ニャンコ先生風雲録
4月12日の朝に、「今朝はスズメがいっぱい来てくれて嬉しかった。昨日の雨でできた水たまりで水浴びしてて、すごく可愛かった。で、すごく面白いことがあったんだけど、とても140文字じゃ説明できないから、ブログに書こうと思う。」ってつぶやいたと思ったのもトコノマ、「光陰矢のごとし」とはよく言ったもので、アッと言う間に2週間も過ぎちゃって、4月も終わりを迎えちゃった。
「一月は行く、二月は逃げる、三月は去る」ってコトワザがあるけど、これは1月から3月までの過ぎ行く速さを表現したものだ。1月はお正月があるから学校や仕事が始まってからは3週間ほどで月末になっちゃうし、2月はもともと日数が少ないし、3月は年度末で忙しいから時間が速く感じられる。それを1月の「い」、2月の「に」、3月の「さ」で始まる動詞で表現したコトワザだ。だから、このあとに「四月は死ぬほど長い」なんていうオマケが付く場合もある。
だけど、あたしの場合は、1月も2月も3月も4月も5月もおんなじスピードでアッと言う間に過ぎてくから、「一月は行く、二月は逃げる、三月は去る、四月は新幹線、5月はGO!」って感じだ(笑)‥‥なんてのも織り込みつつ、4月12日の朝にどんなことがあったのか、何とか4月のうちに書いとこうと思うんだけど、この「すごく面白いこと」ってのは、実際に現場を見ないと面白さが伝わらないジャンルの出来事なのだ。
ビデオで撮影でもしてたら、その映像を見せれば誰もが一発で大爆笑すると思うんだけど、あたしが文章に書いたとこで、どれくらい伝わるかは分からない。だけど、他に方法がないので、何とか面白さが伝わるように、あたしの少ないボキャブラリーを駆使して書いてみようと思う今日この頃、皆さん、いかがお過ごしですか?
‥‥そんなワケで、西日本と東日本とで若干のズレがあったけど、4月の10日から12日にかけて、まるで台風のような大雨と強風が日本列島を西から東へと駆け抜けた。あたしのいる西日本では10日から11日にかけて、東日本では11日から12日にかけて、ものすごい雨と風で、ツイッター上では強風に身を任せる「TMレボリューションごっこ」の報告が飛び交い、TMレボリューションさんご本人は「TMレボリューションごっこにはくれぐれもご注意を!」とツイートをしてた。
そして、12日未明、ラジオの音も聴こえないほどだった雨と風はピタリとやみ、朝には、太陽サンサン熱血パワー、キュアサニーが顔を出した。窓の外ではスズメたちがチュンチュンとさえずってたんだけど、いつもよりずいぶん賑やかなので、窓のカーテンをそっと開けてみたら、隣りの家との間の砂利の私道に大きな水たまりができてて、スズメたちが順番に水浴びをしてた。ぜんぶで2~30羽のスズメが集まってて、隣りの家の木から塀の上に降りてきて、塀の上から砂利道に降り、順番にパチャパチャと水浴びをしてて、とっても可愛かった。
これまでに何度か書いたけど、あたしはスズメが大好きで、あんなに可愛い鳥は他にいないと思ってる。もちろん、他にもいろいろと好きな鳥はいるんだけど、スズメの可愛さは特別だ。ちょうど手のひらに収まりそうなサイズと言い、独特の茶色い柄と言い、どんなに騒いでも決してやかましくない鳴き声と言い、電線に仲良く並んでとまってる姿と言い、すべてが可愛い。
冬の寒い時期に、少しでも温かくなるように羽毛の間に空気を入れて、首をすくめて膨らんでるとこなんて、もう、たまんないほどの可愛らしさだ。あの姿を「ふくら雀」って言って、お着物の帯の結び方にもあるけど、ホントに可愛い。特にあたしはスズメの頭が好きで、見てると口の中に入れてみたくなっちゃうので、代わりに「鈴カステラ」を食べて欲求を抑えてる(笑)
‥‥そんなワケで、どれほどスズメが可愛いかってことを書き続けててもラチが明かないので、この辺でトットと話を先に進めるけど、可愛いスズメたちの水浴びを眺めてたあたしは、右のほうの死角に何やら不穏な空気を感じた。それで、今までは隣りの家に面した部屋の窓から見てたんだけど、表通りに面した玄関の横の窓からそっと下を見てみたら、ニャンコ先生がスズメたちの鳴き声を聞きつけてやって来てたのだ。
家の周りで見かける猫たちの中で、一番体の大きい茶トラの猫をあたしは「親方」って呼んでたんだけど、よその家の塀の上にいる猫に「親方!」って声をかけた時に、たまたまその家の庭に庭師さんとか大工さんとかの親方がいて「何だい?」なんて返事をされちゃったら困るから、誰が聞いても猫のことを呼んでるって分かるように、こないだから「ニャンコ先生」に変更した。で、そのニャンコ先生が、スズメの鳴き声を聞きつけて、家の玄関のほうから家の壁沿いに、身を低くして忍び足でやって来てたってワケだ。
ニャンコ先生は、猫独特の「身を低くしてお尻だけピョコンと持ち上げて左右に揺らす体勢」で、家の壁沿いに隠れて、水浴びするスズメたちを狙ってた。だけど、ニャンコ先生が隠れてる家の角から、スズメたちのいる水たまりまでは7~8メートルはあったから、どんなにタイミング良く飛び出したってスズメたちは余裕で逃げられる。その上、私道の幅いっぱいの大きな水たまりだったから、勢いよく飛びかかるとニャンコ先生自身がビショ濡れになっちゃう。猫は水に濡れるのが嫌いだから、サスガに無謀なことはしないだろう。
それで、あたしは、また元の場所に戻って、スズメたちの水浴びの様子を観察した。あたしの場所から水たまりまでは4~5メートル、乗用車1台ぶんくらいの距離だったけど、窓を閉めたままガラス越しに見てたから、スズメたちはぜんぜん警戒せずに水浴びを楽しんでた。私道は細かい砂利で、雨がやんでから何時間も経ってたので、水たまりの水は意外と澄んでて、とっても気持ちよさそうだった。
それにしても、ここからしばらく行ったとこにキレイな水場があるし、もうちょっと先にはキレイな小川もあるのに、どうしてこんな水たまりなんかで水浴びをするんだろう? これは推測だけど、キレイな水場は他の鳥たちも利用してるから競争率が激しいし、タマに大きな鳥も来る。それに比べて、ここは自分たち専用みたいなもんだし、両側が家の塀と壁に挟まれてるから外敵から身を隠すのには持って来いだ‥‥って言っても、すでに外敵であるニャンコ先生に見つかっちゃってるけどね(笑)
‥‥そんなワケで、あたしは、窓ガラスに左のほっぺをくっつけるようにして、ニャンコ先生のいたほうを見てみた。そしたら、ニャンコ先生ってば、すでに家の角を曲がって、こっちに向かって進んで来てたのだ。あたしから左に4~5メートルのとこにスズメたちがいて、あたしから右に2メートルくらいのとこにニャンコ先生がいたから、双方の距離は6~7メートルだ。
だけど、身を隠すものなんて何もないから、家の壁に沿った場所で身を低くして、耳をジェット戦闘機の主翼みたいに平たくして、お尻を揺らすのもガマンして、ただヒタスラにじっとしてた。だけど、張り詰めた緊張感みたいなのがビシビシと伝わって来てたから、たぶん、猫的な感覚で、今いる位置がギリギリのラインだと把握してるっぽかった。
ようするに、今の位置からだと距離がありすぎて一気に飛び出してもスズメを捕まえることはできないけど、今の位置から少しでも前進するとスズメたちに気づかれちゃう‥‥っていう精神的な板挟み状態ってワケで、ニャンコ先生の表情は、そんな葛藤と戦ってるみたいだった。そして、さらにもっと根源的な深層心理の部分では、今すぐにでも飛びかかりたいっていう野生の本能を、紙一重で上回った理性が抑制してる‥‥ってふうにも見えた。
だけど、意外と辛抱が足りなかったのか、野生の本能が強かったのか、ニャンコ先生は、あたしがふとスズメたちのほうに目をやろうとした瞬間、あたしの前を横切ってスズメたちに襲いかかった!スズメたちはいっせいに飛び立ち、大きな水たまりは泡立ち、ホノボノとしていた朝のひとときは騒然となり、そして、静寂が訪れた。
そんなこんなで、ここまで読んで「何がすごく面白いことなの?」って思ったそこのアナタ、面白いのはここからなんです♪ あれほど賑やかだったスズメたちが一瞬のうちにいなくなり、静寂が訪れた朝、あたしの目の前には、両手を盆踊りのように斜め前に上げたまま、2本足で呆然と立ち尽くしてるニャンコ先生がいたのだ! 耳はジェット戦闘機の主翼みたいに平たくしたまま、まるで蝋人形か剥製のように固まってた! 時間にして、たぶん1秒か2秒、長くても3秒くらいだったのかもしれないけど、あたしにはニャンコ先生が10秒くらい固まってたように見えた。
ニャンコ先生は体の大きな茶トラだから、まさに「ホワッツ・マイケル」だった。スズメやハトを捕まえようとして失敗したマイケルは、恥ずかしさをゴマカスために2足歩行で踊りながらフェードアウトしてくけど、ニャンコ先生は踊らなかった。当たり前のことだけど、あたしは「踊るんじゃないか?」と思って凝視してたから、2本足で立ったまま固まってたニャンコ先生が、ハッと我に返って前足を降ろし、クルッと向きを変えて、ナニゴトもなかったかのようにスタスタと歩いて行っちゃった後ろ姿を見て、ヒザカックンをされたみたいにガクッとした。
‥‥そんなワケで、サスガに踊りはしなかったけど、スズメに襲いかかろうとして逃げられちゃった猫が、その「襲いかかろうとした形」のまま固まって立ってる姿をあたしは生まれて初めて見た。似たようなことは過去にも何度かあったけど、こんなにもミゴトに2本足で立ち、両手を斜め前に上げたまま静止してる猫なんて、ホントに初めて見た。それも、耳を平たくしたままだから最高だった。だけど、この面白さは、最初にマクラに書いたように、映像じゃないと伝わらないと思う。猫の習性に詳しい人や想像力の豊かな人なら、あたしの稚拙な文章からでもある程度は面白さが伝わったかもしれないけど、やっぱり映像の威力にはかなわない‥‥ってワケで、あたしが目撃したニャンコ先生の勇姿はお見せできないけど、代わりに「ジョジョ立ちする猫」の映像をご紹介して終わりにしようと思う今日この頃なのだ♪
■ジョジョ立ちする猫■
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