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2015.07.29

サザエさんとTPP

札幌の大学で寮生活をしていたノリスケ君は、来年の春には大学を卒業して東京の実家に戻ることが決まっていたため、これが最後のチャンスだと思い、以前から片思いをしていたタイ子さんに声を掛け、思いきってデートに誘ってみた。そうしたところ、実はタイ子さんのほうも少なからずノリスケ君に好意を持っていたようで、話はすぐにまとまり、ノリスケ君は週末に2人で羊ヶ丘展望台へ行く約束をすることができた。

待ちに待ったデートの日、ノリスケ君が約束の時間よりも10分ほど早く待ち合わせの場所に行くと、そこには可愛くて清楚なワンピース姿のタイ子さんが笑顔で待っていて、ノリスケ君はメロメロになってしまう。2人は羊ヶ丘展望台へ向かって歩き出したが、ノリスケ君はドキドキしてしまって何を話していいか分からない。タイ子さんのほうも恥ずかしくて、頬を染めて下を向いてばかりいる。もちろん、手をつなぐことなんて、できっこない。

そんな初々しい2人も、羊ヶ丘展望台へ到着すると、少しずつ会話ができるようになってきた。「タイ子さん、今日はいいお天気ですねえ」「ええ」「海からの風が気持ちいいですねえ」「ええ」「向こうの白樺林が美しいですねえ」「ええ」「あちらにヒツジがたくさんいますねえ」「メエ」‥‥なんてのも織り込みつつ、一番見晴らしのいい展望台で、2人は並んでベンチに腰掛けた。

でも、ベンチに並んで腰掛けたことで、ノリスケ君のドキドキはピークに達してしまった。ノリスケ君は自分の心臓の音がタイ子さんにも聞こえているんじゃないかと不安になり、思わずチラリと横を見ると、愛するタイ子さんの美しい横顔が眼の前にあった。それで、ノリスケ君の心臓はさらに高鳴ってしまった。

昨日の夜までは、せめて手をつなぎたい、できれば抱きしめてキスをしたい、そう思ってタイ子さんを抱きしめる自分の姿まで想像していたノリスケ君なのに、実際にこうして会ってみると、とてもそんなことをする勇気が出ない。それよりも、まずは何か話しをして場を持たせなきゃならない。


「タ、タイ子さん‥‥」

「は、はい!」

「今日は本当にいいお天気ですね!」

「え、ええ‥‥」


またさっきと同じようなことを言いながら、ノリスケ君の右腕は、ベンチの背もたれのあたりを上に行ったり下に行ったりしていた。何とかタイ子さんの肩を抱きたいと思う自分と、最初のデートで肩を抱くなんて嫌われてしまうんじゃないだろうかという自分との間で、ノリスケ君の心は揺れ動いていた。でも、頬を染めてうつむいているタイ子さんは、ノリスケ君からのアプローチを待っているようにも見えた。

そして、そんな2人の純情すぎる初デートの様子を、物陰からずっと眺めていたアメリカ人の紳士がいた。立派なヒゲをたくわえたその紳士は、ノリスケ君の顔に見覚えがあったため、彼女らしき女性を連れているノリスケ君の姿を見て、反射的に物陰に隠れ、2人の様子を見守っていたのだった。

と、その時、タイ子さんが座る向きを変えようと少し腰を浮かせたため、上下に動いていたノリスケ君の指先が、タイ子さんの肩にコツンと触れてしまった。「キャッ!」「タ、タ、タイ子さん!す、すみません!」「い、いいえ‥‥突然で驚いただけです‥‥お気になさらずに‥‥」「す、すみません!」

このやり取りを見ていた紳士は、とうとうシビレを切らせて物陰から飛び出した。そして、ベンチの2人の前に仁王立ちになり、右手をまっすぐに伸ばしてノリスケ君の顔を指さし、大きな声でこう言ったのだ。


「青年よ!タイ子を抱(いだ)け!」


多くの人がウスウスとこのオチを予想してたと思うけど、奥手なノリスケ君の様子にシビレを切らせて飛び出してしまったこの紳士こそが、ノリスケ君の大学の教頭、ウィリアム・スミス・クラーク博士だった。クラーク博士は、教頭でありながら教鞭も取っていたので、学生であるノリスケ君の顔に見覚えがあった。それで、とっさに物陰に隠れて2人の様子を見守っていたのだが、ノリスケ君からのアプローチを待っているように見えるタイ子さんに対して、いつまでも行動を起こさないノリスケ君を見ていられなくなり、つい、飛び出してしまったのだ。

しかし、この時のクラーク博士の言葉がキッカケで2人は恋人同士になり、卒業後、結婚して東京で暮らすようになった。つまり、クラーク博士は、ノリスケ君にとって恩師であるだけでなく、タイ子さんと結び付けてくれた恩人でもあったのだ。そして、ノリスケ君とタイ子さんは、結婚して1年目に可愛い男の子を授かったが、2人はこの子に「イクラ」と名づけた。これは、2人が出会った北海道を代表する魚である「サケ」にちなんだもので、もしも女の子が生まれていたら「スジ子」と名づける予定だった。

また、この「イクラ」という名前は、タイ子さんの「イ」と、クラーク博士の「クラ」を合わせたものでもある。ノリスケ君は、愛するタイ子さんの名前から1文字を、そして、そのタイ子さんと自分とを結び付けてくれたクラーク博士の名前から2文字を、それぞれいただいた今日この頃、皆さん、いかがお過ごしですか?


‥‥そんなワケで、もちろんこれは、あたしが考えた二次創作(笑)だ。実際の『サザエさん』に登場するノリスケさんとタイ子さんは、今から半世紀以上も前に登場したキャラという時代背景もあり、当時はポピュラーだった「お見合い」で結ばれてる。

で、なんでこんな変なお話をマクラに書いたのかと言うと、今、ハワイで行なわれてるTPP交渉の閣僚会合で、12カ国間の「著作権」に関して、日本の甘利明TPP担当大臣は米国案を丸飲みしちゃう見通しで、そうなった場合、こうした「二次創作」はすべてアウトになっちゃうからだ。昨日28日の新聞報道によると、著作権保護期間は「作者の死後70年」で統一し、著作権侵害の「非親告罪化」で合意する見通しだという。

昨日28日の文化放送「くにまるジャパン」のコメンテーター、エコノミストの吉崎達彦氏によると、今回の会合の場所が「ハワイ」だという点がポイントだそうだ。ハワイはオバマ大統領の出身地なので、この会合で「大筋合意」ということになれば、このTPPは「2015年のハワイ合意」と呼ばれることになり、オバマ大統領の功績の1つとしての名声度が高くなる。

つまり、今回の会合の場所が「ハワイ」に決まった時から、「大筋合意」のシナリオは出来上がっていたということだ。細かい部分では合意に至らない点があったとしても、それは後から何とかスリ合わせるとして、とにかく「大筋合意」で、みんなで拍手をして会合をシメて、めでたし、めでたし‥‥っていうシナリオだ。

で、このまま「大筋合意」になれば、「著作権」に関しては米国案を丸飲みすることになり、著作権侵害は「非親告罪化」になる。これについて、昨日の文化放送「くにまるジャパン」の中で、吉崎達彦氏は次のように私見を述べた。


「TPP交渉で日本政府は著作権問題をそれほど重要視していない。このまま米国案を受け入れることになれば、日本は法整備を余儀なくされ、著作権侵害は「非親告罪」になり、現在は黙認されているコミケなどの二次創作もアウトになる可能性が高い」


「盗作」や「パクリ」が著作権侵害なのは当たり前だけど、著作権のある既存のキャラや設定を元にした「二次創作」も、著作権所有者に無断で製作したり販売しているものは、著作権侵害に当たる。でも、現在の日本の著作権侵害は「親告罪」なので、著作権所有者が訴えない限り、罪にはならない。で、「二次創作」の大半は、原作に対する「愛」があり、一般には流通していない同人誌などを媒体としているため、ファン活動の延長のような位置づけになっていて、ザックリと言えば「黙認」されているのが現状だ。

もちろん、著作権所有者に訴えられたら罪になるワケだから、まったく問題のない行為とは言えないけど、金儲けのために有名作品を丸ごとパクって違法に販売してる「海賊版」などとは、まったく違う。だけど、今回のTPPで著作権侵害が「非親告罪」になれば、たとえ著作権所有者が「黙認」していたとしても、警察の腹ひとつで逮捕することができるようになる。コミケの会場に私服刑事が集団で乗り込んで来て、「二次創作」の同人誌を並べている人たちを一網打尽にすることも可能になる。

ま、誰からの訴えもないのに警察が自発的に同人誌を取り締まるようなことはあまり考えられないけど、誰かから訴えがあれば警察は捜査しなきゃならなくなる。「非親告罪」になれば、著作権所有者ではない一般人でも訴えられるようになるから、たとえば、自分の気に食わない「二次創作」の作者を狙い撃ちで警察に密告するような人が出て来るかもしれないし、それどころか、「二次創作なんてやってる奴らはみんな気に食わない」という人が、誰彼かまわずにカタッパシから警察に訴える可能性もある。

ひとことで「二次創作」と言っても、それこそピンキリで、原作のファンの多くが高く評価している素晴らしい作品もあれば、著作権侵害だけでなく児童ポルノ法にも抵触しているような「おいおい!」なものもある。だから、「二次創作」と言うだけで何から何まですべてを一括りにして論じることはできないけど、あたしの感覚では、すでに「二次創作」は新たなカルチャーとしての世界を構築していると思う。

かつては漫画やアニメがサブカルチャーと呼ばれてたけど、その漫画やアニメが日本を代表するカルチャーの1ジャンルへと格上げされた今、こうした「二次創作」は、漫画やアニメに付随したサブカルチャーという位置づけになっていると思う。海外にも「パロディー」という文化があるし、日本の「二次創作」のように既存の漫画やアニメをベースにして作られた作品もある。でも、日本の「二次創作」は、そうした海外の「パロディー」とは一線を画した独特の世界観があり、日本独自のサブカルチャーと言っても過言ではないと思う。

だから、あたし個人の感覚で言えば、せっかく一定のサブカルチャーにまで成長した日本の「二次創作」を、著作権侵害の「非親告罪化」などで潰してしまうのはホントにもったいないと思うし、日本を代表するカルチャーの1つとして漫画やアニメを世界へ発信して行く「クールジャパン」にも逆行していると感じる。逆に、「黙認」という現在の曖昧な形ではなく、原作の著作権保有者の権利を守りながら「二次創作」の作者の立場も保護できるような、日本独自の法整備こそが必要だと思う。


‥‥そんなワケで、民主党政権下の2012年12月の衆院選で、自民党は全国各地に「TPPへの交渉参加に反対!比例は自民党へ」「ウソつかない。TPP断固反対。ブレない。自民党」というポスターを貼りまくり、各候補者も「TPP断固反対!」と訴え、294議席を獲得して大勝、政権に返り咲いた。この294人の当選議員のうち、3分の2にあたる約200人が「TPP反対」を積極的に個人的な公約に掲げて選挙を戦っていたし、自民党自体の公約にも「聖域なき関税撤廃を前提にする限り交渉参加に反対」と明記してあった。


Tpp3


だけど、皆さんご存知のように、自民党が政権に返り咲いたわずか3カ月後の2013年3月、安倍晋三首相は「TPP交渉への参加」を発表した。ここまでロコツだと、「公約違反」と言うよりも、もはや「公約詐欺」だろう。「日本の農業を守るためにTPPには断固反対!」と連呼して、全国の農家の人たちの票を集めて当選した自民党の200人もの衆議院議員たちが、安倍晋三首相の掲げた「米国主導」の旗のもと、いっせいに有権者を裏切ったのだ。

そして、自民党政権は、当初こそ「コメ、麦、牛肉・豚肉、乳製品、砂糖の重要5品目の聖域は死守する」なんて言ってたけど、今、どうなってるのかは、連日の報道で一目瞭然だろう。日本は米国との2国間協議などという茶番劇で次々と「聖域」に手を突っ込み始めた。多くの有識者が、このまま進めば日本の農業は壊滅すると指摘している。


‥‥そんなワケで、かつて小泉純一郎首相は「公約を守らないことなど大したことじゃない」と国会の答弁で言い放ったけど、その伝統をミゴトに引き継いでいる安倍晋三首相も、まったく同じ考えだ。選挙時の公約など、票を集めるための「絵に描いた餅」であり、馬の前にぶらさげる「ニンジン」だとしか思っていない。だから、「TPP反対」という選挙時の公約を反故にするための言い訳として国民に約束した「聖域」にしても、わずか2年で「なかったこと」にされてしまったワケだし、最初から重要視していなかった「著作権」に至っては、何の抵抗もせずに完全に米国の言いなりというワケだ。官僚の操り人形の甘利大臣は、「著作権」の項目で米国案を丸飲みすることが日本にとってどれほどマイナスなのか、著作権侵害の「非親告罪化」が日本のカルチャーにとってどれほどの弊害を生み出すことになるのか、きっとタラちゃんほども理解していないと思う今日この頃なのだ。


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2015.07.21

例えになっていない安倍首相の例え話

安倍晋三首相は、もとから国会の答弁などでも意味の分かりにくい変な例え話を多用するクセがあったけど、ここに来て、もはや自分自身でも何を言ってるのか理解してないんじゃないかと思われるほどの支離滅裂な例え話を連発するようになった。この異常な様子が顕著になったのは、7月7日の夜に生出演した自民党のインターネット番組からのようだ。この番組の中で、安倍首相は、集団的自衛権について説明するために、次のような例え話をドヤ顔で炸裂させたのだ。


安倍首相 「友人の菅(すが)さんが『我が家に強盗が入ったから助けてくれ』と電話して来ても、私は菅さんの家まで行って助けることはできない。この場合は(日本の)存立危機の事態とは見られないからだ。しかし、『安倍は生意気だから殴ってやる』と言っている不良がいたとする。私が友人の麻生さんと一緒に歩いていると、その不良が3人ぐらい、突然現われて麻生さんに殴りかかったとする。このような場合、私は麻生さんを助けることができる。これが集団的自衛権だ。今回の法制でこれが可能になる」


あまりにも酷い例え話なので、たぶん専門のライターじゃなくて安倍首相が自分で考えたんだと思うけど、なんですかこれ?自衛隊が武力を行使して戦争することになるかもしれないという国家の最重要案件について、こともあろうに「近所の不良のケンカ」に例えて説明するなんて、とても正常な感覚を持ち合わせているとは思えない。

つーか、何で「安倍は生意気だから殴ってやる」と言ってた不良たちは、ムカついてる安倍君じゃなくて無関係な麻生君に殴りかかるの?すでに前提の部分からして矛盾してると思う今日この頃、皆さん、いかがお過ごしですか?


‥‥そんなワケで、この例え話は、内容は不適切だけど、かろうじて意味は理解できなくもない。でも、昨日20日に生出演したフジテレビ『みんなのニュース』では、出演者たちだけでなく、全国の視聴者がテレビの前でひっくり返るほどのトンチンカンな例え話を、安倍首相は連発させてくれた。

まず最初に、安倍首相は、アメリカの国旗をあしらった大きな家と、同じ敷地内にある「離れ」、そして、道路を挟んで建っている日の丸をあしらった家の模型を使って、集団的自衛権の説明を始めた。まず、アメリカの家が火事になって大きな炎が上がる。その炎が「離れ」に燃え移り、そこから日本の家にも燃え移りそうになる。そこで、日の丸のマークをつけた日本の消防士が、日本の家を守るためにアメリカの「離れ」の消火を手伝う‥‥という説明だ。

だけど、これはあたしが分かりやすく解説したから誰にでも理解してもらえるワケで、テレビでの安倍首相の説明では、いったい何を言いたいのか分からない。滑舌が悪いのはともかくとして、自分自身がダンドリを把握してなくて、先に登場させなきゃならない「アメリカの消防士」を出すのを忘れ、「日本の消防士」よりあとに慌てて登場させたりと、もう完全にグダグダだった。

あたし的には、「戦争」を「火事」に例える意味が分からないし、火事で燃えてる家を「消火」することがどうして「武力行使」に当たるのかも分からなかった。ようするに、アメリカの家がどこかの国から発射されたミサイルで破壊されて、その被害が「離れ」や日本の家にまで波及する恐れがあると判断された場合、日本の自衛隊は米軍と一体になって敵国に武力行使できるようにする‥‥ってことが言いたいんだろうけど、そのまま表現すると「戦争」そのものになっちゃうので、強引に「戦争」を「火事」に、「武力行使」を「消火」に置き換えたんだろう。

わざわざ分かりにくい例え話なんかにしないで、実際に想定してる状況のままを説明すれば、すごく分かりやすくなる。アメリカの母屋を「米軍の空母」、アメリカの離れを「米軍の駆逐艦」、アメリカの母屋に放火した相手を「敵国」、アメリカの母屋の前のバスを「多国籍軍」、日本の家を「自衛隊の護衛艦」、日本の消防士を「武装した自衛隊員」、消防士の消火活動を「敵国への武力攻撃」と説明すれば、一発で分かるだろう。

だけど、こういうふうに説明しちゃうと、「おいおい!それって戦争じゃないかよ!」ってツッコミを入れられちゃう。だから、わざわざ分かりにくい「火事」なんかに例えて、「敵に向かって銃撃する武装した自衛隊員」を「火事を消火する消防士」に置き換えたってワケだ。

その証拠に、安倍首相が「火事」の模型を使って「この火がギューッとこちらに燃え移りそうになった時にですね」と説明した時、安倍首相の分かりにくい説明をフォローするためにフジテレビの伊藤利尋アナが「すなわち『日本が攻撃を受けた』という主旨ですね?」と念を押したら、安倍首相は「攻撃」という言葉に敏感に反応して、「え、ええ、ええ、そ、そ、そうですね!」と焦りまくった。わざわざ「戦争」のイメージを消して国民の目をごまかすための例え話をしてるのに、伊藤アナが余計な言葉をはさんだから焦りまくったのだ。

普通、こういう例え話というものは、そのままだと分かりにくい話を少しでも分かりやすくするために使うものなのに、安倍首相の場合は、「戦争」という血なまぐさいものから国民の目をそらすために例え話を使う。あくまでも「平和のため」だと言い張るために例え話を使う。マクラに書いた「近所の不良のケンカ」にしても、実際には武装した敵兵と殺し合いをするのに、それを「殴った」「殴られた」の不良のケンカでごまかそうとしている。


‥‥そんなワケで、バカバカしい模型まで作ってトンチンカンな説明をした安倍首相は、このあとも意味不明な例え話を炸裂させた。続いての名作は、「安保法制は戸締りと同じ」という、これまた理解不能のものだった。


安倍首相 「安保法制は『戸締まりをしっかりしよう』ということなんです。かつては雨戸だけ閉めておけば泥棒を防いで自分の家の財産を守ることができました。でも今は、振り込め詐欺の電話が掛かって来て、自分の財産を電子的に盗られてしまうということもあります。そういう事態にも備えておかなければいけません。今は何も起こっていなくても、まさにそうした事態に備えて『戸締まり』をしておく。そうすれば何かよこしまな考えを持っている人は『日本を侵略するのをやめておこう』となるんです」


おいおいおいおいおーーーーい!何言ってんの?この人!何で武装した自衛隊を地球の裏側の紛争国まで派遣することが日本の「戸締り」になるの?逆に日本の防衛は手薄になっちゃうじゃん!それとも、武装した自衛隊を振り込め詐欺のアジトに送り込んで一網打尽にするつもり?どうして「振り込め詐欺」と「集団的自衛権」がつながるの?‥‥って、何を聞いたところで答えは返って来ないだろう。だって、これ、言ってる本人もチンプンカンプンで自分が何を言ってるのか分かってなさそうだもん(笑)


‥‥そんなワケで、今回のあまりにも強引な「安保法制」は、もちろん、「日本のため」じゃなくて「アメリカのため」だ。多くの人は、安倍首相が今年4月26日から8日間の日程で行なった訪米の中で、集団的自衛権の行使容認を盛り込んだ安保法制の今夏の成立を勝手に宣言して来ちゃったと思ってる。ま、首相が正式に宣言したって点で言えば、その通りなんだけど、これには、ちゃんとした前フリがあった。

それは、ちょうど1カ月前の今年3月26日、自民党の高村正彦副総裁の訪米だ。この時、高村副総裁は、3月20日までに自民党と公明党だけで水面下でまとめた安保法制の草案を携えていた。もちろん、アメリカのための「集団的自衛権の行使容認」が盛り込んであり、米国防総省で高村副総裁と会談したカーター米国防長官は、この草案の内容を「歴史的な素晴らしい取り組みだ」と高く評価した。そして、この時点で、1カ月後の4月末の安倍首相の訪米時に米議会で正式に発表するという密約も交わされた。

そして、4月26日から訪米した安倍首相は、シナリオ通りに「集団的自衛権の行使容認」を目玉にした安保法制の今夏の成立を明言し、拍手喝采を浴びたってワケだ。一方、日本の自衛隊という「無料の軍隊」を手に入れる算段のついたカーター米国防長官は、約1カ月半後の6月17日、イラクで「ISIL」と戦う治安部隊の兵士が大幅に不足していると公表した。これは米下院軍事委員会の公聴会での発言で、米軍はイラクで「ISIL」と戦うために、今年の秋までに2万4000人の新兵を訓練することになっているのだが、6月の時点までに約7000人しか集まっておらず、計画は大幅に遅れている、とのこと。

このニュースは、日本ではほとんど報じられなかったけど、このニュースと時を前後して、安倍首相は、どうしても今国会で安保法制を成立させたいがために、国会を90日間も延長すると発表した。どうしても秋までにあと1万7000人の兵士が必要なアメリカ政府と、どうしても秋までに安保法制を成立させて「集団的自衛権」という名の「戦争参加権」を自衛隊に配布したい安倍首相、両者のオモワクは、まるでパズルのピースのようにピッタリと一致する。


‥‥そんなワケで、自民党と公明党による安保法制の衆議院での強行採決を受けて、内閣支持率は軒並み下落し、支持と不支持が逆転しちゃった。「毎日新聞」は支持35% 不支持51%、「朝日新聞」は支持37%、不支持46%、「東京新聞」は支持37% 不支持51%‥‥って、この辺の媒体は当然だろうけど、安倍政権の広報紙とも言える「産経新聞」と「FNN」の合同調査でさえも支持39.3%、不支持52.6%と大逆転しちゃった。ま、安倍首相本人は、未だに「国民の理解が進んでいないので丁寧に説明を続けて行く」などと壊れたテープレコーダーのように同じセリフを繰り返すばかりで、いっこうに国民の声を聴こうとせず、アメリカのほうばかり見て政治をやっているので、このままずっと意味不明な例え話を続けてもらって、どこまで支持率が落ちるのか身を持って実験してみてほしいと思う今日この頃なのだ。


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2015.07.08

吉田照美画伯の絵画展

母さんもあたしも、今も現住所は東京の世田谷区なので、母さんの医療関係の手続きで、どうしても8月末までに東京に行かなきゃならない用事があった。その他にも、ポツポツと本職に復帰しつつあるあたしの仕事道具の補充もあったし、あたしが東京に行かないと片付かない用事が何本か溜まってたので、2泊3日の予定で東京に行った。

お金に余裕があるなら、往復とも新幹線を使いたかったけど、今はけっこう金銭的にピンチなので、1カ月前に買っておいた早割の航空券で久しぶりの上京!‥‥って感じで、せっかくの東京なので、今回は用事を済ませるだけじゃなくて、会いたかった親友に会ったり、懐かしい場所に行ってみたりと、あたしの個人的な楽しみも散りばめた3日間だった。

そんな3日間の中で、あたしがどうしても行ってみたかったのが、成城学園の「さくらさくギャラリー」で絶賛開催中の吉田照美画伯の個展だった。文化放送で月曜から金曜まで、午後3時半から5時50分まで生放送してる吉田照美さんの「飛べ!サルバドール」という番組名を見れば分かるように、吉田照美さんはサルバドール・ダリをリスペクトする「ロバ」‥‥じゃなくて、「バカ」‥‥じゃなくて、「画家」として、あの三軌展や海外のスペイン美術賞展でも入選してるマルチ・アーティストとしての一面も持ってた今日この頃、皆さん、いかがお過ごしですか?


‥‥そんなワケで、あたしは、吉田照美さんの絵を、ネット上や印刷物などでは何度も観てるけど、実物は一度も観たことがなかったので、今回の東京行きの日程が「さくらさくギャラリー」での個展と偶然に重なったことを、ナニゲに運命的に感じてた。それで、カツカツのスケジュールだったけど、何とか時間を作って、観に行こうと思ってた。

久しぶりの東京は、あいにくの雨。いくら電車やバスがたくさんある東京とは言っても、あたしが今回、ベースにしたニコタマの隣りの隣りの神奈川県川崎市の溝ノ口の格安ビジネスホテルから、田園都市線でサンチャまで行って、そこから世田谷線で松陰神社まで行って、世田谷区役所で用事を済ませて、また世田谷線で山下へ行き、豪徳寺から小田急線で成城学園まで行って「さくらさくギャラリー」へ行く‥‥ってのは、あまりにもヘビーすぎる。

その上、あたしには「仕事で使うメイク用品を買い集める」という仕事もある。それで、あたしは、かつて同じ事務所で同じように苦労をして、今でも連絡を取り合ってる親友のM美に連絡をしてみたら、車を貸してくれるという。で、車を借りることにしたんだけど、M美はあたしに言った。「先月、納車されたばかりだから、絶対にぶつけないでよね」って。車の運転に関しては、そこらの男よりも自信のあるあたしは「誰に言ってんのよ」なんて思ったのもトコノマ、その車がベンツのCクラスの新車だと聞かされて、若干ビビッた(笑)

ま、そんなこんなもありつつ、M美のオカゲで、あたしは雨の東京をスイスイと移動できて、母さんの医療関係の手続きも、自分の仕事の買い物も、すべてサクサクと済ませることができた。そして、車を返す時間まで、まだまだ余裕があったので、懐かしい玉堤通りを走って、成城学園の「さくらさくギャラリー」へと向かった。

「さくらさくギャラリー」に関しては、事前にネットで確認しておいたので、「ああ、あの交差点の角にある建物ね」って分かってたけど、到着してみたら、入り口の前にはゴージャスなお花がたくさん飾られてて、「伊東四朗」とか「おすぎ」とか「石塚英彦」とか、吉田照美さんと関係の深い人たちの名前が並んでて、改めて吉田照美さんの「偏った人間関係」を垣間見てしまった(笑)


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‥‥そんなワケで、ギャラリーに入ると、あたしの予想とはウラハラに、吉田照美さんの飼い猫だったアメショーの絵を中心とした絵が並んでた。照美さんの絵と言えば、ダリをホーフツとさせる不条理でシュールなものか、日々のニュースをテーマにした風刺的なものをイメージしてたから、美しいお花に囲まれた可愛いアメショーの絵とかに、あたしは足元を掬われたような感覚になった。

でも、どの絵も、ペンティングナイフよりも筆による「描き込み」を徹底した油彩で、サックリと描いているようでいて、ものすごく緻密で、近づいて観るよりも、一定の距離を置いて鑑賞すると、それぞれの絵の世界観が無限に広がるという不思議に感覚に陥った。ギャラリー内には、あたしの他にも何人もの人が観に来てて、ギャラリーの担当者の男性が丁寧に絵の説明をしてたので、あたしも一緒に聞いてた。

1階の奥には小部屋があって、そこには「ハチドリ」の絵がたくさん飾ってあった。あたしは油絵のことは分からないから、「何号」っていうのかは分からないけど、ハガキ2~3枚ぶんくらいの小さなカンバスに、何千分の1秒とかで撮影した写真のような「空中で制止したハチドリ」の油彩がたくさん並んでた。でも、絵の中のハチドリはどれも静止してるのに、単色の背景の四隅の1カ所だけがグラデーションで色を厚くしてるので、その効果なのか、どのハチドリも立体的で元気に飛んでるように見えた。

ハチドリの絵なのに、ハチドリ自体ではなく、背景の「ほんのちょっと」の部分でハチドリに「命」を与える吉田照美画伯、あたしはマジで感動した。今どき「画伯」ってのは、ヘタクソな絵を描く人をからかう意味で使うことが多いけど、この一連のハチドリの絵を観て、あたしは心から吉田照美さんのことを「画伯」だと思った。吉田照美さんは、絵の「技術」が素晴らしいのは当然として、それ以上に、絵を描く「感性」が素晴らしいんだと思った。

そして、ハチドリの絵に感動したあたしは、せっかくだからお土産に1枚購入しようと思って、絵の横に小さく貼られてる値段を見たら、ナナナナナント!ナナナナナント!ナナナナナント!‥‥って、3連発で叫んじゃうけど、サスガは画伯、あたしみたいな庶民には手も足も出ない値段だった(笑)


‥‥そんなワケで、「ハチドリの小部屋」を十分にタンノーしたあたしは、階段を上って2階に進んだワケだけど、そんなあたしを待ち受けてたのが、ムロリンが「びっくりして階段を転げ落ちそうになった!」と言ってた例の絵だった。文化放送「飛べ!サルバドール」の前の「ソコダイジナトコ」で、吉田照美さんのパートナーをつとめていた美女、唐橋ユミさんがマリア様で、その腕に抱かれているのが吉田照美さんの顔をした赤ちゃん‥‥っていう、いろんな意味でマニアにはたまらない作品だ。

そして、吉田照美さんの愛する数々の映画をテーマにした油彩やスクリーントーンが続き、その先にはパレットをカンバスにした作品が2つ並んでた。ゴールドシップを思わせる力強いペガサス、そして、次のパレットをカンバスにした作品の瞳の中に浮かんでるモノを見た時、あたしは、さっきの「ハチドリの小部屋」で感じたのと同じ、吉田照美さんの「感性」を感じて全身がシビレた。

2階の一番奥には、今回の個展の目玉のひとつでもある「不思議な象の夢」があった。これは吉田照美さんがリスペクトするダリの画法の作品で、多くの人たちが持ってる吉田照美さんの絵のイメージそのものだ。もちろん、不思議な魅力のある傑作だと思うけど、あたし的には、ゴジラの頭上でフラメンコを踊る真っ赤なドレスの加納有沙アナを描いた作品のほうがツボだった‥‥って、えっ?あの絵のモデルは有沙ちゃんじゃないの?(笑)


‥‥そんなワケで、吉田照美画伯の素晴らしい絵の数々をタンノーしたあたしは、2階にあったおトイレに行こうとしたら、おトイレへの通路の入り口に飾ってあったハチドリのモノクロの版画に目が止まった。1階の「ハチドリの小部屋」で観たものと同じ絵が、単色の線画で描かれてる上に、版画だから格安の8000円だった。一瞬、「これなら買える!」と思ったあたしは、次の瞬間、「これなら、がんばればあたしでも描けるかもしれない!」と思い、吉田照美画伯には本当に申し訳ないんだけど、あたしは何も買わずにギャラリーを後にした‥‥ってなワケで、こんなに素晴らしい絵の数々を無料で観られる吉田照美画伯の個展は、12日(日)まで開催してる上に、最終日の12日には吉田照美さん本人もギャラリーにいるそうだから、小田急線の「成城学園駅」から歩いて2~3分の「さくらさくギャラリー」に、皆さん、ぜひ見学に行ってほしいと思う今日この頃なのだ♪


■「吉田照美 絵画展」(成城学園「さくらさくギャラリー」)
http://sakurasaku-g.com/gallery/index.html


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