イスラム国からのメッセージ全文
日本人2人が「イスラム国」に拘束され、身代金を要求されている事件で、72時間の期限が過ぎて約1日が経った24日の23時過ぎ、ネット上に「イスラム国」からの新たなメッセージが公開された。人質の1人である後藤健二氏が小型のパネルに貼られた写真を持っている画像で、そこには、向かって右側に膝まづいている湯川遥菜氏と思われる人物の写真、左には横たわった体の上に斬首された頭部が乗せられている写真が並んでいる、とてもショッキングなものだった。
そして、この画像とともに流れたのが、おそらく、後藤健二氏が読まされていると思われる、安倍晋三首相と自分の妻に宛てた以下の英語のメッセージだった。
"I am Kenji Goto Jogo. You have seen the photo of my cellmate Haruna slaughtered in the land of the Islamic Caliphate. You were warned. You were given a deadline and so my captives acted upon their words.
Abe, you killed Haruna. You did not take the threats of my captors seriously and you did not act within the 72 hours.
(後藤氏の妻の実名), my beloved wife, I love you, and I miss my two daughters. Please don't let Abe do the same for my case. Don't give up. You along with our family, friends, and my colleagues in the independent press must continue to pressure our government.
Their demand is easier. They are being fair. They no longer want money. So you don't need to worry about funding terrorists. They are just demanding the release of their imprisoned sister Sajida al-Rishawi. It is simple. You give them Sajida and I will be released. At the moment, it actually looks possible and our government are indeed a stone throw away. How? Our government representatives are ironically in Jordan, where their sister Sajida is held prisoner by the Jordanian regime.
Again, I would like to stress how easy it is to save my life. You bring them their sister from the Jordanian regime and I will be released immediately. Me for her. (妻の実名), these could be my last hours in this world and I may be a dead man speaking. Don't let these be my last words you ever hear. Don't let Abe also kill me."
「私は後藤健二です。今、あなた達(日本人)が見ているのは、私と同じように拘束されたハルナ(湯川遥菜氏)が「イスラム国」のカリフの大地で処刑された写真です。あなた達は(我々から)警告されました。最終期限を与えられました。そして我々は、あなた達の言葉に従って行動しました。
安倍(晋三首相)、あなたがハルナを殺したのです。あなたは人質に対する我々の警告を真剣に受け止めず、72時間以内に行動しませんでした。
(妻の実名)、私の最愛の妻よ、愛している。2人の娘にも会えなくなるのは寂しい。安倍(晋三首相)に同じことをさせないでほしい。諦めないでほしい。あなたには私の仲間や家族、友人たちが付いている。独立プレスである私の仲間たちと、政府に(交渉に応じるように)働き続けないといけない。
彼らの要求は簡単だ。彼らは公正だ。彼らはもうお金は望んでいない。だから、テロリストに資金提供するという心配をする必要はなくなった。彼らは捕えられている同胞のサジーダ(Sajida al-Rishawi)の釈放を求めている。とても単純なことだ。サジーダを釈放して彼らに引き渡せば、私は解放される。現在、この取引は可能だと思う。どうやって?皮肉なことに、日本の政府の代表者は、ちょうど今、ヨルダンにいる。そして、サジーダは、ヨルダンの政府によって収監されている。
もう一度、私の命を救うことが、どれほど簡単なことなのかを強調したい。あなたがヨルダン政府からサジーダを彼らの元に戻せば、私はすぐにでも解放される。サジーダあっての私の命だ。(妻の実名)、何もしなければ、これが私のこの世での最後の瞬間となり、私は殺されるだろう。どうか、これを私の最後の言葉にしないでほしい。そして、安倍(晋三首相)に私を殺させないでほしい。」
‥‥そんなワケで、後藤健二氏の妻の実名だけは伏せて書いたけど、あとはほとんど間違いないと思う。そして、「イスラム国」が後藤健二氏の解放の条件としているサジーダ(Sajida al-Rishawi)とは、いったいどんな女性なのだろうか?過去の報道などから分かっていることだけをピックアップすると、現在は44歳か45歳で、2005年にヨルダンの首都アンマンで発生した同時多発テロの実行犯の1人だ。当時は、まだ「イスラム国」ではなく、その前身の「イラクのアルカイダ」のメンバーだった。
この時は、政府高官や外国人旅行客などが利用する高級ホテル、「デイズ・イン・ホテル」「グランド・ハイアット・ホテル」「ラディソン・ホテル」がターゲットにされた。まず、「デイズ・イン・ホテル」の近くの警察の検問所で自動車爆弾が爆発、続いて「ラディソン・ホテル」の結婚式場で男性メンバーが自爆攻撃を行なって多くの人が犠牲になり、最後に「グランド・ハイアット・ホテル」のバーでもメンバーが自爆攻撃を行なってパレスチナ政府の高官を含む多くの人たちが犠牲になった。
この時、「ラディソン・ホテル」の結婚式場で、自爆攻撃に失敗したのが、サジーダだったのだ。サジーダは、自分の夫と一緒に自爆攻撃の要員になり、大量のボールベアリングを仕込んだ爆薬を体に巻き付け、ホテルの結婚式場へと侵入した。しかし、サジーダの爆薬は引き金を引いても着火せず、夫だけが自爆攻撃を実行、サジーダは逃げ惑う人たちに紛れて逃亡した。しかし、すぐに逮捕され、体に巻き付けていた爆薬が動かぬ証拠となり、2006年9月に死刑判決を受けた。上告をしたが棄却され、現在はヨルダンの刑務所で、刑の執行を待っている。これが、サジーダだ。
‥‥そんなワケで、このサジーダという女性メンバーは、「イスラム国」の前身の「イラクのアルカイダ」時代からの古参メンバーであり、組織の内部情報にも詳しいのだろう。そして、家族や近親者には「イスラム国」の幹部が多い。このままでは、近い将来、死刑が執行されてしまうため、「イスラム国」は、今回の「命と命」という取引を持ち出したものと思われる。「イスラム国」の狙いは、最初から「サジーダの奪還」であり、法外な身代金は、日本政府の出方を見るためのアドバルーンだった可能性もある。どちらにしても、あとは、安倍政権の判断力と行動力に望みを掛けるしかないだろう。
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