« 雷鳴と恋愛 | トップページ | あとは野となれ山となれ »

2016.09.01

猿人も木から落ちる?

8月30日付のAFPで、とっても興味深いニュースが報じられた。


「猿人ルーシー、木から転落死か 新たな骨格分析で示唆」
アフリカ東部エチオピアで1974年に発掘された約320万年前の猿人「ルーシー(Lucy)」の化石を改めて分析した結果、高さ12メートル以上の木からの落下が死因だったことが示唆されたとの研究結果が29日、発表された。ルーシーの死因をめぐる数十年来の謎が、ついに解明された可能性がある。
http://www.afpbb.com/articles/-/3099024?cx_part=topstory


記事の全文はリンク先を読んでもらうとして、ザックリと説明すると、骨の化石が川底から発見されたことから、これまでは「溺死」と推測されていた猿人ルーシーの死因が、もしかしたら「木からの落下」だったかもしれないというのだ。それも、ケッコー高い確率で。

ルーシーに関しては、あたしも11年前に「ルーシーの溜め息」というエントリーを書いてるけど、このエントリーを読み直してみると、やっぱり「溺れて死んだ」と書いてある。ちなみに、この「ルーシーの溜め息」の中にも書いてるけど、わざわざ読むのがメンドクサイヤ人のために簡単に説明しとくと、1974年にエチオピアでこの骨の化石が発見された時、キャンプ地のラジカセから流れてたのがビートルズの「Lucy in the Sky with Diamonds」だった。それで、この骨が女性だったことから「ルーシー」と名づけられた今日この頃、皆さん、いかがお過ごしですか?


‥‥そんなワケで、1974年にエチオピアの川底で発見されたルーシーの骨の化石は、全部で52個、何と全身の約40%にあたるものだった。これまでは、頭蓋骨だけとか、アゴの骨だけとか、単体の発見ばかりだったので、このルーシーの骨の化石は、全身を復元するための貴重な発見となった。

そして、腕の骨など何カ所も折れていたけど、何しろ320万年も前の化石なんだから、これらはルーシーが死んで骨になってから破損したものだと推測されていた。だから、発見された場所や状況などから、死因は「溺死」と推測されていたのだ。


Lucy3


でも、今回、テキサス大学オースティン校のジョン・カップルマン教授の研究チームが、CTスキャンでルーシーの骨の化石を輪切り撮影して調べたところ、どうやらルーシーは生きていた時に骨折をして、それが死因になったようだと結論づけられたのだ。AFPの記事だけでは不十分なので、あたしはさっそく、テキサス大学オースティン校のオフィシャルサイトを検索してアクセスしてみた。そしたら、トップページに「How Lucy Died (ルーシーはどのように死んだのか)」というプレスリリースがあった。


Lucy1

https://news.utexas.edu/2016/08/29/ut-study-cracks-coldest-case-how-lucy-died


トップページの「How Lucy Died」は導入のための仮タイトルで、実際のレポートをひらくと「How the Most Famous Human Ancestor Died (最も有名な人間の祖先はどのように死んだのか)」と書かれていた。で、すぐに読んでみたら、全体的にはAFPの記事と同じだけど、当然のことながら、とっても詳しく書かれていた。

今回の新説の一番のポイントは、右上腕の折れていた部分が「圧縮骨折」だと分かったことだった。これは、現代なら交通事故などに見られるもので、死んで骨になってからは起こりえない。そして、右の足首、左のひざ、骨盤、肋骨の一部なども同様の骨折だったことから、「高い木から落下して全身を何カ所も骨折し、それが死因になった」と結論づけられたのだ。

さらには、足首の骨折の状況などから、「ルーシーは足から落ち、受け身を取るために無意識に両腕を前に出したために腕も折れた」ということまで書かれている。そして、身長3フィート6インチ(約107センチ)で、体重60ポンド(約27キロ)のルーシーが、これだけのダメージを受けていることから逆算して、ルーシーは40フィート(約12メートル)以上の高さから落下して、地面に衝突した時には時速35マイル(約56キロ)以上のスピードになっていたと試算されている。

12メートルと言えば、ビルの5階くらいなので、そうとうな大木だったと思われる。ちなみに、このレポートには、「夜間、高い木の上にのぼって危険を回避していたと思われる」と書かれているので、たぶん、肉食動物からの攻撃を回避するために、ずいぶん高いところまでのぼっていたんじゃないかと思う。こうして化石から死因が分かれば、このように当時の生活の様子などを推測することもできるのだ。

また、もともとはチンパンジーと同じように木のぼりが得意だったはずの猿人だけど、ルーシーたちの時代には地上での生活が主体になっていたため、進化の過程で木のぼりの能力がジョジョに奇妙に低下して来て、こうした落下事故を起こすようになったんじゃないかとも推測されている。つまり、こうした化石って、単なる骨というだけではなく、何十万年、何百万年という過去の地球で暮らしていた生き物たちの生活ぶりを垣間見させてくれる、とっても貴重な「過去からの手紙」なのだ。


Lucy2


‥‥そんなワケで、今回の研究結果と、これまでに分かっていたことを総合すると、ルーシーは川のほとりの大木にのぼっていて、高さ12メートル以上のところから落下し、全身を強く打って即死状態で川に落ち、そのまま息絶えた‥‥と推測されている。そして、いろいろな偶然が重なり合って、320万年も未来の現代へと、全身の40%もの骨の化石という、素晴らしい「過去からの手紙」を届けることに成功した今日この頃なのだ。


【今日のおまけ】
エチオピア国立博物館がリリースしている「ルーシーの肩とひざの骨の化石の3Dデータ」を利用して、3Dプリンターで骨を復元している映像です。画面下の歯車マークで「日本語」を選択して、左隣りの「字幕」をクリックすれば、日本語の自動翻訳字幕が流れます。


★ 今日も最後まで読んでくれてありがとう!
★ よかったら応援のクリックをポチッとお願いします!
  ↓



|

« 雷鳴と恋愛 | トップページ | あとは野となれ山となれ »