マスカラとマラカスのお話
夏と言えば「夏フェス!」って人も多いと思うけど、この「夏フェス」や「野外フェス」の「フェス」ってのは、当然のことながら「フェスティバル」の「フェス」だ。英語だと「festival」だから、正確には「フェスティヴァル」って表記すべきなんだろうけど、さすがに、ここでの「ヴァ」は「やりすぎ感」が強いから、今日は普通に「フェスティバル」って書かせてもらう。
で、この「フェスティバル」、「フェスタ」って略す場合もあるけど、日本では「夏フェス」のブームで「フェス」って略すのが一般的になった。だけど、この「フェスティバル」って、いったい何なんだろう?正確に説明できる人っている?たいていの人は「なんかお祭り的なこと」っていうザックリとした把握しかしてないと思うし、中学生くらいまでは、あたしもそうだった。
だけど、高校生の時、『とんねるずのみなさんのおかげです』に「仮面ノリダー」が登場して、多くの敵を必殺技の「ノリダー・カーニバル&フェスティバル」で倒すようになると、あたしには「カーニバルとフェスティバルってどう違うんだろう?」っていう疑問が湧いてきた。「フェスティバル」しかないならザックリとした把握でもいいんだけど、似たような言葉が2つ以上出てくると、その違いを知りたくなるのが人情であり、知的好奇心ってもんだ。
世の中に「アザラシ」しかいなけりゃ別にいいんだけど、その隣りに「アシカ」がいると、「アザラシとアシカってどう違うの?」って気になり始めちゃうし、さらにその隣りに「オットセイ」まで出てくると、アザラシとアシカとオットセイの違いが気になって気になって夜も眠れなくなって朝まで文化放送「走れ!歌謡曲」を聴くことになっちゃう。そして、アザラシとアシカとオットセイの違いが分かると、今度は、ゾウアザラシとトドとセイウチの違いが気になってくる今日この頃、皆さん、いかがお過ごしですか?
‥‥そんなワケで、あたしは、「仮面ノリダー」のせいで‥‥って言うか、「仮面ノリダー」のおかげで、「フェスティバル」と「カーニバル」の違いを知ることになった。「フェスティバル」とは、もともとは「宗教的な祝祭」のことで、それが転じて、宗教とは無関係な一般的な祝祭にも使われるようになり、さらには、祝祭ではない世俗的なイベントにも使われるようになった、というもの。
一方、「カーニバル」とは、もともとはカトリックなどの西方の宗教文化圏で、仮装してパレードを行なったりする「謝肉祭」のことで、それが転じて、宗教とは無関係な一般的な祝祭にも使われるようになり、さらには、祝祭ではない世俗的なイベントにも使われるようになった、というもの。
つまり、両方とも同じような変遷をたどってるんだけど、イメージで大別すると、「フェスティバル」は広い敷地などで移動せずに行なわれるお祭り的なイベントのことで、「カーニバル」は「リオのカーニバル」に代表されるように、大通りなどを移動しながら行なうお祭り的なイベント、「パレード」をメインにしたイベントということになる。だから、「フジ・ロック」などを「フェス」と呼ぶのはバッチリなワケで、これらの音楽イベントは「カーニバル」には当たらない。
日本で「カーニバル」と言えば、「浅草サンバカーニバル」のように最初から「カーニバル」の名を冠したものもあるけど、これは、あくまでも本場の「リオのカーニバル」を模したものだ。日本には、もっと日本的で、日本を代表する「カーニバル」がたくさんある。たとえば、青森の「ねぶた祭り」や弘前の「ねぷた祭り」だ。弘前の「ねぷた祭り」は、今年は残念ながら事故があって中止になってしまったけど、どちらも日本を代表する素晴らしい「カーニバル」だ。
秋田の「竿灯祭り」、岩手は盛岡の「さんさ踊り」、山形の「花笠まつり」、福島は郡山の「うねめまつり」、富山は越中八尾の「おわら風の盆」、大阪は岸和田の「だんじり祭り」、徳島の「阿波踊り」、福岡の「博多どんたく」や「博多祇園山笠」、長崎の「おくんち」、沖縄の「エイサー」、数え出したらキリがないほど、日本には素晴らしい「カーニバル」がある。また、日本三大祭である東京の「神田祭」、京都の「祇園祭」、大阪の「天神祭」などのように、「フェスティバル」の要素と「カーニバル」の要素を兼ね備えたお祭りも日本にはたくさんある。
‥‥そんなワケで、「フェスティバル」に「パレード」の要素を加えたものが「カーニバル」ってワケだけど、「フェスティバル」と「カーニバル」が「バルつながり」であるように、「パレード」と「レードつながり」なのが「マスカレード」だ。マーマレードのように甘くもなく、マスタードのように辛くもなく、どんな味がするのか分からない「マスカレード」だけど、そろそろ50歳に手が届きそうな3人組の少年たちに直訳してもらうと、「仮面舞踏会」って意味になる。
「マスカレード(masquerade)」の「masque」は「mask」のことで、「仮面、仮面劇」の意味だ。「カーニバル」のもともとの意味である「謝肉祭」は、仮面をつけたり仮装したりしてパレードをするワケだから、ここでも意味がつながってくる。だけど、「マスカレード」は仮面をつけて街を練り歩くワケじゃなくて、広い室内でダンスパーティーをするワケだから、立地的には「カーニバル」じゃなくて「フェスティバル」ってことになる。ああ、ややこしい。
で、せっかくだから、ついでに書いちゃうけど、「キン肉マン」世代の人がジグソーの「スカイ・ハイ」を聴くと一瞬で思い出すメキシコのプロレスラー、ミル・マスカラスは、「ミル(Mill)」が英語の「Million」、「1000」という意味で、「マスカラス(mascaras)」が「マスク(mascara)」の複数形、つまり、「千の仮面」という意味だ。だから、そのまま「千の顔を持つ男」というキャッチフレーズで呼ばれてた。
ケーキの「ミルフィーユ」は「千の葉」という意味なので、千葉県の名物にしようなんて動きがあるけど、これも一種の「ミル・マスカラス現象」と言ってもいいだろう。で、ミル・マスカラスの弟のドス・カラスは、「ドス(Dos)」が「2」、「カラス(caras)」が「顔(cara)」の複数形なので、「2つの顔」という意味だ。
ミル・マスカラスやドス・カラスは、メキシコ人なので、もちろんスペイン語だけど、あたしはスペイン語なんてチンプンカンプンだから、こうして興味の湧いたことを調べながら、ナニゲに小さな発見があったりする。今回は、この2人の名前から、スペイン語では「顔」が「cara」で、「マスク(仮面)」が「mascara」だということを知った。だから、ここでは便宜上、「mascara」を「マスク」と訳したけど、さらに正確に訳すと、「マスクをつけた顔」って意味になるんだと思う。
‥‥そんなワケで、女性の皆さんはウスウス気になってたと思うけど、ミル・マスカラスの「マスカラス」は、マスク(仮面)を意味する「マスカラ」の複数形‥‥ってワケで、そう、まつ毛に塗る、あの「マスカラ」だ。化粧品の「マスカラ」と、ミル・マスカラスの「マスカラ」は、偶然に同じになったワケじゃなくて、語源も同じなのだ。
もともとは、「覆う」という意味のイタリア語、「maschera」が語源で、これが英語の「マスク(mask)」や、スペイン語の「マスカラ(mascara)」になった。だから、ミル・マスカラスが、もしもアメリカ人のプロレスラーだったに、「ミル・マスクス」になってたワケだ。で、このスペイン語の「マスカラ(mascara)」は、最初は語源のイタリア語と同じに、「覆う」「変装する」などの意味も持っていたため、女性が、まつ毛を太く長く見せるために塗る化粧品のことも「マスカラ(mascara)」と呼ぶようになったのだ。
ちなみに、世界で最初に「マスカラ」を使った女性は、スペインの貴族の娘で、ナポレオン三世のお妃様になったウジェニー・ド・モンティジョ妃だと言われてる。ウジェニー妃は、1826年に生まれて1920年に亡くなっているので、今から150年くらい前には「マスカラ」が誕生してたようだ。
で、「マスカラ」と言うと、必ずセットで思い出すのが楽器の「マラカス」だけど、これも「マスカラ」と同じスペイン語で、マンボやサルサなど、スペイン語圏のラテン音楽で使われる。「マラカス(maracas)」は、「マラカ(maraca)」というウリ科の果実の中身をくり抜いて干して、タネを入れて作る。だから、両手に1つずつ持って振って、初めて「マラカス」という複数形になるワケで、片手に1つしか持ってない時は「マラカ」になっちゃう。
‥‥そんなワケで、「マラカス」は基本的に2個で1セットの楽器なので、1個だけを使うことってほとんどないと思うけど、カラオケとかで、右手にマイク、左手にマラカス‥‥みたいな状況の時は、無理してでも左手に2個のマラカスを持たないと、「マラカ」になっちゃうから注意してほしい。「マラカ」になっても、特に困ることもないだろうけど‥‥。逆に、全身に1000個のマラカスを装着して、「ミル・マラカス」を名乗るのはアリだと思う。こっちも、これと言って特にメリットもないだろうけど、1000個のマラカスを鳴らしながら派手に空中殺法を繰り出せば、1回目だけはウケると思う。どこかの街の「カーニバル」とかで‥‥なんて思ったのもトコノマ、今回のブログはあっちこっちに空中殺法を連発しすぎて、完全に着地点を見失ってしまった今日この頃なのだ(笑)
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