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2016.01.21

プラネット・ナイン

アメリカのカリフォルニア工科大学の天文学者の研究チームが20日、「太陽系の最も外側を回る9番目の巨大惑星が存在する兆候を発見した」と発表した。アメリカの天文学会の専門誌「アストロノミカル・ジャーナル」に論文が掲載されたそうで、あたしは日本とアメリカのニュース記事しか読んでないんだけど、それによると、「プラネット・ナイン」という通称で呼んでいるこの惑星は、地球の約10倍の質量を持っているという。太陽系の一番外側の惑星である海王星は、太陽から約45億kmの位置を公転してるけど、この「プラネット・ナイン」は、さらに20倍も遠い位置を、非常に細長くて異様な楕円形の軌道で公転しているという。

太陽系って、英語だと「ソーラー・システム」なので、なんか「太陽光発電」のことみたいでネーミング的にカッコ悪いけど、この「プラネット・ナイン」はカッコイイよね。日本語の「第9惑星」もそれなりにカッコイイけど、あたし的には、ちょっと複雑だ。だって、あたしが子どものころに学校で習った時には、「水星、金星、地球、火星、木星、土星、天王星、海王星、冥王星」と9つの惑星があって、これを「すいきんちかもく、どってんかいめい」って暗記させられたからだ。

それなのに、2006年の国際天文学連合の総会で、一番外側の冥王星が「惑星にしちゃあ小さい」ってことで、惑星とは認められなくなっちゃったのだ。もう少し詳しく説明すると、2005年に冥王星よりも大きい「エリス」という天体が発見されて、他にもけっこう大きい「ケレス」と「カロン」も発見されてたので、この3つを太陽系の惑星に認定するかどうかが議題だった。

結局、この3つは惑星の定義を満たしていないという意見が多くて認定されなかったんだけど、ここで「エリスが惑星に認定されないなら、エリスよりも小さい冥王星も惑星じゃないじゃん」的な流れになり、冥王星は、言わば巻き添えみたいな感じで惑星から外されちゃったのだ。そして、これらの「惑星になりそこねた天体」は、この時に新設された「準惑星」っていうカテゴリーに入れられたのだ。

新しく発見されたエリス、ケレス、カロンが「準惑星」になったのはいいとしても、それまで「惑星」だった冥王星までもが巻き添えで「準惑星」に格下げされちゃうなんて、なんか、去年のシーズン後半に打撃不振で2軍落ちした日本ハムの西川遥輝選手みたいで、ちょっと残念な気持ちになる。つまり、今回の「プラネット・ナイン」の登場は、あたしが子どものころからずっと1軍で9番を打ってた冥王星が、その座を取り上げられ、そこに別の天体が居座ろうとしてる感じがしちゃうのだ。

子どものころに「いい国つくろう鎌倉幕府」って暗記させられて、ずっと「1192年」だと信じて生きて来たのに、大人になってから「実は1185年でした」なんて言われると、ナニゲにドンヨリした気分になる。子どものころからずっと1月15日だった「成人の日」や10月10日だった「体育の日」が、「第2月曜日」とかに変わり、毎年毎年、日付が違うようになると、どうしてもモヤ~ッとした気分になる。子どものころに「恐竜図鑑」を観て、灰色や深緑色のゴツゴツした皮膚のいろんな恐竜がホントにいたんだと思ってたのに、今になって「恐竜は鳥類の祖先で、身体はカラフルな羽毛に覆われていた」なんて言われると、やっぱり「おいおい!」って気分になっちゃう今日この頃、皆さん、いかがお過ごしですか?


‥‥そんなワケで、人類の科学力なんて、まだまだ発展途上で、未来のことが分からないのは当然として、過去のことだって分からないことだらけだし、宇宙のことだって分からないことだらけだ。太陽系なんて、宇宙全体から見たら「自分の住んでる家のある町内」みたいなものなのに、その町内にも知らないことや分からないことがマウンテンだ。それどころか、人類は未だに隣りの惑星である火星にも行ったことがない。これは「自宅の門を出て隣りの家に行ったことがない」って感じで、人類が行ったことがあるのは、まだ、自宅の庭の離れにある「月」だけなのだ。

あたしたちがよく観る、ISS(国際宇宙ステーション)からの地球や宇宙の映像は素晴らしいけど、地球からISSまでの距離はわずか400km、東京から大阪までの距離よりも短いのだ。地球儀を見ると日本の小ささが分かるけど、その日本の中の東京から大阪までの距離よりも近いところを回ってるワケだ。だから、地球をサッカーボールだとしたら、ISSがいるのはサッカーボールの表面から1cmくらいの場所ってことになる。

ようするに、これが今の人類の「宇宙の限界」なのだ。もちろん、もっと遥か遠くの「月」にも行ってるけど、人間が一定期間、生活をするとなると、このISSが「宇宙の限界」ってことになる。ちなみに、人類が行ったことのある、一番遠くの「月」までは、地球から38万4400 kmだ。そして、まだ人類が行ったことのない、地球のお隣りの火星は、太陽のまわりを楕円形に公転してるので、地球からの距離は、地球に最接近した時で約5600万km、最も離れた時で約1億km、平均すると約8000万kmだ。

で、この火星が地球から最も離れた時の「1億km」というのを漠然と頭の中に置いておくと、最初に書いた「太陽系の一番外側の惑星である海王星は、太陽から約45億kmの位置を公転してる」というのが、なんとなくイメージできると思う。だけど、今回、兆候が発見された「プラネット・ナイン」に関しては、この「45億km」の20倍だというのだから、なんとなくでもイメージできない。


‥‥そんなワケで、なんとなくイメージすることもできないほどの遥か彼方を、地球の10倍の質量を持つ天体が公転してて、それも異常に細長い楕円形の軌道で、1万年から2万年をかけて太陽のまわりを一周してるだなんて、それこそ想像もできない。だって、2万年前って言ったら、日本列島はまだ大陸と地続きで、日本は縄文時代の前の旧石器時代だったんだよ。「プラネット・ナイン」が太陽のまわりを一周する間に、日本は大陸から切り離されて日本列島ができて、日本人は旧石器時代から現代へと進んだことになる。

そんな「プラネット・ナイン」だけど、「発見した」じゃなくて「兆候を発見した」というのは、まだ直接は観測してないからだ。カリフォルニア工科大学の天文学者の研究チームが、太陽系の外縁部の準惑星や、海王星より外側にある「カイパーベルト」と呼ばれる天体の密集域の天体を調べていたら、太陽からの引力の他に、何か別の引力の影響による動きをしていることが分かり、そこから、これらの天体の外側を公転している「プラネット・ナイン」の存在に気づいたってワケだ。

でも、これらの天体の微妙な動きの変化から、数理モデルとコンピューターシミュレーションによって「プラネット・ナイン」の質量や距離、公転の軌道などまでを導き出したのだから、ホントにすごいよね。カリフォルニア工科大学の惑星天文学のマイク・ブラウン教授の「これは本物の太陽系第9番惑星とみられる。非常に胸が躍ることだ」というコメントや、同大学の惑星学のコンスタンティン・バティギン助教の「これまで150年以上に渡る天文学の世界で初めて、太陽系の惑星探査が不完全だったという確かな証拠が得られた」というコメントからも、今回の発見の確実性、「プラネット・ナイン」の存在の現実性が感じられる。

そして、今回の発見を受けて、早くもハワイのマウナケア山頂にあるW・M・ケック天文台の口径10mの望遠鏡や、同じくマウナケア山頂にある日本の国立天文台のハワイ観測所の口径8.2mすばる望遠鏡が、「プラネット・ナイン」の観測を始めたそうだ。過去の知見などよれば、「数年後までには観測に成功するだろう」とのことで、観測に成功すれば天文学的には今世紀最大の発見になる。


‥‥そんなワケで、47億年前に太陽が誕生した時には、太陽のまわりには今の何倍もの天体があった。小さな岩のようなものから巨大なものまで、数えきれないほどの天体があったけど、太陽の引力に負けたものはどんどん太陽に吸い込まれて行った。そして、太陽の引力と、自身の遠心力とのバランスが奇跡的に取れて、太陽のまわりを同じ軌道でグルグルと回り始めたのが、地球をはじめとした現在の太陽系の天体だ。そんな奇跡的に生き残った天体の中で、これまた多くの奇跡が重なって生命が誕生したのがこの地球なのだから、その地球を統べる人類が戦争や自然破壊を繰り返して、自分たちの未来や地球の寿命を削り続けるほど愚かなことはない。せっかく「奇跡の惑星」に生まれたのだから、子どもたちへ、未来の人たちへ、この地球を少しでも良くしてから手渡したい。太陽系の惑星が8つではなく、最後の海王星の次に、かつての冥王星に代わる新しい第9惑星、「プラネット・ナイン」が登場してから生まれてくる子どもたちが、今より少しでも良い環境で暮らして行けるようにすることが、今を生きるあたしたちの責任だと思った今日この頃なのだ。


【追記】まったくの偶然ですが、「プラネット・ナイン」の論文が発表された1月20日から来月の2月20ごろまでの1カ月間、水星、金星、火星、木星、土星の5つの惑星を一度に観ることができます。これは10年ぶりのことで、夜明けの45分くらい前に肉眼で観ることができます。太陽系の8つの惑星のうち、地球以外の7つのうち5つが一度に観られるなんて、とってもワクワクしますね。詳しくは以下のCNNの記事をお読みください。

http://www.cnn.co.jp/fringe/35076585.html?tag=top;topStories


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