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2014.12.17

明治浪漫の世界へ

もう1年くらい前か、はたまた10ヶ月くらい前か、その辺はハッキリしないんだけど、とにかく、今年の4月より前に、あたしは「BOOK OFF」の100円コーナーで文庫本を6冊ほど買って来た。何で「今年の4月より前」かって言うと、裏に貼ってある値段のシールが「108円」じゃなくて「105円」だからだ。たぶん、車を借りて母さんと病院に行った時に、帰りに「BOOK OFF」に寄ったんだと思うけど、母さんとあたしがそれぞれ自分の読みたい本を3~4冊ずつ選んで、それぞれが読み終わったら交換して読むっていう、いつものパターンだ。

で、その時にあたしが選んだのが、宇江佐真理さんの『涙堂 琴女癸酉日記』と『卵のふわふわ 八丁堀喰い物草紙・江戸前でもなし』と『おぅねぇすてぃ』だった。それで、『涙堂』と『卵のふわふわ』は続けて読んだんだけど、さすがに時代小説を2冊続けて読むと、次は現代小説が読みたくなっちゃうから、『おぅねぇすてぃ』は後に取っておいて、母さんが読み終わった小説を読んだり、他の小説を読み直ししたりしてた。

そしたら、自分の選んだ3冊を読み終えた母さんが、あたしの選んだ3冊も順番に読み、あたしより先に『おぅねぇすてぃ』も読んじゃった。そして、「これ、すごく面白かったわよ」って教えてくれた。まあ、宇江佐真理さんの作品なんだから、面白くないワケはないけど、この作品だけはカラーが違ってたから、あたしは、どんな感じなのか想像もできなかった。

宇江佐真理さんは時代小説の作家で、代表作の『髪結い伊三次捕物余話』のシリーズや映画化もされた『雷桜』、あたしの大好きな『深川にゃんにゃん横丁』を始め、ほとんどの作品の舞台が江戸時代だ。だけど、この『おぅねぇすてぃ』は明治時代の初期が舞台なので、あたしは「いったい、どんなふうに描かれてるんだろう?」って思って、読むのを楽しみにしてた。

それなら早く読めばいいのに‥‥って思われちゃうけど、短編のオムニバスだったり、同じ登場人物でも1話完結の短編が何作か収められてる小説なら、軽い気持ちで読み始めることができる。最初の1話を読んで「ちょっと今の気分とは違うな」って感じたら、2話以降は取っておいて、その時の気分の小説を読み直すことができる。だけど、この『おぅねぇすてぃ』は、何章かには分かれてるけど、1冊が1本の長編小説なので、読み始めたら最後まで一気に読みたい。だから、あたしは、読むのを楽しみにしつつも、「明治時代の気分に浸りたい」って感じになるまで、大事に取っておいた今日この頃、皆さん、いかがお過ごしですか?


‥‥そんなワケで、宇江佐真理さんの『おぅねぇすてぃ』を買って来てからずいぶん月日が過ぎちゃったけど、12月7日のこと、ぼんやりと「そう言えば、今日って与謝野晶子さんのお誕生日だったよな‥‥」って思って、何度も読んでる与謝野晶子さん歌集『みだれ髪』を読み直したら、自然と「明治時代の気分」になっちゃった。それも、『みだれ髪』は、当時は不倫関係だった与謝野鉄幹への思いを歌った作品がマウンテンだから、「明治時代の気分」の上に「道ならぬ恋」の気分にもなっちゃった。

で、あたしは、「そうだ!今だ!」って思った。そう、『おぅねぇすてぃ』を読むのは「今だ!」ってことだ。『おぅねぇすてぃ』は読まずに取っておいたけど、買う時に、裏表紙に書いてあるアラスジ的な紹介文を読んでから選んでたから、これが「明治時代の道ならぬ恋」のお話だってことだけは知ってたのだ。ちなみに、文庫本の裏には、こんなふうに書いてある。


「英語通詞(つうじ)を目指し函館の商社で働く雨竜千吉(うりゅうせんきち)。彼には思う人がいた。米国人貿易商の妻となっていた幼馴染みのお順(じゅん)である。御一新(ごいっしん)の荒波で別々の人生を強いられた二人は、東京・築地の外人居留地で偶然再会する。「正直に生きる――」大火で逝った遊女・小鶴(こつる)の言葉に胸を打たれた千吉は、お順との結婚を決意する。しかし、米国人の夫は離縁にある条件をつけた‥‥。」


「英語通詞」というのは「通訳」のことで、「御一新」というのは「明治維新」のことだ。文明開化で「これからは英語が必要になる」と考えた青年が主人公で、恋愛を軸にした作品だけど、時代背景が現代とは違うから、いろんな面で面白そうだ。妻がいた与謝野鉄幹を愛してしまった晶子とは逆に、こちらは人妻となっていた幼馴染みのお順を愛してしまった千吉。晶子が鉄幹と出会ったのは明治30年ころなので、明治時代の初期が舞台の『おぅねぇすてぃ』とはずいぶん背景が違うけど、それでも、現代を生きるあたしから見れば、どちらも「明治浪漫」の世界なのだ。


‥‥そんなワケで、あたしは、与謝野晶子さんのお誕生日、12月7日の夜から、宇江佐真理さんの『おぅねぇすてぃ』を読み始めた。そして、5日後の12日に読み終わった。さっき、あたしは、「長編小説は読み始めたら最後まで一気に読みたい」って書いたけど、あたしの「一気」というのは、その日のうちに一気に読んじゃうことじゃなくて、毎日、少しずつ、じっくりと楽しみながら読むことだ。途中で他の本に浮気したりしないで、その本だけを読む。だけど、あまりにも早く読み終わっちゃうのはつまらないから、毎日50ページくらいずつ、キリのいいとこまで読んで、続きは次の日の楽しみにする。途中で他の本は絶対に読まないから、栞のはさんであるページをひらいた瞬間に、小説の中の世界に戻ることができる。そして、だいたい5日から1週間くらいかけて楽しむ。

『おぅねぇすてぃ』は、もちろん創作された架空のお話だけど、宇江佐真理さんが得意とする「実際に起こった歴史上の出来事や実際にいた歴史上の人物をしっかりと調べた上で適材適所に登場させる」という技が随所に光ってたから、すごく面白かっただけじゃなく、すごく勉強にもなった。そして、思いっきり「明治浪漫」の世界に浸っちゃったあたしは、次も同じ時代背景の小説を続けて読みたくなったんだけど、あたしが持ってる時代小説は、どれも江戸時代のものばかりだった。

それで、次に読む本のことは後で考えることにして、何となくネットにつないで、何となく「GyaO」を見てみたら、松田龍平さんが主演の『長州ファイブ』っていう2006年に公開された映画が配信されてた。解説を見てみたら、「攘夷(じょうい)の嵐が吹き荒れる幕末期に幕府の禁を破ってイギリスへ命がけの密航を果たし、後に近代日本の幕開けに大きな足跡を残した長州藩の5人の若者、『長州ファイブ』と呼ばれる、伊藤博文、井上馨、井上勝、遠藤謹助、山尾庸三の激動の運命を描く歴史ドラマ」って書かれてた。

「おおっ!」、あたしは思わず声を上げた。だって、さっきまで読んでた『おぅねぇすてぃ』は、主人公の千吉の他にも英語を勉強してる仲間が何人もいて、イギリスへ留学する者も出てくるし、千吉もアメリカへ留学するからだ。もちろん、この『長州ファイブ』のような「密航」じゃなくて、ちゃんと許可を得た正式な留学だけど、千吉たちが留学することができたのは、『長州ファイブ』の活躍があったからだろう。


‥‥そんなワケで、あたしは、晩酌の用意をして、さっそくこの映画を観てみた。だって、この『長州ファイブ』は、この日、12月12日に配信された映画だったからだ。与謝野晶子さんのお誕生日の12月7日に『みだれ髪』を読み、その流れで宇江佐真理さんの『おぅねぇすてぃ』を読み始め、ちょうど読み終わった12月12日に『長州ファイブ』が配信されたんだから、これは絶対に「運命」だ!それも、明治30年代の『みだれ髪』の世界から、明治初期の『おぅねぇすてぃ』の世界へさかのぼり、さらに幕末の『長州ファイブ』にさかのぼるなんて、あまりにも出来杉くん的な流れだろう。

で、観てみた感想としては、とっても面白かった。たぶん、耳の不自由な人のためだと思うけど、登場人物のセリフだけじゃなくて、「足音が聞こえる」とかの音の説明までが字幕で流れるので、最初はちょっと戸惑ったけど、それにもすぐ慣れて、じっくりと楽しむことができた。主演の松田龍平さんはもちろんのこと、山下徹大さん、北村有起哉さん、前田倫良さん、三浦アキフミさん、5人がそれぞれ素晴らしかったし、他の役者陣もとっても良かった。何よりもストーリーが面白かったし、実際にあった出来事を元に作られた作品だと思うと、さらに楽しむことができた。

これは、宇江佐真理さんの「実際に起こった歴史上の出来事や実際にいた歴史上の人物をしっかりと調べた上で適材適所に登場させる」という技にも繋がってて、『おぅねぇすてぃ』を読み終わった後だったから、相乗効果でさらに楽しめた。あたしとは逆に、まず初めに『長州ファイブ』を観て、その流れて『おぅねぇすてぃ』を読み、そして最後に『みだれ髪』の世界を堪能するっていう、時系列にそった楽しみ方もできると思う。与謝野晶子さんの短歌は、空想の世界を詠んでるんじゃなくて、実際に自分が体験したこと、実際に自分が感じた思いを詠んでるから、この流れを仕上げるにはピッタリのリアリティーがあるからだ。


‥‥そんなワケで、この映画『長州ファイブ』は、年明けの1月11日まで無料配信してるし、2時間弱という、お酒を飲みながら楽しむにはちょうどいい長さの作品なので、ぜひ、年末年始にでも観てほしい。そして、その流れで、宇江佐真理さんの『おぅねぇすてぃ』と与謝野晶子さんの『みだれ髪』も読んで、「明治浪漫」の世界を楽しんでほしいと思う今日この頃なのだ♪


■映画『長州ファイブ』(2015年1月11日まで無料配信)
http://gyao.yahoo.co.jp/player/00620/v07097/v0696700000000533919/


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