世界の消費税と最低賃金
アべノミクスのせいで、収入はぜんぜん増えないのに物価ばかりがどんどん値上がりして、もともと苦しかった生活がさらに苦しくなったけど、それでも、日本の物価の高さは、スイス、ノルウェー、デンマーク、オーストリアに継ぐ「世界5位」なので、世界一物価の高いスイスと比べれば遥かにマシだ。「ロケみつ」の「ヨーロッパ横断ブログ旅」でスイスに行った早希ちゃんは、日本でも見慣れたマクドナルドを発見して、いくら世界一物価の高い国だと言っても、さすがにマックは安いだろうと思って店内に入ってみると、ナナナナナント!ハンバーガーとポテトとドリンクのセットが1000円以上!驚いてお店を飛び出した!
そして、キオスクでお水を買おうとしたら、500mlのミネラルウォーターが300円以上、スーパーでサンドイッチを買おうとしたら750円以上、あまりの値段の高さに早希ちゃんはビビッてた。他にも、日本だと10個で200円前後のタマゴが、スイスのスーパーだと3倍の約600円、日本だと12ロールで300円前後のトイレットペーパーが、スイスのスーパーだと2.5倍の約750円、これじゃあとても生活なんてできない。
でも、早希ちゃんがお世話になった現地で暮らす日本人女性によると、ビールは安い。500mlの缶ビールが50円!500mlのミネラルウォーターは300円以上もするのに、同じ量のビールは50円だなんて、いくら日本みたいにバカ高い酒税がない国だからって、これは安すぎる。あたしだったら、お水の代わりに、朝からビールを飲んじゃいそうだと思った今日この頃、皆さん、いかがお過ごしですか?(笑)
‥‥そんなワケで、ビールが安くても食べ物や日用品が日本の2倍から3倍もするんだから、スイスで生活するのは大変だと思うかもしれないけど、実は、そんなこたーない。何故かと言えば、スイスは世界一物価の高い国だけど、お給料のほうも物価に見合ってたくさんもらえるからだ。
スイスには、日本や他の先進国のように法律で定めた「最低賃金」てのはないけど、その代わりに、自主的な団体交渉で最低ラインの月給が決められてて、平均すると現在の「最低月給」は4000フラン(約46万円)だ。アルバイトの時給も、スーパーのレジのバイトで1時間17~26フラン(約2000円~3000円)だ。早希ちゃんがお世話になった日本人女性も「普通のバイトで月に30万円以上は稼げる」って言ってた。
だから、世界各国の主要都市の「平均年収ランキング」では、スイスの最大都市であるチューリッヒが517万円で世界1位だ。つまり、物価の高さは世界一だけど、平均年収の高さも世界一ってワケで、さらに言えば、アルバイトの時給も世界一ってワケだ。だから、日本で働いてお金を貯めて、そのお金を持ってスイスに旅行すると「物価が高い!」ってことになっちゃうけど、スイスに住んでスイスで働いて暮すぶんには、物価の高さなんて感じなくなるハズだ。
だって、スーパーのレジのバイトで時給3000円ももらえるなら、マックのハンバーガーセットが1000円でも安く感じちゃうだろう。日本の場合、東京のスーパーのレジのバイトでも時給850円とか900円とかだから、スイスの時給の比率で考えると、マックのハンバーガーセットが300円以下で食べられる計算になる。500mlのミネラルウォーターが300円しても、時給の10分の1だと考えれば、日本なら85円とか90円とかってことになるから、ぜんぜん高くはない。
‥‥そんなワケで、ここでクルリンパと最初に戻るけど、スイスの消費税はどうなってるんだろう?ちなみに「消費税」ってのは日本式の呼び方で、スイスでは他の多くの国々と同じく「付加価値税」と言って、一般的には「Value Added Tax」の頭文字を取って「VAT」って呼ばれてる。で、スイスの場合、日本の消費税にあたる付加価値税がどれくらいなのかって言うと「7.6%」だ。これなら、日本の消費税が5%から8%に引き上げられても、スイスとほとんど変わらない‥‥って思ったのもトコノマ、スイスの付加価値税には「軽減税率」が導入されてる。
たとえば、食品、医薬品、書籍、新聞などは「日用品」であり「生活必需品」なので、税率が3分の1以下の「2.4%」に軽減されてる。また、スイスは観光が大きな収入源の国だから、ホテルの宿泊などは「3.6%」に軽減されてる。さらには、病院、保険、銀行などは「0%」だ。つまり、スイスで生活して行く上で絶対に必要なものに関しては、ちゃんと「軽減税率」が適用されてるってワケだ。
一方、日本の場合は、食品や医薬品からホテルの宿泊まで、さらには病院や保険、挙句の果てに銀行のATMの手数料まで、「日用品」であろうが「生活必需品」であろうが、すべてのものの消費税が4月1日から「8%」に引き上げられる‥‥ってワケで、ここで、世界各国の付加価値税を見てみると、日本以外の先進国は、どこもスイスと同じように「軽減税率」を導入してることが分かる。
たとえば、イギリスの場合、基本的な付加価値税は「17.5%」と高いけど、電気やガスなどの家庭用の燃料費は「5%」に軽減されてるし、食品、水道、医薬品、書籍、新聞、電車やバス、家賃などの「生活必需品」から、病院、保険、銀行、教育、郵便などに至るまで、すべて「0%」だ。フランスやドイツを始めEU各国も、基本的な付加価値税は日本より高いけど、すべての国が「軽減税率」を導入してる。食品や医薬品にまで贅沢品と同じ税率を課すようなバカな国は、先進国の中で日本だけなのだ。
スイスの場合は、世界一物価が高いけど、平均年収も世界一だし、アルバイトの時給も世界一だし、その上、食品や医薬品を始めとした「生活必需品」には「軽減税率」が適用されてるから、実際に生活するとしたら、日本よりは遥かに暮らしやすいと思う。日本の政府や財務省は、ことあるごとに先進各国の付加価値税の税率だけを引き合いに出して「日本の消費税は低すぎる」って言うけど、この理屈には、所得の違いも、物価の違いも、そして「軽減税率」も、すべてが抜け落ちてる。
‥‥そんなワケで、今度は、各国の「最低賃金」を見てみよう。スイスの場合は、実際には世界一だけど、さっきも書いたように「法律で定めた最低賃金」じゃないから、ここではスイスは抜きにして、それぞれの国の「法律で定めた最低賃金」だけを比較してみる。それぞれの国で通貨単位が違うので、現在の日本円のレートに換算して、分かりやすいように「1時間あたりの時給」として比較してみる。
1位 オーストラリア 1610円
2位 ルクセンブルク 1450円
3位 フランス 1310円
4位 アイルランド 1230円
5位 ベルギー 1220円
6位 ドイツ 1180円
7位 オランダ 1160円
8位 イギリス 1055円
9位 ニュージーランド 1050円
10位 カナダ 1045円
もちろん、これらの国々は、物価も違えば付加価値税の税率も違うから、1時間あたりの最低賃金の高い国が、イコール「暮らしやすい国」ってワケじゃないけど、これらの国々は、少なくとも日本よりは遥かに暮しやすいハズだ。ちなみに、現在の日本の最低賃金は、最高が東京都の869円、最低が鳥取県や島根県、九州の各県や沖縄県などの664円で、全国平均は764円だ。
アメリカも州ごとに違うけど、全国平均は816円、日本よりは少しだけマシだ。でも、日本もアメリカも、ランキングでは韓国よりも下で、先進国の中だけで比較すると、日本はダントツのワースト1位なのだ。今年の1月、国連が発表した先進各国の最低賃金調査によると、「日本の最低賃金は人間が生存するために必要な最低金額を下回っており、先進国の中では最悪の水準」と指摘されてる。
で、またまたクルリンパと最初に戻るけど、日本の物価の高さは、スイス、ノルウェー、デンマーク、オーストリアに継いで「世界5位」なのだ。物価が世界で5番目に高い国なのに、最低賃金は先進国の中でワースト1位の764円、それなのに消費税に「軽減税率」が導入されてなくて、食品や医薬品などの「生活必需品」にも贅沢品と同率の税金が課せられてる。そして、4月1日からは、こうした「生活必需品」の消費税も、何の考えもなしに8%に引き上げられる。
‥‥そんなワケで、アメリカのオバマ大統領は、現在約8ドルの最低賃金を10ドルちょいに引き上げるって宣言したけど、いくら大統領が宣言したって、その瞬間にアメリカの低賃金労働者全員の時給が10ドルになるワケがない。日本にしたって、最低賃金は764円だなんて言ってるけど、これより安い時給で働いてる人は数えきれないほどいる。あたしの原稿打ちの内職なんて、徹夜でがんばっても2500円行くか行かないかで、時間で割ると時給300円ほどだ。だから、あたしの場合、アベノミクスのせいで食品や日用品が軒並み値上がりして大打撃を受けてるし、これで消費税まで引き上げられたら、冗談じゃなくて1日の食事を2回にしなきゃならなくなる。「駆け込み需要」なんてのは、雲の上で高級な天ぷらを食べてるような人たちだけの話であって、あたしにとっては、3月中に、トイレットペーパーを少し多めに買っとくのが精いっぱいの今日この頃なのだ。
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