温泉どうでしょう 第四夜(前編)
今回の旅行の目的は「親孝行」なので、できる限り母さんを喜ばせるためのプランを組んでたんだけど、1日だけ、あたしの希望を入れさせてもらった。それが、今回の「第四夜」に行なった、日本最大の地熱発電所である九州電力の「八丁原(はっちょうばる)発電所」の見学だ。
ふだんは「原発反対!」って主張してるクセに、旅行に行けばそんなことコロッと忘れて、温泉に浸かって美味しいものばかり食べてるなんて、やっぱり調子が良すぎると思った。あたしが温泉に浸かってる間も、原発を止めるために必死になって戦ってる人たちに、ホントに申し訳ないと思った。旅行の初日や2日目に、ツイッターのTLを流れる抗議行動の現場からのツイートを読むたび、あたしは胸が痛んだ。
だから、あたしは、母さんとの母娘水入らずの旅行中でも、あたしなりにできることをしようと思った。それが、「八丁原発電所」の見学だ。すべての原発を止めても、当面は火力で何とかなるけど、それはあくまでも自然エネルギーにシフトするまでの場つなぎでしかない。無責任に「原発反対!」って騒ぐだけじゃなくて、ちゃんと代替エネルギーのこと、自然エネルギーのことを勉強して、すべての原発を廃炉に向かわせたあとのこと、これからの日本のエネルギー問題を具体的に考えていかなきゃ「脱原発」なんて夢物語でしかない。
‥‥そんなワケで、今回はマジメ風味にスタートしちゃったので、「いかがお過ごしですか?」は無しにするけど、ここ大分県は、九州の中でも自然エネルギーに対してとっても前向きな県だ。日本には、現在、18ヶ所の地熱発電所があるんだけど、その内わけは、北海道電力が1ヶ所、東北電力が7ヶ所、東京電力が1ヶ所で、あとの9ヶ所はすべて九州にある。そして、九州にある地熱発電所の半数以上の5ヶ所が大分県に集中してる。さらには、そのうちの1ヶ所が日本最大の地熱発電所なんだから、大分県まで行ったら、これを見学しないワケにはいかないだろう。
ただ、この「八丁原発電所」は、おいそれと行ける場所にはない。ザックリと言っちゃえば、別府の街から遠くに見える由布岳のとこに有名な温泉地の湯布院があって、それよりさらに山道を進んでったずっと先のほうにある。「八丁原発電所」のホームページの説明文を引用させてもらうと、「八丁原発電所のある九重町は、大分県の中央部にあり、東と南を阿蘇くじゅう国立公園の九重連山、西側を耶馬日田英彦山国定公園の山々に囲まれた、高原と温泉の町です。」ってワケで、あたし的には「阿蘇」って名詞を目にしただけで、すでに熊本県フレーバーが漂い始めちゃったほどだ。
で、交通の便を調べてみたんだけど、電車とバスを乗り継いでって「筋湯(すじゆ)温泉」ていう山の中の温泉に行けば、そこから1キロか2キロくらい歩いたとこにあるってことが分かった。つまり、「行くのは無理だ」ってことだ。あたし1人なら何とかなりそうだけど、さすがに母さんは連れてけない。そこで、あたしが考えたのが、「ザ・レンタカー作戦」だった。別府の駅の周りには、何軒もレンタカー屋さんがあって、調べてみたら、安い車なら5000円以下で借りられる。
調べたら、長距離バスで発電所の最寄のバス停まで行くのが片道2000円以上だったから、2人で往復したらバス代だけで8000円以上も掛かっちゃうし、その上、山道をいっぱい歩かなきゃならない。それなら、レンタカーのほうが安く済むし、何よりも歩かないで済む。それに、レンタカーでのドライブなら、美しい景色を楽しんだり、どっかに寄り道したりして、母さんにも楽しんでもらえる。それで、あたしは、前日、「うみたまご」からホテルに戻ってから、近くのレンタカー屋さんに行ってみたんだけど、前日に予約すると割引になるって言うから、その場で予約しちゃった。
‥‥そんなワケで、今回は「八丁原発電所」の見学がメインだから、道中のことはできるだけ割愛してくけど、とにかく、母さんとあたしは、約束しといた朝の8時半にレンタカー屋さんへ行き、手続きをして車を借りて出発した。前日は曇りだったけど、この日はお天気で、まさに「ドライブ日和」って感じだった。何よりも助かったのは、観光地のレンタカー屋さんだからなのか、今はコレが普通なのか分からないけど、「全車ナビ付き」だったことだ。保険までぜんぶ含めて4000円ちょいの安い車なのに、最新式のナビが目的地まで案内してくれる。
で、あんまり端折るのもアレだから、ザックリと書いとくと、最初は「地獄めぐり」に行った時のクネクネ道を上っていき、そこからもっと山を上ってったので、景色は最高だった。でも、この「九州横断道路」っていう山越えの道路は、片側1車線のヘアピンカーブが連続してて、たまに対向車がセンターラインギリギリで迫ってきたり、道幅いっぱいの観光バスが迫ってきたりするもんだから、なかなかスリリングなドライブだった。
ただ、スタートした時はお天気が良かったのに、湯布院に近づいてきたら空がどんよりしてきて、ナニゲに雨が降り出しそうな雰囲気になってきた。事前に発電所に電話して見学できるか確認してみたら、「雨が降ったら見学できません」とのことだったので、ちょっと不安になりつつ、あたしは運転を続けた。
でも、湯布院を過ぎたら、急に青空が広がった。別府の街から見た時、由布岳のとこだけ雲が掛かってたけど、もしかしたら、あの雲の中を通過したのかもしれない。途中、「小田の池」ってとこのパーキングでおトイレに行ったり、「狭霧台の展望台」ってとこで休憩したり、名前は忘れちゃったけどナントカ高原てとこでウエスタンなイデタチで乗馬してる人を眺めたりしつつ、結局、2時間以上も山道を走り続け、「やまなみハイウェイ」から発電所への分岐点に到着した時には、もう11時を回ってた。
木々が続いてるだけだった「やまなみハイウェイ」の先に、急に現われたオシャレな洋風のレストランみたいな建物のある分岐点をナビの言う通りに右折すると、すぐに「筋湯温泉まで7キロ」の看板があった。発電所は筋湯温泉の近くだから、この道で間違いない。道の両側が森になった薄暗い道を走ってると、左手に何かの看板があったので、ちょっとバックして確認してみたら、「成長限界試験林」て書いてあって、水源を保護するための森だってことが分かった。
しばらく進むと、森を抜けて急に明るくなり、道幅も広くなって、頭上には青空が広がった。途中で「200m先、工事中」の看板を見つけたから、わざわざ車を停めて写メを撮った。何でかって言うと、ここまでほとんど「水曜どうでしょう」的なネタがなかったから、分かる人にしか分からなくて申し訳ないけど、この看板に向かってスーパーカブでウィリーして突っ込んでみようと思ったからだ(笑)
でも、スーパーカブも無いし、工事も「解除中」だったので、そのまま大人しく先へ進むと、右手の木々の間に、真っ白な湯気がモクモクと上がってるのが見えてきた。きっとアレが発電所に違いないと思って進むと、思った通り、右手に看板があった。目印にしてた筋湯温泉は、まだ1~2キロ先で、もしもバスで筋湯温泉まで行ったとしたら、戻って来る感じだった。
‥‥そんなワケで、道路の真ん中で車を停めて入口の写メを撮ったので、慌てて下のほうに指が写っちゃったのはご愛嬌ってことで、とにかく、あたしは右折して車を路肩に停めてから、入口の看板と敷地内の案内図の写メを撮った。
この案内図の写真だと分かりにくいかもしれないけど、左下のほうにクネクネと伸びてる道がT字路になってぶつかってるとこが「今いる入口」で、ここから建物までが遠かった。車だったからすぐ着いたけど、たぶん1キロ近くあったと思うから、ホントにレンタカーにして正解だったと思った。
入口からの道を奥へと進むと、正面にモクモクと立ち上る真っ白な湯気が見えてきて、あたしは、「とうとう日本最大の地熱発電所にきたんだ!」っていう気持ちが強くなった。
大きくカーブした上り坂を過ぎ、少し勾配がきつくなった辺りに、何だか分からない巨大な施設が現われて、そのすぐ先に「見学の受付」の案内があった。
建物の敷地に入ると、目の前に巨大な白いコイルみたいなのが何本も立ってて、そこから太い送電線が何本も山の下のほうへと伸びていた。あたしは、数台の車が停まってるだけで、8割方は空いてた駐車場の一番奥に車を停めて、見学の受付があるという建物の2階に向かった。
思ってたよりも小さなドアから中に入り、思ってたよりも狭い階段を上ると、思ってたよりもこじんまりとした受付があって、思ってたよりも美人のお姉さんが笑顔で迎えてくれた。見学は無料で、受付表に名前を書くだけだった。ちなみに、名前の次に「どこから来たのか」にチェックを入れる欄があったんだけど、これが、ある意味、思いっきりフランク・ザッパで、「福岡県、佐賀県、長崎県、大分県、宮崎県、熊本県、鹿児島県、九州以外」っていう、ちゃんと最後にオチがついてる8択だった(笑)
‥‥そんなワケで、あたしが「九州以外」にチェックを入れると、受付のお姉さんが「八丁原発電所」のパンフレットを母さんとあたしにそれぞれ渡してくれて、「向かいの部屋でビデオが始まっていますので、お急ぎください」って言われた。まずは映写室で短い解説のビデオを観て、それから施設を見学することになってて、この日は、あたしたちよりも少し先に何組かの人たちがきたので、先にビデオが始まってたのだ。
映写室の入り口の横には、すごく面白そうな「森のエコエネルギー 地熱発電ゲーム」ってのがあって、ウサギさんやサルさんなどの森の仲間たちが並んでて、どうしてもやってみたかったんだけど、やろうとしたら背後から「お急ぎください!」って言われちゃったので、あたしは仕方なく映写室に入った。せめて写メだけでも撮っておけば良かったんだけどなあ‥‥。
映写室に入ると、小さい子ども連れの若い夫婦や中年の夫婦、若い男性など、10人くらいの先客がいた。あたしは「うみたまご」の時と同様に「平日の昼間なのに、こんなとこまで来る人がこんなにいるんだ」って思った。母さんとあたしは、真ん中の前のほうに腰かけたんだけど、上映してたビデオは意外にも「温泉の紹介」で、この周辺の温泉の良さを紹介したり、自然の美しさを紹介したりと、完全に「観光案内」だった。でも、その次に始まったビデオが、地熱発電に関する学習ビデオだった。
この「八丁原発電所」についての学習ビデオが終わると、バッチリとフルメークでちょっと高齢のお姉さんが、画面の左右に展示されてたパネル状の模型を使って、地下のどんな部分まで掘削するのか、手順を説明してくれた。パネルの横には、この「八丁原発電所」を造った時に実際に使用したという、掘削機の先端のドリル部分と、実際に掘った岩盤の輪切りが展示してあった。
あたしは、この先端のドリルを見て、すぐに「竹瓦温泉」の展示ケースの中にあった、温泉を掘った時のドリルの先端を思い出した。
あたしのヘタクソな写メだと分かりずらいと思うけど、この黄色の矢印で示した「竹瓦温泉」の温泉用のドリルも、おんなじように3枚の歯車状のものが先端に内向きに付いてて、全体の形はソックリだった。ただ、温泉用は直径が10センチもないくらいだったけど、地熱発電所に展示してあったのは直径が30センチくらいあって、ものすごく重たそうだった。
‥‥そんなワケで、いよいよ実際の施設を見学に行くワケだけど、その前に、地熱発電のシステムをザックリと説明しとくと、地熱発電てのは、このドリルからも分かるように、つまりは「大規模な温泉を掘って、地下から噴き出す大量の高温の蒸気でタービンを回し、それで発電する」ってワケだ。ようするに、温泉が枯れない限り、いつまでも燃料費はタダだし、発電の過程でCO2などはいっさい排出しない夢のような発電システムってワケだ。だけど、当然のことながら、メリットだけじゃなくてデメリットもある‥‥ってなワケで、次回は、実際に「八丁原発電所」の施設を見学しながら、この辺のことも詳しく解説してこうと思う今日この頃なのだ♪
★ 今日も最後まで読んでくれてありがとう!
★ よかったら応援のクリックをポチッとお願いしま~す♪
↓
| 固定リンク