熱帯夜とシャケの中骨缶
あたしは長いことエアコンを使わない生活を続けて来たので、エアコンを使いまくってる人よりは暑さに強いと思う。だけど、それは、梅雨が明けてからの夏本番の暑さに対してであって、ここんとこの湿度タップリの暑さにはサスガに参ってる。最初のうちは、家中の窓を開けて網戸にして風を通していれば何とかなったんだけど、ここ2週間くらいは早朝でも深夜でも蒸し暑い上に風があまり吹かないから、夜でも自宅にいるとジッとしてても汗ばんで来るほどだ。
ま、どっちにしても、今の自宅にはエアコンがないから、あたしには「エアコンをつけて室温を下げる」とか「エアコンで除湿する」といった選択肢はないワケで、暑さには自宅にある「三種の神器+α」で対応するしかない。蒸し暑さが不快に感じられるようになったら、まずはウチワを使う。それでもダメなら、冷蔵庫から100円ショップで買ったアイスノンもどきを持って来て、首の後ろに当ててタオルで固定する。これで、しばらくは涼しくなる。
そして、いよいよガマンできなくなって来たら、最後の手段として扇風機を使う。あたしは、1カ月の電気料金の目標を1000円以下に設定した節電生活をしてるので、電気を使う扇風機は最後の手段なのだ。この、ウチワとアイスノンと扇風機が「三種の神器」で、これでも耐えられないくらい暑くなったら「+α」の登場だ。そう、「水風呂に飛び込む」だ。松尾芭蕉フレーバーで言えば「熱帯夜 きっこ飛び込む 水の音」‥‥って感じの今日この頃、皆さん、いかがお過ごですか?
‥‥そんなケで、どんなに暑くなっても、夜だけ涼しくなってくれれば寝られるから体調はキープできるんだけど、オールナイトで蒸し暑い「熱帯夜」だけはたまらない。窓を開けて網戸にしても風なんか入って来ないし、電気料金を気にせずに扇風機を回しても、そもそも室温が高くなってるから、生暖かい風が来るだけで、ぜんぜん涼しくならない。結局、アイスノンもどきで首を冷やすしか方法がなく、これも30分と持たないから、とてもじゃないけど寝られない。そして、深夜の2時とかに、水風呂に飛び込むことになるワケだ。
とにかく、今年の暑さは尋常じゃない上に、もう10日以上も蒸し暑い日が続いてるから、あたしの頭もだんだんボ~ッとして来て、普段じゃ考えられないようなイージーミスをやらかしちゃうようになった。たとえば、こないだは、木曜日の15時に行くことになってた仕事場に、その前日の水曜日の15時に行ってしまった。前日の水曜日だったから恥をかいただけで済んだけど、もしも翌日の金曜日に行ってたら大変なことになってた。
他にも、数日前には、朝、「今夜はヅケ茶漬けを食べよう」と思って、タッパーにお酒とお醤油に青唐辛子を入れて、それにサワラのお刺身を漬けて、冷蔵庫に入れてから仕事に行った。こうしておけば、帰って来た時には「ヅケ」ができてるから、お茶碗のご飯に「ヅケ」とミョウガや大葉を乗せて、熱い緑茶をかけても冷たい麦茶をかけても美味しい「ヅケ茶漬け」になる。
それなのに、あたしは、帰りに「天ぷら半額セール」のポスターに目が止まり、いつも150円の「小エビのかき揚げ」や「小柱のかき揚げ」が75円になってたから、それに飛びついて買ってしまったのだ。もちろん、その日の夜は予定通りに「ヅケ茶漬け」を食べて、かき揚げは次の日の夜に「かき揚げ丼」にして食べたからいいんだけど、問題なのは、最初からそのつもりで「かき揚げ」を買ったんじゃないってことだ。
「天ぷら半額セール」のポスターを見たとたん、あたしは「ヅケ茶漬け」の準備をしてたことを完全に忘れちゃって、その日の夜に食べるつもりで「かき揚げ」を買ったのだ。そして、自宅に着いてからも「ヅケ茶漬け」のことは忘れたままで、まだ「かき揚げ」を食べるつもりで、晩ご飯の支度をする中で冷蔵庫を開けた瞬間、「ヅケ」のタッパーが目に入り、「あっ!」と思い出したのだ。
‥‥そんなワケで、誰だって年に何度かはド忘れをする。お台所に何かを取りに行ったら、お台所に入ったとたん、自分が何を取りに来たのか分からなくなり、元の部屋に戻ったら思い出す‥‥なんてこともある。あたしの場合は、こういうことは子どものころからあった。だから、今でも年に何度かはあるし、スーパーに寄った時にチューブのワサビがなくなりそうだったことを思い出して買って帰ると、冷蔵庫には数日前に同じことを思って買った新品のワサビが箱のまま入ってたりすることもある。
だけど、こういうのって、多くても1カ月に1回か2回で、それも、連続して起こったりはしない。たとえば、お台所に何を取りに行ったのか分からなくなったら、自分でも「あたし、ちょっとヤバイかも?」って思うから、それからしばらくの間は、「栓抜き、栓抜き、栓抜き‥‥」とか「缶切り、缶切り、缶切り‥‥」とか言いながらお台所へ行くようになり、ちゃんと取りに行ったものを持って来られる。
でも、それがしばらく続くと、だんだんに「もう大丈夫だろう」と思うようになり、取りに行くものの名前を口で言ったり脳内で反復したりしないで取りに行くようになり、それでも忘れずに持って来られるから安心していると、忘れたころに、また、「あれ?何を取りに来たんだっけ?」ということになる。これは、子どものころからずっとだから、未だに同じようなことが起こっても、あたしは自分がボケて来たとは思わない。だけど、1週間に3回とか、こういうことが連続して起こると、サスガに不安になって来る。
‥‥そんなワケで、「ヅケ茶漬け」の準備をしてたことを忘れて「かき揚げ」を買って帰った日の2日後のこと、あたしは缶チューハイを買いにスーパーへ行った。すると、小さいほうの入り口から入ってすぐのところに「安売りワゴン」が出てて、缶詰や瓶詰がたくさん並んでた。近づいて見てみると「在庫処分品」の札があり、「消費期限は十分ですが、商品の入れ替えのために割引しています」と書かれてた。
ようするに、棚に並べていてもあまり売れなかった缶詰や瓶詰を安く売り、その棚に売れそうな別の缶詰や瓶詰を並べるってワケだ。それで、そのワゴンの中を見てみると、フルーツ缶とか蜜まめ缶とかに150円のシール、サバ缶とかサンマ缶とかに100円のシールが貼ってあったので、あたしは「そんなに安くないじゃん」て思った。このスーパーは、通常、サバ缶やサンマ缶が150円くらいだから、これでも3割引くらいの感覚なんだろうけど、安いスーパーなら通常でも98円とかだからだ。
それで、あたしは、あまり期待しないで缶詰を見て行ったら、最初に見たのと同じサバ缶に50円のシールが貼ってあるのを見つけたのだ。あたしは、最初はシールの貼り間違いなのかと思ったんだけど、よくよく見てみたら、そのサバ缶は横の部分が凹んでたのだ。それで、他の缶詰も見てみたら、さっきは150円のシールが貼ってあった蜜まめ缶も、凹んでるものには100円のシールが貼ってあった。そして、念のために消費期限を確認してみると、凹んでない缶も凹んでる缶も同じで、どれも来年までの消費期限だった。つまり、棚出しする時とかに落として凹ませちゃった缶詰は、さらに割引してあるということなのだ。
サバ缶は、100円だとぜんぜんお得感はないし、100円ショップでも買うことができる。でも、これが50円になってるなら確実にお得だから、あたしは他にも凹んでて50円になってるサバ缶がないか、1個1個確認して行った。そしたら、乱雑に詰まれたサバ缶の下から、あたしの大好物の「シャケの中骨缶」が出て来たのだ!それも、缶の上のフチが見事に凹んでて、50円のシールが!
あたしは平静を装いながら、心の中だけで狂喜乱舞しつつ、その「シャケの中骨缶」をカゴに入れた。そして、他にも凹んだ「シャケの中骨缶」がないか、すべての缶詰をチェックした後、急いで野菜売り場へ進んだ。あたしは、シャケ缶とキャベツの炒め物が大好物なんだけど、シャケ缶は高くて買えないから、普段は「シャケの中骨缶」を使ってる。それでも、通常は1缶150円くらいするから、安売りで100円になってる時しか買わないけど、それが50円で手に入ったんだから、これはキャベツと炒めるっきゃない!
それなのに、嗚呼それなのに、それなのに‥‥って、久しぶりに五七五の俳句調で嘆いちゃうけど、先週来た時には1個100円だったキャベツが、こともあろうに150円になってたのだ。あたしは、しばらくキャベツの前で悩むことになった。せっかく缶詰が50円で手に入ったのに、キャベツが150円だったら両方で200円になっちゃう。そしたら、キャベツが100円で、缶詰が安売りで100円になってる日と同じワケで、50円で手に入れた缶詰の価値が消えてしまう。結局、あたしは、5分ほど悩んだ末に、「食べたいもの」よりも「お得感」を優先することにして、キャベツは諦め、1袋20円のモヤシをカゴに入れた。そう、シャケの中骨缶とモヤシの炒め物に変更したのだ。
その日の夜、あたしは、シャケの中骨缶とモヤシの炒め物を作ったんだけど、これはこれで美味しかったし、何よりも材料費が70円だから、あたしの求めてた「お得感」はタップリと味わえた。でも、その一方で、「やっぱ、シャケ缶と炒めるならキャベツだよな~」とも思った。あたしの作る母さん直伝のシャケ缶とキャベツの炒め物は、自画自賛になっちゃうけどマジで美味しくて、たとえ安いシャケの中骨缶を使ったとしても、100点満点で90点以上の美味しさがある。
だけど、今回のシャケの中骨缶とモヤシの炒め物は、モヤシのシャキシャキ感を残しつつ完璧な味つけで作ったのに、キャベツと比べたら安倍内閣の支持率のようにガクッと落ちる味で、100点満点で75点くらいの感じだった。母さんも喜んで食べてくれたけど、「やっぱりキャベツのほうが、もっと美味しいわよね」と言っていた。それで、あたしも「キャベツで作れば良かったね。だけど、先週まで100円だったキャベツが今日は150円だったから‥‥」と言った瞬間、「ハッ!」と気づいたのだ!
このシャケの中骨缶は、商品の入れ替えと凹みがあることによって50円になってただけで、消費期限は来年まであったのだ!だから、何もこの日にモヤシと炒めて食べなくても、次にキャベツが100円になる日までキープしておけば良かったのだ!あたしは、たいてい賞味期限や消費期限が迫って割引になってる食材を買うから、ついつい「すぐに食べなきゃ」って思う癖がついてるけど、この日は、最初にワゴンのところで「消費期限は十分ですが」という貼り紙を見てるし、実際に手に取った缶詰の裏を見て、来年まで消費期限があることを確認した上でカゴに入れたのだ。それなのに、その足ですぐに野菜売り場へ行き、キャベツを買うかどうかで悩み、結局、モヤシを買ってしまったのだ。
百歩ゆずって、これが1カ月ぶりのイージーミスなら、まあ、仕方ないと思えるし、自分でもそれなりに納得できる。でも、この2日前には、冷蔵庫にヅケ茶漬けの準備をしてたことをスッカリ忘れて、かき揚げを買ってしまったのだ。そして、さらに言えば、ヅケ茶漬けの2日前か3日前にも、冷蔵庫で冷やしておいたホッピーを昼間にノンアルコールビール代わりに飲んじゃって、冷蔵庫にはもう冷えてるホッピーがないのに、あたしは自分が昼間に飲んだことを忘れて、夜、ホッピー用のグラスに甲類焼酎を入れてから、冷蔵庫を開けて「あ!ホッピーがない!」と気づき、グラスの焼酎をジョウゴで紙パックに戻したのだ。
‥‥そんなワケで、グラスに入れた焼酎は紙パックに戻したから問題ないし、かき揚げは翌日に食べたから問題ないし、シャケの中骨缶とモヤシの炒め物にしたって、わずか70円でそれなりに美味しいものが食べられたんだから、ミスはミスでも「取り返しのつかない大ミス」ってワケじゃない。そして、さらに遡れば、木曜日の仕事場に1日早く水曜日に行っちゃったのも、恥はかいたけど翌日の木曜日にちゃんと行ったんだから、これも「取り返しのつかない大ミス」ってワケじゃない。だけど、いくら夜も寝られないほど蒸し暑い日が続いて頭がボ~ッとしてるとは言え、約10日の間に、こんなイージーミスを4回も連発するなんて、サスガにちょっと心配になって来た今日この頃なのだ(笑)
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