温泉どうでしょう 第五夜(前編)
さて、久しぶりの母さんとの母娘水入らずの温泉旅行も、とうとう最終日の「第五夜」を迎えちゃったワケだけど、最初に言っとくと、読者の皆さんにはモウシワケナイザーなんだけど、今回の「第五夜」は、ブログに書くような特別なことは何もしなかった。
「高崎山自然動物園にお猿さんを見に行く」「全国の八幡さまの総本宮の宇佐神社にお参りに行く」「ロープウェイで鶴見岳に登ってみる」「ラクテンチっていう山の中腹に見えるノスタルジックな遊園地に行ってみる」「ちょっと臼杵(うすき)まで足を伸ばして国宝の臼杵石仏を見る」など、他にもいろんなプランを考えてみたんだけど、初日からハリキッていろんなことをしすぎちゃったせいか、母さんは、「高崎山にも行ってみたいし、宇佐神社にもお参りしてみたいけど、それは次に来た時の楽しみに取っておいて、最後の日はどこにも行かないでのんびり過ごしたいわ」って言い出した。
正直、あたしも、前日の「乗り慣れないレンタカーを運転して山道を長時間ドライブ」ってのが若干響いてて、アクティブに行動するパワーはあんまり残ってなかったから、母さんが「最後の日はどこにも行かないでのんびり過ごしたいわ」って言ってくれて、ちょっとホッとした。それに、ここまでの4日間で、母さんもあたしも別府が大好きになってて、温泉に浸かるたびに「また来たいね」「もう一度来ようね」って言ってばかりいたから、「まだ行ってない名所」をいっぱい残しとくのは大賛成だ。
今回みたいに1週間近くも旅行することなんてなかなかできないけど、1泊か2泊ならそれほど無理でもない。あたしが住んでる場所は交通の便が最悪なので、大きな駅に出るまでに1時間以上も掛かっちゃうけど、そこからは新幹線とソニック号を使えば2時間で別府に着く。距離的には東京から伊豆に行くような感じなので、ワリと気軽に来ることができる今日この頃、皆さん、いかがお過ごしですか?
‥‥そんなワケで、最終日の「第五夜」は、2日目に「砂湯」に入った「竹瓦温泉」からスタートした。ホテルの目と鼻の先にある「駅前高等温泉」は、ナンダカンダで合計4回も入ったんだけど、ちょっと距離のある「竹瓦温泉」は、2日目に「砂湯」に入ったのと、3日目に「うみたまご」から帰ってきてから湯船のほうに入りに行っただけだった。母さんは、ここのお湯が気に入ったんだけど、この時は夕方だったからけっこう混んでて、「空いてる早い時間にもう一度入りたい」って言ってた。それで、最終日は、とりあえず朝イチで「竹瓦温泉」に入っておこうと思い、駅前から7時過ぎのバスに乗って入りに行った。
「竹瓦温泉」は、「砂湯」は朝8時からだけど、普通の温泉は朝6時から入ることができる。7時過ぎに着いた母さんとあたしは、すでに「勝手知ったる」状態で、右手の受付で2人ぶん200円を払って中へ入り、さっそく一番奥にある浴場へと向かった。
ここも、「駅前高等温泉」とおんなじで、脱衣所から階段を少し下りた半地下みたいな場所に浴場が造られてるんだけど、これは特別なことじゃなくて、別府にある市営温泉の大半が半地下に造られてる。だから、市営温泉の大半は「窓から景色を眺めながら温泉に浸かる」ってスタイルじゃなくて、「地下の秘密基地っぽい雰囲気を楽しみながら温泉に浸かる」ってスタイルだ。
とは言っても、ここは浴場の真ん中に大きな湯船がドーンとあるし、天井が高くて昼間は上の窓から光が降りそそいでるから、あんまり「秘密基地」って感じはしないけど、とにかく、母さんとあたしは、浴場へと階段を下りた。年季の入りまくった浴場は、いたるところが温泉の成分で変色してて、お湯に入らなくても効能が分かるほどだ。ここには湯船は1つだけで、温度は43度。「駅前高等温泉」の熱いほうの湯船とおんなじくらいで、あたしにはちょっと熱いけど入れない温度じゃないし、母さんは「ちょうど良くて気持ちいい」って言ってた。
この日は貸切状態で、脱衣所や浴場の桶や腰かけの感じから、どうやら母さんとあたしが一番風呂だったみたいだ。前回は、7~8人が入ってて、あたしたちが入ってる間に、出る人や新しく入って来る人がいてザワザワしてたけど、この日は40分くらい「貸切家族風呂」を楽しむことができた。ちなみに、湯船の中は、浴場の床とおんなじ石造りになってて、湯船の左右と正面の壁はレンガを積み上げたみたいなデザインになってるんだけど、湯船が面してる側の壁だけが白くて四角いタイル貼りになってて、そのタイルには古風な竹の絵が描かれてた。
あたしは、さすがに長湯はできなくて、3回くらい出たり入ったりしてたんだけど、母さんは気持ち良さそうに、高い天井を見上げながらずっと浸かってた。入ってから40分くらいしたら、1人のお年寄りが入ってきて、そのすぐあとにあたしとおんなじくらいの年齢の女性が2人入ってきたので、それから5分くらいして、あたしたちは上がった。
お湯から上がって、しばらく休憩してたけど体がポカポカしてて、外に出ても体がポカポカしてて、バスに乗っても体がポカポカしてて、ホテルに着いても体がポカポカしてた。それにしても、こんなに素晴らしい温泉に100円で入れるなんて、まさに別府は「温泉天国」だ。さらに言えば、別府には、あたしみたいな観光客は入ることのできない温泉、その地区に住んでる人たち専用の温泉施設が地区ごとにあって、安い地区では月に600円とか800円、高い地区でも月に1200円ほどで、何回でも入り放題なのだ。
これまでにもチョコっと書いたけど、別府には世界中に11種類しかない温泉のうち「放射能泉」以外の10種類の温泉が湧いてて、数えきれないほどの温泉施設があるのに、湧いてる温泉の9割は海に捨ててるほど湯量が豊富だ。だから、地熱発電も盛んだし、「地獄蒸し」みたいに地熱を利用した調理方法もある。
‥‥そんなワケで、今回の「第五夜」は最終日なので、いろんなことを盛り込んでこうと思うんだけど、この日は、お昼までホテルのお部屋でテレビを観ながらゴロゴロして、駅の並びにある「だんご汁」を食べた「豊後茶屋」にお昼を食べに行った。母さんは、ここの「だんご汁」が気に入ったと言って、あれからもう一度食べに来てたので、これで3回目だ。でも、この日は「おそばが食べたいね」って言って、あたしとおんなじ天ぷらそばを注文した。えび天が2本乗ってて600円だから、ちゃんとしたお店で食べる天ぷらそばとしては、あたしの感覚だと安い部類に入る。
ただし、ここは九州なので、透き通ったお汁でアッサリとした西日本の味だ。東京のおそばが大好きなあたし的には、シマダヤの濃縮めんつゆを大さじ2杯くらい足したくなっちゃう(笑)‥‥ってなワケで、このお店には「地ビール」が何種類かあって、その中に「鉄腕 稲尾」っていう地ビールがあった。注文してないので写真は撮ってないんだけど、母さんくらいの年代の人にはオナジミの、あの「神様、仏様、稲尾様」は、別府の出身なのだ。あたしは、「ここは別府なんだから、北別府のビールも造ればいいのに」って思ったんだけど、あとから調べてみたら、北別府さんは鹿児島県の出身だった。あ~紛らわしい!(笑)
で、別府に来て驚いたのは、こっちの人は何にでも「カボス」を入れるってことだ。「だんご汁」にもカボスを搾って入れるし、お味噌汁にも搾って入れるし、焼き魚にも搾って掛ける。焼き魚はレモン的な使い方だから分かるとしても、お味噌汁って‥‥って思ったんだけど、これが意外とイケちゃうのだ。これも写真は撮ってないんだけど、商店街にあった定食屋さんで晩ごはんを食べた時、サク切りにしたカボスが大きな器に山盛りになってて、お店の人に「どうぞ、どうぞ」って勧められたから、「何に使うんですか?」って聞いたら、「焼き魚に掛けてもいいし、味噌汁に入れても美味しいよ」って言われたので、あたしは半信半疑でチャレンジしてみた。
そしたら、ちょっと濃いめのお味噌汁にホンノリと酸味がプラスされて、言うなれば「和風トムヤムクン」て感じになった。「ゆず」はクセがあって自己主張が強いから、天ぷらそばに「ゆず」の皮をほんのちょっと乗せるくらいで十分で、搾って入れたりしたらお料理の本来の味が台無しになっちゃう。焼き魚だって、「ゆず」を搾って掛けたら、「ゆず」の香りが強すぎて美味しくないと思う。だけど、カボスはクセがなくて自己主張してないから、ある程度、大量に入れても問題ない。母さんもカボスを搾って入れたお味噌汁が気に入って、「カボスサワーより、こっちのほうが美味しいね」なんて言ってた。
‥‥そんなワケで、天ぷらそばを食べた母さんとあたしは、少しお散歩したんだけど、駅から海の方向へまっすぐ下ってる駅前通りって、駅から見て右手側にコンビニとかパチンコ屋さんとかラーメン屋さんとか「駅前高等温泉」とかが密集してて、左手側はお店が少ししかない。それに、アーケード街や「竹瓦温泉」への路地があるのも右手側なので、今まではずっと右手側ばかりを散策してた。それで、最後の日の今日は、今まで歩いたことがない左手側の歩道を歩いてみた。
そしたら、数軒のお店を過ぎたところから、何かのビルでも建てるのか、ワリと広い面積を工事してて、しばらく歩道に沿って目隠しのグレーのパネルが続いてた。この写真は、しばらく下ってから振り向いて撮ったので、歩道の右手にパネルが並んでるけど、駅から見ると左手になる。
あたしは、「東京なら、お花や樹木のイラストか何かが描いてあるパネルを使うのに、ただのグレーのパネルだなんて、ずいぶん味気ないなあ」なんて思ったんだけど、このあたしのアホな発想は、すぐに否定された。何枚目かのパネルに、こんなステッカーが貼ってあったのだ。
「TiO2の光触媒作用」
「このパネルは太陽の光を利用して空気をきれいにしています」
おお~!これまでにも、さんざん、別府のエコっぷり、大分県のエコっぷりには感心させられてきたけど、こんなとこにまで!‥‥ってなワケで、「TiO2」ってのは「酸化チタン」の化学式で、このパネルは、光が当たることによって触媒効果が起こって空気をキレイにする性質を持ってる「酸化チタン」を使ってるってワケだ。
お花や樹木のイラストを描いたパネルで工事現場を囲って「見た目だけの爽やかさ」を演出するよりも、味気ないグレーのパネルでも、こっちのほうが何万倍もワンダホーじゃん! あたしは、短絡的な自分の想像を恥じるとともに、ますます別府のことが好きになった。
工事のパネルに感心しつつ、のんびりと坂を下ってくと、1つめの信号のとこに左に曲がる少し広めの道があって、何軒かのお店が見えたから、とりあえず曲がってみた。そしたら、右手にスーパーがあった。別に買いたいものはなかったんだけど、あたしは、別府のスーパーの品ぞろえと値段が気になったので、ちょっと覗いてみることにした。不動産屋さんのガラスに貼ってあった「家賃2万8000円の1軒家」の間取り図を見てからというもの、ナニゲに別府に引っ越して来たい気持ちがフツフツしてたからだ。
スーパーの品ぞろえは文句なしで、安くなってて当然のものは安くなってたし、大分県ならではのものもいろいろとあったし、なかなか良かった。ただ、1つだけ気になったのが、そのスーパーで作ってるお弁当やお惣菜のコーナーを見てみたら、パックの握り寿司についてる「ガリ」が、ナナナナナント! ピンク色だったのだ!
ホカ弁とかに入ってて、ほとんどの人が食べずに捨ててる気の毒な運命のピンク色のお漬物があるけど、アレとおんなじ色をしてるのに、形状は間違いなく「ガリ」なのだ。それも、お寿司の横にチョコンと置いてあるんじゃなくて、お醤油とおんなじに小さな袋に入ってる「出来合いのガリ」だから、つまりは、こうしたお店のパックのお寿司に添えるために、どっかのメーカーが製造してる「業者向けのガリ」ってワケで、そこから推測すると、「大分県のガリはピンク色」っていう結論が導き出される。
スーパーの人に聞いたワケでもなく、別府のお寿司屋さんに行って確認したワケでもないから、これは単なるあたしの推理だけど、「大分県のガリはピンク色」だっていう推理が当たってたら、普通のショウガの色の「ガリ」が大好きなあたし的には、この点だけは大分県に対してマイナスポイントを与えることになっちゃう(笑)
‥‥そんなワケで、何にもしなかった日なのに、書き出すと意外に書くことがいっぱいあって、まだお昼を過ぎたとこだってのに、もうこんなに長くなっちゃった。だから、ホントは、この「第五夜」の「前編」で最終日のことをぜんぶ書き、次の「後編」で別府の感想を書こうと思ってたんだけど、ここから先のことは、次回へ持ち越し!‥‥って感じの今日この頃なのだ♪
次回はいよいよ最終回!‥‥のつもりだけど、まだ書きたいことがいろいろあるので、もしかしたら「第四夜」みたく「前編」「中編」「後編」になっちゃうかもしれません!どっちにしても、To Be Continued!(笑)
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