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2018.04.03

インスタントラーメンの夜明け

インスタントラーメンにはいろんな銘柄があるけど、「インスタントラーメン」と聞いてあたしが真っ先に思い浮かべるのは、サンヨーの「サッポロ一番」だ。九州で生まれ育った人なら福岡に本社がある「マルタイラーメン」とか、四国で生まれ育った人なら徳島に本社がある「金ちゃんラーメン」とか、それぞれのご当地のインスタントラーメンを思い浮かべる人もいると思うけど、東京で生まれ育ったあたしの場合は、大手メーカーが販売している全国的にもメジャーなインスタントラーメンをメインに食べてきたから、その中でもナンバーワンのシェアを誇る「サッポロ一番」を真っ先に思い浮かべるし、実際に一番多く食べてきたのも「サッポロ一番」だ。

東京のスーパーに行くと、いろんなメーカーのインスタントラーメンが並んでいるけど、大きなスーパーから小さなスーパーまで、どこのスーパーにも必ず並んでいるのが「サッポロ一番」で、最低でも「しょうゆ」「みそ」「塩」の3種類は置いているし、大きなスーパーなら、その他に「塩とんこつ」だの「カレーラーメン」だの「しょうゆ餡かけ」だの、いろんな種類まで置いている。その一方で、ライバルの明星の「チャルメラ」は、「しょうゆ」だけしか置いていなかったりする。こうしたスーパーのラインナップを見ても、やっぱり「サッポロ一番」が最も売れているインスタントラーメンなんだと思う今日この頃、皆さん、いかがお過ごしですか?


‥‥そんなワケで、あたしが小学4年生か5年生の時、算数だったか社会だったか忘れちゃったけど、「統計」についての面白い授業があった。班ごとに分かれて、それぞれの班で考えて四択の設問を作り、クラス全員にアンケートを取って、その回答を円グラフにして、大きな模造紙に描いて順番に発表するという授業だった。たとえば「あなたの好きなペットは何ですか?」という設問に対して「1.犬、2.猫、3.小鳥、4.その他」という四択の回答を用意してクラス全員にアンケートを取り、集まった回答を数えて、クラス全員の人数を100%として、それぞれの回答の割合を計算して、それを円グラフにするというものだ。

あたしたちの班は、「あなたの好きなインスタントラーメンは何ですか?」という設問にして、選択肢は「1.サッポロ一番、2.チャルメラ、3.出前一丁、4.その他」というものだった。結果は、サンヨーの「サッポロ一番」が約60%、明星の「チャルメラ」が約20%、日清の「出前一丁」が約10%で、その他が約10%だった。他の班は、どこも「その他」は「その他」としてしかカウントしなかったけど、あたしたちの班は少し工夫をして、アンケート用紙の「その他」の下にカッコを書いておき、「その他」を選択した人はカッコの中に自分の好きなインスタントラーメンの銘柄を書いてもらうようにした。そしたら「その他」を選択した人が全員、ま、全員と言っても、たしか3人か4人だったと思うけど、その全員が日清の「チキンラーメン」と書いていたのだ。

現在では、「出前一丁」の袋麺はメッタに見かけなくなり、スーパーなどで目にするのは「サッポロ一番」と「チャルメラ」が7対3とか8対2とかの割合になり、「出前一丁」は「いつも置いている店なら置いている」って感じになっちゃったけど、今から35年くらい前の当時は、「サッポロ一番」と「チャルメラ」と「出前一丁」がインスタントラーメンの御三家みたいな感じだった。ちなみに、当時のクラスで「出前一丁」と同じレベルの支持を集めた「チキンラーメン」は、当時の人気はイマイチだった。あたしも食べたことはあったけど、ドンブリに入れてお湯を掛けるだけの「チキンラーメン」よりも、ちゃんとお鍋で煮て作る「サッポロ一番」や「チャルメラ」のほうが遥かに美味しかったからだ。

「チキンラーメン」の人気が再燃したのは、あたしが中学生になってからだ。「すぐ美味しい~すごく美味しい~♪」という歌をバックに、おにぎり顔の南伸坊さんがチキンラーメンを作って食べるテレビCMが人気になり、そこから人気が出た。だから、あたしの班がクラスの「統計」を取った小学生の時には、選択肢に入れるほどの人気はなかったのだ。

だけど、この「統計」、今になって考えると、ちょっと不公平なんだよね。だって、「サッポロ一番」は当時でも「しょうゆ」「みそ」「塩」の3種類があったけど、「チャルメラ」と「出前一丁」は、確か「しょうゆ」だけしかなかったからだ。もしかしたら、これはあたしの記憶違いかもしれないけど、小学生時代のあたしは、「サッポロ一番」なら「しょうゆ」も「みそ」も「塩」も何度も食べていたけど、「チャルメラ」と「出前一丁」は「しょうゆ」しか食べた記憶がないからだ。

つまり、この設問だと、「サッポロ一番」の「しょうゆ」が好きな人も「みそ」が好きな人も「塩」が好きな人も「サッポロ一番」に丸を付けたわけで、得票数が多くなるのは当然だったのだ。公平性を追求するのなら、「1.サッポロ一番しょうゆ、2.サッポロ一番みそ、3.サッポロ一番塩、4.チャルメラ、5.出前一丁、6.その他」にしなきゃいけなかったのだ。だから、もしも、あたしが生きているうちにタイムマシンが発明されたら、当時の渋谷区立ホニャララ小学校に父兄のフリをして侵入して、あたしの机に「インスタントラーメンの選択肢はこうするべき」というお手紙を置いてこようと思っている(笑)


‥‥そんなワケで、とにかく、あたしはモノゴコロついた時から「サッポロ一番」が好きで、小さいころは母さんやおばあちゃんに作ってもらったし、小学3年生くらいからは自分でも作るようになったし、これまでずっと食べ続けてきた。そして、御三家である「しょうゆ」「みそ」「塩」を順番に食べているうちに、「しょうゆ」の麺は普通の太さで、「みそ」の麺は少し太くて、「塩」の麺は少し細いということに気づいた。だから、あたしは、お鍋を食べた最後のシメにインスタントラーメンを入れる場合には、煮込んでもいいように一番太い「みそ」の麺を使うようになった。

でも、ずっとしてから分かったんだけど、これって、あたしの勘違いだったのだ。「サッポロ一番」の麺は、太さは3種類とも同じで、形状が違っていたのだ。それぞれの麺の断面が、「しょうゆ」は四角、「みそ」は楕円、「塩」は円だったのだ。だから、3種類を同時に作って麺を見比べたら分かっただろうけど、あたしは一度に1種類しか作らないし、単に「食べた感じ」だけで太さが違うと思っていただけだから、サスガにそこまでは気づかなかった。でも、麺の断面が四角の「しょうゆ」を基本とすれば、楕円の「みそ」は太く感じるし、円の「塩」は細く感じると思うから、あたしの感覚も完全な勘違いだったとは言えないと思う。

だけど、そんなことよりも、もっと驚いたことがある。「サッポロ一番」の麺は、その形状だけでなく、内容も違っていたのだ。「しゅうゆ」の麺には醤油が練り込んであって、「みそ」の麺には味噌が練り込んであって、「塩」の麺には山芋粉が練り込んであったのだ。これは、サンヨーの「サッポロ一番」の開発チームの人たちが、それぞれのスープにもっとも合う形状と内容を試行錯誤した結果、こういう結論に達したからだそうだ。ちなみに、明星の「チャルメラ」のほうは、味によって麺の太さを変えている。「醤油」と「塩」が中細麺、「みそ」が中太麺、「とんこつ」が細麺だ。だから、お鍋のシメに使うのなら、「サッポロ一番」の「みそ」よりも「チャルメラ」の「みそ」のほうが向いていることになる。


‥‥そんなワケで、ここで日本のインスタントラーメンの歴史を簡単に紹介するけど、まずは1958年(昭和33年)に大阪のサンシー殖産(現・日清食品)から「チキンラーメン」が発売され、これが生産が追いつかないほどの大ヒット商品となったことから、日本のインスタントラーメンブームがスタートした。翌1959年には大阪の梅新製菓(現・エースコック)から「エースコックの即席ラーメン」が発売され、1960年には東京の明星食品から「明星味付けラーメン」が発売され、それぞれが大ヒットしたことから、四匹目、五匹目、六匹目のドジョウを狙うメーカーが次々とインスタントラーメンを開発・販売するようになったのだ。

インスタントラーメンの生産数の推移を見てみると、「チキンラーメン」が発売された「インスタントラーメン元年」の1958年度は年間の販売数が約1300万食、翌1959年度は約7000万食、1960年度は約1億5000万食、1961年度は約5億5000万食、1962年度は約10億万食、1963年度は約20億万食と、急激に上昇していった。現在は年間55億食ほどに落ち着いて横ばいが続いているけど、発売当時からの10年間の伸びはもの凄かったことが分かる。つまり、日本のインスタントラーメンは、最初に発売されてから10年ほどで一気に市民権を得て、あとはジワジワと販売数を伸ばしてきたってワケだ。

そして、1971年に日清食品が日本初のカップ麺「カップヌードル」を発売しても、当時の「カップヌードル」はインスタントラーメンの3~4倍くらい高かったので、ライバルにはならなかったそうだ、インスタントラーメンは、それまで通りに庶民に支持されていて、たまに「ちょっと贅沢なラーメン」として「カップヌードル」を買うような感覚だったと言われている。そのため、お鍋や食器を使わずに、お湯を注ぐだけで簡単に出来る上に、具まで入っている「カップヌードル」が登場しても、価格の面での住み分けがてきていたから、インスタントラーメンの売り上げにはほとんど打撃はなかったそうだ。


‥‥そんなワケで、あたしの好きな「サッポロ一番」の歴史を見てみると、1966年1月、群馬県のサンヨー食品から「サッポロ一番しょうゆ味」が発売され、12年後の1968年9月には「みそ」、さらに3年後の1971年9月には「塩」が発売され、この3種類が出そろった翌年の1972年に、このあたしが生まれたというワケだ。ちなみに、何で群馬県の会社なのに「サッポロ一番」なのかというと、全国のラーメンを食べ歩いた当時の井田毅社長が、札幌のラーメン横丁で食べた「しょうゆラーメン」の味が忘れられず、どうにかこのその味を家庭でも簡単に再現できないかと試行錯誤した結果、誕生したインスタントラーメンなので、思い出のラーメンに敬意を払って「サッポロ一番」と命名したそうだ。

一方、明星の「チャルメラ」が発売されたのは、「サッポロ一番しょうゆ味」の発売から送れること8カ月、1966年9月のことで、その2年後の1968年には日清の「出前一丁」が発売された。だから、「サッポロ一番」だけでなく「チャルメラ」も「出前一丁」も現在では半世紀もの歴史があるインスタントラーメンであり、「チキンラーメン」に至っては60年もの歴史があるのだ。そう思うと、まだ40歳台のあたし的には、どのインスタントラーメンも「先輩」ってワケで、これからは「サッポロ一番先輩」とか「チャルメラ先輩」とか「出前一丁先輩」とか呼ばなきゃならなくなってくる。つーか、「カップヌードル」ですらあたしが生まれる1年前に発売されてるから、これまた「カップヌードル先輩」ってことになる(笑)

ま、そんなことはともかくとして、今ではお湯を注ぐだけで食べられるカップ麺のほうが主流になっちゃったけど、スーパーで売っている一番安いものでも80~90円もするカップ麺よりも、5袋入りで300円前後、マイナーなメーカーのものなら5袋入りで200円前後で買えるインスタントラーメンのほうが、価格的にも食べた後の満足感でも、あたしはダンゼン上だと思っている。お鍋にラーメン1杯ぶんのお湯を沸かして、ザク切りにしたキャベツと短冊に切ったニンジンを入れて少し煮て、そこに「サッポロ一番」の「塩」の麺を入れて、スープの粉を入れて、麺がほぐれてきたらモヤシを入れて、麺がちょっと硬めのうちにドンブリに入れて、ラーメンに付いていた小袋の白ゴマをかけて、長ネギの薬味を乗せて、焼き海苔を添えて、コショウを振って、最後にゴマ油と垂らせば、カップ麺なんかとは比べものにならないほど、この1杯だけで大満足の食事になる。


‥‥そんなワケで、今回のエントリーを読んで、今すぐにでも「サッポロ一番」を食べたくなっちゃった人もいるだろうけど、最後に、あたしから「サッポロ一番」を作る上で、とっても重要なことを伝授しておく。「サッポロ一番」に限らず、インスタントラーメンを作る時、スープが薄くなり過ぎないようにと、スープの粉はドンブリのほうに入れておき、お鍋では麺だけを茹でて、それをドンブリに入れて作る人がいる。そうすればスープの濃さが一定に保てるからだ。だけど、サンヨー食品の「サッポロ一番」の担当者によると、「サッポロ一番」のシリーズは「お鍋で麺とスープを一緒に煮込むことで最高の味になるように開発している」とのことなので、皆さん、これから「サッポロ一番」を作って食べる時には、面倒くさがらずに、最初にドンブリでお水を量り、それをお鍋に入れて沸かし、麺とスープを一緒に煮込むようにしてみてほしいと思う今日この頃なのだ♪


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