ミトコンドリア・イブ
今年は「午年」ってことで、競馬運が良さそうな気がしつつも、この「午」っていう字が「牛」っぽくて、イマイチ「馬」の雰囲気がしない。子どものころ、「瓜」と「爪」という漢字を覚えるのに、「瓜にツメ有り、爪にツメ無し」ってふうに教わった。これは天才バカボンの「西からのぼったお日様が~東へ沈む~♪」みたいに、あえて反対に覚えたワケだけど、「午」の場合は、「牛にツノ有り、午にツノ無し」って普通に覚えるしかない。
でも、ここでひとつ問題がある。それは、十二支だと「牛」は「丑」になるってことだ。つまり、「牛」に対応してるのは「馬」であって、今年の「午年」の「午」に対応させるなら「丑」じゃなきゃダメだってことだ。あ゛~~~~ややこしいしメンドクサイヤ人だ!‥‥ってなワケで、もう「牛」のことはほっといて、ここは「午後の紅茶はウマい!」ってふうに覚えりゃいいか!
ま、そんなこたーどうでもいいんだけど、12年に一度の「午年」の最初の競馬、「金杯」は、東の「中山金杯」も西の「京都金杯」も完敗だった。「中山金杯」のほうは、そろそろオーシャンブルーが来そうな気がしたので、5番人気のオーシャンブルーから、2番人気、3番人気、4番人気の3頭への馬単3点で勝負した。そしたら、あたしの予想通りにオーシャンブルーが差し切ったのに、残念ながら2着が8番人気のカルドブレッサだった。「京都金杯」のほうは、応援してるガルボと仕上がりのいいエキストラエンドから3連複を3点買った。そしたら、1着がエキストラエンド、3着がガルボだったのに、2着に1番人気のオースミナインが来たから、配当を考えて1番人気を外してたあたしはダメだった。
カスリもしなかったのならサクッと諦められるんだけど、こういうハズレって怪物くんのフランケンみたく「フンガー!」ってなっちゃう。でも、中山8Rの馬単と京都10Rの馬連が的中したので、トータルでは「ちょい浮き」になり、「午年」の最初の競馬は、なんとかプラスで終えることができた今日この頃、皆さん、いかがお過ごしですか?
‥‥そんなワケで、今年は「午年」なので、まずは競馬の話題からスタートしてみたんだけど、今、日本の競馬で活躍してる馬は、みんな「サラブレッド」だ。昔は「アラブ」って種類の馬も走ってたけど、今は「サラブレッド」だけになった。で、よく、エリート家系の人のことを「サラブレッド」と表現するように、この種族は血統がハッキリしてる。日本のみならず、今、世界中にいるサラブレッドは、そのルーツを辿ると、すべての馬が3頭の祖先に行きつく。
1680年生まれのバイアリーターク、1700年生まれのダーレーアラビアン、推定1724年生まれのゴドルフィンアラビアン(別名ゴドルフィンバルブ)、この3頭が現在のサラブレッドのルーツで、「三大始祖」って呼ばれてる。世界中のサラブレッドは、すべてこの3頭のどれかの子孫ってワケで、現在の競馬は、言うなれば、親戚同士で争ってることになる。サラブレッドは、毛色ひとつを見ても、あたしの好きな芦毛、可愛らしい栗毛、強そうな黒鹿毛、美しい青毛など、何種類もの毛色があるし、おでこから流れてる「流星」と呼ばれる白斑も様々だけど、その多くは、同じ祖先から枝分かれしてきた「親戚」なのだ。
じゃあ、どうしていろんな毛色が生まれたのかと言うと、それは「突然変異」だ。お父さんも、その両親も、そのまた両親も、ずっと栗毛だったのに、お母さんも、その両親も、そのまた両親も、ずっと栗毛だったのに、このお父さんとお母さんから生まれたのは、誰も見たことのない灰色の子馬だった‥‥ってふうに、世界で最初の芦毛が誕生したんだと思う。そして、その芦毛の馬からは栗毛の子しか生まれなかったけど、その栗毛の子の中の1頭から芦毛の子が生まれ‥‥ってふうに、ジョジョに奇妙に芦毛が増えてきたんだと思う。
‥‥そんなワケで、あたしたち人間も、サラブレッドと同じように、髪の色が違う。あたしたち日本人は黒い髪だけど、欧米の人たちは金髪もいれば茶色い髪の人もいるし、もっと細かく分けると、日本人の黒髪でも「緑系の黒髪」や「赤系の黒髪」など何種類かに分けられるし、髪質も様々だ。さらに言えば、髪の色だけじゃなくて、人種によって肌の色や目の色も違うし、顔立ちや体型も違う。サラブレッドの場合は、毛色が違っても「同じ種類の馬」って感じが強いけど、日本人と欧米人とアフリカ人を並べてみると、とても「同じ種類の人間」て感じはしない。
だけど、これまたサラブレッドと同じように、日本人も欧米人もアフリカ人も、そのルーツを辿ってみると、同じ祖先に行きつく。日本人や欧米人やアフリカ人だけじゃなく、今、世界中にいる70億人ものすべての人類が、同じ祖先に行きつくのだ。あたしのお母さんのお母さんのお母さんの‥‥って果てしなく辿っていった先の最初の「お母さん」も、今、このブログを読んでるあなたのお母さんのお母さんのお母さんの‥‥って果てしなく辿っていった先の最初の「お母さん」も、同じ「お母さん」なのだ。シリアの政府軍の空爆を逃れてヨルダンの難民キャンプで生活してる少年のお母さんのお母さんのお母さんの‥‥って果てしなく辿っていった先の最初の「お母さん」も、地球の反対側のアマゾンの奥地にいるナントカ族の少女のお母さんのお母さんのお母さんの‥‥って果てしなく辿っていった先の最初の「お母さん」も、全世界の人たちのお母さんのお母さんのお母さんの‥‥って果てしなく辿っていった先の最初の「お母さん」も、すべて同じ「お母さん」なのだ。
その「お母さん」の名前は、「ミトコンドリア・イブ」と言う。今から16万年前に、アフリカにいた1人の女性だ。正確に言うと「16万年(±4万年)前」ってことで、「12万年~20万年前」ってことになる。これは、「ミトコンドリア・イブ」の化石とかが発掘されたワケじゃなくて、あくまでも計算による理論上の推測なので、時間的に大きな幅があるワケだ。だけど、全世界の人類のルーツが、大昔のアフリカの女性だったっていう説自体は、とても有力なものだ。
人類の起源については、世界各地で複数の祖先が並行して進化していったという「多地域並行進化説」と、すべての人類の祖先はアフリカに誕生した人類だとする「アフリカ単一起源説」とがあって、かつては「多地域並行進化説」のほうが有力だった。だって、世界中の人たちをザッと見まわせば、肌のの色や体型などで明らかに何パターンかの人種に分類できるから、アフリカはアフリカ、欧米は欧米、アジアはアジア、それぞれの地域でそれぞれの祖先から進化していったと考えるほうが自然だからだ。
だけど、1987年に、カリフォルニア大学のレベッカ・キャン氏、アラン・ウィルソン氏、マーク・ストーキング氏らの研究グループが発表した「ミトコンドリア・イブ」の学説によって、一気に「アフリカ単一起源説」が有力になった。「ミトコンドリア」ってのは、動物や植物などの細胞の中にある細胞小器官のひとつで、独自の遺伝子「ミトコンドリアDNA」を持ってるんだけど、これはお母さんから子どもに受け継がれるもので、お父さんからは受け継がれない。あたしは父さんと母さんの子だけど、あたしの体内の「ミトコンドリアDNA」は母さんから受け継いだもので、その母さんの体内の「ミトコンドリアDNA」は母さんの母さんから受け継いだものってことになる。だから、これをずっと遡っていけば、最初の「お母さん」に辿りつく。
で、レベッカ・キャン氏らの研究グループは、世界のいろんな人種の「ミトコンドリアDNA」を解析したんだけど、そしたら、世界中のどの種族のどの人も、最初の「お母さん」は古代のアフリカにいた1人の女性に行きつくことが分かったのだ。そして、レベッカ・キャン氏らは、「ミトコンドリアDNA」を遡って辿りついた1人の女性に、キリスト教で最初の人類とされている「アダムとイブ」から、「ミトコンドリア・イブ」と名づけたってワケだ。
‥‥そんなワケで、さっきあたしは「すべての人類のお母さんは同じお母さん」て書いたし、レベッカ・キャン氏らの研究でも「すべての人類のミトコンドリアDNAが1人の女性に辿りついた」って言われてるけど、この学説には穴がある。確かに、あたしの母さんの母さんの母さんの‥‥って遡っていけば、古代のアフリカにいた「ミトコンドリア・イブ」に辿りつくんだけど、あたしの父さんのほうのお母さんを遡っていくと、別の最初の「お母さん」に辿りついちゃう可能性もあるそうなのだ。それでも、「ミトコンドリア・イブ」と同じころに同じアフリカにいた女性ってことらしいので、世界中のサラブレッドの祖先が1頭じゃなくて3頭っていうのと似たようなもんだろう。
だから、最初に書いた「すべての人類のお母さんは同じお母さん」てのは便宜上の言い回しってことになっちゃうけど、どちらにしても、全人類の共通の祖先の1人が古代のアフリカの女性だったってことに変わりはない。つまり、全人類の最初の「お母さん」は肌の色が黒かったワケで、それが何千年も何万年もかけて子孫が増えていく中で、突然変異で白い子どもや黄色い子どもが生まれたのかもしれないし、気候や生活形態に合せて少しずつ変化してったのかもしれないけど、とにかく、今みたいに複数の種族に枝分かれしたんだろう。だから、10万年以上もの長い歴史の中には、滅びちゃった種族もあったと思うし、今、地球上に残ってるのは、様々な苦難に勝ち抜いてきた種族なんだと思う。
それにしても、人類最初の「お母さん」がアフリカに誕生してから現在までが12万年~20万年だとすると、最低でも10万年は管理が必要な使用済み核燃料を増やし続ける原発って、いったいどれほど危険で無責任な存在なんだろう?‥‥なんてのも織り込みつつ、今、世界中にいる全人類の最初の「お母さん」が便宜上でも同じ女性だったと知れば、故・笹川良一の「世界は一家、人類は皆兄弟」って言葉も、LAZYのラストアルバム「宇宙船地球号」ってタイトルも、一気に現実味を帯びてくる。そして、同じ人間同士が憎しみ合ったり、戦争で殺し合ったりすることの愚かさが浮き彫りにされてくる。
‥‥そんなワケで、同じ祖先を持つサラブレッドの場合は、白い馬と黒い馬と茶色い馬とが競走をして、どの馬が一番かを競ったって、楽しいから問題はない。お正月に親戚一同が集まって、みんなでカルタ大会をやってるようなものだからだ。だけど、同じ「お母さん」から生まれた人間が、白い人と黒い人と黄色い人とで差別し合うなんて、これほど愚かなことはない。さらには、黄色い人と黄色い人とが敵対し合うほど悲しいことはない。もしも、人類の起源が「アフリカ単一起源説」じゃなくて「多地域並行進化説」だったとしても、日本人と中国人と韓国人のルーツが同じだということ、同じ「お母さん」から生まれたってことは、誰の目にも明らかだからだ。だから、あたしは、どんなに酷い政権になろうとも、民間レベルではすべての国の人たちと仲良くしていくべきだと思った今日この頃なのだ。
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