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2015.02.01

「テロには屈しない」という便利な呪文

現地時間の1月31日、日本時間の2月1日未明、後藤健二氏を処刑したとする動画とメッセージがネット上に公開された。「日本政府へのメッセージ」というタイトルで、後藤健二氏と見られる男性が膝まづき、黒ずくめの戦闘員が英語で以下のメッセージを述べている。


「日本政府よ、邪悪な有志連合の愚かな同盟国と同様に、お前たちは我々がアラーのご加護によって権威と力を備えたカリフ国家であること、また我々全軍がお前たちの血に飢えていることを理解していない。アベ(安倍晋三首相)、勝ち目のない戦争に参加するというお前の無謀な決断のために、このナイフがケンジ(後藤健二氏)を殺すことになった。そして、お前の国の国民が世界のどこにいても、我々はこれから虐殺を続けて行く。これから日本にとっての悪夢が始まるのだ」


そして、後藤健二氏と見られる男性の首にナイフを当てたところで画面が消え、次の瞬間、湯川遥菜氏の時のように、横たわる遺体の上に切断された頭部が置かれている残虐な画像が映し出される。菅義偉官房長官は1日午前、この動画について「総合的に判断して本人の可能性が高い。後藤さん本人と考えている」と述べた。


‥‥そんなワケで、今回も「いかがお過ごしですか?」は省略して行くけど、どうしてこんなにも安倍晋三首相は「イスラム国」に敵視されているのだろうか?どうして「日本人すべて」が殺害対象になってしまったのだろうか?これまでも日本人が中東で武装勢力に拘束されて人質にされた事件はあったけど、それは日本人に対する個別の恨みや敵視ではなく、単に、たまたま拘束した外国人が日本人だったために、それを交渉のカードに利用したに過ぎない。しかし、今回のケースは、完全に「安倍首相に対する敵視」であり、「日本人に対する宣戦布告」である。

まず、今回の一連の流れを時系列で見てみると、ことの発端は昨年8月の湯川遥菜氏の拘束だ。8月16日前後、「イスラム国」に邦人が拘束されたという情報が日本の外務省に入り、すぐに首相官邸にも伝えられた。そして、日本政府も良く知る人物である湯川遥菜氏であることが確認された。

この事実を知りながら、安倍首相がとった行動と言えば、海外での不用意な発言だった。湯川遥菜氏が拘束された約1ヶ月後の9月下旬、現地時間の23日には、ニューヨークでの国連総会でエジプトのシシ大統領と会談をして、「米軍によるシリア国内での空爆」について質問され、次のように発言している。


「(米軍の空爆によって)国際社会全体の脅威であるイスラム国が弱体化し、壊滅につながることを期待している」


そして、昨年11月、今度は湯川遥菜氏を救出するためにシリアへ向かったジャーナリストの後藤健二氏が「イスラム国」に拘束された。この情報も、すぐに外務相に伝えられ、首相官邸にも伝えられた。1月27日の衆院本会議で、この問題について質疑された安倍首相は、以下のように答弁している。


「昨年11月に(後藤健二氏の)行方不明事案の発生を把握した直後に、官邸に連絡室、外務省に対策室を立ち上げ、ヨルダンに現地対策本部を立ち上げた」


つまり、昨年11月に後藤健二氏が拘束された時点で、安倍首相は、少なくとも2人の日本人が拘束されている事実を把握していたことになる。しかし、安倍首相がとった行動は、やっぱり予定通りの外遊、それも、最悪なことに中東だ。今回の外遊は、1月16日から1月21日までの予定で、エジプト、ヨルダン、イスラエル、パレスチナを訪問することになっていた。そして、問題は、3カ国目のイスラエルを訪問した直後に起こった。

安倍首相が、イスラエルを訪問し、イスラエルの国旗を背景にして、「イスラム国と戦う周辺諸国を支援する」と宣言した翌日、「イスラム国」はこの時の安倍首相の宣言を報じるニュース映像から始まる、人質殺害予告の動画をネットに公開したのだ。この動画の中で、「イスラム国」は、安倍首相のことを「アベ」と名指しして批判し、莫大な身代金を要求した。安倍首相は、外遊の予定を変更して、急きょ帰国したが、「人命第一の姿勢で取り組む」と言いながらも「我々は断じて卑劣なテロには屈しない」と強弁するという自己矛盾を繰り返した。

その一方で、安倍首相は、中東諸国への総額3000億円にもおよぶ莫大な支援は、あくまでも「人道的支援」であり「難民支援」である、という説明も繰り返したが、これはあまりにも無理があった。19日のイスラエルのネタニヤフ首相との会談では、ハッキリと「イスラム国」という固有名詞をあげ、「イスラム国と戦う周辺諸国を支援する」と宣言した上で、「卑劣なテロはいかなる理由でも許されず、断固として非難する」「イスラエルを始めとする国際社会と緊密に連携しながら、テロとの戦いに引き続き取り組んでいきたい」とも強調している。

安倍首相は、2日前の17日のエジプトのシシ大統領との会談でも、「エジプトの国境警備などのテロ対策に50万ドルを支援する」と発言している。これらの一連の発言は、どう解釈しても「人道的支援」「難民支援」とは理解されないだろう。もちろん、あたしは、テロを肯定する気などないけど、「イスラム国」側から見れば、これらの安倍首相の発言や行動は、完全に「挑発行為」としか思えない。

前にも書いたけど、本当に「人道的支援」や「難民支援」が目的なら、国連などの中立的な組織に支援金を渡すだけで良かったハズだ。ゼネコンや商社の幹部をゾロゾロと100人も引き連れて中東まで大名行列して行き、わざわざ「イスラム国」という固有名詞を連呼して、「卑劣なテロには屈しない」などとドヤ顔で宣言する必要などなかっただろう。

こうした安倍首相のパフォーマンスを見れば、「人道的支援」や「難民支援」というのは単なる口実であり、実際には「集団的自衛権の行使容認の下地づくり」や「日本企業の売り込み」が本音だということくらい小学生でも分かるだろう。そして、この短絡的な行為が、結果的に「イスラム国」を挑発してしまったのだ。

現に、今回の「イスラム国」からの人質殺害予告は、この安倍首相の中東での発言に対する報復として宣言され、湯川遥菜氏を殺害したあとの動画でも、「日本政府が72時間以内に何もしなかったから殺害した。アベがハルナを殺害したのだ」と明言している。


‥‥そんなワケで、1月26日付で、「週刊ポスト」の「安倍首相中東訪問 外務省は時期悪いと指摘も首相の反応は逆」という記事がネット配信されたので、その一部を引用して紹介する。


週刊ポスト「安倍首相中東訪問 外務省は時期悪いと指摘も首相の反応は逆」(2015年1月26日付)

安倍晋三首相は、1月17日~21日にかけて中東歴訪を行なったが、出発前の1月7日にフランスで週刊紙銃撃テロ事件が起きると、外務省内から今回の首相の中東訪問は「タイミングが悪い」という声が上がった。ところが、安倍首相の反応は逆だった。官邸関係者がこんな重大証言をした。

「総理は『フランスのテロ事件でイスラム国がクローズアップされている時に、ちょうど中東に行けるのだからオレはツイている』とうれしそうに語っていた。『世界が安倍を頼りにしているということじゃないか』ともいっていた」

周囲はその言葉を聞いてさすがに異様に感じたという。関係者が続ける。

「総理は総額25億ドル(約3000億円)の中東支援についても、『日本にとってはたいしたカネではないが、中東諸国にはたいへんな金額だ。今回の訪問はどの国でもありがたがられるだろう』と自信満々で、常人の感覚とは違うなと感じた」

※「週刊ポスト」2015年2月6日号より引用
http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20150126-00000007-pseven-soci


この記事では、「フランスで起きたテロは外交パフォーマンスに都合のいい対岸の火事と捉え、まさか日本が標的になるという洞察も備えもなかったことがわかる」と結んでいる。もちろん、これは「週刊ポスト」の見方であって、あたしの見方とは少し違うけど、この記事の内容が事実であれば、こう思われても仕方ないだろう。

本来、中東の人たちは、総じて、日本人に対しては好意的な見方をしているそうだ。それは、日本が戦争でアメリカから原爆を落とされ、焼け野原にされ、それでも国民が一丸となって努力して復興し、世界トップクラスの技術大国になったからであり、そして、平和憲法によって二度と戦争をしてこなかったからだそうだ。つまり、日本には「戦争をしない国」「他国の戦争に加担しない国」というブランド力があったワケで、それが好意的に見られる大きな要因になっていた。

だけど、今、この「戦争をしない国」「他国の戦争に加担しない国」という日本の平和的なイメージが、たった1人の愚かな首相によって、大きく変えられようとしている。あたしは、今回の悲しい事件が、それを如実に表していると感じた。


‥‥そんなワケで、安倍首相は九官鳥のように「テロには屈しない」と繰り返してるけど、これってホントに便利な呪文だと思う。この呪文さえ繰り返していれば、「相手を悪、自分を正義」と断定できる上に、自分を「悪に立ち向かう勇敢なリーダー」としてアピールできるからだ。その上、この呪文によって、「正義」を名乗った側は何をしても正当化されるようになる。悪いのはすべてテロリストであり、テロ組織を壊滅するためなら、民間人を巻き添えにした空爆も「正義」、子どものいる学校を砲撃しても「正義」、相手を挑発する発言も「正義」、人質を見殺しにしても「正義」、そして、この呪文を一言でも批判すれば「お前はテロを肯定するのか?」と言われてしまう。テロが起こった背景には必ず「原因」があるのに、テロを終わらせるためには「憎しみの連鎖」を断ち切るしかないのに、この「テロには屈しない」という便利な呪文で火に油を注ぎ続ける安倍首相は、いったいどれだけの日本人が犠牲になれば目を覚ますのだろうか?‥‥なんて思って不安になった今日この頃なのだ。


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