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2014.06.07

映画『ヘッドライト』が照らしているものは?

あたしは、中学生の時に、セルジュ・グルッサールの『ヘッドライト』(ハヤカワ文庫)を読んだんだけど、ぜんぜん面白くなかった。これは、作品が面白くなかったんじゃなくて、まだあたしが子どもだったからだ。社会人になってから、レンタルビデオ屋さんでフランス映画の『ヘッドライト』を借りてきて観て夢中になり、それからもう一度読み直してみたら、とっても面白かった‥‥って言うか、味わい深く読み終えることができた。

この作品のフランス語の原題は『Des gens sans importance』、直訳すると「重要でない人たち」って意味で、タイトルらしく訳すと「とるに足りない人々」とか「しがない人々」ってことになる。英語のタイトルでは『People of no importance』、フランス語の原題をそのまま英語にしてるけど、日本では、洋画を公開する時に原題とはまったく違う邦題をつけるケースが多かったから、フランスで公開された翌年の1956年に、日本で公開された時には『ヘッドライト』というオシャレなタイトルが付けられた。

だから、あたしが中学生の時に読んだハヤカワ文庫の『ヘッドライト』は、日本で公開された映画を前提にした翻訳なんだと思う。ちなみに、日本ではオシャレな感じがするタイトルだけど、この「ヘッドライト」ってのは和製英語なので、英語圏では通じない。英語では自動車の前照灯のことを「head lamp (ヘッドランプ)」と言う‥‥なんて小ネタも散りばめてみた今日この頃、皆さん、いかがお過ごしですか?


‥‥そんなワケで、今日は、原作じゃなくて、映画の『ヘッドライト』について書いて行こうと思う。何でかって言うと、GyaOで6月4日から1ヶ月間、この映画が無料配信されたので、ゆうべ、20年ぶりに観てみたからだ。この映画は、フランスのパリとボルドーを往復する長距離トラックの初老のドライバー「ジャン」がジャン・ギャバンで、その男がいつも立ち寄る国道沿いの「キャラバン」ていう常宿の若い女中「クロチルド」がフランソワーズ・アルヌールで、この2人が主人公なんだけど、あたしが20年前に観て夢中になったのは、フランソワーズ・アルヌールの幸薄い美しさと、ジャン・ギャバンが運転してるボンネットトラックのデザインだった。

ちなみに、石ノ森章太郎の『サイボーグ009』の紅一点、003の名前のフランソワーズ・アルヌールは、この女優の名前をそのまま拝借したものだと思う‥‥だなんて、またまた小ネタを散りばめちゃったけど、これをやってると先へ進まないので、トットと本題に入ろうと思う。

この映画について、監督が誰で、脚本が誰で、カメラが誰で、音楽が誰で‥‥みたいな話は、いろんな人が書き尽くしてるし、内容についても、ネタバレを気にしながら書くのは楽しくないから、今回はいっさい触れない。そして、この映画について書かれてきた数々の感想や解説で、誰1人として取り上げてないことについて、あたしは書く!そして、海賊王に、オレはなる!(笑)


‥‥そんなワケで、さっきも書いたように、あたしがこの映画に夢中になったポイントの1つが、ジャン・ギャバン扮する主人公が運転してるボンネットトラックのデザインだった。あたしは、昔、一度だけ、伊豆でボンネットバスに乗ったことがあるんだけど、これは何かの企画で運行してたもので、世の中的には、あたしが生まれた時から、バスもトラックもボンネットのないものが走ってた。だから、あたしは、ボンネットトラックやボンネットバスの持つ、何とも言えないレトロで可愛いデザイン、ゾウさんやカバさんを連想させる大型動物みたいなスタイルに、ずっと心を惹かれてた。

あたしは、20年前にこの映画を初めて観た時、登場したボンネットトラックを見て、「おおっ!」って思った。ボンネットの動物的な丸みはもちろんのこと、観音開きの逆で、真ん中から左右に跳ね上がるボンネットの開き方もイイし、左右2枚に分割されたフロントウインドウもイイ。そして、あたしが最高に気に入ったのが、左右のドアのガラスの後ろのキャビンの部分に付いてるハメ殺しの窓が、楕円形で潜水艦や宇宙船の窓みたいだったことだ。だけど、どこの何ていうトラックなのか分からなかったし、当時は調べる方法も分からなかった。

でも、ゆうべ、GyaOで無料配信された『ヘッドライト』を観てみたら、デジタルリマスターされたキレイな映像だったから、レンタルビデオで観た時にはポーズボタンで止めても読むことができなかったトラックのフロントグリルの上のメーカーのロゴが、今回は何とかギリギリで読むことができたのだ!


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右端の末尾はリトル怪しいけど、何とか「WILLEME」と読み取ることができた。そして、すぐにインターネットで検索してみたら、これがビンゴ!「WILLEME」というのは、かつて存在したフランスの大型トラックのメーカーだった。1923年に「Louis Willème」という創業者によって設立されて、1970年に無くなったメーカーで、最終的には超大型の特殊トレーラーとかを製造してたみたいだ。


で、メーカーさえ分かれば話は早い。いろいろと検索した結果、映画『ヘッドライト』で使われてたボンネットトラックは、1953年製の「Willème LC 610 TC Cabine UB」というトラックだということが分かった。ノーマルタイプの「LC 610 TC」はドアの後ろでキャビンが切れてて、車内はシートだけなんだけど、映画で使われてるのは、シートの後ろに寝るためのスペースが付いてる「Cabine UB」だった。だから、あたしが最高に気に入った潜水艦の窓みたいなのが付いてたのだ。


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ちなみに、グーグルの画像検索で「Willème LC 610」を検索してみると、実物のトラックからオモチャやミニカーまで、たくさんの画像が表示されて、あたしはとっても嬉しくなった。そして、このトラックのタンクローリーとガソリンスタンドがセットになったオモチャまで見つかり、現在も製造して販売してたから、つい買いそうになっちゃった(笑)


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‥‥そんなワケで、最後に映画自体のことについてちょっとだけ書くけど、これからこの映画を観る人は、とりあえず、最初の映像、国道沿いの常宿「キャラバン」の風景をよく見ておいてほしい。そうすると、最後に観終わった時に、ひとつの悲しい恋の物語が、輪になって完結するからだ。鏡を通してベッドに横たわるジャンを映すなどの細かいカメラワークも味わいがあるし、テルミンの一種の「オンドマルトノ」という電子楽器によって演奏されてる音楽も映像に深みを与えてる。国道を往復し続ける長距離トラックのヘッドライトが照らしているのは、市井の人々の生活であり人間模様なのだろう。まさに「戦後のフランス映画」と言える名作だと思う。GyaOでは7月4日まで無料配信してるので、まだ観たことがない人は、この機会に、お酒でも飲みながら、古き佳きフランス映画をジンワリと堪能してほしいと思う今日この頃なのだ♪


■映画『ヘッドライト』(7月4日まで無料配信)■
http://gyao.yahoo.co.jp/player/00569/v08471/v0828500000000527398/?list_id=1740530


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