不謹慎と自粛
熊本地震によって犠牲になられた方々のご冥福を心よりお祈りいたします。また、被害に遭われた方々に心よりお見舞申し上げます。
4月14日夜に発生し、17日現在も続いている熊本地震は、九州の広範囲に甚大な被害が出ていて、最大の被害が出ている熊本だけでなく、大分や宮崎でも土砂崩れが発生して民家などが被害を受けている。専門家によると、別々の地震が3カ所同時に発生しているという。14日夜から16日の午後6時までに、震度5弱以上の地震が14回、震度1以上の地震は300回を超えたそうだ。このブログを書いている今も、ネットで聴いているNHKラジオからは、5分おき、10分おきに地震速報が飛び込んで来ている。
16日夜の時点で、熊本県内だけで41人もの人が犠牲になり、1000人以上が負傷し、10万人もの人たちに避難勧告や避難指示が出されている。橋の崩落や道路の分断などで孤立している人たちも数多くいて、被害の全容は把握し切れていない。そして、何とか避難所まで辿り着いた人たちや、車の中に避難している人たちも、水や食料を始めとした物資が不足していたり、まったく届いていなかったりと、とても厳しい状況に置かれている。
あたしにも熊本在住の友人がいて、いつも新鮮で美味しいお野菜などを送ってくれていたんだけど、その友人も被災してしまった。不幸中の幸いで、本人もご家族も全員無事だったんだけど、自宅は半壊していて危険なため近づくことができず、地域の避難所は満員で入ることができず、広くて比較的安全な場所に停めた2台の車の中に寝泊まりしている。
それでも、頻発する地震と不安とで身体の感覚がおかしくなってしまい、地震が起こっていなくても地面が揺れているような錯覚に陥り、足がもつれてしまったり、恐怖でしゃがみ込んでしまうと言う。家族や近所の人たちと励まし合いながらがんばっているけど、頻発する地震と不安とで、くたくたに疲れているのに熟睡することができないそうだ。たぶん、疲労は限界に達していると思う。
そんな友人の大きな心の支えになっているのが、スマホで聴くラジオだと言う。こんな状況で、夜、真っ暗な車の中にいるのは、たとえ家族が一緒でも不安だと思うけど、スマホでラジオを聴いていると、「どこかと繋がっている」という気持ちになって、とっても元気づけられると言う。その友人は、「どの局よりも熊本地震の最新情報を伝えてくれるから」という理由でNHKラジオを聴いていると言うので、あたしも聴いてみた。
‥‥そんなワケで、今回は「いかがお過ごしですか?」は自粛して先へ進むけど、ネットの「らじるらじる」を利用してNHKラジオを聴いてみたら、サスガは国営放送局、通常のプログラムを変更して、熊本地震の特番を放送していた。最初は地震の最新情報を伝えていたんだけど、男性アナが落ち着いた声で「それでは音楽にまいりましょう」と言って、熊本地震で避難所に避難している女子中学生のメールを読み始めた。この女の子は、とても不安な夜を過ごしていると言う。そして、大好きなHey! Say! JUMPの「あすへのエール」という曲を掛けてほしいとリクエストして来た。
あたしは、ジャニーズやAKB界隈は一切聴かないので、この曲も初めて聴いたんだけど、このタイトルからも想像できるように、明日への希望を歌って落ち込んでいる人を元気づけるような内容の曲だった。そして、この曲が終わり、地震の最新情報などを挟んで、今度は家族で車の中に避難しているという別の少女からのメールを読み上げた。「ラジオからHey! Say! JUMPの「あすへのエール」が流れてきたので、とても勇気づけられました。この曲を聴けて涙が出ました」という内容だった。
他にも、Sexy Zoneの曲とか、あたしがふだん聴かない曲がいろいろと掛かったんだけど、その大半が、今、熊本地震で避難している人たちからのリクエストであり、また、東日本大震災や新潟中越沖地震などで被災した経験を持つ人たちから、熊本地震の被災者へ応援のエールを送るためのリクエストだったので、あたしは、すべてちゃんと聴いた。もちろん、ご家族や友人が犠牲になったり、水や食料が届かずに大変な思いをしていたりで、「とても音楽どころじゃない」と言う人もいるだろう。でも、こうした音楽によって、ほんのひと時でも不安から解放されたり、元気づけられたりしている人がいることも事実だ。
今回のように大きな災害が起こると、必ず、テレビ番組から花火大会に至るまで、いろいろな方面に「自粛ムード」が発生する。もちろん、ラジオやテレビなどは重要な情報を発信するメディアなので、通常の番組を中止して災害の特番を放送することは当たり前だと思うし、それが放送媒体の使命だと思う。事実、今回の熊本地震でも、NHKは連続テレビ小説「とと姉ちゃん」の16日の放送を休止したし、日本テレビも16日の夜9時からスタートする予定だったドラマ「お迎えデス。」を延期して、代わりに熊本地震の特番を放送したそうだ。
他にも、今回の熊本地震を受けて、放送を差し替えた番組は各局いろいろあるみたいだけど、先日の「日清カップヌードル」のCMみたいに、今は何かあるとソッコーでネットで叩かれる時代だから、本当に放送局としての使命に駆られて番組を差し替えたのか、それともネットで叩かれるのが恐くて差し替えたのか、はたまた地震特番のほうが数字を取れると踏んで差し替えたのか、それはあたしには分からない。
‥‥そんなワケで、テレビやラジオの場合は、放送メディアとしての使命もあるから一概には言えないけど、放送メディアではない娯楽の場合はどうだろう。東日本大震災の発生した2011年には、プロ野球はオープン戦が中止になったり、4月からのペナントレースも球場によっては中止された。東京の夏の風物詩である隅田川の花火大会は1カ月延期され、浅草サンバカーニバルは中止になった。他にも、各地で数多くのイベントが自粛された。だけど、いったい、どこまでが「不謹慎」で、どこまでを「自粛」しなくてはいけないのか。
たとえば、今回の熊本地震を受けて、福岡ヤフオクドームで開催される予定だった16日のソフトバンク×楽天の試合が中止になった。ヤフオクドームに被害は出ていないので、これは「自粛」だろう。翌日17日の試合も、16日の時点では「状況を見て判断する」ということになっている。でも、この前日の15日には、最初の地震の翌日だったということもあり、急きょ中止にすることもできず、そのまま開催した。
この試合は、4回にソフトバンクの主砲の内川聖一選手が先制のスリーランを放ち、これが決勝点となって、チームを5連勝へと導いた。福岡はホームなので、多くのホークスファンたちが熱狂した。そして、試合後のヒーローインタビューは、もちろん内川選手だ。お立ち台に立った内川選手は、ものすごい声援を受けながら、笑顔でインタビューに答えていた。だけど、インタビューの最後に、「昨日、九州熊本で大きな地震がありました。まだ大変な状況の方々がたくさんいらっしゃいますが、徐々にホークスの勝利が元気づける状況も出てくるかと思います。ひと言いただけますでしょうか?」と聞かれると、内川選手の笑顔が消え、涙をこらえながら、静かに話し始めた。そして、途中でこらえ切れなくなり、大粒の涙を流しながら、こう話した。
「う~ん、そうですね‥‥。まあ、え~、ああやって地震があってね、あの、避難している皆さんの姿を見ると、やっぱこういうことって、あってほしくないなって‥‥。やっぱり、僕も‥‥ひとりの子を持つ父親として、子どもを抱えながら避難している皆さんの姿であったりだとか‥‥一生懸命に生きようとしている皆さんの姿を見ると、なんか本当に、こういうことって、あってほしくないなっていうのが‥‥本音でしたね。でも、まあ、僕らは野球選手ですので、野球で皆さんに元気を与えることしかできませんから、少しでも、野球を観ていただいている間だけでも笑顔になってもらえるように、全力でプレイしたいなと思います」
こうして文字起こしすると、ぜんぜん伝わって来ないかもしれないけど、実際のヒーローインタビューを観たあたしは、涙が止まらなくなった。内川選手のヒーローインタビューは以下のリンクから観られるので、ぜひ1人でも多くの人に観てほしいと思う。
http://baseball.yahoo.co.jp/npb/video/play/95334/
誤解されると困るので、一応言っておくけど、あたしは、ソフトバンクが16日の試合を中止したことを批判しているワケじゃないし、そんなつもりもない。これは球団が判断したことなんだから、あたしがとやかく言うことでもない。ただ、この内川選手の言葉は、内川選手だけの言葉じゃなくて、日本のプロ野球選手全員を代表した言葉だと思ってほしいのだ。
こんなに大変な災害が起こり、それも現在も地震が続いている状況で、多くの人たちが救出を待っている状況で、こんな時にプロ野球などにウツツを抜かしているなんて「不謹慎だ!」という声があるのなら、自分のモノサシだけで決めつけるのではなく、こうした選手の思いにも耳を傾けてほしいと言っているのだ。頻発する地震と不安とで眠ることができない被災地の真っ暗な車の中にいても、ラジオから聴こえて来た大好きなアイドルグループの音楽に元気づけられる少女もいれば、応援しているプロ野球チームの試合の中継をラジオで聴き、選手たちの活躍に勇気づけられる人もいるのだ。
歌手の山本譲二さんは、東日本大震災が発生してから、大ヒット曲の「みちのく一人旅」を封印していたという。東北を舞台にした歌であり、「ここで一緒に死ねたらいいと」「生きていたならいつかは逢える 夢でも逢えるだろう」などの歌詞が、とても歌えないと感じたからだ。でも、被災地に慰問に行った時、会場に詰めかけた多くの人たちから「みちのくを歌ってくれ!」と言われて、とまどいながらも歌い始めたら、みんな涙を流しながら聴いてくれて、山本さんも歌いながら涙が止まらなくなったという。
‥‥そんなワケで、今回のような大きな震災が発生した時、娯楽は、いったい、どこまでが「不謹慎」で、どこまでを「自粛」しなくてはいけないのか。これはとても難しい問題だけど、これを決めるのは当事者であって、間違っても第三者やネットで騒いでいる人たちではないと思う。歌手だって、スポーツ選手だって、お笑い芸人だって、被災者をさらに苦しめようと思って活動している人なんて1人もいないだろう。みんな、自分たちのやっていることが、少しでも被災地への応援のエールになればと思って自分のステージに立ち続けているのだ。ネットの雑音などに惑わされて変な「自粛ムード」が広がってしまっては、不安や悲しみの中にいる被災者たちから、小さな希望や楽しみまで奪ってしまうことにならないだろうか?‥‥なんてことを感じた今日この頃なのだ。
★ 今日も最後まで読んでくれてありがとう!
★ よかったら応援のクリックをポチッとお願いします!
↓
| 固定リンク




















