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2013.01.09

子猫のハッピーエンド

去年の夏のこと、家の裏の草むらからニャーニャーと鳴き声が聞こえてきたので、捜索してみたら、手のひらに乗るほどの、まだ生まれて間もないキジトラの赤ちゃん猫がいた。目ヤニで目がふさがってて、黄色い鼻水が固まってて鼻の穴もふさがってて、小刻みに震えながら苦しそうに鳴いてた。きっと、お母さんの留守中に、お母さんを探しに住みかから出てきちゃったんだろう。

あたしは急いで台所に行って、ぬるま湯とティッシュを取ってきて、目と鼻を拭いてあげた。赤ちゃん猫は、目が見えるようになって鼻で息ができるようになったら少し落ち着いて、あたしの指先のお水を舐め始めた。あんまり人間の匂いが付いちゃうと、お母さんが警戒するかもしれないので、あたしは、とりあえず元の草むらに赤ちゃん猫をそっと戻した。

あたしが離れると、赤ちゃん猫は、またニャーニャーと鳴き始めた。もちろん、そのまま放置するワケにはいかないので、あたしは、裏の窓を開けて鳴き声を聞きながら様子を見てた。お母さんが探しにきてくれれば何よりだし、夕方まで待ってもお母さんが来なければ、一時的に保護するつもりでいた。でも、30分もしないうちに、赤ちゃん猫とおんなじキジトラの成猫がやって来て、赤ちゃん猫の首をくわえて帰っていった今日この頃、皆さん、いかがお過ごしですか?


‥‥そんなワケで、今のあたしの家には、ニャンコ先生って呼んでる茶トラの大きな猫が遊びに来るので、いつもカリカリを用意してる。家の周りでは他にも何匹かの猫を見かけるし、家の塀の上を歩いてる猫もいるんだけど、最初のころは、玄関先や庭にまで入って来て、我が物顔でカリカリを食べてくのはニャンコ先生だけだった。

だけど、キジトラの赤ちゃん事件があってからしばらくして、キジトラの成猫が庭に入ってきた。あの赤ちゃんのお母さんなのか、似たような大きさの猫なのかは分からなかったし、それ以前に、メスなのかオスなのかも分からなかったけど、ニャンコ先生のあとにくっついて庭に入って来た。そして、あたしがニャンコ先生にカリカリを出してやると、カリカリを食べるニャンコ先生の様子を離れた場所からじっと見てた。

あたしは、別のお皿にカリカリを出して、ニャンコ先生から1メートルくらい離れた場所に置いてあげた。キジトラはワリと人になついてるようで、すぐにお皿のとこに来て、カリカリを食べ始めた。このキジトラが、あの赤ちゃんのお母さんだったってことが判明したのは12月に入ってからのこと、夏に見た赤ちゃん猫よりも二回りくらい大きいキジトラの子を2匹連れて、庭にカリカリをもらいに来たので、あたしは、この子猫のどっちかが、あの時の赤ちゃん猫なんだと直感した。


‥‥そんなワケで、キジトラの赤ちゃん事件があった去年の夏ころ、あたしは、『コイノカオリ』っていう本を読んでた。角田光代さん、島本理生さん、栗田有起さん、生田紗代さん、宮下奈都さん、井上荒野さんという豪華な6人による「香り」や「匂い」をテーマにした恋愛小説のアンソロジーだ。あたしは、大好きな角田光代さんの書き下ろしが読みたかったからBOOK OFFで買って来たんだけど、読み始めてみると、どの作品も素晴らしかった。

で、どの作品も甲乙つけがたいほど良かったんだけど、中でも大トリをつとめてた井上荒野さんの『犬と椎茸』の胸の奥がザワつくみたいな感じの読後感にシビレた。井上荒野さんの作品は、直木賞受賞作の『切羽へ』と、今月、映画が公開される『つやのよる』くらいしか読んだことがなかったので、他の作品も読んでみたいなって思った。

それで、ビンボーなあたしはいつも図書館かBOOK OFFばかりで作家の皆さんにはホントに申し訳ない気持ちでいっぱいなんだけど、去年の秋にBOOK OFFに行った時に、本棚の井上荒野さんのとこもチェキしてみた。そしたら、何冊かの中に『雉猫心中』っていう作品があって、あたしは、2~3年前にこの本が出版された時に、タイトルだけで「読んでみたいな」って思ったことを思い出した。その上、キジトラの赤ちゃんのことも頭に浮かんだので、あたしは、本の中も見ずに買うことに決めた。

あたしは、この時、BOOK OFFで読みたかった本を5冊くらい買って来たんだけど、前に買ってまだ読んでなかった本もあったし、あたしは1冊の本を大事に大事にちょっとずつ読むタイプなので、一番最後に井上荒野さんの『雉猫心中』を読み始めた時には、12月くらいになってた。

これから読む人もいるかもしれないので、ネタバレにならない程度に書くけど、この作品は、結婚してる男と結婚してる女のダブル不倫の物語だ。同じ町内に住む男と女が、1匹のキジトラの猫を媒体にして出会い、ドロドロした肉体関係へと突入してく‥‥って流れなんだけど、このキジトラの猫が庭にくるようになったことで、女はスーパーでカリカリを買い、自分のダンナにバレないように庭でコッソリとカリカリをあげるようになる。あたしは、この作品を読み始めて、女が庭でキジトラの猫にカリカリをあげるシーンで、赤ちゃん猫のお母さんのことがオーバーラップした。

この作品は、プロローグ、第一部「おわりのはじまり」、第二部「はじまりのおわり」、エピローグっていう構成で、前半の「おわりのはじまり」は女の視点からのストーリー、後半の「はじまりのおわり」は男の視点からのストーリー、おんなじ時間軸のダブル不倫を男女それぞれ視点で綴ってる面白い構成だ。


‥‥そんなワケで、いつものように大事に大事にちょっとずつ読んでたあたしは、12月の終わりころに『雉猫心中』を読み終えた。そして、年が明けて、1月5日の「金杯」は東西ともに完敗しちゃったけど、翌日6日の「シンザン記念」は2点予想で3連単が的中して100円が3万円近くになった!


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そして、新年早々の万馬券に気分上々でお酒を飲みながら、この日の「スマイルプリキュア!」を観始めたあたしは、タイトルを見てぶっ飛んだ!


第45話「終わりの始まり!プリキュア対三幹部!! 」


「終わりの始まり」って、1週間ほど前に読み終えた『雉猫心中』の第一部とおんなじタイトルだ!いくら何でも、こんな偶然ってある?‥‥ってなワケで、これは、第二次世界大戦の時に、ウィンストン・チャーチルが言った言葉が元になってる。1942年11月、エジプトのエル・アラメインの戦いでイギリス軍がドイツ軍に勝利した時に、イギリスの当時の首相だったチャーチルは国民に向けての演説でこう言った。


"Now this is not the end. It is not even the beginning of the end. But it is, perhaps, the end of the beginning."

「今はまだ終わりではない。これは終わりの始まりでさえもない。しかし、あるいは、始まりの終わりかもしれない」


実際、この言葉の通り、まだまだ戦争は続いてくワケだけど、このチャーチルの言葉から、「the beginning of the end (終わりの始まり)」と「the end of the beginning (始まりの終わり)」ってフレーズがいろんなところで使われるようになった。


‥‥そんなワケで、『雉猫心中』のラストシーンはネタバレになっちゃうから書けないけど、男女の恋愛を描いた作品には、悲劇もあればハッピーエンドもあって、どっちもそれぞれに楽しめる。だけど、自分が主人公になるんだったら、誰だってハッピーエンドを望むだろう。どんなに過程が幸福でも、最後に悲惨なエンディングを迎えるストーリーよりも、過程は山あり谷ありの苦労の連続でも、最後に幸せが訪れるハッピーエンドを望むだろう。

つまり、1月5日の「金杯」が完敗でも、6日の「シンザン記念」で万馬券が的中して「結果オーライ」になったように、「終わりよければ全てよし」ってワケだ。ちなみに、日本でも昔からあるコトワザみたいに使われてるこの言葉、「終わりよければ全てよし」ってのは、シェイクスピアの戯曲のタイトルだ。原題は『All's Well That Ends Well』、日本では『終わりよければ全てよし』って直訳されてるんだけど、この戯曲、チャーチル風味に言わせてもらえば、「この物語はハッピーエンドである。しかし、あるいは、バッドエンドかもしれない」ってことになる。

ザックリと説明すると、両親を失ってロシリオン伯爵夫人に面倒を見てもらってる孤児のヘレナが、この家の息子バートラムのことを好きになるんだけど、バートラムはヘレナのことを好きじゃない。でも、どうしてもバートラムと結婚したいヘレナは、執拗に彼のことを追いかける。完全にストーカー状態だ。ヘレナとなんか結婚したくないバートラムは、「俺の子を妊娠したらお前と結婚してやる」なんて無理なことを言う。

で、ナンダカンダあった末に、ヘレナは必殺技を炸裂させちゃう。バートラムが恋焦がれてたダイアナっていう女性に成りすまして、ダイアナのベッドで寝たふりをしちゃうのだ。ダイアナのことが好きで好きで仕方ないバートラムは、闇夜に紛れてダイアナの部屋へと夜這いに行く。そして、そこに寝てるのが、まさか自分が毛嫌いしてるヘレナとは知らずに、セッセとセックスに励んじゃう。そして、ヘレナは計画通りにバートラムの子を身ごもっちゃうのだ。

しばらくして、大きなお腹で現われたヘレナに、お腹の子が自分の子だと知らされたバートラムは、しぶしぶ結婚を承諾する‥‥ってワケで、「めでたし、めでたし」なのはヘレナだけで、バートラムにしてみれば、芸能人のブログに騙されてペニーオークションで何万円も巻き上げられたような話、詐欺に遭ったような話だ。だけど、この戯曲のラストシーンでは、バートラムがヘレナに対して「そんなにまで俺のことを思っていてくれたのか!」って感激して、2人で「めでたし、めでたし」になり、観客も拍手喝采‥‥っていう茶番劇に仕上がってる。ようするに、無理やりに「終わりよければ全てよし」にしちゃってるワケで、ホントの意味でのハッピーエンドとは言い難い。


‥‥そんなワケで、話はクルリンパと戻って今回の「スマイルプリキュア!」だけど、最後に登場したのが「ダーク・プリキュア」ならぬ「バッドエンド・プリキュア」の5人だった。つまり、プリキュアたちは、あと3回の放送で、この5人を倒さなきゃハッピーエンドは訪れないワケで、世界は文字通りバッドエンドになっちゃうってワケだ。だけど、そんな心配は1ピコグラムも必要なくて、プリキュアたちは台本通りにバッドエンド王国を消し去って世界をハッピーエンドに導いてくれる。そして、みゆきが「ウルトラハッピー!」って言えば2月3日から次の「ドキドキ!プリキュア」が始まるワケだから、去年の夏にキジトラの赤ちゃんを発見した時から続いて来たあたしの「偶然の連鎖」も、ここでめでたくハッピーエンドを迎える予定の今日この頃なのだ♪


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