無人島とドラゴンボール
「無人島に何か1つだけ持って行けるとしたら?」という良くある質問に対しては、「サバイバルナイフ」とか「マグネシウムファイヤースターター」とか「テント」とか答えるのが普通だけど、あたしがいつも悩むのが「釣り竿」だ。無人島ということは周りがぜんぶ海だから、魚釣りができれば食料に困らなくなる。それで「釣り竿」と答えるワケだけど、細かいことを言うと「釣り竿」だけじゃ魚釣りはできない。最低でも「釣り糸」と「釣り針」は必要だし、できれば「リール」も欲しい。
さらに言えば「ジェット天秤」もあると便利だし、砂浜がなくて岩場ばかりの島だったら「ジェット天秤」は使えないから、代わりに「ウキ」や「フカセ釣りの仕掛け」が必要になる。あとは、適当なエサが採取できなかった時のことを考えて「ルアー」も欲しいし、アオリイカがいるかもしれないから「餌木(えぎ)」も欲しい。そして、これらをぜんぶ揃えたら、どう考えたって「1つだけ」じゃなくなる。
「サバイバルナイフ」や「マグネシウムファイヤースターター」は1つの道具としてカウントできるし、「テント」の場合は複数の部品によって構成されてるけど、それらの部品がすべて1つの袋に収納されてるから、まあ、これも1つの道具としてカウントすることができる。でも、釣り道具に関しては、釣り竿は釣り竿、リールはリール、道糸は道糸‥‥と、それぞれが独立した道具なので、魚釣りをするためには「釣り道具セット」が必要になる。そして、名称に「セット」が付いてしまったら、その時点で「1つだけ」じゃなくなる。
だって、「セット」でもOKということになったら、テントに寝袋にバーナーにランプにナイフにお鍋にフライパンに食器に‥‥って、すべて揃えたものを「キャンプセット」と呼べばいいワケで、これなら無人島の生活もぜんぜん困らない。つーか、この「無人島に何か1つだけ持って行けるとしたら?」っていう質問は、必要なものがいろいろある中で、その人が何を選ぶのか、何を最優先するのかということを聞き出して、その人のタイプを知るための心理テスト的な要素を持った質問なんだから、どう考えたって「セット」はNGだ。そして、この質問に対して「セット」で答えるような人って、心理テスト的には、きっと何不自由なく育ったお坊ちゃまとかお嬢さまとかで、欲しいものは何でも手に入れない気が済まないワガママな性格で、自分のことを崇拝してくれる防衛大臣のことを絶対に辞任させずに擁護しまくるような人物だと思った今日この頃、皆さん、いかがお過ごしですか?
‥‥そんなワケで、この「無人島に何か1つだけ持って行けるとしたら?」っていう質問は、「もしも宝くじで1億円が当たったら?」と同じく、ほとんどの人が一度はやったことがあると思うけど、マクラで挙げた「釣り道具セット」や「キャンプセット」などよりも、もっと反則な回答をした人がいる。たとえば、あたしの友達の1人は、この質問に「プレハブ住宅!」と答えたのだ。まあ、これも「テント」と同じジャンルだけど、無人島に「プレハブ住宅」って?‥‥って、あたしが思ったのもトコノマ、一緒にいた別の友達は「それなら私はログハウス!」と言い出し、さらに別の友達は「じゃあ私は豪華な別荘!」って言い出したのだ(笑)
でも、上には上がいるもので、まったく別のグループでこの質問が出た時には、1人の友達が「モーターボート!」と答えたのだ。ようするに、無人島になんかいたくないから、モーターボートでトットと帰って来ると言うのだ。そしたら、別の友達が「じゃあ俺はヘリコプター!」と言った後、「あ、俺、ヘリコプターなんか操縦できないから、う~ん、う~ん、そうだ!どこでもドア!」って、おいおいおいおいおーーーーい!ドラえもんの道具までOKなら、それこそ何でもありじゃないか!つーか、「ヘリコプター」からの流れなんだから、せめて「タケコプター」と言えよ!‥‥って、あたしは思った。この質問は、その無人島でサバイバル生活をして行くことが大前提なのに、トットと帰って来るための道具を考えるなんて‥‥。まあ、それでもいいけど、それならせめて「イカダ」だろ?
でも、こうした回答をした人たちなんて、まだまだ可愛いほうだ。あたしがこれまでの人生で一番ムカついた回答は、高校生の時にクラスの男子のグループがこの質問で遊んでて、あたしも混ぜてもらった時のこと、普段から理屈っぽいヲタク系の男子が、ドヤ顔でこう答えたのだ。
「無人島に何か1つだけ持って行くことなんて、物理的に不可能だよ」
「何でだよ?」
「君たちは何も分かってないねえ。無人島というのは人が1人もいない島のことだろ?もしも僕が何かを持ってその無人島に上陸したら、僕が上陸した瞬間に、その島は無人島ではなくなり、有人島になってしまうのさ。つまり、何かを持って行くか持って行かないかに関わらず、人が無人島に行くということ自体が物理的に不可能なんだよ」
‥‥そんなワケで、このヲタク系の男子の言ってることは間違ってはいないけど、そうしたことも分かった上で作られてる質問なんだから、小学生ならともかく、高校生になってまで、こんな幼稚な揚げ足取りのようなことを言って得意になるなんて、あたしは改めて「男子ってガキだな~」って思った。だけど、この男子、学業の成績はけっこういいほうで、みんなが知らないようなマニアックなこともいろいろと知ってたので、クラスの中ではそれなりに尊敬されてる一面もあった。
事実、この「無人島うんぬん」の時も、あたしは「うぜえ!」って思ったけど、他の男子たちは「なるほど!」なんて言って感心してたのだ。だから、また別の日のこと、ドラゴンボールを7個集めて神龍(シェンロン)が出て来て、「お前の願いを何でも1つだけ叶えてやる」と言われたら?‥‥っていう質問の時に、みんなが「世界一のお金持ちになりたい」とか「世界一のサッカー選手になりたい」とか、普通の願いを言ってたら、このヲタク系の男子は、またまたドヤ顔で、こう言ったのだ。
「僕なら『叶えられる願いの数を3つにしてくれ』ってお願いするね」
もちろん、あたしは「うぜえ!」って思ったんだけど、何人かの男子は「その手があったか!」なんて言って感心してた。そして、その中の1人が「それなら3つじゃなくて10個に増やしてもらったほうがいいじゃん!」て言ったら、そのヲタク系の男子は、これまたドヤ顔で「願いの数を3つに増やしてもらったら、2つ目までの願いを叶えてもらい、3つ目で、また『叶えられる願いの数を3つにしてくれ』ってお願いすればエンドレスだよ」と抜かしたのだ。すると、またまた男子たちが「なるほど!」って感心するもんだから、さすがのあたしもイライラ袋の緒がプチッと切れちゃったので、立てた人差し指を左右に振りながら「チッチッチッチッ」と言ってから、こう言ってやった。
「バッカだねえ!それじゃあ願いを叶えてもらってる間、ずっと神龍の前から動けないじゃん!あたしだったら、ちゃんとルールを守って1つだけお願いするね。『あたしを魔法使いにしてください』ってね。こうすれば神龍と別れて自宅に帰って来てからも、いつでもどんな願いでも好きな時に自分の魔法で叶えることができるじゃん!」
男子たちは感心してくれたし、そのヲタク系の男子は悔しそうな顔をしたから、あたしはちょっと得意になったけど、すぐに、幼稚な相手の土俵にまで降りてしまった自分に対して、「あたしもまだまだガキだな~」と思って反省した。このドラゴンボールの質問にしても、同じようなランプの魔神の質問にしても、「願いを1つだけ叶えてやる」ってパターンの質問は、「たった1つの願いを何にするか」ってことがポイントなんだから、願いの数を増やすというのは、無人島に「釣り具セット」を持って行くのと同じで反則なのだ。
‥‥そんなワケで、「釣り具セット」や「キャンプセット」を「1つのもの」だと言い張って無人島に持ち込もうとしたり、「複数の願い」を叶えられるように「1つの願い」を利用したり、こうした質問の大前提を無視した反則の回答は、きちんとした憲法改正の手続きを踏まずに、憲法の解釈だけを都合よく変更して正反対の意味にしてしまうという傍若無人な振る舞いと似ている。どちらも乱暴で、自分勝手で、とても幼稚な振る舞いだ。そして、最初の段階でこのようなルール違反をしてしまうと、その後、実際に目の前で起こった戦闘について明記してある日報を防衛大臣自らが隠蔽しなくてはツジツマが合わなくなり、その日報がどこからか発見されると、今度は防衛大臣自らが「戦闘ではなく衝突だ」などと、子どもも騙せないような嘘をつかなければツジツマが合わなくなる。そして、嘘に嘘を重ねて行った結果、最後には収拾がつかなくなってしまう。今回の安倍晋三と稲田朋美による幼稚な茶番劇を見せられたあたしは、小学生の精神年齢のまま体だけが高校生になったようなクラスメートのことを30年ぶりに思い出してしまった今日この頃なのだ。
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