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2015.02.25

安倍政権の成長戦略の目玉は「戦争」と「カジノ」

あたしは今まで「イスラム国」という呼称を使って来たけど、トルコ国営放送から日本の報道各社に対して、2月4日付で「この呼称は使わないでほしい」という公式リリースがあったので、あたしは別に報道社じゃないけど、今後は、特別な理由がある場合を除いて、基本的には「ISIL」と表記して行くことにした。

トルコ国営放送のリリース
http://tokyo.be.mfa.gov.tr/ShowAnnouncement.aspx?ID=226985


‥‥そんなワケで、今日は書きたいことが多いから、「マクラ」も「いかがお過ごしですか?」も割愛してさっそくスタートしちゃうけど、今回の「ISIL」による日本人2人の殺害事件は、パリのテロ事件の直後という最悪のタイミングで強行された安倍晋三首相の中東歴訪と、そこでの「ISILと戦う周辺国への2億ドルの支援」を表明したことが引き金となった。

特に、最大の引き金になってしまったのが、安倍首相が今年1月19日にイスラエルで行なった支援表明で、この時のニュース映像は「ISIL」の脅迫動画の冒頭にも使われた。そして、「ISIL」の戦闘員は、安倍首相を名指しして身代金を要求した‥‥ってワケだけど、これは今に始まった話じゃない。

今回の日本人人質殺害事件について、多くの媒体は昨年8月に湯川遥菜さんが「ISIL」に拘束されたところからしか検証していないけど、今回の問題の根本原因である「安倍首相とネタニヤフ首相との蜜月関係」に焦点を当てるのであれば、もっと以前にさかのぼる必要がある。で、1つ1つ書いて行くと長くなっちゃうので、以下、関係項目を時系列で箇条書きにしてみる。これに目を通せば、全体の流れが見えて来ると思う。


2012年12月16日、第46回衆院選で自民党が与党に返り咲き、自公連立の安倍政権が発足。

2013年3月1日、米国の最新鋭戦闘機「F-35」の開発に日本企業が参加することを「武器輸出三原則の例外とする」と閣議決定。

2013年7月21日、第23回参院選で与党が勝ち、衆参両院を安倍政権が牛耳ることに。

2013年7月22日、安倍首相が「武器輸出三原則の抜本的な見直しの議論を始める」と発表。

2014年4月1日、安倍内閣が「武器輸出三原則」を撤廃して「防衛装備移転三原則」を閣議決定。

2014年5月11日~15日、イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相が訪日し、12日に安倍首相と、13日に岸田外相と会談し、「中東地域の平和と安定に向けて両国が協力を強化していく方針」で一致。

2014年5月15日、安倍首相が「集団的自衛権の行使容認」を訴える会見。


‥‥そんなワケで、ここまでの流れを見て来て、1つのキーワードに気づいた人もいると思う。そう、米国の最新鋭戦闘機「F-35」だ。参院選の前に「F-35」の開発に日本企業が参入できるように閣議決定しておき、参院選で大勝した翌日に、安倍首相は電光石火の早業で「武器輸出三原則の抜本的な見直し」を宣言。そして、翌年4月1日には「武器輸出三原則」を撤廃して、自由に武器が輸出できる「防衛装備移転三原則」を閣議決定した。

で、これは以前から日米の政府間で決められてたんだけど、日本が「F-35」の開発に参入した場合、約40%の部品を日本企業が製造していいことになってる。そして、日本の防衛相が選定したのが、機体は「三菱重工」、エンジンは「IHI」、電装品は「三菱電機」、この3社が日本での元締めになり、それぞれが下請けを使って製造するというシナリオだ。

この3社は、安倍首相が外遊してトップセールスする時に必ず引き連れて行く「大名行列」の常連で、今回の中東歴訪にも、もちろん、国民の税金で飛んでいる政府専用機で着いて行った‥‥ってなワケで、ここで登場するのが、待ちに待ったイスラエルのネタニヤフ首相だ。非武装のパレスチナの市民を虐殺し続けて来たイスラエルは、アメリカのバックアップがなければ完全に「テロ国家」だけど、エジプト軍が軍事クーデターを起こして誕生したエジプトの現シシ政権と同様に、アメリカが全面的にバックアップしてるから、単なる「大量虐殺」を平然と「平和のためのテロとの戦い」などと言い続けていられるのだ。

ま、そこんとこは置いといて、この「F-35」というステルス戦闘機は、世界のあちこちで飛行中にエンジンが止まって墜落してることからも分かるように、完全に「欠陥機」だ。だから、アメリカ製のステルス戦闘機が欲しい国々は、みんな実績のある「F-22」を欲しがった。だけど、アメリカは、この「F-35」の開発に莫大な予算を注ぎ込んじゃったので、どうしても大量販売して元を取りたい。そこで、日本やイスラエルを始め、多くの国々に無理やりに売りつけたってワケだ。

ま、そこんとこも置いといて、日本の場合も、欠陥機の代表の「オスプレイ」と同様に「F-35」をたくさん買わされるワケだけど、イスラエルと違う点は、1機の約40%までの部品を日本企業が製造できるように、安倍政権が審議もせずに、お得意の閣議決定だけで勝手に決めちゃったという点だ。つまり、この欠陥機が複数の国々にたくさん売れれば、日本企業が儲かるっていうスンポーだ。

だけど、日本には「武器輸出三原則」があるから、今のままじゃ日本製の部品を使って製造した「F-35」は、戦争ばかりしているイスラエルには売ることができない。同じ「F-35」でも、「防衛」のために買う国には輸出できるけど、「戦争」のために買う国には「武器輸出三原則が歯止めになって輸出することができない。そうなると、イスラエルという武器の大型市場は韓国に持って行かれちゃうことになる。そこで、安倍首相は、2014年4月1日に「武器輸出三原則」を撤廃して、「武器」を「防衛装備」などと言い変え、「輸出」を「移転」などと言い変え、「防衛装備移転三原則」なんてものを閣議決定したワケだ。そして、翌月の5月にはイスラエルのネタニヤフ首相が訪日して、さっそく「会談」という名目の「トップセールス」が行なわれたってワケだ。

「積極的平和主義」なんてキレイゴトを言ってても、所詮は「カネ儲け」のための方便で、カネのためなら安全対策が不十分な原発だろうが、人殺しの武器だろうが、なんでもかんでも輸出しちゃう方針。どうせ死ぬのはヨソの国の人たちなんだから、カネさえ儲かればアトは野となれ山となれ。これが「死の商人」として世界を飛び回る安倍晋三という人物の実体だ。


‥‥そんなワケで、先ほどの時系列を見て、もう1つ気になる点があったと思う。それは、イスラエルのネタニヤフ首相が訪日して会談を行なった直後に、まだネタニヤフ首相が日本にいる時点で、まるで日程を合わせたかのように、安倍首相が「集団的自衛権の行使容認」の会見を行なったという点だ。例の紙芝居のようなパネルまで用意して、海外で暮らす日本人を救うためにナンタラカンタラと屁理屈を並べてたけど、これも、実際にはイスラエルのネタニヤフ首相に対するアピールだったのだ。

日本の自衛隊の海外派遣と言えば、2003年12月から2009年2月まで続けられたアメリカ主導のイラク侵攻の下請け業務が一番に挙げられるけど、もっと古くから続けられていた「ゴラン高原」への派遣がある。イスラエルとシリアという敵対する2国の境界に広がるゴラン高原に、PKO(国連平和維持活動)の「国際連合兵力引き離し監視軍」への派遣だ。

これは、1996年2月から派遣されていて、半年ごとに隊を交代させて来た。最初の第1次隊の隊長は、今や自民党の右派議員としてオナジミの佐藤正久氏、イラク派遣でも隊長をつとめた「ヒゲの隊長」だった。そして、半年ごとに隊を交代させて来たワケだけど、民主党政権下の2012年、当時の野田佳彦首相が、シリアの治安悪化を理由に、期限を延長せずに「撤退」を決定した。

イスラエルとしては、シリアの治安が悪化した今こそ、少しでも自分たちの味方が多いほうが助かるから、何とか留意してくれるように申し出た。でも、野田政権は自衛隊員の生命の安全を第一に考えて、17年間に及んだ自衛隊派遣を終了させたのだ。つまり、日本とイスラエルという2国間の外交的には、日本はイスラエルに「借り」を作ったことになる。で、この「借り」を返すだけでなく、もっと積極的にイスラエルの味方をして、「戦争ビジネス」でカネ儲けをしようと目論んだのが、今の安倍政権というワケだ。だからこそ、ネタニヤフ首相が日本にいる時に、全国民に向けて「集団的自衛権の行使容認」、すなわち「自衛隊の海外紛争地への派遣」の必要性を熱弁したってワケだ。


‥‥そんなワケで、ここまでは多くの人が簡単に想像できるシナリオだけど、2014年5月にイスラエルのネタニヤフ首相が訪日した時、安倍首相が会談後に発表した共同声明は、その名も「日本・イスラエル間の新たな包括的パートナーシップの構築に関する共同声明」というウサン臭さ全開のシロモノだった。この「包括的パートナーシップ」という言葉は、トランプのジョーカーみたいなもので、つまりは「オールマイティー」って意味だ。

日本製の部品を使った武器をイスラエルが買うだけじゃ、得をするのは日本だけだ。だけど、この「包括的パートナーシップ」という言葉には、「武器の共同開発」や「防衛システムの共同開発」などの他に、「戦争ビジネス」以外のものもすべてが含まれている。そして、その代表格なのが、これまた安倍政権が精力的に進めている「カジノビジネス」だ。

世界のカジノ王として知られる大富豪のシェルドン・アデルソン氏は、アメリカのラスベガスに本社がある「ラスベガス・サンズ」の会長で、アメリカに住んでるユダヤ人だけど、アメリカとイスラエルの二重国籍を持ってる。そして、アメリカでは共和党のミット・ロムニー氏の強力な支援者で、イスラエルではネタニヤフ首相の強力な支援者だ。イスラエルでは、私財を使って「フリーペーパー(無料の新聞)」を発行してるんだけど、毎号がネタニヤフ首相の素晴らしさを賞賛するチョーチン記事で埋め尽くされている。

で、そんなアデルソン会長が目玉としてるビジネスが、通称「IR」と呼ばれてる「統合型リゾート」だ。マカオとかが有名だけど、まず中心にカジノがあって、それを取り囲むように高級ホテルや高級レストラン、映画館やショッピングモールなどが立ち並び、ここに遊びに行けば、エリアの他に出なくても、すべてエリアの中だけでコト足りてしまう。ようするに、観光客のお財布のお金は、すべてこのエリアの中だけに落とされるという蟻地獄みたいなシステムだ。

マカオの場合は、最初は何もなかった「コタイ」という場所に造られた。約3600億円を投資して開発された「IR」には、広大な敷地の中央に、2万8000平方メートルの巨大なカジノがある。東京ドームのグラウンドの面積が1万3000平方メートルだから、その2倍以上だ。そして、この巨大なカジノの周囲には、ホテルだけでも「シェラトン」と「コンラッド」と「ホリデイン」の3つがある。「シェラトン」には客室の他に、5000人が収容できる大会場を含めた10タイプの大宴会場や170もの会議室がある。そして、これらのホテルの間には100の店舗が並んでいる。でも、これほど凄い「IR」のカジノでも、マカオに35もあるカジノの中では、売り上げは第7位だ。


‥‥そんなワケで、2014年5月に訪日したイスラエルのネタニヤフ首相と会談して、「日本・イスラエル間の新たな包括的パートナーシップの構築に関する共同声明」なんてものを発表しちゃった安倍首相が、「集団的自衛権の行使容認」を熱弁した2週間後の5月30日に向かったのが、シンガポールだった。表向きは「アジア安全保障会議」への出席だったけど、政府専用機がチャンギ国際空港に到着して真っ先に向かったのが、先ほどのアデルソン会長の「IR」である「マリーナ・ベイ・サンズ」だった。

シンガポールの新都心にある「マリーナ・ベイ・サンズ」は、巨大な空中庭園とプールが屋上にある高層ビル3棟が並び、カジノの他に数々の私用行施設やホテルが併設していて、カジノだけでも年間に約2500億円を稼ぎ出している。そして、ここを視察した次に安倍首相が向かったのは、今度はセントーサ島にある「IR」、「リゾート・ワールド・セントーサ」だった。こちらはさらに巨大で、カジノの他に「ユニバーサル・スタジオ・シンガポール」や世界最大の水族館「マリーナ・ライフ・パーク」まである。つまり、安倍首相は、「カジノのハシゴ」をしたってワケだ。そして、この2つの巨大な「IR」をタップリとタンノーした安倍首相は、夕方からチョコっと会議に顔を出して、夜は高級ホテルに宿泊した。

ちなみに、安倍首相がシンガポールに行く2日前の5月28日、アデルソン会長は、ニューヨークでの投資家会議で、次のように述べている。


「日本の安倍晋三首相が30日からシンガポールを訪問するが、その時に我が社の「マリーナ・ベイ・サンズ」を視察することになっていて、カジノ解禁を推進するように進言することになっている。うまく行けば安倍首相が側近に日本に電話を掛けさせてカジノ法案の国会通過を推進するように指示するかもしれない。これで日本でのカジノ解禁に向けた動きが加速することに期待している」


そして、このアデルソン会長の言葉の通り、単純な安倍首相は、視察後にこう語った。


「IRは日本の成長戦略の目玉になる」


安倍首相は、帰国直後に「IR推進」を盛り込んだ成長戦略の作成を指示して、6月24日には「IRの導入」を目玉にした「新成長戦略「日本再興戦略 改訂2014」を閣議決定した。そして、臨時国会では超党派の「国際観光産業振興議員連盟」(カジノ議連)が2013年末に提出した「カジノ解禁法案」を「IR推進法案」と言い変えて早期成立を目指すこととなった。ちなみに「カジノ議連」の会長は、「福島の不幸ぐらいで原発をやめるわけには行かない」というトンデモ発言でオナジミの自民党の細田博之幹事長代行だ。

「カジノ」と言うと聞こえが悪いので「IR」と言い変え、「解禁」と言うと聞こえが悪いので「推進」と言い変える。ここでも安倍政権の十八番が炸裂してるけど、とりあえず「2020年の東京オリンピックまでに横浜と大阪にIRを完成させる」のが目標だそうだ。だけど、安倍政権の得意技の「閣議決定」と並ぶ必殺技の「数の暴力」によって、確実に可決されると思われていた「IR推進法案」は、安倍首相の意味不明な解散総選挙によって、自動的に「廃案」になっちゃった。

衆参両院を牛耳っている安倍首相としては、どんな法案だっていつでも自由に可決できるという頭があるから、この時は解散総選挙で長期政権のベースを作っておいたほうが得策だと考えたんだろう。中小企業の倒産が増え始めてアベノミクスの化けの皮が剥がれ始めた時期だったから、ここでいったんコマーシャル‥‥じゃなくて、ここでいったん政権の延命措置を講じておいて、それからゆっくりと法案を通して行く‥‥っていう安全策を選択したワケだ。

そして、その計画通りに、今年1月26日、「カジノ議連」の会長、細田博之自民党幹事長代行は、自民党本部で議連幹部らと会談して、今国会に「カジノを中心とした統合型リゾート(IR)を推進する法案」を再提出する方針を確認した。1月26日と言えば、「ISIL」に拘束されていた後藤健二さんが「斬首された湯川遥菜さんの写真」を持たされた制止画像と後藤さんのメッセージが公開された2日後で、ヨルダンに収監されていたサジダ・リシャウィ死刑囚と後藤さんとの人質交換で緊迫していた時だ。安倍首相は「政府一丸となって日本人を救出する」と言ってたけど、多くの与党議員は「カジノ法案」のほうが重要だったのだろうか?


‥‥そんなワケで、今日はずいぶん長くなっちゃったけど、最後まで読んでくれた皆さんは、もう安倍政権のカラクリが分かったと思う。すべてのカギを握っているのが、世界のカジノ王のシェルドン・アデルソン会長だということだ。アメリカでは共和党が日本の自民党みたいな位置づけになり、今度の大統領選ではアデルソン会長が支援しているロムニー氏が勝つと予想されている。「右翼」のロムニー氏が勝てば、アメリカはこれまでの「オバマ大統領の抑え気味な戦争ビジネス」から、ドラクエ的には「がんがんいこうぜ」に該当する「積極的な戦争ビジネス」へと一気に転換するだろう。そして、日本の安倍首相は、アデルソン会長が支援しているイスラエルのネタニヤフ首相と「戦争ビジネス」でパートナーシップを結んだだけでなく、アデルソン会長とも水面下で「カジノビジネス」でパートナーシップを結んでいると推測される。日本がアデルソン会長の「IR」を誘致することになれば、莫大なカネがイスラエルへ流れることになり、結果として、日本のカネでパレスチナ人が殺されることになる。つまり、安倍政権が目指しているのは、武器の面でも資金の面でも「日本が加害国」になる道であり、「日本人がテロの標的」になる道だと思う今日この頃なのだ。


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2015.02.15

シーナさん、ありがとう!

日本を代表する最高にイカしたロックバンド、「シーナ&ロケッツ」のシーナさんが、2月14日の早朝、亡くなった。享年61歳。

 

この訃報が伝えられたのは、14日の夜だった。夜7時ごろ、内田裕也さんがシーナさんの訃報をツイートして、それを受けてネットのニュースサイトが報じ、スポーツ紙などが夜8時過ぎに報じ始めて、あたしも知ることになった。

 

あまりにも突然のことで、あたしは、この訃報を現実として受け止められなかった。だけど、ネット上に次々とアップされる複数のスポーツ紙の記事は、次々と現実味を増して行く。最初は簡単な訃報を伝えただけの速報のような記事だったものが、夜8時半を過ぎたころにアップされた「デイリースポーツ」の記事では、鮎川誠さんの次のコメントが報じられた。

 

 

「35年、一緒に(バンドを)やれて幸せでした」

 

「歌うことが好きで、病気治ったら何したい?って聞かれたら『歌いたい』って。(代表曲の)『ユー・メイ・ドリーム』を『いいな』と聞きながら、息が途絶えました。ハートが大好きだったから、バレンタインが命日(に)なって…」

 

「35年、シーナ&ロケッツを一緒にやりましたけど、シーナはどこにもいない歌手なんですよ。素晴らしい歌手です。ファンの皆さんから愛されて、とても幸せやったと思います」
http://www.daily.co.jp/gossip/2015/02/15/0007741128.shtml

 

 

この鮎川誠さんのコメントを読んで、あたしは涙が止まらなくなった。そして、深夜、日付が変わると、フェイスブックのオフィシャルページに、以下の正式なコメントがリリースされた。

 

 

シーナ&ロケッツのファンの皆様へ

 

2月14日4時47分、シーナが永眠いたしました。子宮頸ガンでした。
皆様には生前シーナのことを愛してくださり、感謝の気持ちでいっぱいです。
最期はシーナ&ロケッツの35年分の音楽を病室でかけながら、鮎川に抱えられながら、家族が手を握りながら永眠致しました

 

 

鮎川誠
「シーナはロックが大好きなファンに愛されて、とても幸せでした。シーナは『ROKKET RIDE』を聴きながら、息を引き取ってしまったけど、最高のレコードを作ったことと最高の歌を歌ってくれてありがとう、とシーナへ叫んだ。『ROKKET RIDE』はシーナと俺の歌。2人の愛は永遠だぜ。」

 

 

以下、オフィシャルの訃報としてお送りさせて頂きます。

 

シーナは7月に体調を崩し病院で検査した結果、末期ガンであることを医者に告げられました。本人はファンに公表せず、陰で闘病生活を送り、これまで通りのライブ活動を行う事を希望しておりました。そこでファンの皆様には一切事情を明かす事無く、7月に18枚目のオリジナルアルバムを「ROKKET RIDE」リリース、そしてシーナ&ロケッツ35周年記念ライブとして日比谷野外大音楽堂でスペシャルライブを行いました。また全国ツアーも精力的に活動を行っておりました。

 

皆様にはいつも通りのシーナをお見せしたいという事で、病状を明かす事はいたしませんでした。シーナは最後までシーナ&ロケッツで歌い続ける事をあきらめる事なく、治療に精一杯励んでおりました。

 

シーナを応援し、愛してくださった世界中のファンの皆様に心から感謝の気持ちです。

 

なお、葬儀は、家族と関係者のみで行う予定です。
ファンの皆様には、後日お別れ会を予定しております。
追って発表をいたしますので、よろしくお願いいたします。

 

ROKKETDUCTION
シーナ&ロケッツ

 

2015年2月15日 
https://ja-jp.facebook.com/sheenarokkets

 

 

あたしが初めて「シーナ&ロケッツ」を観たのは、今から25年くらい前、高校生の時だった。ちなみに、現在の「シーナ&ロケッツ」というバンド名に変わったのは一昨年の2013年のことで、当時は「シーナ&ザ・ロケッツ」だった。大晦日に浅草で開催されてた内田裕也さん主催の「ニューイヤー・ロック・フェスティバル」を、当時、一緒にガールズ・パンクバンドをやってた仲間4人と観に行き、そこで、初めてナマの「シーナ&ザ・ロケッツ」を観て、あたしは、いっぺんでファンになった。

 

この日、あたしたちは座席なんか無視して、最初からステージ前までダッシュして、4人で並んでステージに体をくっつけて、両手を挙げてノリノリで騒いでた。内田裕也さん主催のフェスだから、ウドーやキョードー主催の外タレの武道館ライブみたいに、席から立ち上がっただけで四方八方から警備員が飛んでくるような無粋なことなんかなくて、どんなに騒いでも自由だった。あたしたち4人のノリを見て、おとなしく席に座ってた他の人たちも、次々にステージ前に押し寄せて来て、満員電車みたいになって、最高に楽しかった。

 

知ってるバンド、知らないバンド、いろいろ出て来たのでちゃんとは覚えてないけど、ハッキリと覚えてるのは、内田裕也さんや安岡力也さんは当然として、テレビでもお馴染みだった「シャネルズ」改め「ラッツ&スター」、「頭脳警察」のPANTAさん、宇崎竜童さん、桑名正博さん、ジョー山中さん、葛城ユキさん、俳優の原田芳雄さん‥‥って、思い出しながら書いて来ると、もう亡くなってしまった人が何人もいることに気づき、改めて、時の流れを感じてしまった。

 

あたしは軽音部じゃなかったけど、あたし以外のバンドの3人は軽音部で、あたしも部室に入り浸ってたので、先輩から「頭脳警察」や「外道」、「サンハウス」や初期の「シーナ&ザ・ロケッツ」などのカセットテープを借りて聴いていた。だから、ステージに「シーナ&ザ・ロケッツ」が登場して、「レモンティー」や「ユー・メイ・ドリーム」など、何度も聴いていた曲を、ナマで、それもステージにかぶりつきで観たら、あまりのカッコ良さに全身がシビレまくった。初めて観たシーナさんは、とにかく美人で、カッコ良くて、セクシーで、笑顔がステキで、最高にロックで、あたしたち4人は、いっぺんでファンになってしまった。

 

 

あたしは普通のファンの1人として、勝手に「シーナ&ザ・ロケッツ」のことを「大好きなバンドのひとつ」と思っていただけで、行けそうなライブがあれば友達を誘って行ったり、新しいアルバムがリリースされれば買って聴いたりして来た。だけど、ここ10年でインターネットが普及して、数年前からツイッターも始めたある日のこと、ナニゲに「シーナ&ザ・ロケッツ」についてツイートしたら、シーナさん御本人からリプライが来たのだ!

 

あたしは感激して、すぐにお返事をした。そして、シーナさんもあたしのことを認識してくださったようで、それから何度かのやり取りがあり、去年の9月の頭には、「きっこさん、いつもありがとう!9月13日に日比谷野音で35周年記念ライブをやるから遊びに来てね!」って、わざわざメールをくださった。

 

あたしは、去年の7月にシーナさんが体調を崩してツアーをお休みしたことを知ってたけど、このメールで「ああ、元気になったんだな」って思って、とっても安心した。この時は、まさか重い病気の診断をされてたなんて、夢にも思わなかった。

 

だけど、あたしは、自分の体調が悪かったため、「残念ながら今回はライブには行けませんが、応援しています。35周年記念ライブ、最高に楽しんでくださいね♪」と返信した。シーナさんは、自分の体のことが分かっていたから、わざわざあたしにもメールでお誘いの声を掛けてくれたのかもしれない。それが分かっていたら、どんなに無理をしてもライブに行ったのに‥‥。そう思うと、本当に悔やんでも悔やみきれない‥‥。

 

 

昨年9月13日の日比谷野音での35周年記念ライブのあとも、シーナさんは精力的に全国ツアーを行なっていたが、11月21日のライブで足が動かなくなり、イスに座って歌い続けたそうだ。そして、5日後の26日に都内の病院に入院、12月に子宮頸がんが脊髄に転移していたことが発覚した。

 

シーナさんは、足が痺れて立つことができなくなり、車イスでの生活となったが、それでも復帰に向けて治療に専念し続け、お正月には一時帰宅して、自宅で家族と過ごすことができたそうだ。でも、1月中旬に容体が急変して入院、昨日2月14日の早朝、最愛のパートナーである鮎川誠さんに抱かれて、子どもたちに手を握られて、パソコンで「シーナ&ロケッツ」の35年分の音源を聴きながら、静かに息を引き取ったと言う。

 

 

最高にカッコ良くて、最高にセクシーで、最高に美しくて、最高にロックだったシーナさん。「シーナ&ロケッツ」の「ロケッツ」は、シーナさんの本名の「悦子」と「ロック」とを合わせて生まれた。「ロック+エツコ」で「ロケツコ」、ここから「ロケッツ」というバンド名が生まれたので、英語の場合は「Rokkets」という表記にこだわり、「Rocket」との違いを表わしてる。

 

このバンド名の通り、ロックの申し子として、ロックの女神として、35年間、歌い続け、走り続け、そして、輝き続けたシーナさん。ファンの心を愛で満たし続けてくれたシーナさん。本当にありがとうございました。心から感謝しています。あなたからいただいたロックなハート、ロックな愛を、あたしはずっと大切にして行きます。

 

シーナさんのご冥福を心よりお祈り申し上げます。

 

きっこ

 

 

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2015.02.11

お気に召すまま

東京生まれで東京育ちのあたしは、2月3日の「節分」と言えば、やっぱり「豆まき」だった。小さなころは、商店街の乾物屋さんの前に、炒った大豆と木の升と紙でできた赤鬼のお面がセットになってるのが並んで、みんなそれを買う。家では、父さんが鬼になって、あたしと母さんが豆をぶつけて、おばあちゃんはニコニコして見てた。あとは「自分の歳の数に1つ足した数の豆を食べる」っていう、ただそれだけのイベントだった。

だけど、何年か前から、東京にも「恵方巻きを食べる」っていう関西の風習が広まり始めた。詳しく言えば、平成10年(1998)年に、コンビニの「セブンイレブン」が全国発売したのがキッカケだ。さらに言えば、この「恵方巻き」という名称も「セブンイレブン」が広めたもので、それまで関西では「節分の巻き寿司」とか「丸かぶり寿司」とか呼ばれてたらしい。

で、この「恵方巻き」の起源には複数の説があるんだけど、その中の1つに、「元は大阪の芸者遊びだった」という説があるそうだ。本来、こうした巻き寿司は、食べやすい大きさに切って食べるものだけど、それを旦那衆たちが切らずに芸者に丸かぶりさせて、その姿を「男性の股間のアレをくわえてる姿」に見立てて喜んだ‥‥っていう、今どきなら完全にセクハラで「松本~!遠藤~!アウト~!」になっちゃうような遊びだ。あたしは、こんな説があったなんて、去年の「節分」まではまったく知らなかったから、今年の「節分」の前日にラジオで聴いてビックル一気飲みしちゃった今日この頃、皆さん、いかがお過ごしですか?


‥‥そんなワケで、あまりにも久しぶりに「ビックル一気飲み」を使ったので、ナニゲに懐かしい気分に浸りつつ、この「恵方巻き」の起源の「芸者遊び説」をラジオで聴いたあたしは、すぐにシェイクスピアの喜劇、『As You Like It』、邦題は『お気に召すまま』のあるシーンを連想しちゃった。あたしは、シェイクスピアが大好きで、有名な作品はほとんど英語版と和訳の両方を読んでる。シェイクスピアの四大悲劇と言われてる『ハムレット』、『オセロ―』、『リア王』、『マクベス』、悲劇なんだけど毛色が違うので「五大悲劇」とはならなかった『ロミオとジュリエット』、喜劇なら、この『お気に召すまま』、『ヴェニスの商人』、『夏の夜の夢』、『じゃじゃ馬ならし』、『終わりよければ全てよし』、史劇なら、『リチャード三世』、『ヘンリー四世』、『ジュリアス・シーザー』‥‥くらいかな?あとの作品は和訳でしか読んでない。

で、『お気に召すまま』だけど、これは何度も映画や演劇になってるから、原作を読んでなくても内容を知ってる人も多いと思うけど、まだフランスが複数の公国に分かれてた時代のお話だ。それぞれの公国を治めてるのが公爵で、このお話の舞台になってる公国の公爵は、悪い弟によって追放されてしまい、数人の忠臣たちとアーデンの森の中で静かに暮してた。そして、自分の兄を追放して、まんまと公爵の座を奪い取った弟のフレドリックは、やりたい放題の安倍晋三状態だった。

追放されたホントの公爵には、ロザリンドという美しい娘がいたんだけど、この娘は追放されずに、フレドリック公爵の娘のシーリアの遊び相手として、宮廷に留まることが許されてた。お互いの父親同士は憎み合ってても、ロザリンドとシーリアは固い友情で結ばれてた。

そんなある日のこと、フレドリック公爵の前で、レスリングの試合が行なわれた。レスリングと言っても、現在のスポーツやショーのようなものじゃなくて、相手が死ぬまで戦う殺し合いだ。そして、このレスリングに勝利したオーランドーという若者に、ロザリンドは恋をしてしまった。オーランドーのほうもロザリンドの美しさに我が目を疑い、2人は恋に落ちる‥‥ってとこで、フレドリック公爵はロザリンドのことも追放処分にしてしまう。

フレドリック公爵の娘のシーリアは、親友のロザリンドを追放しないようにと父親に懇願したけど、フレドリック公爵は安倍晋三のように聞く耳を持たなかった。それで、シーリアは、自分もロザリンドについて行こうと決心した。その日の夜、2人は宮廷を抜け出して、ロザリンドの父親のホントの公爵を探すために、アーデンの森へ行ってみることにした。

でも、若い娘が2人で、立派なドレスを着て旅をするのは危険だと考えて、変装をすることにした。最初は2人とも「田舎娘」に変装しようと思ったんだけど、ここで少しイタズラ心が出て、背の高いロザリオのほうは「男装」することにした。2人は「田舎の兄と妹」に成りすまし、ロザリンドは「ゲニミード」、シーリアは「エリーナ」という偽名を使うことにした。そして、道化のタッチストーンも仲間に加え、3人で旅をすることにした。

「道化」と言うのは、日本の「太鼓持ち」みたいな役割で、貴族を楽しませたり、話し相手になったり、時には貴族の欲求不満のハケグチとして罵倒されたりもする。このタッチストーンも、ロザリンドから「Peace, you dull fool.(静かに、お前は鈍感な馬鹿か)」なんて言われちゃう。これは昔の表現なので、現代のニュアンスにすると「Quiet, you stupid fool.(黙れ、この薄ら馬鹿)」って感じだ。

で、ようやく遠いアーデンの森まで辿り着いた3人は、広い森の中のどこに公爵がいるのか分からない。その上、宿屋もないし食べ物もない。困り果てた3人は、偶然に通りかかった羊飼いの下男に事情を話し、助けてもらうことになった。シーリアは宮殿から持ち出して来た宝石を持っていたので、それで小屋を買い取り、ここを拠点にして公爵を探すことにした。

一方、オーランドーは、彼を妬んだ兄オリヴァ―から命を狙われ、これまた宮廷から出て行かなきゃならなくなった。オーランドーは、父親の忠実な召使いだった老人アダムと2人で、あてのない旅に出て、やがてアーデンの森へと辿り着いた。だけど、オーランドーたちも、宿も食べ物もなくて困り果ててしまった。老人は空腹で動けなくなったので、オーランドーが1人で森の中に食べ物を探しに行った。そしたら、ナナナナナント!何人もの人たちが草の上で食事をしていたのだ!そう、フレドリック公爵に追放されたホントの公爵であるロザリンドの父親と、その家臣たちだったのだ!

だけど、その人がホントの公爵だとは夢にも思わなかったオーランドーは、あまりの空腹に、刀を抜いて食べ物を奪い取ろうとした。でも、公爵から優しい言葉をかけられて、自分の野蛮な行為を恥じ、謝罪をする。公爵が食事に招いてくれたので、オーランドーはアダムを連れてきて2人でご馳走になり、そのまま公爵の元で一緒に暮らすことになった。

一方、ロザリンドとシーリアは、羊飼いから買い取った小屋を拠点にして、アーデンの森の中を2人で手分けして公爵を探していた。そんな中、ロザリンドは、1本の木に自分の名前がナイフで彫ってあることに気づく。そして、その木の枝に結んであった紙を開いてみると、ロザリンドの美しさを褒め称える詩が書かれてた。森の中を進むと、あっちの木にも、こっちの木にも、同じようにロザリンドの名前が彫られていて、詩を書いた紙が枝に結んである。

シーリアも同じように「ロザリンド」と彫ってある木を見つけ、その枝から詩を持ち帰って来た。小屋に戻った2人は、その詩から森にオーランドーがいることを知り、喜び合う‥‥ってなワケで、ここまでが導入部分で、ここから先に面白い山場がいくつも登場するので、興味がある人は実際に読んでみてほしい。一番いいのは英語の現代文なんだけど、それが無理なら、いろいろある翻訳の中で、「ちくま文庫」の松岡和子さんの新訳が素晴らしい。


‥‥そんなワケで、変装したロザリンドとシーリアは、2人で手分けして森の中を探してたんだけど、先にシーリアのほうがオーランドーと出会ってしまう。そして、小屋に戻って来たシーリアは、そのことをもったいぶって、なかなかロザリンドに教えない。「今日、森の中で人に会ったの」「えっ?」「男の人だったわ」「どんな男の人?」「首にロザリンドがプレゼントしたチェーンを掛けていたわ」‥‥なんて感じの「小出し作戦」で、ロザリンドのことをじらして楽しむシーリア。そして、とうとうキレちゃったロザリンドは、こんなことを言う。


“Good my complexion, dost thou think though I am caparisoned like a man, I have a doublet and hose in my disposition? One inch of delay more is a South Sea of discovery.”


これだと分かりずらいので、現代の表現にすると次のようになる。


“Good grief, do you think that just because I’m dressed like a man, I have a man’s patience? Every second you delay is as long and dull as a journey to South Seas.”


シーリアにじらされたロザリンドのこのセリフが、どんなふうに日本語に訳されてるのか。約100年前に、原題の『As You Like It』を日本で最初に『お気に召すまゝ』と訳した坪内逍遥(しょうよう)さんは、次のように訳してる。


「まァ、私の顔色が! あなたは、私が男のなりをしてゐる以上、心の中までズボン仕立てになってゐると思って? もう一寸とぐずついていらっしゃると、南洋発見航海以上の大事件よ」


続いては、約40年前の小田島雄志さんの訳。


「私はかわいそうにこれでも女よ! 男の上着と長靴下を身につけているからといって心の中まで男になり切っているなどと思わないで! これ以上ちょっとでもじらすと、南洋の海みたいにヒステリーの嵐をよぶわよ」


そして、松岡和子さんの新訳。


「いやだ、私、赤くなってる。こんな男の格好してるからって心までズボンはいてると思うの? あとちょっとでもじらしたら、女の本性丸出しにして南太平洋みたいに荒れ狂うからね」


同じ英語のセリフでも、時代と翻訳家が違うと、こんなにも表現が変わってくる。だから、複数の翻訳がある場合は、必ず図書館や本屋さんでページをめくって少しだけ読んでみて、それから読む本を決めたほうがいい‥‥ってなワケで、このロザリンドのセリフには続きがあって、それに対してシーリアも応えてる。


“I prithee, tell me who is it quickly, and speak apace. I would thou couldst stammer, that thou might’st pour this concealed man out of thy mouth as wine comes out of a narrow-mouthed bottle—either too much at once, or none at all. I prithee take the cork out of thy mouth, that I may drink thy tidings.”

“So you may put a man in your belly.”


これも分かりずらいので、現代の表現にすると次のようになる。


“I’m begging you, tell me who it is quickly, and speak fast. I wish you could just stammer this hidden man out of your mouth like wine out of a narrow-necked bottle: either too much at once or none at all. I’m begging you, take the cork out of your mouth so I can drink the news.”

“So you want to put a man in your belly.”


そう、「節分」の話から「恵方巻き」の話へと進み、「恵方巻き」の起源の中に「男性の股間のアレをくわえてる姿」に見立てた「芸者遊び説」があると言ってから、ここまで長々と書いて来たけど、あたしがこの説を聴いて連想しちゃったのは、このロザリンドとシーリアのセリフなのだ。この部分は「きっこ訳」で行くけど、こんな感じになる。


「早くその男の人の名を教えてちょうだい!私は喉がカラカラなの!首の細いワインのボトルからその人の名がドックンドックンと脈打ちながら流れ出て来るように、お願いだから、あなたの口のコルクの栓を抜いて、早く私に嬉しい報せを飲ませてちょうだい!」

「まあ!あなたってば、男の人をお腹に入れちゃうつもりなの?」


‥‥そんなワケで、「恵方巻き」の起源の1つの「男性の股間のアレをくわえてる姿」みたいにダイレクトじゃないけど、この、愛する男性の名前をワインに喩えて、早く飲ませて欲しいとせがみ、それに対して「男の人をお腹に入れちゃうつもりなの?」と返すやり取りにも、シェイクスピアお得意のエッチな暗喩が炸裂してる。同じ「お腹」という意味でも、「stomach(ストマック)」だと「胃袋」という意味が強くなって「飲み込む」というニュアンスになるけど、ここでは「belly」、ベリーダンスのベリーを使ってる。だから「飲み込む」じゃなくて「自分の体内に受け入れる」というニュアンスになり、それがエッチな暗喩へとつながってる今日この頃、どうせならロザリンドにも、その年の恵方を向いて、無言でワインをラッパ飲みしてほしいと思った今日この頃なのだ(笑)


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2015.02.01

「テロには屈しない」という便利な呪文

現地時間の1月31日、日本時間の2月1日未明、後藤健二氏を処刑したとする動画とメッセージがネット上に公開された。「日本政府へのメッセージ」というタイトルで、後藤健二氏と見られる男性が膝まづき、黒ずくめの戦闘員が英語で以下のメッセージを述べている。


「日本政府よ、邪悪な有志連合の愚かな同盟国と同様に、お前たちは我々がアラーのご加護によって権威と力を備えたカリフ国家であること、また我々全軍がお前たちの血に飢えていることを理解していない。アベ(安倍晋三首相)、勝ち目のない戦争に参加するというお前の無謀な決断のために、このナイフがケンジ(後藤健二氏)を殺すことになった。そして、お前の国の国民が世界のどこにいても、我々はこれから虐殺を続けて行く。これから日本にとっての悪夢が始まるのだ」


そして、後藤健二氏と見られる男性の首にナイフを当てたところで画面が消え、次の瞬間、湯川遥菜氏の時のように、横たわる遺体の上に切断された頭部が置かれている残虐な画像が映し出される。菅義偉官房長官は1日午前、この動画について「総合的に判断して本人の可能性が高い。後藤さん本人と考えている」と述べた。


‥‥そんなワケで、今回も「いかがお過ごしですか?」は省略して行くけど、どうしてこんなにも安倍晋三首相は「イスラム国」に敵視されているのだろうか?どうして「日本人すべて」が殺害対象になってしまったのだろうか?これまでも日本人が中東で武装勢力に拘束されて人質にされた事件はあったけど、それは日本人に対する個別の恨みや敵視ではなく、単に、たまたま拘束した外国人が日本人だったために、それを交渉のカードに利用したに過ぎない。しかし、今回のケースは、完全に「安倍首相に対する敵視」であり、「日本人に対する宣戦布告」である。

まず、今回の一連の流れを時系列で見てみると、ことの発端は昨年8月の湯川遥菜氏の拘束だ。8月16日前後、「イスラム国」に邦人が拘束されたという情報が日本の外務省に入り、すぐに首相官邸にも伝えられた。そして、日本政府も良く知る人物である湯川遥菜氏であることが確認された。

この事実を知りながら、安倍首相がとった行動と言えば、海外での不用意な発言だった。湯川遥菜氏が拘束された約1ヶ月後の9月下旬、現地時間の23日には、ニューヨークでの国連総会でエジプトのシシ大統領と会談をして、「米軍によるシリア国内での空爆」について質問され、次のように発言している。


「(米軍の空爆によって)国際社会全体の脅威であるイスラム国が弱体化し、壊滅につながることを期待している」


そして、昨年11月、今度は湯川遥菜氏を救出するためにシリアへ向かったジャーナリストの後藤健二氏が「イスラム国」に拘束された。この情報も、すぐに外務相に伝えられ、首相官邸にも伝えられた。1月27日の衆院本会議で、この問題について質疑された安倍首相は、以下のように答弁している。


「昨年11月に(後藤健二氏の)行方不明事案の発生を把握した直後に、官邸に連絡室、外務省に対策室を立ち上げ、ヨルダンに現地対策本部を立ち上げた」


つまり、昨年11月に後藤健二氏が拘束された時点で、安倍首相は、少なくとも2人の日本人が拘束されている事実を把握していたことになる。しかし、安倍首相がとった行動は、やっぱり予定通りの外遊、それも、最悪なことに中東だ。今回の外遊は、1月16日から1月21日までの予定で、エジプト、ヨルダン、イスラエル、パレスチナを訪問することになっていた。そして、問題は、3カ国目のイスラエルを訪問した直後に起こった。

安倍首相が、イスラエルを訪問し、イスラエルの国旗を背景にして、「イスラム国と戦う周辺諸国を支援する」と宣言した翌日、「イスラム国」はこの時の安倍首相の宣言を報じるニュース映像から始まる、人質殺害予告の動画をネットに公開したのだ。この動画の中で、「イスラム国」は、安倍首相のことを「アベ」と名指しして批判し、莫大な身代金を要求した。安倍首相は、外遊の予定を変更して、急きょ帰国したが、「人命第一の姿勢で取り組む」と言いながらも「我々は断じて卑劣なテロには屈しない」と強弁するという自己矛盾を繰り返した。

その一方で、安倍首相は、中東諸国への総額3000億円にもおよぶ莫大な支援は、あくまでも「人道的支援」であり「難民支援」である、という説明も繰り返したが、これはあまりにも無理があった。19日のイスラエルのネタニヤフ首相との会談では、ハッキリと「イスラム国」という固有名詞をあげ、「イスラム国と戦う周辺諸国を支援する」と宣言した上で、「卑劣なテロはいかなる理由でも許されず、断固として非難する」「イスラエルを始めとする国際社会と緊密に連携しながら、テロとの戦いに引き続き取り組んでいきたい」とも強調している。

安倍首相は、2日前の17日のエジプトのシシ大統領との会談でも、「エジプトの国境警備などのテロ対策に50万ドルを支援する」と発言している。これらの一連の発言は、どう解釈しても「人道的支援」「難民支援」とは理解されないだろう。もちろん、あたしは、テロを肯定する気などないけど、「イスラム国」側から見れば、これらの安倍首相の発言や行動は、完全に「挑発行為」としか思えない。

前にも書いたけど、本当に「人道的支援」や「難民支援」が目的なら、国連などの中立的な組織に支援金を渡すだけで良かったハズだ。ゼネコンや商社の幹部をゾロゾロと100人も引き連れて中東まで大名行列して行き、わざわざ「イスラム国」という固有名詞を連呼して、「卑劣なテロには屈しない」などとドヤ顔で宣言する必要などなかっただろう。

こうした安倍首相のパフォーマンスを見れば、「人道的支援」や「難民支援」というのは単なる口実であり、実際には「集団的自衛権の行使容認の下地づくり」や「日本企業の売り込み」が本音だということくらい小学生でも分かるだろう。そして、この短絡的な行為が、結果的に「イスラム国」を挑発してしまったのだ。

現に、今回の「イスラム国」からの人質殺害予告は、この安倍首相の中東での発言に対する報復として宣言され、湯川遥菜氏を殺害したあとの動画でも、「日本政府が72時間以内に何もしなかったから殺害した。アベがハルナを殺害したのだ」と明言している。


‥‥そんなワケで、1月26日付で、「週刊ポスト」の「安倍首相中東訪問 外務省は時期悪いと指摘も首相の反応は逆」という記事がネット配信されたので、その一部を引用して紹介する。


週刊ポスト「安倍首相中東訪問 外務省は時期悪いと指摘も首相の反応は逆」(2015年1月26日付)

安倍晋三首相は、1月17日~21日にかけて中東歴訪を行なったが、出発前の1月7日にフランスで週刊紙銃撃テロ事件が起きると、外務省内から今回の首相の中東訪問は「タイミングが悪い」という声が上がった。ところが、安倍首相の反応は逆だった。官邸関係者がこんな重大証言をした。

「総理は『フランスのテロ事件でイスラム国がクローズアップされている時に、ちょうど中東に行けるのだからオレはツイている』とうれしそうに語っていた。『世界が安倍を頼りにしているということじゃないか』ともいっていた」

周囲はその言葉を聞いてさすがに異様に感じたという。関係者が続ける。

「総理は総額25億ドル(約3000億円)の中東支援についても、『日本にとってはたいしたカネではないが、中東諸国にはたいへんな金額だ。今回の訪問はどの国でもありがたがられるだろう』と自信満々で、常人の感覚とは違うなと感じた」

※「週刊ポスト」2015年2月6日号より引用
http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20150126-00000007-pseven-soci


この記事では、「フランスで起きたテロは外交パフォーマンスに都合のいい対岸の火事と捉え、まさか日本が標的になるという洞察も備えもなかったことがわかる」と結んでいる。もちろん、これは「週刊ポスト」の見方であって、あたしの見方とは少し違うけど、この記事の内容が事実であれば、こう思われても仕方ないだろう。

本来、中東の人たちは、総じて、日本人に対しては好意的な見方をしているそうだ。それは、日本が戦争でアメリカから原爆を落とされ、焼け野原にされ、それでも国民が一丸となって努力して復興し、世界トップクラスの技術大国になったからであり、そして、平和憲法によって二度と戦争をしてこなかったからだそうだ。つまり、日本には「戦争をしない国」「他国の戦争に加担しない国」というブランド力があったワケで、それが好意的に見られる大きな要因になっていた。

だけど、今、この「戦争をしない国」「他国の戦争に加担しない国」という日本の平和的なイメージが、たった1人の愚かな首相によって、大きく変えられようとしている。あたしは、今回の悲しい事件が、それを如実に表していると感じた。


‥‥そんなワケで、安倍首相は九官鳥のように「テロには屈しない」と繰り返してるけど、これってホントに便利な呪文だと思う。この呪文さえ繰り返していれば、「相手を悪、自分を正義」と断定できる上に、自分を「悪に立ち向かう勇敢なリーダー」としてアピールできるからだ。その上、この呪文によって、「正義」を名乗った側は何をしても正当化されるようになる。悪いのはすべてテロリストであり、テロ組織を壊滅するためなら、民間人を巻き添えにした空爆も「正義」、子どものいる学校を砲撃しても「正義」、相手を挑発する発言も「正義」、人質を見殺しにしても「正義」、そして、この呪文を一言でも批判すれば「お前はテロを肯定するのか?」と言われてしまう。テロが起こった背景には必ず「原因」があるのに、テロを終わらせるためには「憎しみの連鎖」を断ち切るしかないのに、この「テロには屈しない」という便利な呪文で火に油を注ぎ続ける安倍首相は、いったいどれだけの日本人が犠牲になれば目を覚ますのだろうか?‥‥なんて思って不安になった今日この頃なのだ。


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