去年の9月、東京の北区のラーメン屋さんで、自分の隣りの席に座ろうとした男性に暴行して、腹部を踏みつけるなどして殺害した体重120キロの巨漢の男に、東京地裁が「懲役7年」の判決を下したというニュースが数日前にあった。あたしは、このニュースを見て「なんて軽い刑なんだろう」と思った。
これは、この事件に限ったことじゃないけど、日本の場合、「殺人罪」に対する判決って全般的に軽すぎるように感じる。殺した相手が1人なら、まず死刑になることはないし、2人殺しても「懲役10年」とか「懲役15年」とかのケースもある。イスラム教の「目には目を、歯には歯を」じゃないけど、仮にも他人の命を奪ったんだから、償う方法は自分の命を差し出すしかないと思うんだけど、たったの「懲役7年」て、あたしの感覚だと、犯した罪と刑罰とのバランスがぜんぜん取れてないように思う。
たとえば、相手を殺す気なんかなかったのに、不運にも死んでしまった場合、ようするに「過失致死罪」の場合なら、これくらいの刑でも仕方ないと思う。だけど、この事件のように、何の落ち度もない人に一方的にイチャモンをつけて、明らかに殺意を持って殺した場合は、いくら何でも「懲役7年」は軽すぎると思う。
この男は、混んでいた店内のカウンターで、隣りのイスのほうまで両足を大きく広げて座っていた。そこに男性客が入って来て、そのイスを少し自分のほうに引き寄せて座ったところ、それに男が激怒して、男性客の襟首を掴んで後ろに引き倒し、底の頑丈なブーツで顔面や腹部を何度も何度も踏みつけた。男は通報で警察が到着するまでの間、「刑務所に行くのだから最後の晩餐だ」などと言って、さらにラーメンセットを注文して平然と食べ続け、暴行を受けた男性は搬送先の病院で死亡した。この男は、警察の取り調べに対して「殺そうと思ってやった」と供述した。
殺された男性は40代後半で、家族構成とかは分からないけど、こんなにも理不尽なことで、たった一度の人生を終わりにさせられたのだ。この事件を「他人事」でなく、自分や自分の家族の身に起こったことだと思って想像してみたら、100人が100人とも「懲役7年なんて軽すぎる」と思うだろう。
だけど、日本の「殺人罪」の法定刑は、「死刑又は無期、若しくは5年以上の懲役」となってる。以前は「3年以上の懲役」だったけど、これじゃあまりにも軽いだろうってことで、2004年に「5年以上の懲役」に引き上げられた。だから、今回の「懲役7年」というのは、法的には妥当なんだと思う。最近の例を見ても、2人を殺害した被告に「懲役11年」とか「懲役15年」とかの判決が下ってるから、こんな表現をすると語弊があるかもしれないけど、これが今の日本の「命の相場」なんだろうと思った今日この頃、皆さん、いかがお過ごしですか?
‥‥そんなワケで、あたしは、今回の判決だけを見たのなら「なんて軽い刑なんだろう」とまでは思わなかったかもしれない。日本での他の殺人事件の判決と比較しただけなら、この「懲役7年」という判決は「そんなもんかな~」って感じだったと思う。でも、あたしは、先月2月に、PC遠隔操作事件の判決の「懲役8年」というニュースを見たばかりだったので、それと比較したこともあって、この「懲役7年」を「すごく軽い」と感じたのだ。
もちろん、PC遠隔操作事件だって、やったことは絶対に許されることじゃないし、あたしは擁護するつもりなんてモートーない。だけど、誰かを殺したワケでもなく、誰かから金品を奪ったワケでもない犯罪者が「懲役8年」なのに、何の落ち度もない人を一方的に暴行して殺した犯罪者が「懲役7年」って、やっぱり腑に落ちない。
PC遠隔操作事件の場合、新聞の報道などを見ると、裁判長は「見ず知らずの第三者を犯人に仕立て上げるなど、サイバー犯罪史上まれに見る卑劣な犯行だ」と厳しく批判して「懲役8年」の判決を下したと書かれてて、あたしは違和感を覚えた。確かに、この事件では、4人の人が誤認逮捕され、大学生は大学を辞めることになったり、会社員は会社を辞めることになったりして、それぞれの人生をメチャクチャにされた。
でも、誤認逮捕したのは警察じゃん。百歩ゆずって、誤認逮捕までは仕方ないとしても、その後の取り調べで、容疑者がいくら無実を訴えても聞く耳持たずで、最初から容疑者を犯人と決め付けて自白を強要して、脅して「私がやりました」という嘘の供述書を書かせたんだよ。こうした「決め付け捜査」などせず、PCの知識のある捜査員がきちんと調べていたら、この人たちの容疑はもっと早い段階で晴れていたハズだ。
誤認逮捕された会社員の男性に至っては、こちらも最初から無実を訴えてたのに、取り調べの刑事から「お前と同居しているお前の女が犯人だ。お前が罪を認めないと、お前の女を逮捕するぞ」と脅されて、仕方なく「私がやりました」という嘘の供述書を書かされたのだ。これって、完全に犯罪じゃん。
もちろん、真犯人が一番悪いことは決まってる。だけど、その真犯人の仕組んだトリックを見破ることができずに、無実の人を4人も誤認逮捕した挙句に、自白を強要して嘘の供述書まで書かせたのは完全に警察の落ち度だ。ようするに、自分たちが逮捕した者は、表向きは「容疑者」でも頭の中で「犯人」と決め付けているから、こうした冤罪が後を絶たないのだ。
で、今回の事件では、この誤認逮捕の件も「見ず知らずの無実の人を犯人に仕立て上げた」として、起訴内容には含まれていないのに、刑の重さの判断材料にされた。弁護側は「正しい捜査をすれば誤認逮捕は防げた」と主張してたけど、これは通らずに、すべて被告の罪にされた。つまり、警察が誤認逮捕したのも、取り調べで自白を強要して無実の人たちに犯行を認めさせたのも、すべて被告の責任であって、警察は何ひとつ悪くない、という結論だ。
だけど、警察としては大恥をかかされたワケで、ものすごくムカついてるワケだ。だから、あたしは、この「懲役8年」という判決には、被告が実際に犯した罪のぶんだけでなく、世の中に対する見せしめのぶんと、大恥をかかされた警察の落とし前のぶんが上乗せされてるように感じた。そう考えると、この「懲役8年」という判決の重さにも筋が通る。
そして、弁護側が主張したように、もしも警察が正しい捜査をして、正しい取り調べをしていれば、誤認逮捕は防げたと思う。そうなっていたら、ネットに犯行予告を書き込んだだけになるから、これまでの同類のサイバー犯罪と同様に「懲役1年6月」あたりが求刑され、あたしは「なんて軽い刑なんだろう」と思っていただろう。そして、警察がオチョクラレてムカついたぶんを、聞いたこともないような罪状で上乗せして、強引に「懲役4年」くらいになっていたら、あたしは「妥当だな」と思ってただろう。
‥‥そんなワケで、話をクルリンパと戻すけど、あたしは、このPC遠隔操作事件の「懲役8年」という判決を知ったあとだったから、マクラに書いたラーメン屋さんでの殺人事件の「懲役7年」を、より「なんて軽い刑なんだろう」と感じたワケだけど、これには、もう1つの理由がある。それは、「仮釈放」という制度のことだ。
あたしがふだんから「軽すぎる」と感じてる日本の法定刑、特に「殺人罪」を始めとした凶悪犯罪に関しての刑でも、すべての受刑者が「懲役5年」なら5年間、「懲役7年」なら7年間、自分が受けた刑期をちゃんとつとめるのなら、まだ納得はできる。だけど、日本には「仮釈放」という制度があって、半数以上の受刑者は、自分の受けた刑期よりも早く出所して来る。あたしは、これが納得できないのだ。
「懲役7年」が「誰もが絶対に刑務所に7年間つとめること」であるのなら、今回の事件の判決も、あたしはそれほど「軽い」とは思わなかっただろう。だけど、こうした有期刑には「仮釈放」というものがあって、刑務所の中でマジメにつとめていれば、それに応じて刑期よりも早く釈放してもらえるケースがある。もちろん、殺人罪などの凶悪犯罪や再犯の場合は仮釈放の申請が通りにくいとか、身元引受人がいないと申請できないとか、いろんなハードルがあるけど、それでも、実際には、受刑者の半数以上が、この制度で、刑期より早く出所してる。
自分の犯した罪を心から反省して、それでマジメにつとめてるのならいいんだけど、仮釈放を目指してる受刑者の多くは、反省してるからじゃなくて、1日も早く出所したいからマジメにやってるだけなんじゃないだろうか。もしも、そうであるのなら、反省の「ハ」の字もないのに、自分のためにマジメなフリをしているだけなのに、看守にバレないように上手に立ち回ってるだけなのに、それで刑が短くなるなんて、あたしは絶対におかしいと思う。
‥‥そんなワケで、法務省のHPには、年度ごとに受刑者に関する様々なデータがまとめられてて、その中には、その年に出所した受刑者のデータもある。まだ昨年2014年のデータはまとめられてなくて、その前の2013年のものが最新だったので、この年度のものを紹介するけど、この年に出所した受刑者は全国で26535名で、このうち14623名が「仮釈放」で刑期よりも早く出所してる。全体の約55%が「仮釈放」されてることになる。
ちなみに、満期までつとめて釈放された11887名のうち、仮釈放の申請をしたけど許可されなかった人は829名だけで、残りの11058名は申請をしていない。つまり、身元引受人がいないために仮釈放を申請できない人や、最初から申請しても無駄だと思ってる人や、あえて満期を望んだ人や、逆に1日でも長く中にいたいと思った人などが、それだけいたということになる。
で、「仮釈放」と言ってもいろいろで、そこには「執行率」というものがある。誰でも彼でも同じ割合で刑期が短くなるワケじゃなくて、生活態度や仕事ぶりなどで細かく評価されて「執行率」が決まる。たとえば、「懲役4年」の受刑者が「3年」で仮釈放になったとしたら、その人の執行率は「75%」ということになるんだけど、以下が2013年に仮釈放された人たちの「執行率」と人数だ。
「2013年度 有期刑の仮釈放者の執行率」
49%以下 0名
50~54% 1名
55~59% 2名
60~64% 22名
65~69% 154名
70~74% 821名
75~79% 2054名
80~84% 3107名
85~89% 3794名
90~94% 3158名
95%以上 1366名
これを見れば分かるように、刑期の50%台や60%台で仮釈放される人は僅かだけど、大半の人は刑期の75%以上で仮釈放されてる。で、あたしの感覚だと、「最大で10%くらいならともかくとして、25%も短くするなんてどうよ?」ってことになる。だから、たとえ全国で1人とか2人とかでも、刑期の半分ちょいで出て来られる人がいるなんて、とてもじゃないけど理解できない。
「懲役何年」てのは、その人が犯した罪に対する罰なんだから、「懲役3年」なら3年間、「懲役5年」なら5年間、ちゃんとつとめるのが義務だと思う。反省なんかしてないのに、1日も早く外に出たくてマジメなフリをして上手に立ち回ってた人が、2割も3割も短い刑期で済むなんて、やっぱりこんなのおかしいと思う。もちろん、そんな人ばかりじゃなくて、中には本当に反省してる人も混じってるだろうけど、反省すれば罰が軽くなるなんておかしいと思う。
たとえば、漢字の書き取りの宿題を忘れた小学生が、先生からペナルティーとして「ノート1ページにこの漢字を100個書け」と言われた時、75個まで書いたところで「君は文字がとても丁寧だから、ここまでで良い」と言われるだろうか?部活で何か悪さをした中学生が、顧問の先生からペナルティーとして「部室の掃除」を指示された時、3分の2まで掃除したところで「君は反省しているようだから、ここまでで良い」と言われるだろうか?
だから、あたしは、この「仮釈放」という制度には反対だ。日本の司法って、ヤタラと「被害者の救済」よりも「加害者の更正」に比重を置いてるから、こうした制度があるのも分かるけど、あたしに言わせれば、「加害者の更正」って、犯した罪に対する刑罰をきちんと受けることを前提での話だと思う。何の落ち度もない他人を一方的に暴行して殺し、「懲役7年」の判決を受けた男が、仮釈放で「6年」で出所して来たら、被害者のご遺族はどんな気持ちになるだろうか?
‥‥そんなワケで、日本は比較的、犯罪が少ない国だけど、逆に再犯率は約45%と非常に高い。それも、6年連続で再犯率が上昇してるのだ。国によって刑法が違うし、単純に数字だけを比較することはできないけど、参考のために挙げてみると、世界でも再犯率が低いとされてる北欧だと、最も低いノルウェーが約16%で、アイスランド、デンマーク、フィンランドなど、多くの国の再犯率が20~30%台だ。また、アメリカは州によって様々だけど、再犯率の低い州は15~30%のところもある。
もちろん、犯罪自体は少ないんだから、いくら再犯率が低くても犯罪件数が多い国よりはマシだ。でも、再犯率が約45%と言うことは、一度でも犯罪を犯して検挙された人の2人に1人が、また何らかの犯罪に手を染めてるということになる。つまりは、日本の司法が「被害者の救済」よりも重きを置いている「加害者の更正」が大した効果を上げていないということになる。
あたしは、その一因になっているのが、「仮釈放」という制度じゃないかと思ってる。未成年者が犯罪を犯す時に「自分は少年法で守られているから」と言うのと同じで、成人でも再犯を犯すような人たちの中には、「この程度の犯罪ならパクられても2年くらいだから1年半でカリシャク(仮釈放)だな」なんて考えてる人が、意外と多いんじゃないのか?
でも、この「仮釈放」という制度がなくなったら、マジメにつとめる受刑者が激減するという懸念もある。ホントに心から反省してる人はともかくとして、1日も早く外に出たくてマジメなフリをしてた人たちは、自分にとってのメリットがなくなるんだから、バカバカしくて優等生のフリなんてやってられなくなり、結果、刑務所の中で問題を起こす受刑者が増えてしまうという懸念だ。じゃあ、どうすればいいのか?
‥‥そんなワケで、あたしは、現在の「仮釈放」という「刑期のマイナス方式」じゃなくて、「刑期のプラス方式」に変えればいいと思う。「懲役3年」なら3年間、「懲役5年」なら5年間、すべての受刑者が自分の刑期を絶対につとめなきゃならないという大前提があり、その上で、ずっとマジメにつとめていれば自分の刑期で出所できるけど、1回でも何かの問題を起こしたら、その問題の内容によって「プラス1カ月」「プラス3カ月」「プラス6カ月」みたいな何段階かのペナルティーを科せられ、そのぶん刑期が長くなって行くシステムだ。だけど、刑期が長くなるだけじゃ片手落ちなので、「プラス1カ月」のペナルティーを科せられた人でも、その後、6カ月間、マジメにつとめて何も問題を起さなければ、その「1カ月」は取り消しされて元に戻るという、最低限の救済措置も設けておく。これなら完璧だと思うし、すべての受刑者が最低でも満期までつとめるワケだから、被害者も今よりは納得できるようになると思う今日この頃なのだ。
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