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2013.03.06

ベルヴィル・ランデブー

日本で生まれて日本で育ったあたし的には、「アニメ」っていうと真っ先に思い浮かぶのが、やっぱり日本のアニメだ。今、テレビでやってる『ドキドキ!プリキュア』とか『宇宙兄弟』とか『ジョジョの奇妙な冒険』とか、昔見てた『ドラえもん』とか『サザエさん』とか『ちびまる子ちゃん』とか、子どものころに夢中で観てた『ドラゴンボールZ』とか『ベルサイユのばら』とか『アルプスの少女ハイジ』とか、他にも数えきれないほどある。

だけど、あたしがちっちゃかったころには、こうした日本のアニメだけじゃなくて、アメリカのアニメもいろいろと放送されてた。たぶん再放送なんだと思うけど、『トムとジェリー』とか『チキチキマシン猛レース』とか、他にもハッキリ覚えてないけど、お化けが出てくるやつとか、ヒーロー物みたいなやつとか、いろんなアメリカのアニメを放送してた。

あとは、『白雪姫』とか『シンデレラ』とか『ピノキオ』とか『バンビ』とか『ダンボ』とか『ふしぎの国のアリス』とか『ピーターパン』とか、他にもいろいろディズニーのアニメを観た。ほとんどは、夏休みや冬休みにテレビで放送してた子供向けのスペシャル枠みたいなので観たんだと思うけど、何本かは、おばあちゃんに連れてってもらった渋谷の映画館で観たような気もする今日この頃、皆さん、いかがお過ごしですか?


‥‥そんなワケで、おばあちゃんに連れてってもらった渋谷の映画館と言えば、何よりも記憶に残ってるのが、毎年、春休みに連れてってもらった『ドラえもん』だ。小学1年生か2年生の時に最初の劇場版、『のび太の恐竜』が公開されて、それから3年か4年は毎年の春休みの楽しみだったんだけど、あたしが5年生の時に、おばあちゃんは病気で入退院を繰り返すようになり、あたしが中学へ上がる年に亡くなった。

だから、おばあちゃんと映画館で観た『ドラえもん」は3本か4本なんだけど、その後、毎年年末になるとテレビで『大晦日だよ、ドラえもん』と銘打って劇場版が放送されるようになったから、今じゃ映画館で観たんだかテレビで観たんだか記憶がゴチャゴチャになってる。

そうそう、1つだけ、確かに映画館で『ドラえもん』を観たっていう物的証拠がある。どの年の『ドラえもん』でもらったのか覚えてないけど、おばあちゃんが前売り券を買っててくれたからなのか、入口のお姉さんから小さな箱に入ったドラえもんをもらったのだ。顔もお腹もぜんぶが水色っていう雑な作りで、ちゃんとドラえもんの色には塗られてない。小さなドラえもんの下にビー玉みたいなのが入ってて、テーブルの上とかを走らせて遊べるようになってるもので、今でも探せばどこかにあるハズだ。


‥‥そんなワケで、子どものころのアニメの思い出っていろいろあるけど、ザックリ言っちゃえば、あたしが観てきたアニメって、日本のアニメとアメリカのアニメの2種類だ。そして、日本のアニメとアメリカのアニメの大きな違いはと言えば、それは「セリフの比重」だ。日本のアニメって、とにかくセリフが多くて、登場人物の会話でストーリーが進んでくし、場合によっては状況を説明するためのナレーションまで入る。だから、音を消して画面だけを観てたらチンプンカンプンだ。

一方、アメリカのアニメって、セリフよりも絵で伝えるものが多い。あたしがちっちゃいころに観た記憶がある『トムとジェリー』や『チキチキマシン猛レース』にしても、母さんが好きだと言うから、大人になってからYOU TUBEとかで観た『ポパイ』や『マイティーマウス』や『猫のフィリックス』にしても、セリフが極端に少なくて、ほとんどが絵で伝えてる。ギャグも「動き」で笑わせるものばかりだから、言葉が分からなくても笑うことができるし、音を消して画面だけを観てても、ストーリーはだいたい分かる。

特に、ディズニーのアニメ映画は、映像と音楽がメインで、セリフの重要度が低いように思う。もちろん、これは、「日本のアニメと比べたら」ってことで、逆に、アメリカのアニメを基準にしたら、「日本のアニメがセリフに比重を置きすぎてる」ってことになる。

たとえば、今、放送してる『ジョジョの奇妙な冒険』は、あたしの大好きな作品だし、今回のアニメ化は最高の出来だから文句なんか一言もないけど、アメリカのアニメと比較すると、とにかく激しく説明的だ。これは、原作からの流れだから、批判してるワケじゃなくて、「ジョジョ」の魅力の1つなんだけど、ジョジョが敵に技を繰り出しながら「何々するように見せかけておいて何々する!相手の裏の裏をかくのがジョースター家の伝統なのだ~!」なんて言ったりする。

さらには、最初の第1部と今やってる第2部に登場してるスピードワゴンの立ち位置だ。ジョジョが何かしてるとこをドアの隙間から見てるスピードワゴンが、「そうか!ジョースターさんは何々が何々だったから、あえて自分を犠牲にして何々していたのか!何という何々だ~!」なんてふうに、ご丁寧すぎる説明をしてくれる。それどころか、元はイギリスの不良だったのに、アメリカに渡って大金持ちになってスピードワゴン財団を設立してジョジョたちの戦いをサポートしてるっていう、このスピードワゴンの設定自体が、「ジョジョたちが仕事もせずに戦いに明け暮れていられる不思議」に対する「説明」になってるのだ。つまり、波紋を使えないスピードワゴンの存在理由は、ストーリーを円滑に進めるための「進行役」ってことになる。

主人公が技を繰り出すたびに、その技を使うに至った経緯や状況を長々と説明してくれる上に、ストーリーの分かりにくい部分を説明するためのキャラまでが用意されてるなんて、痒いところに孫の手が5本も6本も差し出されるほどの親切さで、アメリカのアニメじゃアリエナイザーだ。だから、さっきも書いたけど、音を消して画面だけ観てたら、完全にチンプンカンプンになっちゃう。そして、画面を観ずに音だけを聴いてたら、そこそこストーリーが分かっちゃう。それが、日本のアニメだ。


‥‥そんなワケで、あたしは、今、テレビのない生活をしてるから、録画してもらったアニメをまとめて観ることが多い。場合によっては、2時間も3時間もアニメを観続けることもある。だけど、そんなにアニメだけを観てるワケにも行かないから、アニメの画面を小さくしてディスプレイの右上あたりに移動させて、他のウインドウで別の作業をすることもある。アニメは音だけを聴いてて、何か大きなことが起こった感じの時だけ画面を観る。これでも成り立っちゃうのが、今の日本のアニメなのだ。だから、極端な言い方をすれば、アニメの音声だけをラジオで流しても、「ラジオドラマ」として通用しちゃうかもしれない。

念のために言っとくけど、あたしは、セリフに比重を置いた日本のアニメを批判してるワケじゃない。『ジョジョの奇妙の冒険』みたいに、説明的なセリフ回しが「味」として魅力の1つになってる作品もあるからだ。だけど、冒頭からナレーションが入って長々と設定を説明されるようなアニメにはウンザリしてるし、スタジオジブリの『ゲド戦記』に代表されるような、セリフの大半がクドクドとした説明ばかりで、まるで本の朗読を聴かされてるようなアニメも大嫌いだ。こうなってくると、何のためのアニメなのか分からなくなってくる。アニメなんだから、ナレーションやナレーションもどきのセリフなんかに頼らずに、絵で伝えてほしい‥‥って思っちゃう。

で、長い前置きも終わり、いよいよ本題に入るけど、あたしは、ゆうべ、久しぶりにお酒を飲みながら、GyaOで無料配信されてた『ベルヴィル・ランデブー』っていうフランスのアニメを観た。1時間以上もある長編アニメなので、つまんなかったらせっかくの「お酒タイム」が台無しになっちゃうので、まずはユーザーレビューを見てみた。そしたら、ほとんどの人が星5つの最高点をつけて絶賛してて、こんなコメントもあった。


『冒頭のアニメで「何だコレは?」と見るのをやめてはいけません。これは、単なる前フリです。予測のつかないストーリー展開、クセのある登場人物(犬も)、超デフォルメされた描写、そこかしこに漂うエスプリ、台詞を極力省略した演出、何もかもが最高です。各国の賞を総ナメしたのも納得です。』

『宮崎アニメの湯婆婆やティム・バートンの異形の人物たちとも違う独特の誇張されたキャラクターたちに、最初は違和感。子供は可愛くないし、おばあちゃんはおじさんみたいだし。でも見ているうちにおばあちゃんがどんどん可愛く見えてくる不思議。(後略)』

そして、あたしは観始めたワケだけど、このコメントのオカゲで、冒頭のアニメに「何だコレは?」と思っても、登場したおばあちゃんや孫のキャラにぜんぜん馴染めなくても、とにかく観続けてたら、ツール・ド・フランスに出場するあたりから完全にハマッちゃって、次から次へと登場する斬新な表現に感動しつつ、最後までタップリと楽しむことができた。

で、途中で気づいたんだけど、このアニメ、セリフがほとんどないのだ。たまに短いセリフもあるんだけど、ほとんどセリフがなく、絵だけですべてを伝えてくれてる。だから、フランス語なんか分からなくても、誰でも楽しめる。たとえば、おばあちゃんが新聞を読んでると、新聞の一部が小さく四角く切り取られてるから、あたしは「何だろう?」って思ったんだけど、ナレーションやセリフなどの説明は一切ないのに、この理由が絵だけでちゃんと分かるように作られてる。

極端に背を高くした大型船とか、スーツの中に畳を入れたみたいなギャングとか、日本のアニメのデフォルメとは違った独特のデフォルメにも驚いた。シトロエンのミニバスは普通なのに、おんなじシトロエンでもディアーヌだか2CV(ドゥーシーヴォー)だかはヤタラとノーズが長くなってたり、ホントに面白かった。場面転換の時には、広げた新聞のモノクロ写真の人が動き出したり、人の鼻がハンバーガーショップの看板に変化したりと、とにかく細かいとこまで凝りに凝ってて、画面から目が離せなかった。


‥‥そんなワケで、この『ベルヴィル・ランデブー』は、仏題が『Les Triplettes de Belleville』、英題が『The Triplets of Belleville』、フランスのシルヴァン・ショメ監督による2002年の長編アニメで、日本では2004年に公開されたそうだ。あたしは、ゆうべ観るまでぜんぜん知らなかったんだけど、いろんな賞を総ナメにしてるらしい。とにかく、セリフがないと成り立たない「耳で楽しむアニメ」ばかりを観てるあたしにとって、久しぶりに「目で楽しむアニメ」を観ることができて、それこそ目からウロコが5枚も6枚も落ちる思いがした。今回は3月31日までの無料配信なので、この機会に、ぜひ1人でも多くの人に観てほしいと思った今日この頃なのだ♪


『ベルヴィル・ランデブー』(2013年3月31日まで無料配信)
http://gyao.yahoo.co.jp/player/00968/v00040/v0000000000000000052/?list_id=1672711&sc_i=gym084


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