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2012.11.14

あたしのポポンが招いた悲劇

中学生のA君が同級生のB君を殴ってケガをさせたら、A君が加害者でB君が被害者ってことになる。この部分だけを聞かされたら、誰もが「A君が悪い」って思うだろう。だけど、ほとんどの場合、何の理由もなく人が人を殴ることはない。そこには何らかの理由がある。で、この場合、たとえば、A君がクラスで一番いばってるイジメっ子だったとして、おとなしいB君のことを来る日も来る日も執拗にイジメてて、とうとうイジメがエスカレートして殴ってしまった‥‥ってことであれば、最初に思った通りに「A君が悪い」ってことになる。

だけど、逆にB君のほうが手のつけられないイジメっ子で、毎日のようにクラスのC君のことをイジメてたとする。それで、見るに見かねたA君が止めに入って、C君を助けるためにB君のことを殴ってケガをさせてしまった‥‥ってことになると、「A君がB君を殴ってケガをさせた」っていう事実は変わらないけど、そのイメージはずいぶん変わってくる。単純に「A君が悪い」とは言えなくなってくる。

そして、もっと複雑なケースとしては、B君がA君の悪口を陰で言って回っていて、それを知ったA君が怒ってB君のことを殴った‥‥っていうケースも考えられるし、さらに複雑にするなら、B君に恨みを持っていたD君が血の気の多いA君に「B君がA君の悪口を言って回っている」と嘘の告げ口をして、何の罪もないB君をA君に殴らせるように仕向けた‥‥っていうケースも考えられる。こうなってくると、もちろん「A君がB君を殴ってケガをさせた」って事実に変わりはないけど、ある意味、「A君も被害者」ってことになってくる。

さらにさらに複雑にするなら、A君の親友であるD君が、自分が耳にした「B君がA君の悪口を言って回っている」という噂話を事実だと思い込み、親友のためを思ってその話をA君に知らせた。怒ったA君はB君を呼び出して殴った。だけどあとからその噂が事実無根だったと分かった‥‥ってケースまで考えられる。こうなってくると、もはや誰が悪いのかも分からなくなってくる今日この頃、皆さん、いかか゛お過ごしですか?


‥‥そんなワケで、何でこんな複雑なマクラを書いたのかって言うと、あたし自身、コレと似たようなことを経験してて、15年近く経った今も、何とも言えない「申し訳ない気持ち」を引きずってるからだ。それもこれも、未だに「誰が悪いのか分からない」ってことが最大の原因で、誰が悪いのか分からないから、あたしもスッキリしない中途半端な罪悪感を引きずってるのだ。

今から15年くらい前のこと、中古のフィアット・パンダをローンで買ったばかりのあたしは、ほぼ毎日、愛車で都内を走り回ってた。あたしの場合、毎日の仕事が場所も時間も違うから、走る道路も毎日違ってて、渋滞する時間帯は細い裏道ばかりを使ってた。

で、ある日のこと、たしか夜の8時か9時ころだったと思うけど、都心の撮影スタジオからの帰り道、繁華街の細い一通の路地から大通りにでるとこで、あたしは赤信号で止まってた。あたしの前には背の高いワンボックスカーが止ってて、あたしは2番目で、あたしの後ろにもタクシーをはじめ何台かの車が止ってた。

この場所は、大通りのほうの青信号が長くて、そのあとに歩行者の信号がスクランブル的に長く青になり、最後にこの路地から出る車の信号が短めに青になる。だから、路地から出る車は、青になった瞬間にサクサクと進まないと後続車に迷惑をかけちゃう。

だけど、この日は、ようやく信号が青になったのに、あたしの前のワンボックスカーが発進しなかった。ナンバーは品川だったから都内の運転に慣れてないワケもなさそうだし、あたしは「信号が青になったことに気づいてないんだ」って思い、報せる意味でクラクションを「ポポン」と鳴らした。これは「早く行けよバカ野郎!」的な「ブブーッ!」じゃなくて、あくまでも親切に教えてあげる時の「ポポン」だ。

そしたら、一瞬あとに「何だこの野郎!」っていう怒声が聞こえてきて、前のワンボックスカーがユラユラと揺れ始めた。あたしは何事かと思い、運転席の窓を開けて頭を出して前を見たんだけど、左ハンドルなので角度的に前で何が起こってるのかまったく見えない。それで、右側の助手席のほうから前を見ると、見るからにヤクザっぽいオヤジが、前のワンボックスカーの運転席に向かって怒鳴り散らしながら、蝶野のケンカキックばりにドアのあたりをボコボコと蹴ってた。

分かりやすく説明すると、そのワンボックスカーの前の横断歩道の信号が赤になったのにも関わらず、ヤクザっぽいオヤジがチンタラと渡ってたので、ワンボックスカーの運転手は自分のほうの信号が青になったけど、変なイチャモンでもつけられたらかなわないから、オヤジが渡りきるのをおとなしく待ってたのだ。だけど、そんなこととは露ほども知らなかったあたしは、前の車の運転手が青信号に気づかないんだと思ってクラクションを「ポポン」と鳴らした。そしたら、そのヤクザっぽいオヤジは、そのワンボックスカーが自分に対してクラクションを鳴らしたんだと勘違いして、ブチギレてケンカキックを炸裂させたってワケだ。


‥‥そんなワケで、これはほんの10数秒のことで、そのワンボックスカーはオヤジから逃げるように左折して行き、オヤジは捨てゼリフを残して右手の雑踏に消えて行き、信号は赤に変わってしまったのであたしはそこに残された。そのワンボックスカーが商用のボロボロの車か何かだったら、あたしもそんなに罪悪感を抱かなかったんだけど、ピカピカの3ナンバーの自家用の新車だったから、あたしは「大変なことをしちゃった!」って思った。

だけど、あたしが次の青信号で左折して大通りを進んだ時には、もうあのワンボックスカーの姿はどこにもなかったから、追いかけてって謝ることもできなかったし、あたしにはどうすることもできなかった。悪いのはもちろん赤信号を平然と渡ってた上に、勝手に勘違いしてワンボックスカーに蹴りを入れたオヤジなんだけど、その原因を作ったのはあたしの「ポポン」だから、あたしはものすごく申し訳ない気持ちになった。

マクラの話で言えば、ヤクザっぽいオヤジが「殴ったA君」で、ワンボックスカーの人が「殴られたB君」で、その原因を作ったあたしが「D君」てことになる。だけど、これまでの説明でも分かるように、あたしがもともと前のワンボックスカーに腹を立てていて、オヤジをけしかける目的で意図的に「ポポン」と鳴らしたのなら大問題だけど、どっちかって言うと、あたしは「A君の親友であるD君」の立場だったワケで、自分のためでもあったけど、親友のためを思って「ポポン」と鳴らしたワケだ。

極論を言っちゃえば、この時、ワンボックスカーの運転手も怒って車を降りてきて、騒ぎがもっと大きくなって、警察がやってきて白黒つけてくれれば一番良かった。あたしも正直に「クラクションを鳴らしたのは自分です」と証言したし、その上で、キチンと法律に照らし合わせて処分を決めてもらってたら、こんなことを15年間も引きずることはなかったと思う。


‥‥そんなワケで、あたしが15年間も引きずってる理由は、もうひとつある。それは、この時のあたしの「ポポン」が道路交通法違反に抵触してるからだ。道路交通法第54条の警笛(クラクション)に関する規定では、第1項に「車両等の運転者は、道路標識で指定された場所や区間では警音器を鳴らさなければならない」、第2項に「車両等の運転者は、法令の規定により警音器を鳴らさなければならない場合と、危険を防止するためやむを得ないとき以外は、警音器を鳴らしてはならない」と明記されてる。つまり、「警笛ならせ」の標識がある場所と、危険を回避するため以外でクラクションを鳴らす行為は禁止されてるのだ。

実際には、今回のあたしのケースのように、信号が青になっても停止し続けてる前の車に報せる目的で「ポポン」と鳴らしたり、友達の車と別れる時に挨拶として「ポポン」と鳴らしたり、合流とかで道を譲ってくれた車にお礼の意味で「ポポン」と鳴らしたりする人は多い。後ろの車に対しては、ハザードをつけて挨拶やお礼をする場合もあるけど、それ以外の場合は「ポポン」が多い。だけど、厳密に言えば、これらの行為は違反にあたる。

ただ、警察もこうした「悪意のないクラクション」「善意あるクラクション」を取り締まることはない。ようするに「黙認してる」ってことになる。だけど、おんなじ「信号が青になっても停止し続けてる前の車に報せる目的」でのクラクションの使用でも、「早く行けよバカ野郎!」的な「ブブーッ!」の場合は完全に悪意があるし、現にこれが原因で殺人事件まで起こってる。

だから、あたしは、いくら自分に悪意がなかったとは言え、自分の「ポポン」が原因で、どこかの誰かのピカピカの新車にキズをつけるような結果を招いてしまったことに対して、15年経った今でも、モヤモヤした「申し訳ない気持ち」を引きずってる。法律も何も関係なく、あたしの感じてる罪悪感だけで言えば、もしもこのワンボックスカーの修理に10万円掛かってたとしたら、もちろんドアを蹴って凹ませたオヤジが一番悪いんだから9万円くらいは支払ってもらうとしても、あたしも1万円くらいは支払わなきゃいけないような気がしてる。


‥‥そんなワケで、世の中で起こってることの多くは、白黒がハッキリつかないことが多い。白黒がハッキリしてるのは「ゼブラーマン」くらいだし、勧善懲悪なんてのはアニメや戦隊ヒーロー物くらいだし、アニメだって最近は「エヴァンゲリオン」や「エウレカセブン」みたいにどっちが悪いのかハッキリしてない作品も多い。世界各地で起こってる戦争や内紛にしても、どっちが悪いかは自分の立ち位置によって正反対になっちゃうし、今回の原発事故だって、一番悪いのは誰なのか、誰にも分からない。すべてを見切り発車で続けてきた東電の体質そのものを批判する人もいるし、これまで原発を推進してきた自民党政権を批判する人もいるし、事故後の対応の悪さから民主党政権を批判する人もいるし、そんな自民党や民主党に政権を任せた国民自身に責任があると言う人もいる。だから、あたしは言いたい。10年後、20年後までモヤモヤした罪悪感を引きずって行かないように、今、未曽有の原発事故に至った経緯を徹底的に検証し、責任の所在を明確にしておくことが必要だと思う今日この頃なのだ。


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