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2014.06.16

ローズの香りと梅の香り

しばらく前に、ラジオのCMで、殺虫スプレーのキンチョールに「ローズの香り」が出たことを知った。そして、その後にスーパーに行ったら、いつもの見慣れた「白地にブルーのボディーに赤い文字」のキンチョールの隣りに、バラ色のキンチョールを発見!ラジオのCMだと、耳からの情報だけで、視覚的に商品を見ることができない。だから、こうして後から実物を発見すると、「これがあのCMのやつか!」って思って、ちょっとした感動がある。

で、あたしは、その場でシューッ!って噴射して、ローズの香りがどんなもんなのか嗅いでみたかったんだけど、そういう「お試し用」のモノはなかった。香水やアロマなんかだと、その商品の棚の最前列に必ず「お試し用」のモノがあって、実際に匂いを確かめることができるのに、さすがに殺虫剤だと、そこまでやってないみたいだ。

だから、どうしても匂いを嗅いでみたかったあたしには、「買う」という選択肢しか残されていなかった。だけど、これ、2本が1セットになってたのだ。本来なら単品のもあるんだろうけど、ここは田舎の量販店的なスーパーなので、基本、何でも最低単位が大きい。普通のキンチョールも、このローズの香りの新製品も、どっちも最小単位が2本セットだった。だから、ホントに必要なら問題ないんだけど、試しに匂いを嗅いでみたいって理由で買うには、量的にも金額的にも大き過ぎた。

それで、諦めてその場を離れようとしたら、その棚の並びに、今度はバラ色の見慣れない小箱を発見した。手に取って見ると、キンチョーの蚊取り線香の「ローズの香り」だった。ラジオのCMでは殺虫スプレーのキンチョールのことしか言ってなかったから、まさか、蚊取り線香まで「ローズの香り」が出てたなんて、あたしは想像もしてなかった。そして、こっちは10巻入りの最小単位が1箱から買えて、値段は普通の蚊取り線香と同じで280円くらいだったので、あたしは、これを買ってみた今日この頃、皆さん、いかがお過ごしですか?


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‥‥そんなワケで、帰ってきてワクワクしながら箱を開けてみたら、蚊取り線香の本体は「バラ色」というよりも「えんじ色」って感じで、ナニゲにキョーレツな匂いがしそうな雰囲気だった。「蚊取り線香」という商品ジャンルから考えても、おトイレの芳香剤のような強い匂いを想像した。だけど、実際に火をつけてみると、あたしの先入観を遥かに下回る「抑えられた匂い」で、「匂い」と言うよりも「香り」に近かった。

ザックリ・ジャパンで言っちゃえば、渋谷の無国籍雑貨店とかに並んでるインドのお香よりもずっと上品で、長いことお部屋に漂っててもぜんぜん嫌にならないレベルだった。これなら、普通の蚊取り線香と順番に使って、香りの違いを楽しむこともできる。キンチョーの蚊取り線香には、他にもフローラルグリーン調の香料をプラスした「森の香り」というのもあるので、3種類を順番に使うのも楽しいかもしれない。


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‥‥そんなワケで、日本人は昔から欧米人と比べて匂いに敏感だって言われてる。もちろん個人差もあるだろうけど、欧米人が強い体臭を消すために香水を使うのに対して、日本人は体臭そのものを消さないと気が済まなくて、無臭の体にほんのりと香水を使うのが好きだと言われてる。日本人の多くは、たとえ「いい匂い」であっても、「強く匂う」よりも「ほんのりと香る」ほうが好きだと言われてる。

ちなみに、あたしは、うなぎ屋さんの前を通った時の蒲焼きの匂いが大好きなんだけど、アレは「ほんのりと香る」んじゃなくて、頭から煙の中に突進してったほどの「強く匂う」のほうが嬉しい。食べ物の匂いに関しては、多くの人があたしと同じ意見だと思う。「ほんのりと香る」ほうが好きだと言うのは、こうした食べ物の匂いの話じゃなくて、お花の匂いとか香水の匂いとかの話だ。

で、今の世の中的には嫌われ者の部類に入っちゃうタバコの匂いだけど、数日前にコンビニに行ったら、レジの横に縦長の専用ラックみたいなのがあって、そこに、金色のショートホープとワインレッドのショートホープが陳列してあった。そして、そこに貼られてた手書きのポップを見ると、金色のほうは「ジンジャエールの香り、ドライゴールド」、ワインレッドのほうは「梅の香り、サワーレッド」と書かれてて、両方とも「期間限定」だと言う。

あたしは、タバコと言えば普通の味の他はメンソールしかないと思ってたので、これには驚いた。特に「梅の香り」には驚いたし、これはぜひ吸ってみたいと思った。「期間限定」だから、今買わなかったら次は手に入らないかもしれない。それで、「ローズの香り」の蚊取り線香の時と同じに、あたしは、興味本位に230円を払ってしまった。


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‥‥そんなワケで、あたしは、ワクワクしながらショートホープの「サワーレッド」を吸ってみたんだけど、あれ?‥‥普通のタバコの味しかしない。だけど、あれほどカラフルな文字で「梅の香り」と書いてあったんだから、ぜんぜん梅の香りがしないハズはない。それで、今度は深めに吸い込んで、お下品だけど鼻からゆっくりと煙を吐いてみた。そしたら、気のせいと言ってもいいくらいの、ほのかな甘酸っぱさのような後味が感じられた。これが「梅の香り」なんだろうか?

あたしは、とりあえずツイトピックに画像をアップして、「ショートホープの期間限定の「ドライゴールド(ジンジャエール味)」と「サワーレッド(梅味)」、「サワーレッド」のほうを1箱(230円)買ってみたけど、あんまり梅っぽくなかった。煙を吐く時にほんのりと梅の香りがする程度。」とコメントした。でもこれは、「梅の香り」だと信じて1本だけ吸った時点での感想で、もしも「梅の香り」だと言われずに吸ってたら、「そこそこ強いわりにはマイルドな味」って感じのコメントをしてたと思う。

で、2本目を吸っても、イマイチ‥‥って言うか、イマニ‥‥って言うか、イマジューくらい「梅の香り」を感じられなかったあたしは、JTのサイトで確認してみた。そしたら、こんな紹介文しか書かれてなかった。


「ホープ・ドライゴールドは、ホープの特徴である吸い応えはそのままに、キレを加えることでよりスッキリとした味わいを、ホープ・サワーレッドは、酸味・甘みを少し加えることで、よりまろやかな味わいをお楽しみいただけます。」


JTのサイトを隅から隅までチェキしてみたけど、どこにも「ジンジャエールの香り」とか「梅の香り」とかは書いてなかった。それで、今度はネット検索してみたんだけど、そしたら個人のサイトで、次のような紹介文が見つかった。


「ドライゴールドはレギュラー品より軽めで、ストレートティーのようなキレのあるすっきりした味わい。サワーレッド」は、果物のチェリーを思わせるまろやかな甘酸っぱさが特徴。」


あれ?「ジンジャエールと梅」じゃなくて、この人は「ストレートティーとチェリー」って書いてるぞ?‥‥ってなワケで、頭脳は子どもでもベッドでは大人、迷探偵キッコナンがヒサビサに登場して推理をしてみた結果、ポイントは「手書きのポップ」にあると判断した。つまり、発売元のJTは、ひと言も「梅の香り」なんて言ってなくて、あくまでも「酸味と甘みを少し加えたまろやかな味わい」としか言ってないのに、あたしが行ったコンビニの店長さんが、このJTの説明と、「サワーレッド」というネーミングから、たぶん「梅サワー」を想像して、それで勝手に「梅の香り」と書いちゃったんじゃないのか?‥‥ってことだ。

そして、この店長さんは、間違いなくタバコは吸わない人だろう。だって、もしも愛煙家なら、ポップを書く前に絶対に試しに吸ってるワケで、そしたら「梅の香り」なんて書くワケがないからだ。


‥‥そんなワケで、あたしの「思い込みパワー」を全開にしても、気のせい程度しか「梅の香り」がしないのに、これじゃあ230円のモトがぜんぜん取れない。そこで、あたしは、どこかにツッコミどころがないか、この「サワーレッド」の箱を調べてみた。そしたら、引き上げたフタのベロの部分に、なんか文字が書いてあった。外の「HOPE」の文字と同じで、ワインレッド地に薄い赤系の文字で書かれてるから同系色で読みにくいんだけど、こんなことが書いてあった。


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「太く、短い。だから濃くて、うまい」


そして、その下に、ものすごくちっちゃい文字で「裏面もご覧ください」と書かれてた。それで、スライドする内箱を引き出して裏面を見てみたら、こんなことが書いてあった。


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「太巻き・ショートサイズが生み出す しっかりとした吸い応えに、ひと味加えた期間限定商品。これが、HOPEの持つ 凝縮されたうまさ。」


う~ん、久しぶりに見たな、タバコの宣伝文句‥‥ってなワケで、最近は、タバコは完全に「悪」で、テレビやラジオで宣伝をすることは許されず、それどころか、ドラマの中の登場人物がタバコを吸ってるだけでテレビ局にクレームが来る時代になった。国内で販売するタバコはすべて、箱の両面の3分の1もの面積に、「喫煙は心筋梗塞の危険性を高めます」だの「たばこの煙は、あなたの周りの乳幼児や子ども、お年寄りなどの健康に悪影響を及ぼします」だのと警告文を書くことが義務づけられてる。

国が認めて販売してる嗜好品なのに、それも、販売価格の7割は税金なのに、その商品のパッケージに、なるべく買わないようにするための「逆宣伝文句」が書いてあるなんて、他の商品じゃ絶対に考えられないことだ。これがお酒なら、瓶や缶に大きく「飲酒を続けるとアルコール依存症になる恐れがあります」って書いてあるような話だ。これが自動車なら、ボンネットに大きく「自動車の排気ガスは、あなたの周りの乳幼児や子ども、お年寄りなどの健康に悪影響を及ぼします」と書いてあるような話だ。


‥‥そんなワケで、あたしは、ショートホープの「サワーレッド」の箱の内側に書かれてたこの短い宣伝文句は、商品の顔であるパッケージに「逆宣伝文句」を書かされて来たJTの、大きな声では絶対に言うことができない怒りを、小さく小さく爆発させたものじゃないかと思った。読みにくい同系色の文字で書き、さらに小さな文字で裏面へと誘導し、そこに長い歴史を持つベストセラーとしての誇りを書き込んだのだ。これは、このタバコを買い、吸ってくれた人だけが気づけばいい、愛煙家だけが読んでくれればいいという、JTの精一杯の反逆なのだ。多くの人たちから後ろ指をさされながらも、国家のために高額の納税をし続けて来た企業としてのプライドと意地を、あたしは、この小さな箱の中に見たような気がした‥‥なんてキレイにまとめてみた今日この頃なのだ(笑)


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