は小説より「大変」なり、と実感しつつ、白血病患者の希望の星となるべく、日々を生きている今日この頃なのでした。』
あたしは単なる一ファンなので、ただひたすらに朋子さんの一日も早い完治をお祈りすることくらいしかできませんが、他にも何かできないかと考えて思いついたのが、この『無菌病棟より愛をこめて』をブログで紹介することでした。1人でも多くの人が、この本を手に取って読んでくださることを願っています。
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