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2014.03.18

ソチのパラリンピックが終わって

ロシアのソチで開催されていたパラリンピックは、16日に閉会式が行なわれて、10日間の大会を終えた。日本は、アルペンスキー男子の狩野亮選手の金メダル2つを含む、金3つ、銀1つ、銅2つという成績だった。メダルの獲得数では、開催国のロシアが金30個を含む80個というメダル数でダントツの1位、2位が金5個を含む25個のウクライナ、以下、アメリカ、カナダ、ドイツ、フランス、オーストリア、スロバキアと続き、日本はイギリスと並ぶ9位だった。

それにしても、ロシアのメダル数は凄いよね。いくら何でも、80個って、サスガに獲り過ぎだろう‥‥ってなワケで、あたしは、ロシアに対して激しくムカついてる!それは、14日に行なわれた「バイアスロン女子12.5キロ立位」に出場した日本の出来島桃子選手の問題だ。知らない人のために、ザックリと説明するけど、この「バイアスロン」という競技は、スキーで決められたコースを走り、途中でビームライフルによる射撃を行ない、射撃で的を外した回数だけペナルティーが科せられるというものだ。

で、パラリンピックの場合は、選手の障がいの種類によって、「立位」「座位」「視覚障がい」の3つがあり、右腕が不自由な出来島選手は、この中の「立位」に出場していた。それぞれ3種類の距離があり、問題の事件は、1周2.5キロのコースを5周する12.5キロの女子の競技で起こった。この競技、男子は1周3キロのコースを5周する15キロなんだけど、競技がスタートすると、運営側の不手際でコースを示すパイロンや看板が分かりにくかったため、出場した12人の選手のうち、多くが間違えて男子用の3キロのコースへ入ってしまった今日この頃、皆さん、いかがお過ごしですか?


‥‥そんなワケで、日本の出来島桃子選手は、事前にキチンとコースを確認していたため、「みんな何であっちへ行くんだろう?」と不思議に思いながら、自分は正しい女子用のコースを走行した。運営側は、最初の1周が終わったところで、間違えて男子用コースを走った選手たちを正しいコースへ誘導したけど、最初の1周で500メートルも長く走ったため、多くの選手が遅れることになってしまった。

出来島選手は、これまで不調だった射撃も20発すべてを命中させるパーフェクトの成績でトップを独走し、あとは金メダルに向けてラストスパートするだけだった。それなのに、トップを独走して最後の1周に入ろうとした出来島選手の前に、運営側の係員が「とおせんぼ」をして立ちはだかり、男子用のコースへ行けと指示を出したのだ。他の多くの選手が、最初の1周で500メートルも長く走っているのだから、公平にするために、出来島選手にも最後の1周は500メートル長く走れと指示したのだ。

こんな話ってある?アスリートは、自分のスタミナをちゃんとペース配分して走ってるんだから、最後の最後に突然「500メートル長く走れ」なんて言われたら、それまで積み上げてきたものが台無しになる。多くの選手が最初にコースを間違えたのは、第一に運営側の不手際であり、第二にそれぞれの選手のミスであり、出来島選手には何ひとつ落ち度はない。それなのに、こんなやり方は考えられない。町内の運動会ならいざ知らず、仮にも4年に一度のパラリンピックで、こんなお粗末なことが起こるなんて信じられない。

だけど、正しいコースに立ちはだかり、「とおせんぼ」を続ける係員は頑として動かない。仕方なく指示に従って男子用コースへ進んだ出来島選手は、それまでの単独トップから大きく順位を落とし、7位になってしまった。目の前に金メダルが見えていたのに、こんなのって酷すぎる!マラソンだって、ラリーなどの自動車レースだって、選手がコースを間違えた場合は、その選手の自己責任だろう。何の落ち度もなく、ちゃんと正しいコースを走っていた選手を、ミスをした選手のほうに強引に合わせるなんて、こんなデタラメは前代未聞だ!

そして、この結果、1位になって金メダルを獲得したのはウクライナの選手で、2位の銀メダルがロシアの選手、3位の銅メダルもロシアの選手、4位もロシア、5位はウクライナ、6位もウクライナ、日本の出来島選手は7位になってしまったのだ。この結果を見れば一目瞭然、ロシアやウクライナの選手を勝たせるための「強引な便宜」が炸裂したってワケだ!


‥‥そんなワケで、これがオリンピックのフィギュアスケートだったとしたら、ロシアやウクライナの選手たちがみんな失敗して転んだから、運営者側が「公平にするため」という理由で日本の選手にも「転べ!」と命令をしたような話だ。他の選手たちと勝敗を争うスポーツの場合、どんな競技であれ、相手がミスをすれば自分が有利になるし、自分がミスをすれば相手が有利になる。これは当たり前のことで、相手がミスをしたからって、ミスをしていない選手にも同様のハンデを与えるなんて、こんなメチャクチャな話は聞いたこともない。

オリンピックのスピードスケートでも、先頭を独走していた選手が最後のカーブで転倒し、2番手の選手も3番手の選手も巻き込まれて転倒し、それを避けて4番手だった選手が1着でゴールして金メダル‥‥ってこともある。相手のミスで自分が勝つこともあれば、自分のミスで相手が勝つこともある。これが、スポーツに限らず、すべての勝負事に共通する「常識」じゃないのか?

第一、これは「バイアスロン女子12.5キロ立位」という競技なのに、現場の判断で勝手に「13キロ」に変更してもいいのだろうか?正しいコースを走っていた選手にまで、500メートル長く走ることを強要したのだから、これは、競技の基本的なルールそのものを現場の判断で変更したことになる。百歩ゆずって、そこまで「公平性」にこだわるのなら、コースミスが分かった1周目で取りあえず競技を中止にして、休憩をはさみ、1時間後とかに再スタートさせるのが普通だろう。


‥‥そんなワケで、日本選手団による国際パラリンピック委員会に対しての異議申し立ても却下されてしまい、この前代未聞のトンデモ判定は動かぬものとなってしまったんだけど、出来島桃子選手は気持ちを切り替えて最後までがんばり、最終日16日の「ノルディックスキー距離女子5キロフリー立位」では、自己最高の6位入賞を果たした。ホントに立派だと思う。2006年のトリノ、2010年のバンクーバーに続いて、今回が3度目のパラリンピック出場となった39歳の出来島桃子選手は、新潟県の新発田市役所に勤める「公務員アスリート」だ。普段は、市役所や地元の支援者たちからのカンパで遠征費用などをまかなっているという。あたしは、こういう素晴らしいアスリートたちのために、国がもっと支援をすべきだと思った今日この頃なのだ。


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