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2013.07.17

恐怖の自民党改憲案

今回の参院選、7月4日の公示日の翌日から、いろんな新聞やテレビがいっせいに「自公で過半数は確実」「ねじれ解消は確実」って報じ続けてきたから、選挙戦も中盤に差し掛かった12日、安倍晋三首相は勝利を確信したのか、はたまた気が緩んだのか、長崎国際テレビのインタビューに対して、これまでは安全策を取って触れないようにしてきた「憲法9条」について明言した。


「われわれは9条を改正し、その(国防軍の)存在と役割を明記していく。これがむしろ正しい姿だろう」


このインタビューの様子は15日の同局の番組で放送され、共同通信も「首相、将来の9条改正に意欲 自衛隊、軍と位置づけを」と報じた。でも、もともと自民党は「改憲」を堂々と公約に掲げてるし、安倍首相は現在の日本国憲法を「米国に押し付けられた恥ずかしい憲法」だと言い放つほどの人物だから、このニュースの内容は特に目新しいワケでもなく、多くの人たちにスルーされちゃった今日この頃、皆さん、いかがお過ごしですか?


‥‥そんなワケで、今さら安倍首相が「改憲」を口にしたとこで、あんまりインパクトのないニュースなワケだけど、このニュースが報じられた16日、東京新聞の「こちら特報部」に、このニュースとセットにして読むと背筋が凍るような記事が掲載された。「平和憲法に真っ向背反 石破幹事長の「軍法会議設置」発言」という記事だ。

自民党の改憲案の最大の目玉が「9条」だってことは多くの人が知ってるだろうし、その「9条」の中の「自衛隊」を「国防軍」に変えようとしてるってことも多くの人が知ってるだろう。最初は「自衛軍」という名称に変えようとしてたけど、より解釈の幅が広がる「国防軍」という名称になった。ま、名称が何であれ、米軍の子分として他国を侵攻して人殺しをする「軍隊」になり、アメリカの戦争ビジネスの片棒を担ぐことになるのは同じだから、「自衛軍」でも「国防軍」でも「ジオン軍」でも何でもいいんだけど、問題はその先に書かれてることだ。自民党の改憲案の「9条」のところをぜんぶ読むと、「9条の2の5項」に、次のように書かれてる。


「国防軍に属する軍人その他の公務員がその職務の実施に伴う罪又は国防軍の機密に関する罪を犯した場合の裁判を行うため、法律の定めるところにより、国防軍に審判所を置く。この場合においては、被告人が裁判所へ上訴する権利は、保障されなければならない。」


ようするに、「軍事裁判の復活」だ‥‥ってなワケで、東京新聞の記事では、この項目について、4月21日に放送された「週刊BS-TBS報道部」の中で自民党の石破茂幹事長が語った内容を取り上げてる。この番組で、司会者から「自民党の憲法草案が採用されて自衛隊が国防軍になると具体的に何が変わるのか?」と質問された石破幹事長は、次のように答えている。


「(自民党の憲法草案には)軍事裁判所的なものを創設する規定がある」


つまり、さっきの「9条の2の5項」に明記されてる「審判所」のことだ。そして、この「審判所」がどのような機関なのか、何をするところなのかは、以下、東京新聞の記事に掲載された、この番組での石破幹事長の発言を読めば分かるだろう。


「軍事法廷とは何か。すべて軍の規律を維持するためのものです」


「現在の自衛隊で隊員が上官の命令に従わない場合は、自衛隊法で最高でも懲役7年が上限だ。『これは国家の独立を守るためだ。出動せよ』と言われたときに、いや行くと死ぬかもしれないし、行きたくないなと思う人がいないという保証はどこにもない。だから(国防軍になった時に)それに従えと。それに従わなければ、その国における最高刑に死刑がある国なら死刑。無期懲役なら無期懲役。懲役300年なら300年。そんな目に遭うぐらいなら、出動命令に従おうっていう。人を信じないのかと言われるけれど、やっぱり人間性の本質から目を背けちゃいけない」


この石破幹事長の発言を見れば、自民党の改憲案に明記されてる「審判所」が「軍事法廷」であることは一目瞭然だし、自民党のHPの「日本国憲法改正草案Q&A」の中にも、この「審判所」を「いわゆる軍法会議のこと」と解説してる。それなら、何で「軍事法廷」とか「軍法会議」とかの名称にしないで、「審判所」なんていう分かりにくい名称にしたのか。その答えは、東京新聞の記事の中にあった。


早稲田大学の憲法学者の水島朝穂教授「現行憲法も自民改憲草案も、76条2項で『特別裁判所』の設置を禁じている。軍法会議はこの特別裁判所にあたるため、通常の行政機関を装った『審判所』という名にしたのではないか」


‥‥そんなワケで、自民党の改憲案の「9条の2の3項」には、「国防軍は、国際社会の平和と安全を確保するために国際的に協調して行われる活動及び公の秩序を維持し、又は国民の生命若しくは自由を守るための活動を行うことができる。」と書かれてる。この「国際社会の平和と安全を確保するために国際的に協調して行われる活動」が何かと言えば、 分かりやすく具体例をあげると、NATO軍(北大西洋条約機構軍)によるボスニア・ヘルツェゴビナへの軍事介入や、ISAF(国際治安支援部隊)によるアフガニスタンの治安維持活動とかだ。

ISAFの参加国はたくさんあるけど、2013年7月現在までにアフガニスタンへ派遣された各国の兵士の数をほんの一部だけ書き出してみると、アメリカは約68000人が派遣されて、そのうちの2247人が戦死してる。イギリスは約8000人が派遣されて444人が戦死、カナダは950人が派遣されて158人が戦死、フランスは455人が派遣されて86人が戦死、他にもたくさんの国のたくさんの兵士が戦死してる。どんな任務に就くかによって危険度は様々だけど、日本の「自衛隊」が「国防軍」に変われば、ここに日本人の人数も加わることになる。フランスと同じ規模で同じ任務に就けば、5人に1人は戦死して日本に帰って来られなくなる。

だから自民党の改憲案では「国防軍」と「審判所」がセットになってるのだ。いくら愛国心を持って国防軍に入隊した者ばかりだからって、自分が実際に戦地へ行かされることになったら、ビビッて逃げだす者が現われたって不思議じゃない。1000人のうち1人か2人ならともかく、455人のうち86人も戦死してるなんていう事実を知ったら、誰だってビビッて当然だ。そのために石破幹事長は、「死ぬかもしれないから行きたくない」などと抜かした腰抜けは軍事裁判にかけて「死刑」や「無期懲役」や「懲役300年」にしてやると言ってるのだ。

そして、石破幹事長は、この「審判所」という名の「軍法会議」を「非公開で行なう」とも明言した。裁判は「公開」が原則だし、それ以前の取り調べですら「可視化」が急がれてるのに、裁判自体を密室で非公開で行なうという、完全に時代に逆行した思考だ。自民党の改憲案が導入されて「自衛隊」が「国防軍」に変われば、5人に1人は戦死して帰ってこられなくなる戦地へ行けと命令され、「嫌だ!」と言えば密室での「軍法会議」にかけられて重罪になるってワケだ。安倍首相が連呼してる「日本を取り戻す!」ってセリフは、どうやら「戦前の日本を取り戻す!」って意味らしい。


‥‥そんなワケで、話をクルリンパと戻すけど、マクラの部分で紹介した共同通信の記事では、安倍首相が「改憲」について言及したことを次のように書いてる。


「首相は、参院選で経済政策を優先する姿勢を強調するため、公示後はテレビ番組などで改憲についての積極的な発言が少なく、街頭演説などを含めても具体的な改憲内容に言及したのは珍しい。」


つまり、この記事を書いた記者は、安倍首相は「経済政策を優先する姿勢を強調するため」に、これまであんまり「改憲」については触れてこなかったっていう見方をしてる。でも、あたしは違うと思ってる。安倍首相は、ホントは自分の党の改憲案をイマイチ理解してなくて、ヘタに触れてボロが出ちゃうとまずいから、それで触れないようにしてきたんだと思ってる。

その証拠が、公示日の前に記者クラブで行なわれた9党の党首による公開討論での発言だ。この討論会で、生活の党の小沢一郎代表から「自民党の改憲案」について質問された安倍首相は、まったく答えることができずに、シドロモドロになって笑ってゴマカシたのだ。その部分を実際の発言の通りに書き起こしてみると、次のようになる。


小沢一郎「(前略)質問は、まだ誰も触れておりませんので、憲法の問題について触れたいと思います。9条については、賛否は別にして、総理のお考えやら何やら、時々風の便りに聞きますけれども、もうひとつ、自民党案にはですね、97条の削除という事があります。この97条ちゅうのは「基本的人権は永久の権利として与えられたものだ」という事が規定されておるものですけれども、これを自民党案では削除になっておりますけれど、これは、どういうふうなお考えの下に、どういう憲法にしようとしているのか。どういう日本社会にしようとしているのか。総理のお考えをお聞きしたいと思います」

安倍晋三「あの~、今、逐条的に聞かれても、わが党の案を持っておりませんが、97条ですね、削除してですね、別の項目にですね、統合さしたんだろうと、いうふうに思います。え~、後ほどですね、自民党の原案を持ち寄らしていただきたいと、このように思います」


ようするに、今、手元に自民党の改憲案を持っていないから「分からない」と言ってるワケだ。この様子は、実際に映像で確認することができる。こちらの「7月3日 9党党首討論」の映像の44分あたりからだから、実際に見てみてほしい。

ちなみに、小沢代表が指摘した自民党の改憲案から丸ごと削除されてる「97条」の「基本的人権の本質」には、次のように書かれてる。


「この憲法が日本国民に保障する基本的人権は、人類の多年にわたる自由獲得の努力の成果であって、これらの権利は、過去幾多の試練に堪え、現在及び将来の国民に対し、侵すことのできない永久の権利として信託されたものである」


そして、安倍首相は「別の項目に統合させた」などと言ったけど、自民党の改憲案を隅から隅まで読んでも、そんなものはどこにもない。ただし、この「97条」ってのは、11条と12条に謳われてる「国民の基本的人権」の大切さを再確認するものなので、「97条」を丸ごと削除されたからって「国民の基本的人権」が消滅したことにはならない。でも、再確認の項目が削除されれば、「国民の基本的人権」が弱まることは必至だ。その上、自民党の改憲案では、12条が次のように変えられてる。


【現在】
この憲法が国民に保障する自由及び権利は、国民の不断の努力によつて、これを保持しなければならない。又、国民は、これを濫用してはならないのであつて、常に公共の福祉のためにこれを利用する責任を負ふ。


【自民党案】
この憲法が国民に保障する自由及び権利は、国民の不断の努力により、保持されなければならない。国民は、これを濫用してはならず、自由及び権利には責任及び義務が伴うことを自覚し、常に公益及び公の秩序に反してはならない。


‥‥そんなワケで、自民党案で書き足されてる自由や権利に伴う国民の「義務」とは何なのか、それは、「9条」の改憲案と照らし合わせれば簡単に想像できるだろう。「自衛隊」を戦争のできる「国防軍」にして、戦争に行くことを拒んだ者は密室での「軍法会議」にかけて厳罰を与えるというだけでなく、「侵すことのできない永久の権利」として保障されている「基本的人権」に「義務」を伴わせ、そして、その「基本的人権」を再確認する項目を丸ごと削除して「基本的人権」の効力を希薄にさせた自民党の改憲案だけど、こんなにも恐ろしい改憲案を先頭に立って進めてるのが、この改憲案の内容をイマイチ理解してない安倍首相だってことこそが何よりも恐ろしい。そして、「改憲に賛成」と「自民党の改憲案に賛成」とは別のことなのに、これをイッショクタにして「自民党支持」と報じるマスコミも恐ろしい。だから、あたしは、次のようにツイートしたんだけど、そしたら、アッと言う間に4000人以上の人たちにRTされた今日この頃なのだ。


Rt1


きっこ @kikko_no_blog
安倍首相がとうとう「憲法9条を改正する」とテレビで明言した。若者よ、21日に「選挙」へ行くか。それとも数年後に「戦地」へ行くか。それを決めるのは自分自身だ。
2013.07.16 14:50


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