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2017.10.08

不幸な結婚、幸せな離婚

先日、15年くらい会ってなかった高校時代の女友達から連絡があり、ものすごく久しぶりに会った。普通、このパターンって、あたしが会ってなかった間に、ワケの分からない新興宗教に洗脳されちゃって、あたしのことを勧誘しようとして連絡してきたか、あなたも10人の会員を集めれば自動的にお金が入ってくるようになる的な、変な洗剤とかのマルチ商法の勧誘で連絡してきたか、もしくは、この両方を合体させたような、霊感商法やインチキ自己啓発セミナーなどの勧誘で連絡してきたのかと思ってしまう。他には、時期が時期だけに、あたしの知らない間に創価学会に洗脳されてしまい、公明党の候補者に投票するように迫られちゃう可能性もある。

でも、この子の場合は、くだらない新興宗教に洗脳されるほどバカじゃないし、犯罪ギリギリのマルチ商法や怪しげな霊感商法に騙されるほどオメデタくもないし、インチキ自己啓発セミナーにハマるほど病んでもないし、創価学会のことはあたしと同じくらい大嫌いなので、あたしは安心して待ち合わせの日時と場所を決めた。この子は、高校時代は隣りのクラスだったけど、一緒にバンドを組んでた仲間だったので、同じクラスの仲良しだった友達よりも濃厚な付き合いをしてた。

高校卒業後、あたしは専門学校へ進み、その子は4年制の大学へ進んだけど、夜中に電話で話したり、月に1回くらいは会ったりしてた。でも、あたしが20歳で専門学校を卒業して就職し、その子が2年後に大学を卒業して就職すると、なかなか会うことができなくなった。当時は、まだケータイが普及し始めたころで、あたしもその子も持ってなかったから、今みたいにメールでやり取りすることもできなかった。連絡と言えば、お互いの自宅に電話するしかなかったんだけど、あたしが電話をすればその子が留守、その子が電話してくればあたしが留守、という感じで、だんだんに疎遠になってしまった今日この頃、皆さん、いかがお過ごしですか?


‥‥そんなワケで、お互い、社会人になったばかりで忙しかったこともあり、20代前半の数年間は、年に1回くらいしか会えない時期が続いたけど、お互いにケータイを持つようになってからは、チョコチョコとメールで仕事の愚痴を言い合ったりして、予定が合えば一緒に飲みに行くようになった。そして、20代後半、その彼女が大学時代から付き合ってきたカレシと結婚して、勤め先をコトブキ退社するというメールが届いた。

カレシにはあたしも何度か会ったことがあり、とっても素敵な人だったから、あたしは心から喜んで、お祝いのメールを返信した。そしたら、すぐに折り返しの電話が掛かってきて、彼女は結婚式のヘアメイクをあたしに担当してほしいと頼んできた。あたしは、すでに勤め先の事務所を辞めて独立してて、いろんな大人の事情でテレビ局のお仕事を干されてた時期だったから、食べていくためにブライダル関連のお仕事も始めていた。それで、これはあたしからのお祝いだからと、料金をいただかずにヘアメイクを担当させていただくことにした。

お式は、とても素晴らしいものになった。高校時代のバンドのメンバー、あと2人も来てくれたので、高校卒業以来、10年ぶりに4人のメンバーがそろった。あたしはヘアメイクのお直しなどの仕事があったので、披露宴では裏方に徹してたけど、友人だけの2次会では、新婦も含めたバンドメンバー4人で、高校時代にカヴァーした懐かしい曲を歌ったりもした。そして、結婚式も終わり、その後、あたしは、彼女の新居に一度だけ遊びにいったけど、それが、その子と会う最後になってしまった。

もちろん、メールや電話でのやり取りは続いてたけど、お互いの生活スタイルがまったく違うものになってしまったため、実際に会う機会が作れなくなってしまったのだ。あたしは独身の自営業で、本職だけでは食べていけなかったので、夜のバイトまで始めていて、けっこうパツパツの日々が続いていた。一方、彼女は昼にパートを始めたくらいで、時間には余裕があったんだけど、結婚から数年目に不妊治療を始めたため、あたし以上に厳しい生活になってしまったからだ。

結局、それからは、年に数回、メールで近況報告をし合うだけで、よほどのことがない限り、電話で話すこともなくなり、現在に至る‥‥ってワケだった。それが、1カ月ほど前のこと、彼女から何カ月ぶりかのメールが届いていたので、いつもの近況報告だと思って開封すると、たった1行だけ、「きっこ、いつでもいいから都合のいい時に電話してね」とだけ書かれてあった。時計を見ると、まだ夜の10時を回ったところだったので、何か嫌な予感がしたあたしは、その場ですぐに電話を掛けた。

でも、電話に出た彼女は、あたしの心配とはウラハラに、いつもの元気な声で‥‥って言っても、声を聞くのは何年ぶりかだったんだけど、とっても明るい声で、あたしの母さんの体調を聞いてくれたり、あたしの現状を聞いてくれたりした。それで、あたしが「そっちはどうなのよ?」と聞くと、それまでと変わらない明るい声で、「実はあたし、離婚したんだ、へへへ」と言った。あたしが驚いて返事に困っていると、「近いうちに会って話したいから時間とれないかな?」と言うので、あたしはすぐに予定を確認して翌日までにメールすると答えて、電話を切った。


‥‥そんなワケで、15年ぶりに友達と会えるんだから、ホントなら約束した日までワクワクして待ちたいとこだったんだけど、状況が状況だったから、あたしは、「何て言って元気づけよう?」「どんなふうに励まそう?」ということばかり考えていて、何となく気分がドンヨリしていた。結婚したことのないあたしでも、15年も連れ添った相手と離婚した重さは想像がつくし、彼女の場合は何年間も辛い不妊治療を続けたのに、結局、子どもを授かることができなかったので、それが離婚の原因の1つになっていたとしたら、あたしはどんなふうに慰めればいいのか分からなかった。

それでも、やっぱり、久しぶりに会えるのは嬉しいから、あたしは、気持ちを切り替えて待ち合わせの場所へと向かった。あたしの移動時間の問題もあって、待ち合わせは午後1時にしてもらって、「ランチでも食べながら話そう」と伝えてあった。待ち合わせの場所に近づくと、15年ぶりでも一瞬で彼女と分かる美女がベンチから立ち上がり、「きっこ~!」と叫んで手を振ってくれたから、あたしも名前を呼びながら小走りして、思わず抱き合った。

久しぶりに会った彼女は、とても40代半ばに差しかかろうとしているようには見えないくらい若々しかった。あたしもけっこう若作りのほうだけど、あたしの場合はメイクやファッションで若く見せてるだけで、家に帰ってメイクを落として部屋着に着替え、缶チューハイを飲みながらプロ野球の中継を観てる姿なんか、タダのおっさんだ(笑)でも、彼女の場合は、外見だけじゃなくて、内面から湧き出てくる若さが感じられた。正直、あたしは、もっとゲッソリとしてるんじゃないかと思って心配してたから、元気で若々しい彼女を見て、ちょっと安心とした。

でも、選んだお店が悪かった。久しぶりに会うからと、少し高級なお店を予約してたのが失敗で、お料理もサービスも文句なしに良かったんだけど、ほぼ満席なのに店内は水を打ったように静かで、とても離婚に関する話などできない状況だったのだ。それは、彼女もすぐに察したようで、あたしたちは小さめの声で当たり障りのない近況報告をしながら、美味しいお料理を楽しんだ。

次に行ったカフェは、適度にザワザワしてる上に音楽も流れてたので、あたしたちは周りを気にせずにおしゃべりができた。離婚の話は、彼女のほうから切り出してくれたんだけど、あたしが心配してたようなスッタモンダの離婚じゃなくて、15年の間に、お互いの考え方の違いが大きくなってきて、修正や妥協のできないレベルに達してしまったため、十分に話し合って円満に離婚したという。結婚したことのないあたしには、イマイチ、分かりにくい理由だったけど、アッケラカンと話す彼女の顔を見ていたら、何となく納得できた。

離婚のことだけじゃなく、いろんなことを夢中になっておしゃべりしてたら、ハッと気づいた時には3時間近くが経過してて、外は薄暗くなり始めてた。でも、まだまだ話し足りなかったあたしは、「まだ時間があるなら、ちょっと飲みに行かない?」と誘い、カフェを出て最初に見つけた居酒屋に入った。やっぱり、お酒が入ると昔の感じに戻るみたいで、カフェではお互いに少し気を使いながら話してたんだけど、居酒屋ではまったく気を使わずにおしゃべりできるようになった。

そんな流れから、あたしは、言いずらかったことも言えるようになり、「でも、いくら円満離婚と言っても、やっぱり、寂しかったり辛かったりするよね?ホントに大丈夫?」と聞いた。すると、彼女は、こんなことを言ったのだ。


「きっこ、きっこはブライダルのお仕事もしてて、幸せな新婦さんをたくさん見てきたから、もしかして、結婚は幸せなことで、離婚は不幸なことだと思ってるんじゃない?」

「えっ?そうじゃないの?」

「ものは考えようなんだから、不幸な結婚もあれば、幸せな離婚もあるのよ。たとえば、結婚するまでは優しかったカレシが、結婚したとたんに暴力を振るうDV夫に豹変して、さんざん苦しめられて離婚したようなケースなら、結婚したことが不幸で、離婚できたことは幸せなんじゃない?」

「うん、まあ、そう言われてみればそうだけど、それは特殊なケースであって‥‥」

「もちろん、結婚するカップルのほぼすべてが、結婚した時点では幸せだと思ってるはずだけど、何年経っても結婚したことを後悔せずに、生涯、幸せな夫婦生活を続けられるカップルがどれくらいいるのか‥‥。そう考えると、後から後悔する結婚は、その後悔の度合いにもよると思うけど、やっぱり不幸な結婚なんじゃない?」

「たしかに、今の日本では、年間に約60万組が結婚してて、約20万組が離婚してるから、3組に1組は離婚してることになるよね」

「あたしの場合、いろいろ努力したけど、子どもができなかった。このことだけを見れば不幸なことだけど、その結果、今回の離婚の話し合いでは、子どもがいなかったことで、とてもスムーズに話し合いが進んだのよ。もしも子どもがいたら、やれ親権だ、やれ養育費だと、弁護士を挟まなければ離婚に辿り着けなかったと思うし、子どもにも精神的な負担を掛けていたでしょ?そう考えると、あたしに子どもができなかったことは、ある意味、幸せなことだったのよ」

「う~ん‥‥」

「それに、もしもあたしに子どもがいたら、あたしは子どものために離婚しなかったと思うのよ。将来的には離婚するかもしれないけど、取りあえず子どもが大学を出て社会人になるまで、離婚しなかったと思うんだ。そうなると、あたしは自分の気持ちに嘘をついて生きなきゃならなかったし、子どもが社会人になった時に、あたしは50代になっているから、それから離婚しても、女が1人で生きていくのは大変だったと思うのよね」

「だけど、もしも子どもがいたとしたら、彼との関係も違ったものになってたかもしれないじゃない?何しろ『子は鎹(かすがい)』って言うくらいだから」

「うん、そうだったかもしれないわね。でも、いつまでもタラレバの話をしててもしょうがないし、取りあえずあたしは幸せな離婚ができたんだから、あたしの新たな人生への門出のために、きっこ、乾杯してよ」

「すいませ~ん!ナマ中のおかわり、2つお願いしま~す!」


‥‥そんなワケで、ICレコーダーで録音してたワケじゃないので、会話の内容は「だいたいこんな感じのことを話した」というフランク・ザッパなものだけど、彼女の言った中で「幸せな離婚もある」という言葉は、離婚は不幸なものだと思っていたあたしにとって、目からウロコだった。ちなみに、今の日本では、1日に約1600組が結婚してて、約550組が離婚してる。もちろん、深夜や早朝に結婚するカップルはいないだろうけど、「延べ」で計算すると、だいたい1分に1組が結婚して、3分に1組が離婚してることになる。そして、離婚理由は、1位が性格の不一致、2位が男性側の浮気や不倫、3位が経済的理由だと言われてる。あたしの友達のように、1位の性格の不一致が原因なら仕方ないけど、2位の理由は自民党政権による女性軽視の男性社会が生み出した悪しき風習だし、3位の理由は安倍政権によるアベノミクスの失敗によるものなので、政府がホントに日本の少子化を心配してるのなら、まずは男性議員と女性議員の数を同じにし、次に消費税の再増税を白紙撤回した上で、逆に消費税を下げるべきだと思った今日この頃なのだ。


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