続・山口冨士夫さんの訃報
山口冨士夫さんの死因について、あまりにも悲しい事実が分かった。今さら何を言っても山口さんは帰って来ないのだから、亡くなったばかりで死因についてアレコレと書くのはどうかとも思ったんだけど、誤解や憶測が広まるよりはマシだと判断したので、昨日のエントリーの「続報」を書くことにした。まず、山口さんの訃報を詳細に伝えた「朝日新聞」の記事を引用するので、読んでみてほしい。
「「村八分」の山口冨士夫さん死去 路上で突き飛ばされる」(2013年8月15日18時5分)
「村八分」「裸のラリーズ」などのロックバンドで活躍したミュージシャンの山口冨士夫さんが14日、都内の病院で死去した。64歳だった。警視庁福生署によると、山口さんは先月14日深夜、東京都福生市の路上で、米国人の大学生の男(32)に突き飛ばされて後頭部を打った。病院で急性硬膜下血腫と診断され、一時意識不明の状態だったという。男は傷害容疑で逮捕され、今月9日に傷害罪で起訴された。1967年に「ザ・ダイナマイツ」のギタリストでデビュー。69年に故・柴田和志さんらと「村八分」を結成し、「はっぴいえんど」などと共に、当時は珍しかった日本語のロックを展開した。葬儀は近親者のみで営み、後日、お別れの会を開く。
http://www.asahi.com/obituaries/update/0815/TKY201308150243.html
この記事を読んだだけだと、山口さんがどうして突き飛ばされたのかが分からない。ただ、時間が「深夜」ということしか分からないから、どちらが悪いかはともかくとして、お酒に酔ってつまらない原因でケンカでもしたんじゃないかと思う人が大半だと思う。ロレツの回らない酩酊状態でステージに登場してケンカを始めたり、ドラッグでパクられたり、こうした山口さんの過去を知ってる人なら、なおさらそう思うだろう。正直、あたしもそう思った。でも、7月26日付の以下の「時事通信」の記事を読んだら、真実が見えてきた。
「米軍属男ら傷害容疑逮捕=会社員ら殴りけがさせる-警視庁」(2013年7月26日)
日本人男性2人を殴ってけがをさせたとして、米軍横田基地に勤務する軍属の米国人の男(51)=東京都あきる野市=と、その息子(31)が、傷害容疑で警視庁に逮捕されていたことが26日、分かった。同庁組織犯罪対策2課によると、2人は「知人の女性がトラブルになっていると勘違いした」などと話し、容疑を認めているという。逮捕容疑は14日午前1時ごろ福生市東町のJR福生駅前のタクシー乗り場で、会社員男性(53)を殴ったり、音楽家の男性(63)を突き倒したりして、けがをさせた疑い。音楽家の男性は倒れた際に頭を打ち、脳挫傷などで現在も入院中。同課によると、軍属の男らは福生市内で飲酒した帰りで、知人の女性が1人で会社員らに道を尋ねていたのを、絡まれていると誤解して暴行したという。男は米軍横田基地の施設でプログラミングを教えている。息子は米国から来日中だった。
http://www.jiji.com/jc/zc?k=201307/2013072600856&g=soc
この記事を読めば、よく分からなかった事実関係が見えてきたと思う。7月14日の深夜、山口冨士夫さんと思われる「音楽家の男性(63)」と、山口さんの知り合いと思われる「会社員男性(53)」の2人は、JR福生駅前のタクシー乗り場で、1人の女性から道を尋ねられた。そして、その女性に道を教えていると、その女性と面識のある米軍横田基地のアメリカ人の男(51)と、たまたま来日していたその息子(31)が、偶然にもこの現場に遭遇した。
酔っていた米軍の男は、自分の知り合いの女性が絡まれていると勘違いして、山口さんらに暴行したのだ。米軍の男は会社員男性を殴り、その息子は山口さんを突き飛ばした。山口さんは倒れた拍子に後頭部を強打してしまい、病院に搬送されたが、1ヶ月後の8月14日の夜、亡くなってしまった。これが真相だ。
ちなみに、山口さんを突き飛ばした米軍の男の息子は、後のほうの「時事通信」の記事では「31歳」と書かれてるけど、昨日の「朝日新聞」の記事では「32歳」になってる。これは、7月26日から8月15日までの間に誕生日を迎えたんだろう。これは、8月10日が誕生日だった山口さんが、先月の「時事通信」の記事では「63歳」、昨日の「朝日新聞」の記事では「64歳」と書かれてることと一緒だ。
‥‥そんなワケで、山口冨士夫さんが亡くなったことはホントに悲しいし、それも病気じゃなくて他者から暴行を受けて亡くなっただなんて残念で仕方ないけど、「酔ってつまらないケンカをしたワケじゃない」ってことが分かっただけでも、悲しみの中に一筋の光が差してきた。山口さんは、道が分からずに困ってた女性に、親切に道を教えていただけだったのだ。昨日のエントリーで紹介した山口さんのブログの文章の中に「タイガーマスクのように生きたいなあ」「堂々と生きようよなあ」って言葉があったけど、山口さんは、最後まで堂々と生きたんだと思う。山口さんは「タイガーマスク有難う」という言葉でエントリーを終えたけど、あたしは「山口冨士夫さん、ありがとう」という言葉で終えたいと思う今日この頃なのだ。
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